2017年4月28日金曜日

4/26 YBCルヴァンカップBグループ第3節 VS サガン鳥栖 @ ベストアメニティスタジアム

JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ 第3節
2017年4月26日(水)19:00KO ベアスタ

スタジアムベストアメニティスタジアム主審松尾 一
入場者数7,849人副審和角 敏之、中野 卓
天候 / 気温 / 湿度曇 / 17.7℃ / 88%第4の審判員先立 圭吾
追加副審今村 義朗、吉田 哲朗
スターティングメンバー
サガン鳥栖鳥栖
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • マッシモ フィッカデンティ
 
  • 監督
  • 尹 晶煥
21歳以下の選手を1名以上先発に含める(決勝を除く)ことが大会方式として決められている。※1

※1 但し、以下の場合は出場義務を負わない。
・対象選手1名以上が日本代表試合または日本代表活動(A代表、U23、U20)に招集され、試合日に不在の場合。
・対象選手が試合エントリー後の怪我等のやむを得ない理由により出場ができない場合。
サガン鳥栖鳥栖
C大阪セレッソ大阪
今回対戦今季平均
データ項目サガン鳥栖セレッソ大阪サガン鳥栖セレッソ大阪
FK21102112
CK3634
PK0000
シュート1112109
警告/退場2/01/02/01/0

<監督・選手コメント>

サガン鳥栖 マッシモ・フィッカデンティ監督
セレッソ大阪 尹晶煥監督

サガン鳥栖 富山選手、高橋選手
セレッソ大阪 水沼選手、清武選手、木本選手、キム・ジンヒョン選手

サガン鳥栖 マッシモ・フィッカデンティ監督(Jリーグ公式
サガン鳥栖 鎌田選手、高橋選手(Jリーグ公式)

公式戦4連勝の後、3試合連続引き分けとなっているセレッソ。YBCルヴァンカップの第3節となるサガン鳥栖と敵地ベストアメニティスタジアムでの対戦は激しい打ち合いの末4-4の引き分け。4試合連続引き分けとなりました。

■メンバー

セレッソのメンバーは、前節からキム・ジンヒョンを除き10人を入れ替え。ベースになっているのはルヴァンカップでおなじみのメンバーですが、トップ下のポジションで清武が負傷後初スタメン。さらにCBには今シーズン初スタメンとなる藤本が入り、キヨが2人、コウタも2人という先発メンバーです。
またベンチには前回のルヴァンカップに引き続き、西本と岸本が入っています。
21歳以下の選手は、庄司と舩木です。

一方のサガン鳥栖は前節から7人変更。GKと最終ラインは全員代わっており、右SBには今シーズン加入した小林祐三が加入後初先発となっています。
また中盤は前節アンカーだった小川と右のインサイドハーフだった福田が外れ、アンカーには高橋義希、右インサイドハーフには小野裕二。この2人はサブというよりも前節は先発から外れたという立場の選手です。
2トップにはいるのは富山とチョ・ドンゴン。チョ・ドンゴンは前節加入後初スタメンとなり、両チーム合わせて唯一のゴールを決めるという活躍を見せていますので、引き続きという所でしょう。
またベンチには、イバルボ、田川、水野、福田が入っています。
21歳以下の選手は鎌田です。

■予想外に打ち合いとなったゲーム
リーグ戦では既に1回目の対戦を済ましているこのカード。セレッソの本拠地キンチョウスタジアムで行われたリーグ戦第4節では1-0でセレッソが勝利しています。
この前回の対戦でもわかるように、この両チームは堅守に特徴のあるチーム。セレッソサポーターとしてはにわかに信じられない部分もありますが、現実に今シーズンのリーグ戦ではここまでリーグ最少タイの7失点なので照れくさいですが堅守と言っても良いはずです。
そして一方の鳥栖は、今シーズンのリーグ戦ではここまで11失点なのでリーグ10位タイですが、昨シーズンはリーグ4位の失点数だったのでこちらは間違いなく堅守のチームです。
しかしこの試合では4-4、両チーム合わせて8点が決まる事に。2010年以降のデータではJ1での1試合で決まる得点は両チーム合わせて2.70点となりますから、この試合がかなり派手なゲームだったことがわかるでしょう。

■サガン鳥栖の4-3-1-2

サガン鳥栖のフォーメーションは4-3-1-2。これはフィッカデンティ監督がFC東京時代から採用していた形です。
フィッカデンティ監督がこの形を気に入って続けているのは、マッチアップをあわせることで中盤でポジショニングの優位を作れるからです。
マッチアップ
それはマッチアップを考えるとわかりやすいのですが、最終ラインでは鳥栖の2CBに対してセレッソの2トップ、SBに対してSHときっちりマッチアップしています。
しかし中盤では誰ともマッチアップしていないアンカーがいてボランチの後ろにトップ下の選手もいる。
この2人の浮いている選手がいることでインサイドハーフも少しポジションを移動することでセレッソのSHやボランチに対して数的不利の状況を作りやすく、またセレッソのSBは誰もマッチアップする人がいないという状況。
ですが、ここにインサイドハーフが出てきたりトップ下の選手が出てきたりするので、どこから誰を捕まえるのかというポイントを非常にわかりにくくすることができる形になっているのです。

■リーグ戦でセレッソが取った守備の形

こういった特徴のある鳥栖の4-3-1-2にリーグ戦ではセレッソが1-0で勝利しています。
詳しくはその時のレビューを見ていただければと思いますが、
3/18 明治安田生命J1リーグ第4節 VS サガン鳥栖 @ キンチョウスタジアム
その時は守る場所を限定することで鳥栖が作りたいポジショニングのズレを消す形をとりました。
リーグ戦で対戦した時のセレッソの守備
つまりセレッソが取ったのは自陣で4-4-2のブロックを作る方法。
相手の形がどうであれ、まずは自分たちの守備の形を自陣で作る。この4-4-2のブロックを自陣で、そして中央で絞って作り、ポジショニングのズレはその形の中の移動で処理をする。
その分、ブロックの外側は捨てる事になるのですが、敵陣では鳥栖に自由にボールをもたせ、両サイドはボールが出てから全体をスライドさせ、ボールのある場所から中心に守備の陣形を整えることでゴールへ向かうスペースを消してしまおうという形です。

この試合でみせていた守備の形は今シーズンのセレッソの特徴とも言える形で、浦和戦ではこの形の精度が低く完全に崩されてしまいましたが、その後のマリノス戦、鹿島戦ではこの形が機能したことで無失点での勝利につながっていましたし、それこそ今シーズンの堅守の特徴とも言える形だったと思います。

■高い位置からのプレッシングを始めたセレッソ

しかしこの試合では、前回対戦時に使った守備とはまた違う形をとりました。
それは前線の高い位置から、リカルド・サントスと清武の2人を中心にプレッシングをかけに行く形。そこに連動してSHやボランチ、最終ラインも当然付いて行きます。
前回の対戦時よりも明らかに守備のスタート位置が高くなっていました。
最初は立ち上がりに主導権を握るためなのかな?と思っていたのですが、15分を過ぎても続けていましたし、またビハインドだからかな?と思ったのですが、1点差となって迎えた後半にもHTで変えること無く同じ形で始めたので、明らかに意図してやらせたのでしょう。

そして前半立ち上がりにこの守備がハマって、開始4分にしてリカルド・サントスのゴールでセレッソが先制。高橋義希のミスパスをかっさらう形でしたが、それもこれも高い位置からの守備でリカルド・サントスが高橋義希にボールが入る瞬間を狙っていたからです。

■高い位置からの守備の弊害

しかし、その後前半に喫した3失点はいずれもこの高い位置から守備を始めることで出てきた問題が表れたものでした。
高い位置から守備をするということは、広いエリアを守らなくてはいけないということです。
そして広いエリアを守るということは当然間延びしてしまう可能性が高くなるということでもあります。
なので最終ラインを押し上げて背後のスペースを使えなくすることで守備のエリアを狭くしなければならない。ということは高い位置で守備の基準となる所を決めなければいけません。
この守備の基準となる所とは通常相手選手のポジション。敵陣から守備をするということは相手選手を捕まえるということでもあるからです。
高い位置で守備をするということは、自陣でブロックを作る場合であれば捨てていた場所でも守備をするということなので当然です。

そしてその結果出てきたのが、前回は自陣でブロックを作ることで消していた鳥栖のポジショニングによって生まれる優位性でした。
誰がどこから捕まえるのか
特にセレッソの守備に問題を引き起こしたのがインサイドハーフの原川・小野とトップ下の鎌田。
インサイドハーフの2人がボランチの脇、2トップとSHの間に降りてきた時に誰が捕まえるのか。
何も考えずに、SHが行けばSBが空くし、トップが行けばアンカーが空く、ボランチが行けばトップ下や2トップへのパスルートが空いてしまいます。
そしてインサイドハーフが遅れてサイドに出てきた時に誰が捕まえるのか。最終ラインでは2トップ+1トップ下の3人に対して4人。なので通常1人が余っています。がしかし、この3人に対して4人は絞って対応しています。
ボランチが行ってしまうとDFラインの前のバイタルエリアを1人で守らないといけなくなるので、やはりSBが行くしか無いなとなるんですが、2トップに対して2CBがマッチアップしており、さらに後ろからトップ下も出てくるので簡単にスライドすることも難しい。
この結果、ボランチが出すぎてしまって間延びする、逆にボランチが下がりすぎてしまって間延びするという状況がおこってしまう事になります。
またセレッソの右サイドでは原川が手前でボールをもって後ろから三丸があがってくる形、左サイドでは小林祐三がいてその前で小野裕二が仕掛けてくる形、にトップ下の鎌田が絡むというサイドを崩しに来る形では厳しい状況に追い込まれてしまい、前半の3失点は全てサイドから。
24分の鎌田の同点ゴールは小野に舩木と清原の2人が行ったのですがマイナス気味に挙げられてしまい、37分の富山のゴールはセレッソの右サイドを崩された所で中央のスライドが出来ておらず間が開いている、41分の高橋義希のゴールはボランチが下がってしまっていて完全にフリーにしてしまっていました。
また同点ゴール以降はボランチのポジションがなかなか定まらず、ボールを奪っても清武が下がるしかないのでリカルド・サントスが前線で孤立してしまい、なかなか攻撃の形がつくれませんでした。

しかし、44分の水沼のゴールは6分のリカルド・サントスのゴール同様に高い位置で守備をしたことから産まれたゴール。
またこの守備の形で、相手に簡単にボールを運ばせること無くセカンドボールを拾うことが出来ていたのも事実です。
失点も立て続けにしていましたし、尹晶煥監督としてはもう少し落ち着いてゲームをコントロールしたかったのでしょうが、後半も同じ形を継続させたのはある種の手応えも感じていたからでしょう。鳥栖は中盤を3枚で守るので、守備になった時に下がりすぎてしまうとその3人が振られ続ける事になるため、その穴を消すために基本的に高い位置から守備をしたがるチームなのですが、速い展開が続くアップテンポな前半にしたのはセレッソがそこに真正面からぶつかるようにこれまでと違う戦い方を仕掛けていったからでした。

■ボランチのポジションが安定し始める後半

守備時に4-4-2に
後半も同じやり方を続けるセレッソ。その一方で鳥栖は守備の時にトップ下の鎌田が中盤の中央に入る4-4-2で守備をするようになります。攻撃の時は再び前に出てきて4-3-1-2になり、最初の守備ではそのまま行く事もありますが、セレッソがボールを保持すると鎌田はポジションを落とすようになります。
これはリードしているということで中盤の守備のバランスを整えたかったのでしょう。
しかしセレッソが攻撃している時に4-4-2になってくれるのでボールを奪われた瞬間の鳥栖も4-4-2。この試合のセレッソはこの瞬間から高い位置で守備を仕掛けるので守備のスタート時点ではマッチアップがはっきりしているからか、セレッソのボランチがバランスを崩してしまうことが少なくなります。
これによりセレッソは清武と中盤、清武とリカルド・サントスの距離が離れすぎない様になり、攻撃が活性化。清武を起点にした攻撃がどんどん繰り出されるようになります。
52分〜
鳥栖は52分に原川から福田に交すると、直後のセレッソのCKからのカウンターで鎌田から小野に大きな展開のパスからシュートまで持ち込まれるなど、背後のスペースであったりセレッソの守備に隙が無いことは無いんですが、清武を起点にした攻撃はそれを上回るもので、リカルド・サントスも孤立していないことから持ち前のパワーを発揮できる場面も見られるようになります。
そして61分にはCKからこぼれ球を水沼がダイレクトで押し込みゴール3-3の同点に追いつきます。
水沼のゴールは最後木本がオフサイドポジションにいたことで副審がフラッグを挙げますが、オフサイドになるかどうかはその木本がプレーに関与していたかどうか。
主審の松尾一さんが一旦オフサイドのアクションをしたことで少し混乱がありますが、副審らとの協議の結果オフサイドポジションにいた木本はプレーに関与していなかったので、ゴールが認められる事になりました。

しかし68分、鎌田がこの日2点目のゴールを決め鳥栖が4-3と再びセレッソを引き離します。
このゴールは左サイドに、鎌田、チョ・ドンゴン、福田が縦の列というかレーンを入れ替えながら中央の富山とのワンツーでセレッソの右サイドを崩しきるという、かなりクオリティの高いゴールでした。

しかしこのまま終わらないのがこの日の試合。
鳥栖は守備の時に4-4-2になる形を徹底し安定をはかりますが、かなり足もとまってきている状態。そこで清武から右サイドから斜めに中に入ってくる水沼とのワンツーでバイタルエリアに侵入、リカルド・サントスとのワンツーはズレてしまい、青木がヘディングでクリアしますが、中央に密集している状態。なので両サイドには大きなスペースがあり、そこにめがけて出てきていた田中にそのクリアがちょうどこぼれてきておりそれを豪快にダイレクトで蹴り込むことで75分に同点ゴールを決めます。
78分〜
77分、鳥栖が富山から田川に交代させ、攻守ともに4-4-2に変更。
同時にセレッソも舩木に代え丸岡を投入し3-4-2-1に変更します。
セレッソはもしかすると4-3-1-2対策もあっての中盤のマッチアップと両サイドの人数をあわせた3バックだったかもしれませんが、このタイミングで鎌田は左SHに移動します。
そして続く78分に鳥栖は青木からキム・ミンヒョクをそのまま交代させます。
鎌田が左SHになったことでWBになった水沼の戻りが少し遅れてしまい危ない場面を作られるものの清武が中央に起点を作ることで相手を押し込み両WBを高い位置に出せるセレッソがトスゴールに迫る時間を増やします。
84分〜
さらにセレッソは84分に水沼に代えて福満を投入。
87分には清武が中央で起点を作り、動き出しでも勝負できる福満が右から中央に斜めに入り込む動きを見せますが惜しくもオフサイドの判定。
その後も清武を中心にかなり鳥栖ゴールに迫る場面を作ります。
一方の鳥栖は右SHになった小野と左SHになった鎌田を起点に攻め込もうとしますが試合はこのまま終了。激しい打ち合いとなった試合は4-4の引き分けに終わりました。

■その他

正直な所、この試合には少し驚きました。
これまで尹晶煥は自陣で守備ブロックを作る守り方をやっていたように、どちらかと言えばゲームを消しながら一瞬の隙をついて斬るといった戦い方でした。
しかしこの日はセレッソから仕掛けてハイテンポなゲームに持ち込んだように、混沌とした状況を自ら作ってそこで勝負しようというやり方。これまでとは全く違います。
ガンバ戦や甲府戦でも少しその兆しは見え隠れしていましたが、ここまで思いきってやってくるとは思いませんでした。
このテストは4失点しているので成功とはいえないかもしれませんが、4得点を挙げることはできたので成果はありました。
このままこの方向でトランジション勝負みたいな方向に持っていくのかどうかはわかりませんが、この試合は興味深い試合でした。




2 件のコメント :

  1. Akiさん、いつも深い解説ありがとうございます。

    本当にこの試合展開は意外でしたし、前半の3失点にはガッカリもしました。

    けれど、尹監督は、あえてこの時期に、リスクはあるけれどポジティブなスタイルのサッカーをテストしたと理解できるんですよね。

    今季の目標達成のためには、まだしばらくリーグ戦のような戦い方をしないといけないでしょうが、相手の対策に対応するためには、多様なオプションが必要ですもんね。

    今回のスタイルをトップチームスタメンの組み合わせで採用したら、より機能するとAkiさんは思われますか?



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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      尹さんは目標達成の為にブロックを落とす形だけを続けるのではなく、アグレッシブなサッカーをやったんだと僕は理解しています。
      まあなので、スタメン組だからサブ組だからという人の問題というよりも、チームにどこまで落とし込めるかが機能するかどうかのポイントじゃないでしょうか。

      削除

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