2018年1月20日土曜日

セレッソ大阪 2017年シーズンレビュー vol.1

2017年は、YBCルヴァンカップで優勝し悲願の初タイトルを獲得するだけでなく、天皇杯でも優勝。リーグ戦でもJ1が34試合制となって以降、クラブ史上最多の勝ち点を獲得し3位となるなど、J1復帰初年度にして大躍進を遂げたシーズンとなった。



■新しいセレッソ大阪

2016年は苦しみながらもJ1昇格プレーオフで何とかJ1復帰を果たした2017年。監督には尹晶煥を招聘する。
おそらく監督としての尹晶煥については鳥栖時代のイメージや、「規律を重視する」「厳しい」というステレオタイプな印象は持っていただろうが、クラブとしては具体的に「どういうサッカーをするのか」という部分は曖昧だったのではないだろうか。
それ以上に、噂に上がっていた報道などからみると「固執」と言っても良いぐらい重要視していたのが「クラブOB」という部分。
これはレヴィー・クルピ退任以降タレントがいるにもかかわらずJ2降格、J1昇格失敗と迷走を続けていたチームにとって、選手にも、そしてサポーターにも「クラブOB」という芯がほしかったのでは無いかと思われる。
なので監督に関しては、「どういうサッカーを志向するか」よりも「実績があるOB」という部分が大切だったのだろう。

「どういうサッカーを志向するか」で選んでいないので、クラブ側はサッカーの内容に関しては「白紙の状態」、つまり尹晶煥監督に「完全におまかせ」だったのだろう。
そして、2017年の躍進は、まずこの状況と決断が上手くいったのだと思われる。

古い話しになるが、2012年にセレッソはこれで失敗した事がある。前年にレヴィー・クルピが退任。セルジオ・ソアレスを新監督として招聘するが、ソアレスには3シャドゥや流動的に動きながらのパスワークなど、前年までのクルピのサッカーを=セレッソのサッカーとしてクラブは引き継ぐことを求めた。
しかし今になって思い返せばソアレスのやりたいサッカーはどちらかといえば今のセレッソのサッカーに近いもの。開幕直後こそ結果がでたものの徐々に負けが混むようになり、5月中盤以降に開き直る形で戦い方を少し変えた(おそらく本来の自分の形に寄せた)が結局は立て直すことができなかった。

結果的には前監督からの継続を目指した2012年は失敗し、新監督に完全に任せた2017年は成功することとなったが、もちろんどちらかが正解という訳ではない。
とはいえ、監督が代わるということはチームが変わるということでもある。継続で上手くいったサンフレッチェ広島の森保監督や川崎フロンターレの鬼木監督は共にコーチからの昇格であったように、そういった条件がないとやはり難しい部分が多い。
ただセレッソの2017年については、低迷期間の後で前年も内容的にはとても成功とはいえないものだったため、中途半端に引き継がないといけない何かがあった訳ではなかった事が逆に功を奏したといえるだろう。
そして、戦力的には中心選手を大きく変えた訳ではなかったこともさらに結果を上げることができた要因の1つではないかと思われる。
というのも、実際の戦い方は全く別のチームと言えるほど変わっているのだが、選手は変わっていない。なので選手個々にとっては「昨年からの継続」を実感することができただろうからだ。この「昨年からの継続」感は戦い方の変化から考えると錯覚に近いものなのかもしれないが、選手のメンタルの部分にとっては大きなものだったのではないだろうか。

■尹晶煥が作り上げたチーム

2017シーズンのセレッソ大阪は「ハードワーク」という言葉と共に紹介されることが多いチームだった。そしてその象徴として、ちと同時に行われた3部練習、特に夜明け前ともいえる時間から行われた早朝からのトレーニングは話題になった。
とはいえ、この早朝トレーニングを実際に見た方はご存知だと思うが、やっているのは軽いジョギング程度。これはいわば「夏休みのラジオ体操」みたいなものだ。
この早朝トレーニングは尹晶煥監督にとって、自分が監督として新しくチームを作り直す、ということを表すために必要な準備だったのだろう。
まあ普通に考えると、ゲームじゃないんだから早朝トレーニングをしたからって各選手のスタミナのステータスがアップする訳ではないということはわかるかとは思う。
J1平均走行距離ランキング
実際の走行距離チーム平均ランキングを見るとセレッソは4位。ずば抜けて多いわけでは無いがリーグ平均が111.36kmなので多い方であるといったところか。
走行距離はこのランキングを見てもわかるように強さを表すものではない。とはいえ、2016年はJ2だったのでトラッキングデータがなく正確な数字はわからないが、「走れるチーム」だったことは確かなのだろう。
この「走れるチーム」になった要因と、リーグ4位でしかない走行距離にもかかわらず前年にはまったくなかった「ハードワーク」のチームだと呼ばれた要因は、同じところにあるのではないだろうか。
その要因を個人的には、尹晶煥監督が選手個々が取るべきポジションやそのタイミングをチームとして統一し明確にしたからだと考えている。
それを象徴するようなものが、以前にも紹介した事があるかと思うが丸岡がドイツから帰ってきた2016年に感じていた戸惑いだろう。

「そうなんですよ。ユース時代の感覚を取り戻せれば、どこでもやれると思うんですけど、まだまだですね。やっぱりドイツと日本じゃ守備のやり方も違うんです。ドイツは前に取りにいく時は全員で行くし、自分がはがされても次が来るから『はがされてもいいから行け』って感じで思い切りいけるんです。
 でも日本では、自分のところではがされたらダメじゃないですか。止まらないといけないし、相手に付いていかないといけない。監督には、『1回だけじゃなく2、3回追い掛けろ。球際の強さを見せてこい』と言われるので、そこを意識してライン際のタックルとかスライディングとかしていますけど、もっと守備の意識を高めて、何回も相手に行けるようにならないといけない」
セレッソに復帰した丸岡満の苦悩。「日本とドイツはサッカーが違う」
この丸岡のコメントはプレッシングについて話しているが、これは基本的に守備全般に通じることでもある。
丸岡が「日本のサッカー」としている2016年のセレッソは「1回だけじゃなく2、3回追い掛けろ。」と言われていた。つまりゴールが決まっていない状態である。
これでは最初に走る時に100%でいくことができるはずもないし、むしろ「次のために行かない」という選択につながる可能性もある。
しかし尹晶煥監督は選手個々が取るべきポジションやそのタイミングをチームとして統一した。
つまりその瞬間のゴールが決まっている状態である。
であれば、その瞬間は必ずそこに行かないといけない。はっきりと決まっている分、もし行くことができないなら交代するしかない。
走れるか走れないかというのはスタミナの問題だけでなく、組織の問題でもある。
試合別走行距離比較
それを表しているのが上の図。
これは対戦相手との走行距離を比較し、その距離別に並べ、また勝敗を記したものだが、相手チームよりも1km以上少ない(走行距離が相手よりも-1km未満)の試合、5試合のうち4試合はシーズン序盤。特にセレッソよりも1試合平均走行距離が少ない札幌、磐田にも1km以上少ない(走行距離が相手よりも-1km未満)結果となっている。
これはシーズン序盤は尹晶煥の戦術がチームにまだ浸透していなかったということなのだろう。

vol.2に続く…

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