2018年2月26日月曜日

2/25 明治安田生命J1リーグ第1節 VS 横浜F・マリノス @ ヤンマースタジアム長居

スタジアムヤンマースタジアム長居主審廣瀬 格
入場者数23,049人副審作本 貴典、植田 文平
天候 / 気温 / 湿度雨 / 9.1℃ / 53%第4の審判員窪田 陽輔
スターティングメンバー
セレッソ大阪C大阪
 
横浜F・マリノス横浜FM
 
  • 監督
  • 尹 晶煥
 
  • 監督
  • アンジェ ポステコグルー
セレッソ大阪C大阪
横浜FM横浜F・マリノス
今回対戦今季平均
データ項目セレッソ大阪横浜F・マリノスセレッソ大阪横浜F・マリノス
FK15191519
CK8484
PK0000
シュート11161116
警告/退場2/00/02/00/0

<監督・選手コメント>

セレッソ大阪 尹晶煥監督
横浜F・マリノス アンジェ・ポステコグルー監督

セレッソ大阪 柿谷選手、福満選手、杉本選手、キム・ジンヒョン選手
横浜F・マリノス 山中選手

セレッソ大阪 柿谷選手、福満選手、杉本選手、キム・ジンヒョン選手、水沼選手、山口選手、木本選手、ソウザ選手、高木選手(セレッソ大阪公式)

横浜F・マリノス ユン・イルロク選手、喜田選手、中町選手(横浜F・マリノス公式)

2018年明治安田生命J1リーグ開幕戦。J1開幕戦で大トリに行われたセレッソ大阪対横浜F・マリノスの一戦は1-1の引き分け。両チームが勝ち点1を分け合う形となった。

■メンバー

セレッソ大阪のメンバーはACL広州恒大戦から中3日ということもあって5人を入れ替え。
2トップが柿谷と杉本、左SHには福満、ボランチには山村、CBには木本が入っている。
昨季中3日の試合ではかならずターンオーバーを敷いてきた尹晶煥監督。今季のミッドウィークはACLと対戦相手のレベルがより上がる形での対戦となるが、今季もある程度のターンオーバーを行う方針が見られる。
また今季は昨季の経験を踏まえてそれだけの選手が揃っているという判断もあるのだろう。
福満はセレッソ加入2年目となり昨季のJ1リーグ戦にも出場はしていたが、先発は初めて。カテゴリーとしてはJ1から数えて5番目、5部にあたる地域リーグから1つずつステップアップしてきた福満は、日本のトップリーグJ1リーグ戦でもついに先発を勝ち取った。

横浜F・マリノスのメンバーは先週行われたFC東京とのプレシーズンマッチから2人が入れ替わる形となっているが、事前の情報通りのメンバー。
GKの飯倉、DFラインの松原、中澤、デゲネク、山中。中盤は喜田がアンカーでその前に天野と中町、3トップは遠藤、ウーゴ・ヴィエイラ、ユン・イルロクの4-3-3となる。

■オフサイド判定のミスジャッジ

この試合が終わった後、Twitterでは大きな2つの話題で溢れていた。
1つはミスジャッジ、1つはマリノスの戦い方。
このブログの主旨としてはマリノスの戦い方とそれに伴うセレッソの戦い方がメインになるので、後に詳しく書くとしてまずミスジャッジについて書いていく。

ハイライトにも入っているが6分、柿谷がゴールネットを揺らしたシーンがオフサイドの判定で取り消されたが、これは完全にミスジャッジだった。
福満が抜け出して折り返しを中に送った瞬間の柿谷のポジションは完全に福満よりも後ろ。
オフサイドラインは相手DFの2人目の守備者となるが、そのラインをボールを保持する選手が越えた場合はボールがオフサイドライン。なので福満が折り返しを蹴った瞬間に柿谷が福満よりも後ろにいればオフサイドではない。
映像を見るかぎり、副審は福満の抜け出しに間に合っていなかったのでオフサイドラインに対して垂直に見る事ができていなかった。そのためオフサイドラインを把握できておらずミスジャッジとなったのだろう。
摩訶不思議なオフサイドライン
ただこれをさらにややこしくしてしまったのがDAZNのミス。
DAZNは中継でこのシーンに対して守備側の2人目の選手である中澤のところにオフサイドラインを引いてしまった。
これはDAZNのラインを引いた人の完全な勘違い。完全なミスだ。
解説の加地氏や実況の野村氏はルールを把握しているので、このラインを柿谷がいたライン、なので「オンサイドのように見えました」と苦しいながらも正確な情報を伝えてくれていたが、誤ったラインを画面で出してしまったことには違いない。
そしてそのため「副審もルールを知らなかったんじゃないか?」みたいな話しになりかけていたが、副審が「ボールがオフサイドライン」というルールを知らないとはちょっと考えられないので、副審は単なるミス、DAZNの担当者は知らなかった、ということなのだろう。

セレッソサポーターにとっては、試合を動かす大きな要素となる先制ゴールを取り消された訳で、またさらに試合は1-1の引き分けに終わっている。なので単純に言えばこのミスジャッジが無かったら2-1の勝利。勝ち点を盗まれた的な感覚が生まれてしまう気持ちは十分理解できる。
ただミスジャッジはどうしてもありえることで、今回は被害を受ける側になったが利益を受ける側になることもある。なのでしょうがないとするしか無いんじゃないだろうか。
またこれ以外にも決められる場面が何度もあったので、それを決められなかったという方がいいんじゃないかな?と個人的には思う。

あと少し話しが脱線してしまうが、今回の場面の様な「ボールがオフサイドライン」になるというルール。
ご存知ではない方、今回始めて知った方もおられたようだが、実はサッカーの歴史、オフサイドの歴史を遡ると、そもそもはこれこそがオフサイドの原則といえる。
現在多くの場面で適用されている「2人目の守備者がオフサイドライン」というのはサッカーのルールが整備され、戦い方が進化している中で後から加わったルールに過ぎない。

サッカー創成期、サッカーとラグビーは地域毎に様々なルールで行われている元々同じスポーツだった。その様々あったルールの中で大きくわかれていたのが、ボールを手で持っても良いかどうか。このスポーツがルールを整備する中で「ボールを手で持っても良い」とした人が中心となって整備したスポーツがラグビーとなって、「ボールを手で持ってはいけない」とした人が中心となって整備したスポーツがサッカーとなったと言われている。

そしてサッカーとラグビーが別れる前からあったルールが「オフサイド」。つまり「オフサイド」は「ハンドリング」の反則よりも前にあったルールである。
そんな当時の「オフサイドライン」は常にボール。ボールよりも前にいるプレーヤーはプレーに参加することができないというものだった。
勘の良い人はもう気がついているかとは思うが、これは今でもラグビーでオフサイドの原則となっているもの。もちろん今ではラグビーのルールも変化しているが、原則は「ボールよりも前にいる選手はプレー出来ない」ということをそのまま引き継いでいる。
サッカーは足でボールを扱う分確実にボールを保持できないので、オフサイドラインは相手の2人目の守備者へとルールが変化することとなったが、「ボールがオフサイドライン」というのはサッカーが生まれた時からあるオフサイドの根本的なルールである。

ということで試合の内容へ。

■マリノスが見せた戦い方【攻撃編】

マリノスのボール保持スタート時点
4-3-3(4-1-2-3)の布陣をとるマリノス。
4-4-2のセレッソに対して、2トップ対2CBになるということでボール保持時にはCBが大きく開いてアンカーを下げる3バック化で数的有利を作る。
しかしこれ自体は昨季のマリノスが行っていた形。そして近年では他のチームでもよく見られるそれほど珍しくもない形だ。
しかし今季のマリノスが特徴的なのがここから。CBが開くということはSBのポジションにまで侵入する。ということはSBがポジションを動かすことになるのだが、通常ならSBは前に出ていく。しかし今季のマリノスはそうではなかった。
マリノスのボール保持時のポジショニング
マリノスのSBが出ていくのは中盤のボランチの位置。
つまり元々インサイドハーフがいた場所に近づいていく。
そしてその分インサイドハーフが高い位置に出る。
ということでボール保持時の形は、喜田が最終ラインに下がっていたとすると3-2-2-3(3-2-5)、喜田が中盤に残っていれば2-3-2-3(2-3-5)の布陣になる。
これはプレビューでも書いたが、バイエルン・ミュンヘンでグアルディオラ監督がオーストリア代表左SBのダビド・アラバにこのポジション取りをさせたことから「アラバロール」と呼ばれたり、また最近では偽のSB「ファルソ・ラテラル」と呼ばれる形。
もちろん現在グアルディオラ監督が率いるマンチェスター・シティでも取り入れている形。マリノスはマンチェスター・シティが率いるシティフットボールグループの一員である。
マリノスのポジショニングの意図
この3-2-2-3(3-2-5)、もしくは2-3-2-3(2-3-5)の布陣は4-4-2で守るセレッソにとって何が厄介かというと、まずそもそものオリジナルポジションが全て4-4-2で並んだ時の中間に位置することになる。ということである。
「5レーン理論」という言葉が最近話題になっているので聞いたことがある方もおられるかもしれないが、ピッチを5つのレーン(列)で分けた時にその5つのレーンにそれぞれ選手が配置されている。
5レーン理論について書くとかなり長くなるのでまたの機会にするが、ミシャシステムの5トップとか、昨年の仙台に3バックでミスマッチを使われやられた試合だとかでもあったように、この5つのレーンに人が配置されていることで、セレッソの4-4-2に対しては常に「どちらが見るのか」という2択を迫ることになる。その分後手を踏みやすくなっている。
マッチアップ相手に選択を迫る
そして4-3-3から3-2-2-3(3-2-5)、もしくは2-3-2-3(2-3-5)に変わるまでにSBとインサイドハーフの2人は縦のポジション移動も行われている。
元々セレッソの2ボランチの前にいたのはインサイドハーフの2人、しかしインサイドハーフは自分の背後に行く、そしてその空いた場所に来るのがSHの前にいたSB。
インサイドハーフにボールが入った時に誰がアプローチに行くのか、インサイドに入ってきたSBにボールが入った時に誰がアプローチに行くのか。
セレッソの守備陣に対して常に微妙な選択を強いることになるのだ。
CBからWGへのパスコースが空く
ならばと例えばマンツーマン気味にする。つまり上がるインサイドハーフにはボランチ、中に入るSBにはSHともう決めてしまうとする。
こうなるとこんどは開いたCBから大外に開くWGへのパスコースががら空きになる。
オリジナルのポジションであればCBからWBのパスコース近くにSHがいるためインターセプトのリスクがあったCBからWGへの一気のパスコースが完全にオープンになってしまう。実際に昨季のセレッソで柿谷がインターセプト数2位だったポジショニングが取れないという事態になってしまうのだ。
常に選択を迫った結果空くギャップ
それはいやだ、とSHはSBについていかない。しかしインサイドハーフにボランチは引っ張られた。となるとセレッソボランチの前で相手のインサイドに入ってきたSBがフリーになる。
この結果生まれたのが17分のマリノスの先制点。
ボランチの前で山中は完全にフリーになっていたのは偶然でもなく、またセレッソの誰ががミスをしたというよりも、ポジション取りによってセレッソの選手に何度も選択を迫った結果空いたという、再現性のあるデザインされた形だ。
サイドのトライアングルでのポジションチェンジ
そしてマリノスがこの形で見せたバリエーションの1つが3人のポジションチェンジ。
主に行われていたのがSBがWGの位置に出て、WGがインサイドへ、インサイドハーフが下がってくるという形で、このポジショニング自体がキモにはなっているので「流動的なポジショニング」というものではないが、同じ位置どりの中でも選手はぐるぐると入れ替わる。
これによって、セレッソの守備はほとんどの場面で後手にまわってしまうことになっていた。
WGだけでなくハーフスペースを縦に飛び出すインサイドハーフ
そんなポジショニングによりセレッソの守備を散々混乱させた末に最終ラインを攻略する形はインサイドハーフがSBとCBの間のハーフスペースに突撃してくる形がメイン。
遠藤とユン・イルロクの両WGはもちろん2人とも素晴らしい選手でドリブラーなんだが、単純な1対1なら丸橋と松田がどうしようもない相手という訳ではない。遠藤とユン・イルロクも速いが丸橋と松田も十分速い。
なのでマリノスは丸橋と松田の後ろ、CBの間にインサイドハーフの中町と天野を飛び込ませる。
これによって丸橋と松田は単純な1対1ではない、後ろに飛び出す選手をケアしながらの2対1になるのでサイドを崩される。木本、ヨニッチ、山口、山村と絞った逆サイドのSBで何とかケアするという場面が続いていた。

■マリノスが見せた戦い方【守備編】

ハイプレスの元になるポジショニング
3-2-2-3(3-2-5)、もしくは2-3-2-3(2-3-5)の布陣が4-4-2で守るセレッソにとってそれぞれの選手が中間にポジションをとることになるということは先程も書いたが、これは実は守備のときにも効果を見せる。

マリノスはボールを持ちたい、そしてボールを持っている時に前線に人数をかけているので、守備の方法はハイプレスが基本になる。
ボールを持つためにはボールを速く奪い返さないと行けないので当然だ。
その時に、マリノスの各選手はセレッソの各選手の中間にいる。ということはつまりどの選手に対しても均等に素早くアプローチをかけることができるポジションになっている。
なのでボールを奪われると、そこに対して素早くアプローチをかける、それに連動して周りの選手もどんどんそのエリアのスペースを消す。
これによってセレッソはボールを奪ってもマリノスの選手に素早いアプローチを受け、ボールを奪い返されてしまう場面が多く見られている。

そしてインサイドに入ったSBはこのときにも効果を発揮する。
SBが大外に上がっていた場合、SBがアプローチをかけることができるのは同サイドの大外にボールがあったときのみしかない。なのでたとえば同じ4-3-3でSBが出た時に中央のCBの前を埋めれるのはアンカー1人。この時の守備への切り替えのリスクに関しては4-1-5のミシャシステムでおなじみ。そのためミシャシステムでは当初撤退守備がメインだったし、後期の高い位置でのアプローチをかけた際にはカウンターで失点という場面を何度もみた。
しかしこの3-2-2-3(3-2-5)、もしくは2-3-2-3(2-3-5)ならば中央の危険な場所をアンカーとSBの3人で防ぐことができる。CBが晒されるリスクの高かった1ボランチとは雲泥の違いだ。

高い位置から守備をするということはラインを高くする。ということでマリノスのハイラインに対してこの試合のセレッソははっきりと背後を狙ってきたが、上手くいくこともあったがオフサイドにかかる場面や、ボールが合わない場面もかなりあった。
これはCBの前にアンカーとSBで3ボランチ気味になっているからでもあって、この3人のアプローチとインサイドハーフのプレスバックにより、中盤のエリアではスペースがほとんどない。なので背後を狙うにはその1つ後ろ、最終ライン近くから狙わざるを得ない。
ということは前線との距離が長くなる。
その結果、動き出しのタイミング、裏を狙うタイミングがどうしてもよりシビアになるのでオフサイドにかかる場面も増える。普通に考えてもパスの距離は長いよりも短いほうが通りやすいのは当然だ。
4-4-2への変形
そして、最初のアプローチでボールが奪えないとなると中に入ったSBは元のSBの位置に戻って4-4-2になる。4-3-3なので天野も中盤に戻って4-1-4-1気味になることもあったが、ほとんどの場合は天野は前線に残って4-4-2の形にしていた。
これはセレッソが4-4-2だからで、マッチアップをあわせることでアプローチに行けるようにしていたのかもしれない。
ちなみにこの4-3-3のインサイドハーフが前にでて4-4-2プレッシングは、ヨーロッパでも日本でも今では普通に見られるが、日本で最初にこの仕組みをちゃんと落とし込んでいるチームを見たのは2014年のセレッソだった。

■セレッソが見せた戦い方

マリノスが開幕戦にして戦術をきっちりと落とし込んだチームを見せ、セレッソに対して圧倒する場面も多かった一方で、実はセレッソも立ち上がりから何度もマリノスゴール前に迫り決定機を作っている。
決定機の作り方の1つがマリノスのミスによるもの。
マリノスはCBが開いてビルドアップをするということは先程も書いたが、これでミスをすると決定機に直結するのはベニテスがリバプールを率いていたころからよく見る光景の1つだ。

そしてもう1つは先程も少し触れたが、最終ラインの裏。
セレッソはマリノスがハイライン、ハイプレスであるということは事前に知っていた。
なので背後を狙える福満の起用となっただろうし、立ち上がりから何度も最終ラインの裏を狙っている。
先程のSBがインサイドに入る形の守備時のメリットでも書いたように、CB前に3ボランチ気味の布陣を敷くことでボールの出し手と受け手の距離を広げ背後を狙われにくくする、そしてGKが裏のスペースはケアするという原則をマリノスは持っていた。
それによってセレッソの背後は上手くいかない場面も多かったが、それでも何度かチャンスを作っている。

その中で注目なのが、6分の柿谷の幻のゴールと、21分には山口が飯倉と1対1になった場面。
実はこの2つには共通点がある。
その共通点とは、背後を狙う前に水沼が山中との競り合いに勝ち、ここを起点に背後を取ることができている。
マリノスは3ボランチ気味でカウンターケアを行っているのだが、そこでの1対1に負けてしまったのでそもそもの前提が崩れた形になっている。
セレッソの攻撃はもちろん狙いはあるが、マリノスの再現性があるデザインされた攻撃というよりも、個々の判断が重要視されており再現性はそれほど高くない。
なので前半の45分間でこの2度ぐらいしかなかったが、ここはもう少しこだわって「カウンターでは水沼を山中にぶつける」ことを徹底して良かったんじゃないかとは思う。

あともう1つは杉本がデゲネクとの競り合いでは優位に立てることも多かった。
ここもチャンスになりそうな場面だったといえる。
ただ、杉本とデゲネクのマッチアップは後半に入ると、マリノスは杉本に対しては喜田をあえて当てるようにしたのだろう。喜田と杉本がマッチアップする場面が増えた。この2人だと体格的にも杉本が勝るのでデゲネクよりも優位になるかもしれないが、その後ろでデゲネクがカバーできる分ディフェンスは落ち着くという判断だったのだろう。

そしてもう1つ。
前半はかなり後手後手になっていたディフェンスだったが、後半はそこまで後手を踏む場面は減っている。そうなった要因はブロックのポジショニングを徹底したからだろう。
ブロックが中央に絞る
セレッソの4-4-2はインサイドに入ってきたSBをSHが見る位置にまで絞ってブロックを作る形に徹底するようになった。
31分の天野のFKの後ぐらいからSHが絞る場面が増えたので前半の途中からそうなっていっていたが、後半になるとはっきりと絞って大外のWGはボールが出てからSBがアプローチに行く様になった。
前にも書いたが、遠藤とユン・イルロクのWGはいい選手だが、1対1でどうにもならないという訳ではない。なので外は一旦捨ててしまってボールが出てからということなのだろう。
もちろんそこからのインサイドハーフ突撃は結構やっかいで63分には中町が抜け出して折り返しを天野という形をつくられているが、前半の立ち上がりの様に誰がどこなのかが決まらないという後手を踏む場面自体は少なくなった。
またマリノスのインサイドハーフ突撃も前半から繰り返していたこともあって徐々に回数が減っていったことも守備の安定に繋がったともいえる。

■試合展開

試合としてはマリノスが圧倒して先制点を奪ってから、全体的なペースはマリノスながらもセレッソは追加点を許さない。また時折カウンターなどで決定機を作るも決まらない。
特に55分のロングボールから福満の折り返しを柿谷が落として杉本が狙った場面は絶好の場面だった。
80分〜
試合が残り15分となったころから両チームは一気に動き出す。
まず最初に動いたのはセレッソ。76分に木本と水沼に代えてソウザと高木を投入すると、続けて78分にマリノスは遠藤に代えてイッペ・イシノヅカを投入。さらに80分にはウーゴ・ヴィエイラに代えて伊藤翔を投入する。
セレッソはこの交代で山村が最終ラインに下がり、ソウザはボランチに。また高木は左SHに入り、福満が右に移動。一方のマリノスはそのままのポジションで選手の入れ替わりだった。

マリノスは交代で入った2人はFC東京とのプレシーズンマッチで先発していた選手。一方のセレッソについては、水沼はここまで全試合に先発しているのでということもあるだろう。そしてもう1人のソウザに関しては、投入されると少し興味深い動きを見せていた。
ソウザはもちろんダブルボランチの1人なのでポジションは中央なのだが、ボールを奪うと右SHの様なポジション取りを見せた。
これは右に移動した福満がそれまでの水沼と違って中に入っていくプレーを見せていたこともあるだろうが、試合後のコメントで「監督の意向だった」と言っている様に尹晶煥からの指示によるものである。
これは前半にチャンスを作るポイントとなっていた山中ののところにソウザをぶつけたのかもしれない。
先制点を挙げただけでなく、中に入ってボランチのようなプレーなど攻撃では抜群の存在感を見せていた山中だが、どうしても守備では不安が残る。
そこで個人で外すことに対して抜群の能力を持つソウザをあえて右よりでプレーさせ、山中のところに当てるようにしたのではないだろうか。

そして86分の同点ゴールもこの右サイドのソウザから。
最終的には中澤のクリアミスが柿谷に渡ることとなったが、起点を作ったのは右サイドに開いたソウザからだった。
中澤のクリアミスを柿谷が押し込んで、セレッソがついに1-1の同点に追いつく。
90分〜

同点に追いついたことで勢いに乗ったセレッソはさらに89分に福満からヤン・ドンヒョンに代え前への圧力を強める。
一方のマリノスは90分に中町に代えてダビド・バブンスキーを投入。ここも選手の入れ替えのみ。

右サイドに出てプレーするソウザを中心にセレッソは押し込むものの得点は奪えずこのまま試合終了。
2018年の明治安田生命J1リーグ開幕戦は1-1の引き分けに終わった。

■その他

開幕戦は1-1。昨季と同じ引き分けに終わった。
誤審があったり、チャンスに決めきれなかったりしたので勝ち点を失ったとも言えるが、序盤から内容では圧倒され、さらに終盤まで1点ビハインドの状況から追いついたので、よくおいついたとも言える。
押して個人的にはあれだけ後手を踏みながらも1失点におさえた守備の奮闘は素晴らしかったとも思う。

そして横浜F・マリノスだが、ポステコグルー監督がマンチェスター・シティが見せるサッカーをしようとしているという情報は聞いていた。
そして実際に見てみると、噂に違わぬというか、予想以上というか、思いっきりマンチェスター・シティと同じコンセプトを持つ「デザインされた」チームになっていた。
もちろんここから本物のマンチェスター・シティの様に、次から次へと相手守備陣に穴を作る、「ここを防ぐと別の場所が空く」という無限地獄の様なチームと比べるとまだまだだが、そのコンセプトが初戦にしてこれだけ徹底されているのは素晴らしいと思う。
正直このサッカーをこれから追い続けることができるマリノスサポーターが羨ましいぐらいだ。
このチームがここからどのような進化をみせて、どのような形で完成形に近づいていくのかが敵チームながら楽しみで仕方がない。少なくとも「どうやってチームが強くなっていくのか、イメージが描けなかった」ということは無いかと思う(笑)。

ただ、本文中にも書いたようにこのチームの問題点もいくつかみえた。
その1つが両WG。この試合ではユン・イルロクと遠藤渓太、そしてイッペイ・シノヅカが務めており、いずれもキレのあるいい選手だが、同じシステムだった2015-16シーズンバイエルン・ミュンヘンでのドウグラス・コスタやキングスレー・コマンの様なセレッソのSBが1対1でどうにもならないというわけではなかった。
なので、守り方としては前半途中から見せていたような大外は捨ててインサイドハーフのところから4-4-2で守るという形を90分続けることができれば、そこまで後手を踏むことは無いだろう。そしてそのやり方は、今のセレッソならそれは十分可能だと思う。

もう1つはSBの守備力。
前半から水沼がチャンスを作って、後半はソウザをぶつけたように、インサイドに絞ったSBのところで勝負して勝てばかなりチャンスが作れることもわかった。
ここの勝負で勝つと、カウンターでCBを引き出せる。つまり最も厄介な中澤をゴール前から動かすことが出来るので、得点のチャンスは広がる。前半からの水沼や終盤のソウザはもちろん、今は怪我で離脱しているが清武をぶつけても十分勝算はありそうに見えた。

なので現段階もう1度やればもっとセレッソが勝つチャンスが増えるんじゃないかとは思う。
ただ、ポステコグルー監督もこの試合を経てそれは十分わかったとは思うので、それに対する対策を打ってくるだろうが(笑)。

今後、ハイラインによる飯倉の広いカバーリングエリアや、自陣からつなぐビルドアップでミスが出て勝ち点を失うこともあるだろうが、多くのチームにとってこの攻撃を守りきるのは相当難しいと思うので、マリノスは今季のJリーグで注目のチームといえるのではないだろうか。

あと、尹晶煥監督が就任1年目で2冠と結果を出し、J2ではヴェルディや徳島が劇的にサッカーの内容を改善させたように、チームづくりに時間がかかるというのはウソ。いわゆる「10試合」は逃げだということは改めてわかった(笑)。
もちろんこの形は昨年までのモンバエルツ監督が率いていたチームが持っていた戦術の上で成り立つものであり、ここからさらに細部まで落とし込むには時間はかかるのだろうが、良い監督は短期間でも確実にチームを変えることができるようだ。




10 件のコメント :

  1. いつも楽しく読ませてもらっています。
    思えば、このブログにたどり着いたのも、ペッツァイオリ監督のインサイドハーフ突撃がどういう仕組みになっているのか分からず、色々記事を漁っていたときでした。懐かしい。
    しかし、3223におけるWGの重要性を考えると、齋藤学が移籍してしまったのは、他チームにとっては「助かった」という感じでしょうか。このデザインされた攻撃の中で躍動する齋藤を見てみたかった気もしますが。

    セレッソの躍進を願いながら、今期もブログを楽しみにしています。

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    1. コメントありがとうございます。
      齋藤学はそうですね。密集の川崎よりもこっちの方がよっぽどやりがいもあるし、特徴が活きるだろうになあと僕も思います。

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  2. 分析お疲れ様です。SBが中に絞っているというのは現地でも気づきましたが(とはいえ、最初は山中ボランチ起用かと誤解しました(笑))、ここに組織的な守備の意図もあるとは思いませんでした。一つ質問は、セレッソの守備時ですが。杉本をワントップにしてしまって、柿谷を後ろに下げるという選択はなかったのかということです。そうすれば蛍山村がもう少し動く範囲を広げられ、ボール奪取時に少し落ち着きが見られるかなと思ったのですが(その分、健勇は孤立しますが、一人で三人拘束できるので採算は取れない?)。それとも、今度は喜田がボール再奪取に介入して、効果的ではないやり方になりますか?

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    1. コメントありがとうございます。
      グアルディオラがバイエルン・ミュンヘンの監督時代に左SBのアラバがインサイドに入ってくる形をやりだして話題になったんですが、当時も最初は誰もが攻撃のためだけにやってると思っていました。
      しかし、試合を重ねると実は守備にかなり効いていることがわかってきて、そこでグアルディオラの恐ろしさを感じることになったんですよね。
      柿谷を中盤に落とすのは中盤5枚のセンターをやらせるってことですかね?
      真ん中は流石にしんどいと思いますよ。

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  3. こんばんは。分かりやすい分析ありがとうございます。
    いつも興味深く読ませて頂いています。
    スタジアムでは、相手に縦パスをバンバン通される理由がよく分かりませんでしたが
    そういう事だったのかと腑に落ちました。
    ユン監督は試合後のコメントでいつもメンタルとかミスを減らすとかチャンスに決めきるとかそういう事しか言ってくれませんよね。
    戦術のことはあまり話したがらない監督なのでしょうか。
    そういえば ソウザの「監督の意向だった」というコメントはどこで見ましたか?
    そういう戦術に関わるコメントがたくさん知りたいのですが。

    ユン監督の去年の実績は素晴らしかったですが、中央圧縮&スライド守備からのカウンターとアイデア頼みの攻撃で、どこまでいけるのでしょうかねえ。
    もしサイドに斎藤学とマルティノスがいたら、ボコボコにやられてたかもしれませんし。
    ユンさんはこれから攻撃の形を仕込んでいったりすることも考えているのでしょうか。
    今のサッカーでどこまでいけるのか、また限界が見えてきてしまったときにどう変化を加えることができるのかできないのか、期待と不安でいっぱいの開幕でした。

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    1. コメントありがとうございます。
      確かに尹さんはあんまり戦術的にどうこうって話しはしませんね。
      おそらく特に話す必要はないと考えているのでしょう。

      あと攻撃のデザインを細かく仕込むってことはおそらくしないと思います。
      ただ、プレスの強度は上げたいと思ってるんじゃないかと感じてるので、敵陣からボールを奪いに行くようなプレーは増えるかもしれません。

      ソウザのコメントは本文中にリンクを貼ってるセレッソ公式の方にあります。

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  4. 今年も楽しみにしています。
    マリノスのデザインされたサッカーは本当に衝撃でした。
    J2では去年から面白いチームが増えましたが、J1でもこんなサッカーが見れるようになって今後が楽しみです。

    失点したシーンはマリノスの絶妙な配置にやられましたが、その前に福満が最前線まで飛びだしていたので、4-3のブロックになっていたのも要因の一つかと。
    水沼がユンを捨ててもよかったのかなと思いました。

    あとは決定機を決めてたら、ですかね。

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    1. コメントありがとうございます。
      マリノスのサッカーはポジショニングで優位に立って、相手に繰り返し判断を迫るもの。
      例えば水沼が中に入ってきたらサイドに出すし、何度もやり直す。
      失点シーンはその繰り返しの中でいつか必ずあくボランチの前だったということですね。

      削除
  5. ヴェルディもポジショナルプレイと5レーン理論を取り入れたサッカーをしてます。フォーメーションも4-1-2-3を採用してます。ヴェルディが偽サイドバックをやるかどうかは噂の域を出ませんが、イバンヘッドコーチの経歴を見れば知識は有ると思うので、期待はしてます。

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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      僕も昨年からヴェルディのサッカーにも注目して見ています。

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