2019年5月20日月曜日

5/18 明治安田生命J1リーグ第12節 VS ガンバ大阪 @ パナソニック スタジアム 吹田

スタジアムパナソニック スタジアム 吹田主審福島 孝一郎
入場者数35,861人副審和角 敏之、権田 智久
天候 / 気温 / 湿度曇 / 21.6℃ / 35%第4の審判員岡 宏道
ガンバ大阪G大阪
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • 宮本 恒靖
 
  • 監督
  • ロティーナ
<監督・選手コメント>
ガンバ大阪 宮本恒靖監督
セレッソ大阪 ロティーナ監督

ガンバ大阪 倉田選手、福田選手
セレッソ大阪 清武選手、丸橋選手、木本選手、藤田選手

大阪ダービーとなった明治安田生命J1リーグ第12節。ガンバ大阪は7試合勝利なし、セレッソ大阪は連勝と対象的なチーム状況で敵地パナソニック スタジアム 吹田に乗り込んだセレッソ大阪だったが1-0の敗戦に終わった。

■メンバー

ガンバ大阪の先発メンバーだが、ここまでリーグ戦7試合勝利なし、前節は最下位鳥栖に敗戦と何かを変えなければいけないタイミングだったのは間違いない。
そんな中でなんと先発メンバー5人を変更。キム・ヨングォンは出場停止だが、さらに米倉、オ・ジェソク、今野、遠藤の実績ある4人が外れることに。代わりに入ったのは三浦、高尾、福田、矢島、高江の5人で高尾はJ1リーグ戦デビュー、福田は今季リーグ戦初出場、矢島と高江は今季リーグ戦初先発となる。

一方、セレッソ大阪の先発メンバーだがこちらは前節から2人入れ替え。
大怪我の都倉に代わって高木、U-20日本代表の瀬古に代わって木本が入っている。

■4バックに偽装?

キックオフ直後の両チーム
この試合でガンバは3-1-4-2の布陣を取ってきたのだが、キックオフ時点から数分間の立ち位置は3-1-4-2ではなく倉田がトップ下でアデミウソンが左に入る4-2-3-1だった。
ボール非保持でも最初は4-4-2でセットしていた。小野瀬がちょっと低いポジションまで行くこともあったが、4バックでもガンバではよくある状況だ。
なのでおそらくセレッソは最初ガンバを4バックだと見たんじゃないかと思う。
左上がりの3-4-2-1
そう感じたのはセレッソが最初左上がりの3-4-2-1でビルドアップしようとしていたから。
4-2-3-1、つまり4-4-2でセットする守備であればこの立ち位置でズレを作りやすい。
人について行って問題ないガンバ
がしかし実際の立ち位置は3-1-4-2。4-4-2から3-4-2-1へのポジション移動と同じように動けば成立する形だった。
なのでセレッソは10分までにはこの左上がりの3-4-2-1のビルドアップを行わなくなる。
おそらくここでセレッソは相手の布陣が3-1-4-2だということに気がついたのだろう。
なのでガンバが最初4バックのように振る舞ったことで直接的にわかりやすい効果があったわけではないが。

■食いついた背後

ボランチの1枚が下がる
左上がりの3バック化を止めたセレッソはボール保持/非保持ともに4-4-2で戦うようになる。
5-3-2に対してサイドに2人いることで優位に戦おうという狙いだったんだと思う。
そして相手の2トップに対してはボランチの1人、主に藤田がCBの間に落ちることで対応する。
10分、高木が抜け出す
すると、10分、セレッソがビッグチャンスを迎える。
CBの間に落ちた藤田からキム・ジンヒョンに戻してヨニッチにボールが渡ったところで左インサイドハーフの倉田が食いつく。これをきっかけに福田、菅沼、三浦と同サイドは人を捕まえに行くがヨニッチが狙ったのは三浦の背後。メンデスがフリックしてもよし、メンデスが触れなくても良しという形でこのボールに対して高木が背後に飛び出すと東口と1対1の状況を作った。
この相手が食いついたところで背後を狙うというのはおそらくセレッソが準備してきた形だったのだろう。33分には今度は松田からの対角パスで清武が抜け出しかけている。

高木が抜け出した直後にファン・ウィジョに決定機を迎えられているがこれは単純なミスによるもの。なのでセレッソが意図的に作ったこのチャンス2つのうち1つ、特に最初の高木が迎えた決定機は絶対に決めておきたいものだった。
相手が布陣、選手を入れ替えて挑んでいる試合の立ち上がり。ここで失点すれば大きく崩れる可能性が高い。
がしかし、決められなかったことで簡単ではない試合になっていった。

■セレッソ4-4-2のブロック

セレッソの4-4-2
ガンバの3-1-4-2ボール保持に対してセレッソは普段と同じ中央圧縮の4-4-2でブロックを作る形で対応していた。大外では小野瀬と福田はいるがとりあえずは無視。ボールが出てからスライドで対応する。
3-1-4-2と4-4-2なのでミスマッチは生まれているのだが、セレッソはスペースを守ることでそれをカバーしていた。
なので30分ぐらいまではガンバなブロックの中にボールを入れることができず、ボールを持ってもブロックの外側だけ。何とかサイドでボールを運んだとしてもセレッソのブロックが全体でスライドしてくるので効果的な攻撃にはならないという形だった。

ところが、30分ごろからガンバのボール保持での状況が少しずつ代わっていく。

■5-3-2で迎撃するガンバ

ガンバのボール保持での状況が少しずつ変わっていったのはセレッソのボール保持の終わり、つまりボールを失う形が変わっていったからじゃないかと思っている。
そしてボールを失う形が変わっていったのは、ガンバの守る形が変わっていったからだ。
5-3-2で自陣で待つガンバ
立ち上がりのガンバはアプローチに行く場所を探していた。しかしそれでボールを取れることもほとんど無く、さらに外されてボールを運ばれていたからか、30分ごろからは5-3-2の形で自陣で待つ、そして入った時にそこにアプローチをかけるという形に変わっていた。
そうなると、セレッソはそれまでに比べ簡単にボールを運べなくなった。
以前から何度か書いているが、今のセレッソはボールを取りに来てくれた方が攻めやすい。立ち位置にこだわることで、空いたスペースをオートマチックに狙えるからである。
しかし待たれるとちょっと困る。それはビルドアップで2トップにボールを収めることへの依存度が高いからで、実はそこが現時点でのビルドアップの弱点でもある。
ブルーノ・メンデスはスペースがあれば動きをつけることでボールを収めることができるのだが、相手を背負ってプレーするのはあまり得意ではない。
その結果ブルーノ・メンデスに当てようとするも収まらず、セレッソはボールを失う形が悪くなったのだ。
2トップ脇を使われるようになるセレッソ
そしてこれは、セレッソの2トップはビルドアップの出口になる2トップ脇のスペースに蓋ができなくなることにもつながった。ここに蓋ができなくなるとガンバのWBは高い位置を取ることができる。
さらにガンバはサイドでのボール前進に2トップのうちの1人が流れて加わる形を取っていた。この形はセレッソが2トップ脇に蓋ができていた時は結局そこにボールを届けることはできないのでそれほど問題にはなっていなかったのだが、蓋ができていないとなると話しは変わる。
ガンバは3バックの両サイド(もしくは矢島)とインサイドハーフ、FW、WBの4人の関係で、大外レーン、もしくはその内側レーンを使ってボールを運びだしたのだ。

その結果35分以降には、丸橋が内側に絞りきれなかったり、右サイドでは松田と水沼の立ち位置が入れ替わってしまったり、とセレッソにとっては意図していない形をつくられるシーンが一気に目立つようになる。
前半はガンバがボール保持率で上回るのだが、その多くは30分以降にだったと思われる。

■悪手となった3-4-2-1

後半開始〜
セレッソは後半開始からまずは選手を変えずに3-4-2-1へと布陣を変更。水沼と丸橋がWB、松田が3バックの右、高木と清武がシャドゥに入る。
50分〜
そして50分に高木に代えてソウザを投入。ソウザは左シャドゥに入り、清武が右シャドゥに移動する。
後半開始から3-4-2-1になったセレッソは、前半終盤に比べるとガンバ陣内に攻め込んでいる。
ロングスローを中央でヨニッチが落としてキーパー前に高木が飛び込むという前半にも見せていた形で高木がシュートを放っているし、ソウザが入ってからはソウザを起点にアタッキングサードまで何度もボールを運んでいる。

しかしソウザ投入から5分後の55分。高江からのパスを受けた倉田が放ったシュートがゴールネットを揺らしガンバが先制する。

セレッソが3-4-2-1に変えた理由は前半30分、もしくは35分以降の展開を考えるとそれほど不思議ではない。
2トップの脇を埋められなくなったことでガンバにサイドからボールを運ばれるようになり、4-4-2のブロックが少しずつ動かされていたからで、そうなったのは前線でボールを収められなくなっていたからだ。そんな中で43分に高木がイエローカードを受ける。なのでボールを受けて起点になれるソウザを入れる。そして3バックになることでWBに引っ張られることもなくなる。
ソウザが後半開始からではなく50分だったのはロティーナのいつものやり方である。
FWの脇は埋めることができたが…
ハーフタイムに「後半最初からプレッシャーをかけていこう」と言っているのは、前線が2-1になることで埋められなくなっていたガンバの3バック前に立つ形になるからだろう。
しかしそうなるとセレッソのボランチ脇は空きやすくなる。そしてここにはガンバのインサイドハーフがいる。
実はこの失点シーンの前にもボランチが動かされたところでDF前のバイタルエリアを使われている。
3-4-2-1にしたことでDF前のバイタルエリアが空きやすくなったのだ。

結果論だが、おそらく後半も4-4-2のままなら、前半の35分以降と同様にガンバにボールを持たれただろうが、バイタルエリアを空けることも無く、この失点も無かっただろう。
そしてどうしても気になってしまい、水沼と松田が入れ替わってしまっていた原因の左WBの福田に対しては大外レーンではもっとボールが出てからでも良かった。
というのもガンバはサイドを崩すのにFWの1人も参加させていたからで、サイドにボールが入っても最終的に中央には人をかけることができていなかった。
そして福田はこの試合を通じて積極的なプレーも見せていたとはいえ、縦に出て左足でクロスを入れるという形は最後までほぼ無かった。縦に出て左足でクロスを入れることができる場面でも切り替えして右足に持ち替えたり、右足を使いたいからか中へのカットインを繰り返し行っていた。
ということはサイドに入られてもそこから時間がかかる。人数が少ない上に時間がかかるならヨニッチと木本のCBで中央は十分対応できた可能性が高い。

結果論ではあるが、セレッソにとってはちょっともったいない悪手とも言える変更になってしまった。

■悪手にできなかった3-4-2-1

ビハインドとなったセレッソだが、ここからチャンスが無かったわけではない。
失点直後は攻め込む場面もあったが押し込めていたわけではなかった。
また、右の大外レーンにいることこそ意味のある水沼が斜めに中に入っていってしまい松田が出しどころがなくなり奪われカウンターを受けるという場面もあった。
がしかし、68分をきっかけにセレッソがガンバを押し込む場面が増えるようになる。
68分〜
68分はガンバが高江に代えて食野を投入した時間帯である。
同じタイミングでセレッソは再び4-4-2にしてソウザを前線に移動させたのだが、セレッソが押し込むようになったのはセレッソ自身が4-4-2に代えたことが理由ではなく、ガンバが高江に代えて食野を投入し3-4-2-1にしたこと。
ガンバはこの変更でセレッソにとってかなり嫌な存在だったインサイドハーフがいなくなり、矢島と倉田のダブルボランチに変わったのである。

しかしセレッソはこれを活かすことができなかった。
73分〜
セレッソは70分に藤田に代えて柿谷を投入、ソウザをボランチに落とすのだがそれでもバランスを崩さなかったのはガンバにインサイドハーフがいなくなったことによる影響が大きい。
73分にガンバは倉田に代えて今野を投入する。
81分〜
そしてセレッソは79分に水沼に代えて田中亜土夢を投入。ガンバは81分に矢島に代えて遠藤を投入。

ペナルティエリア内でのプレー数ではガンバの15回に対してセレッソは32回と倍以上を記録。つまりボックス内にまでボールを運ぶことができていたのだが、それを活かすことができずそのまま試合終了。1-0での敗戦となった。

■その他

この試合は3-4-2-1が大きなポイントになったわけだが、後半開始から最初にバイタルエリアを使われるまでの8分間を見ているとこの変更が全く効果が無かったわけではないと思う。
ただし、この形にしたことで隙はできた。そしてその隙を突かれた。
なので結論としてはロティーナの失策だったといえるだろう。
しかしそういうことも起こり得る。何もこの試合で起こることは無いとは思うが、逆に言えば通常のアウェイの様に「勝ち点1でまずまず」ではないこの試合だからこそ起こり得たとも言える。

そう考えると本当に考えるべきはガンバが3-4-2-1に変えた後、20分以上あったがそこでセレッソが攻めきれなかったことじゃないかと思う。

あと、ロティーナの戦い方に対して根本的には肯定的なのだが、本文中にも書いたが少しターゲットに頼りすぎじゃないかとは思っている。



2 件のコメント :

  1. 毎度詳しい解説ありがとうございます。
    ガンバはカウンター気味なのと試合開始からギアがほぼフルだったせいか、プレーの判断・止める蹴るが速いと感じました、この日アクセントとなるべきだったソウザの出来があれでは先制点をとれたとしても追いつかれて勝ち目がなかったなと思います。
    判断の速さについてはプレーオフ時の東京Vを見てると改善の余地はあるのですが、はたして止める蹴るをスピーディに行う技術についてはこれから改善できるのかと疑問に思います。松田が何回かボールを奪われてましたがあれは早く詰められて時間を奪われたことの他に足元の技術のなさも響いているでしょう。このままではホームでガンバと試合してもまた負けるなという印象しか持てません。判断する時間もなく強度がやたらあるのは過去のダービーを見れば想定できるはずです、磐田にやられた東京V時代の試合を経験しているのに、そういうケースを想定して練習してこなかったのかという失望しかありません。
    また、ロティ―ナの指導力に限界を感じる試合でした。と言うのもPOヴェルディ時の前線の動きを鑑みると、終盤出てきた田中のようにボールをはたいた後すぐ動いて相手の守備を動かして味方に時間をつくるなりスペースをつくるなりしなければならないはずなのに前線の選手はそれをやらない、あとアクセントとなるべきソウザが判断と球離れが悪すぎて今までのプレーが改善されていない。ルヴァン戦の西川の守備についても思ったのですが、個々の選手に指導するべきことを指導できていない、もしくは指導しているけど是正できていない。都倉がいない以上、ソウザを前目のポジションで投入すべきだとは自分も思ったのでカードの切り方は肯定できるのですが、指導についてはチームの先行きに不安と不満を感じます。

    蛇足ですが攻撃の組み立てについては個の力に頼らざるをえないと思いますがどうなんでしょう。サッカーキングがJ1の補強を評価する動画ではポジショナルサッカーをやるからには泉澤みたいに1枚以上剥がしてハーフスペースに侵入してクロスを供給できるウインガーが必須だと言ってました。欧州サッカーを見てないので素人意見で失礼ながら、個の力に頼らず攻撃構築できているチームがあるとも思えませんが・・・

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    1. コメントありがとうございます。
      ダービーに負けてしまったのでお気持ちはわかりますが、ちょっとネガティブに捉え過ぎかと。
      あと松田がボールを奪われていたシーンのほとんどは水沼のポジショニングが問題でした。

      それと、攻撃の組み立てについて個の力に頼らざるを得ないというのはどういう意味でしょう?
      書かれておられるように「個の力に頼らず攻撃構築できているチームがあるとも思えない」というのが正解だと思います。
      というか「個の力に全く頼らない」というのがどういうことかよくわからないですしね。

      ポジショナルプレーはボールの位置によりポジショニングが決まるという考え方です。
      そしてその目的は、優位性を作り出す為。
      その優位性とは、数的優位、位置敵優位、質的優位だとされています。
      そして個の力というのは質的優位にあたると思いますので、ポジショナルプレーは個の力を活かすための考え方だということもできます。
      もちろん泉澤が来るなら新たな質的優位が生まれる可能性が大きいので大歓迎ですけどね(笑)。

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