2019年7月8日月曜日

7/6 明治安田生命J1リーグ第18節 VS サンフレッチェ広島 @ エディオンスタジアム広島

スタジアムエディオンスタジアム広島主審西村 雄一
入場者数15,032人副審中井 恒、数原 武志
天候 / 気温 / 湿度晴 / 26.3℃ / 70%第4の審判員西山 貴生
サンフレッチェ広島広島
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • 城福 浩
 
  • 監督
  • ロティーナ

<監督・選手コメント>

サンフレッチェ広島 城福浩監督
セレッソ大阪 ロティーナ監督

サンフレッチェ広島 パトリック選手、佐々木選手、ハイネル選手
セレッソ大阪 水沼選手、瀬古選手、山下選手

2019年の明治安田生命J1リーグ後半戦最初のゲームとなる第18節、敵地エディオンスタジアム広島でのサンフレッチェ広島戦は、前半にセレッソ大阪、後半にサンフレッチェ広島が1点ずつを奪い1-1の引き分けに終わった。

■メンバー

サンフレッチェ広島の先発メンバーは前節より1人のみ入れ替え。7月3日のトレーニングでドウグラス・ヴィエイラが負傷したとのことでベンチ外となり、1トップには第7節以来今季3度目の先発となるパトリックが起用された。

一方セレッソ大阪の先発メンバーは前節と同じ11人。前節先発から外れたデサバトはベンチ外となり、前節はベンチ外だった舩木がベンチ入り。ということでベンチにはボランチがいないので今節もボランチに何かあれば瀬古がポジションを移動することになるのだろう。

■広島を翻弄するセレッソのビルドアップ

立ち上がりからビルドアップで優位性を作ることができるセレッソが試合をコントロールする形となっていた。
セレッソボール保持時のマッチアップ
広島の守備は、ファーストプレス役の1列目の3人、中を閉める2列目の2人、そして5人が並ぶ最終ラインの3列目という5-2-3の状態から始まる。以前はもう少し撤退傾向(5-4-1)にあったが連敗が続いたことで第15節の湘南戦以降はこのような形になっている。
ただ1列目の3はむやみにアプローチにはこない。これはセレッソの前節湘南戦で湘南がプレスに出たところをことごとく外されていたのを見てのことだろう。
左サイドを使ったビルドアップ
これに対してセレッソはまず左サイドが形を変える。丸橋が前に出て清武が内に入る。
これで川辺には2つの選択肢が突きつけられる。中を絞って藤田へのパスコースを消すのか丸橋に付いていくのか。
ついていけば藤田へのパスコースが空く。となると藤田には柴崎がアプローチをかける。しかしその柴崎の背後には清武がいる。柴崎にも2つの選択肢を突きつけている状態になっているのだ。
柴崎が前半からファールを繰り返し、本来なら前半の時点でイエローカード2枚で退場になっていてもおかしくない状態となっていたのはこのためだ。前半33分の足裏を見せた藤田へのタックルの場面は間違いなくイエローカードに相当するファールだったが、まだ前半だからということで主審の西村さんは日和ったと思う。
WB裏を狙う
ならば川辺はついていかない。内を通されるより外の方がまだマシだということであれば、瀬古は丸橋へ。そして丸橋へは最終ラインからハイネルが前にでて捕まえに来る。
となるとこのハイネルの背後にブルーノ・メンデスを走らせそこに丸橋から流し込む。
立ち上がりからセレッソは何度もメンデス、奥埜をここに走らせ起点を作っていた。
右サイドを使うビルドアップ
オートマチックに移動する左に比べると右は1アクション多い。
松田はまず3バックの右のようなポジションを取ったところからスタート。そして水沼も中に入らずサイドに開いたポジションを取り、これで広島の左シャドゥの森島がどう動くかを見ている。森島が松田に来れば右サイドに開く水沼を経由して柏の背後に走る奥埜。来なければ松田は前にでて水沼は中へと移動する。

そして先制点となった19分の水沼のFKは、丸橋にハイネルが出てきたところの裏にブルーノ・メンデスを走らせら形でファールをもらったところから。
セレッソに来てからはほとんど蹴る機会がなかったが、水沼はそれこそ城福氏が監督を勤めていたU-17日本代表の頃や鳥栖時代ぐらいまではフリーキッカーとしてもよく知られる選手だった。

■限定しはめ込む守備

前半のセレッソは守備でも効果的だった。
まずこの試合の広島の1トップはドウグラス・ヴィエイラではなくパトリック。ということで前線でポストプレーをさせるよりも走らせる方が強みを発揮できるのだが、セレッソは2CB+2ボランチはボール保持時にもポジションを動かすことがあまりないのでカウンター対策も出来ている。またむやみに身体をぶつけに行って入れ替わられることもなかったように対パトリックの準備もできていた。
セレッソのボール非保持
そしてボール非保持で4-4-2でセットするセレッソは、いつもの様に2トップは3バックに対してアプローチに行くことはほとんどないが、中央を閉めてサイドにボールを誘導させる。
この時、磐田戦、湘南戦では3バックのサイドの選手にボールが入った時にSHがアプローチにいって一気にスライドという形が多かったのだが、この試合では広島のWBのスタートポジションは比較的低いこともあって自重。特に広島の左、柏のサイドでは柏に入ってからSHがWBに対してアプローチをかけるという形の方が多かった。
ボランチを2トップで抑えサイドチェンジを許さない
そしてサイドにボールが入るとセレッソの守備はサイドに一気にスライドするのだが、ここで見逃せないのがメンデスと奥埜の2トップが広島のボランチのところを必ず捕まえていること。セレッソの4-4-2のブロックはここが徹底されている。
セレッソの守備は片側にスライドし圧縮する。ということは逆サイドは空いている。なので攻撃側はここにボールを出すことができればチャンスである。しかしそういった場面はあまり見られない。
これをさせていないのがこの2トップ。ボランチを捕まえることでボランチ経由のサイドチェンジを阻止しているのだ。となるとサイドを変えるには最終ラインに戻すしか無い。しかし最終ラインに戻すとセレッソの4-4-2のスライドは十分間に合う。その結果サイドを変えたとしても逆サイドでまた同じ状況が生まれるということになっている。

そしてもう1つ。セレッソの守備が安定していたのはセレッソの守備が始まる状況が常に同じような形だったからだった。広島の攻撃は常に自陣でボールを持つところから始まっていた。
こうなっていたのはセレッソがボール保持で常に敵陣までボールを運ぶことが出来ているから。サッカーは攻守がつながっているのだ。

■前から行くことにした広島

先制後はセレッソも少しペースを落としたことで落ち着いた展開となっていたが、トータルで見ればやりたいことが出来ていたセレッソに対し、やりたいことがほとんど出来ていなかった広島という前半。
後半開始〜
後半開始から広島は吉野に代えて稲垣を投入。さらに川辺と柴崎のポジションも入れ替える。
柴崎はカードの問題もあったのだろうが、稲垣は吉野に比べると前への圧力をかけることができる選手。
つまり広島は後半思い切って前からアプローチに行こうという意思が感じられる交代である。

そして実際にセレッソのGKからのビルドアップに対しても前半に比べると前へかける人数を増やしてきた。

ただ、前へ人数をかけるということは後ろが手薄になるということ。
ということで後半の立ち上がりは広島の背後のスペースを狙い始めるセレッソ。
51分にブルーノ・メンデスが抜け出してGKと1対1になった場面は決定的だったがシュートは枠を外れた。

■押し込むことを優先する

がしかし、ここから広島がペースを握っていくことになる。
その場面場面を切り取るとセレッソにとっても想定外の状況を作られているわけではないので「ペースを握られた」というわけではないかもしれないが、トータルで見るとペースは失っていた。

具体的いうと、広島がボール保持でセレッソを押し込み始めた。
サイドチェンジを行いながら、詰まれば攻撃をやり直す。そしてボールを前進させる。
これに対してセレッソの戦い方としては、基本的には相手にボールをもたせる。積極的にガンガン奪いに行くようなことはほとんどしない。
これは出来ないというよりもしない。実際にセレッソがボール保持でそうしているように、ボール非保持側のボールを奪いに来る動きはボール前進のスイッチにもなる。なのでセレッソはあまりボールを奪いに行かず、自陣で4-4-2のブロックを作ってゾーンディフェンスで守る。この精度はかなり高くだからこそのリーグ最小失点であり、この試合も含めて今季ここまでの18試合で前半わずか1失点なのだ。
ただ、ゾーンディフェンスなので相手はボールを保持することはできる。そして押し込むこともできる。
となると、広島はボールを失ったとしても常に「敵陣深い位置」で「広島の選手が敵陣に多数入り込んでいる」という状況を作ることができるのだ。
そして広島は後半は「前から行くこと」にした。その結果セレッソはビルドアップで手こずりボールを保持する時間が少なくなっていく。

■ターゲットに頼るセレッソ

65分〜
この状況を打破しようとセレッソは65分に奥埜に代えて高木を投入する。
この狙いは明らかで高木には縦に走ってもらうことで広島の布陣を間延びさせたかったのだろう。このチームで高木が担っているいつもの役割である。
広島は前に出てくる、ということは背後が空く。立ち上がりのブルーノ・メンデスの決定機のような場面が作れれば最高、もしだめでも高木が縦に行くことで広島の前への圧力を弱めることができればセレッソの中盤が呼吸するスペースが生まれる。

がしかし、その直後の66分、広島はハイネルのクロスをパトリックが頭で合わせてゴール。1-1の同点となる。
この時間帯は押し込まれる時間が続くことでセレッソのボールホルダーへのアプローチは遅れるようにはなっていたものの、ゴール前では広島にスペースを与えておらず最後に守れていないという状態ではなかった。
なので直前の投入も高木だった。
がしかし、広島にはパトリックがいた。キム・ジンヒョンが触れなかったのは痛かったが、この局面でそれぞれが対応を大きく間違えているわけではない。パトリックは「できること」のバリエーションは少ないが、「できること」の強度はかなり高い。
79分〜
ここから77分にセレッソは木本に代えて山下を投入、瀬古がボランチへ移動。そして広島は70分にハイネルに代えて皆川を投入。パトリックと皆川の2トップ、右SBに柏が入る4-4-2へと変更する。
この広島の交代及びシステム変更はここのところパターンとして持っている形で、やもすると「単純に前線に人数を増やすだけ」と言われたりもするかもしれないが、この試合のこの状況であれば最も効果的な手だろう。
広島は押し込み前線の圧力を加え、セレッソはさらに押し込まれボールを持てなくなる。

セレッソがボールを持てなくなるのは守備から攻撃へ、低い位置で4-4-2のブロックを作るゾーンディフェンスからバランスよくポジションを取ってボールを保持する形へとのつなぎが、「ターゲットがボールを収めることができるかどうか」で決まるからだ。
ボール非保持の4-4-2のゾーンディフェンスでのポジショニングから、ボール保持の3バック化して相手の間に立ち位置を取るポジショニングを行うには選手の移動が必要となる。つまり時間が必要となる。押し込まれるとどうしてもポジショニングが崩れるので余計に必要となる。
しかも、広島はボールを失うと前からボールを奪いに来る。ボール保持で押し込んでいるので敵陣には多くの人数がおり、ボールを失ってもすばやくプレッシャーをかけやすい状況になっている。つまりセレッソから時間を奪いやすい状況になっている。
そんな中でセレッソがボール保持の形をつくるための時間を得には「ターゲットがボールを収めることができるかどうか」になっているのだ。

しかし相手もボールが来ることは十分予想できる状況で守備を行うことができるので、ターゲットになる選手が1人でボールを収めて時間を作るというのはかなり難易度が高い。そしてブルーノ・メンデスはDFを背負うプレーは苦手だということも過去の1トップで明らか。なのでセレッソはボールを持てなくなったのだ。

そしてセレッソがボールを持てなくなる、0ではないが回数と時間はかなり減ると広島はその対応もしやすくなる。広島は後半からセレッソのポジショニングに対してマン・ツー・マン気味に人を捕まえに来た。
セレッソも本来なら、マン・ツー・マンで人を捕まえに来られたとしてもローテーションでポジションを移動させることで相手を混乱させるという手は持っている。がしかしそれを繰り出すためには当然ながらある程度の回数は必要。しかしこの状況ではその回数自体が確保できていなかった。

なので広島がボールを持って押し込むという状況が続くことになるのだが、セレッソの守備陣形が崩されていたというわけではなかった。押し込まれてはいるので厳しい時間帯が続いているしペナルティエリア周辺までボールは運ばれているのだが、リトリートして守るという形は取れているのでスペースを空けてしまったりしているわけではなく、そこまで決定機を量産されているわけではなかった。
90分〜
ということで83分に広島は森島に代えて野津田を投入。セレッソは90分に清武に代えて田中亜土夢を投入。
ここから皆川がチャンスを迎え、アディショナルタイムにはカウンターから水沼が、セットプレーからパトリックがチャンスを迎えるがそのまま試合終了。1-1の引き分けで終わった。

■その他

狙い通りの前半、押し込まれる後半、と今のセレッソの良いところと課題が見事に出た90分だった。
試合の流れとしてもどうしても後半の課題の部分に注目が集まることになるかとは思うが、まずビルドアップからボールを運び前半に先制出来ていたのは良かったところだろう。

そして課題となる後半の押し込まれる場面。
そのメカニズムはここまでで説明したつもりなのだが、ポイントはこうなる要因の1つのセレッソの守り方があるということだろう。
セレッソはボールを取りに行くというよりも網を張る。なので対戦相手がその気になれば押し込むことは比較的容易なのだ。現状、攻撃ではボール保持にこだわるが、守備ではボール保持にこだわらない。この2つが同居しているのがセレッソなのである。

それを踏まえてここをどう捉えるか。
最初に言っておくと、別に放置でも構わない。なぜなら構造的にこの状況が前半の立ち上がりから訪れる可能性はかなり低いからである。前半のフレッシュな状態であれば相手がマン・ツー・マン気味で押し込もうとしても、例えば後半立ち上がりのブルーノ・メンデスのチャンスのようなチャンスをセレッソは作ることができるだろう。
なので、こういった状況がおこるのは主に後半。相手がセレッソのやり方に慣れてきて、かつセレッソの運動量が落ちてきた時ほどこの状況を作りやすい。なので時間が遅くなればなるほど作りやすい。
となると、この試合の様にセレッソが前半で先制できるのならば割り切って守るという選択肢もアリだ。
押し込まれた時の試合のコントロールは相手に委ねることになるが、この試合でも結果的にやられたのはパトリックの一発のみ。4-4-2のゾーンディフェンスはそう簡単に崩されていない。
これまで同様、試合の結果は前半に先制できるかどうかが大きな鍵をにぎることとなり、その後は守りきれるかどうかが結果を分けるポイントとなるが、それぞれの精度を高めれば良い。それも1つのやり方だろう。

もし改善しようとするなら大きくわけると2つのやり方が考えられる。
1つは個の力でカバーする方法。簡単に言えば圧倒的にボールが収まるトップの選手を補強するというやり方だ。
おそらく名古屋の風間監督であればこの方法を取るだろう。というか風間監督にはこの方法しか無い。

もう1つは戦い方を調整するという方法だ。
例えば前からボールを奪いに行く形を取り入れ、ブロックを下げない、もしくは下げる回数を減らす。
あそこまで極端にやるかどうかは別にしても、考え方としてはマリノスのハイライン即時奪回の様に守備面でもボール保持につながるやり方を取るということである。

ロティーナはどうするのか。
今のセレッソの、攻撃ではボール保持にこだわり、守備ではボール保持にこだわらないというのは例えばバスケでは当たり前のやり方で、ゴールを奪い合うというスポーツとしては当然の流れである。
がしかし、以前リージョが何かのインタビューで語っていたが、サッカーはボールスポーツの中で数少ないボール保持に制限のないスポーツである。バスケのショットクロックのようないつまでに攻撃を終えなければいけないというルールが無い。
それを踏まえてどういう選択をするのか。やらないのか、どれか1つなのか、それとも少しずつ複合的になのかも含めて今後の選択に注目したい。





2 件のコメント :

  1. いつもありがとうございます。
    質問なのですが、後半に広島のCBから長い縦パスがトップに収まり出してたのは、ブロックが下がりすぎてボールにプレッシャーがかけれないからですか?
    今までは中を閉めててあまり入ってなかった様に思うのですが。広島がポジションややり方を変えたのですか?
    直接勝敗に影響してないですが、見てて嫌な感じがしたので。

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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      返事が遅くなってすいません。
      そうですね理由の1つはブロックが下がることだと思います。
      ボールを失う位置が悪いので相手のビルドアップに対して最初からアプローチをかけられない、さらに間延びにつながってしまうのでしょう。

      削除

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