2019年9月30日月曜日

9/28 明治安田生命J1リーグ第27節 VS ガンバ大阪 @ ヤンマースタジアム長居

スタジアムヤンマースタジアム長居主審荒木 友輔
入場者数36,990人副審林 可人、浜本 祐介
天候 / 気温 / 湿度曇のち晴 / 30℃ / 48%第4の審判員窪田 陽輔
セレッソ大阪C大阪
 
ガンバ大阪G大阪
 
  • 監督
  • ロティーナ
 
  • 監督
  • 宮本 恒靖

<監督・選手コメント>

セレッソ大阪 ロティーナ監督
ガンバ大阪 宮本恒靖監督

セレッソ大阪 ブルーノ・メンデス選手、柿谷選手、奥埜選手、藤田選手、松田選手
ガンバ大阪 遠藤選手、マルケル・スサエタ選手

明治安田生命J1リーグ第27節本拠地ヤンマースタジアム長居で行われたセレッソ大阪対ガンバ大阪、今季2度目の大阪ダービーは3-1でセレッソ大阪が完勝。これでセレッソ大阪はリーグ戦5連勝となり順位もACL圏まであと1歩に迫る4位に上げた。

■メンバー

セレッソ大阪の先発メンバーは前節から1人入れ替え。入れ替わって入ったのは前節はU-22遠征から帰国直後だった瀬古ではなく、リーグ戦では4月20日の第8節以来となるソウザ。そして外れたのはデサバトでスポニチの報道によると前日に首を痛めたとのこと。
ベンチには瀬古、片山、田中亜土夢、鈴木孝司のいつものメンバーに加え、舩木、そして天皇杯でチームに復帰した高木が入っている。
瀬古ではなく木本だったのは天皇杯鳥栖戦を踏まえたものなのだろうか。そしてデサバトの負傷は軽傷であることを祈るばかりだ。

一方、ガンバ大阪の先発メンバーは前節から2人入れ替え。フォーメーションはもちろんリーグ戦7試合ぶりの勝利を挙げた前節と同じ4-4-2だが、小野瀬が累積警告で出場停止となるため、右SHには移籍後初先発となるスサエタを起用。また2トップの一角には前節決勝点を決めた渡邉千真が起用された。
ベンチにはパトリック、アデミウソン、矢島、鈴木雄斗らのいつものメンバーに加え、コンチャを登録。
J3では3試合、ルヴァンカップでは2試合の出場はあるが、トップチームでのリーグ戦出場はまだ0。ベンチ入りとしては22節の広島戦、23節の磐田戦に続いて3試合目となる。

■セレッソボール非保持のベース

ガンバが前々節マリノス戦の後半から4-4-2に変えたことでフォーメーションとしては4-4-2同士の対戦となったこの試合だが、フォーメーションがただ同じというだけで両チームの考え方は根本部分から全く異なる。
セレッソのボール非保持
まずセレッソのボール非保持の考え方から。
セレッソは「4-4-2のブロックをつくって守る」や「中央を閉める」とよく言われ、実際にこれまでここでも書いてきた。せっかくなので今回これをもう少し具体的に書くと、セレッソはピッチ内で守るべき場所、気をつけるべき場所に優先順位を付けているということである。
最も相手を自由にプレーさせたくない場所、優先度が最も高いのはDFラインの裏。ここで自由を与えてしまうことが失点の確率が最も高くなるので当然といえば当然だろう。ここで自由を与えないためにDFラインの上げ下げを行っている。
次に優先順位が高いのはDFラインとMFのラインの間、つまり4-4-2の4-4の間。DFラインの裏に近い場所であり、ここを使われることがDFラインの背後を使われることに近づくからである。
その次は2トップとMFラインの間、つまり4-4-2の4-2の間で、ここは4-4の間に近づくからである。

2番目と3番目の4-4、4-2の間で自由を与えないために行っているのが4-4-2の間を狭くすること。コンパクトな布陣というやつだ。そして最前線の2トップは相手のCBがボールを持った時に4-2の間にいるボランチへのパスコースを消す。簡単に言えばこんなところだろう。

「優先順位を高い場所」があるということは、これ以外の場所は優先順位は低い。
なのでセレッソはこの優先しているエリアの外にボールがある時はむやみにボールを取りに行かない。つまり相手にボールをもたせる。
今季のセレッソはリーグ最少失点なので堅守ではあるのだが、こうやって取りに行かない、優先順位の低い場所があるので、堅守=ボール奪取と考える人にとっては少しイメージが異なるかもしれない。

ここまでを踏まえると、セレッソは中央にボールを入れられなければOK。むしろ相手にはサイドでボールを持つように仕向けている。
なので、この試合で最終的にガンバが記録したアタッキングサイド比率、左サイド42%、中央15%、右サイド43%は、セレッソがこの試合を狙い通りに進めたことを表している。

■ガンバのボール保持とセレッソの非保持

サイドに圧縮するセレッソ
ということでガンバはサイドでボールを持つ、ボールを運ぶという形になっていた。
するとセレッソは4-4-2のブロックをボールサイドにスライド。ボールと逆サイドのSHやSBはピッチのほぼ中央にいるくらい。つまりセレッソはサイドにボールを出させることで通常のピッチの横幅68mではなく半分の34mを守る。先程のコンパクトな布陣の横バージョンだ。
片方のサイドに寄せるということはもう片方には当然ながらスペースがあるのでリスクにもなるのだが、それを防ぐためにセレッソは逆サイドに素早くボールを出させないようにする。具体的にはボランチからのサイドチェンジをさせないようにする。時間がかかるサイドチェンジ、CBを経由するボールに関しては全体のスライドが間に合うのでやらせても構わない。
なので先程の「堅守」の正体としてはボールを奪うというよりも、ボールをゴールに近づけさせないというイメージである。

そしてこの試合ではこのサイドに押し込んでボールをゴールに近づけさせない守備がより効果的だった。
というのもガンバはサイドから攻め込む場合でも横幅を使った攻撃はほとんどないからだ。
これは宮本監督の戦い方というよりも昔からガンバはそうなので「これがチームのスタイルだ」というぐらいの考えなのだろう。
この試合ではセレッソの守備ブロックがほぼ半分に集めてきているのに、ガンバは通常で同サイドにSB、SH、宇佐美、ボールサイドのボランチの4人。それでも攻めきれないのでさらに逆サイドのボランチも加えて5人、(なんだったら逆サイドのSHも加えて6人)を集めてきた。ここでショートパスでのコンビネーションで攻め込む、いわゆるアイデアを全面に押し出したひらめきで攻め込む流動的なサッカーである。
しかし、この狭いエリアにそれだけ人数をかけたところで残念ながらそこにはシュートを打つスペースなんて存在しない。
立ち上がりはソウザが久々のリーグ戦ということもあってか、
・SBが出た後のSBとCBの間のスペースををボランチの1人が埋める(ハーフスペースを埋める)
・もう1人のボランチがCBの前を埋める(マイナスの折返しのスペースを埋める)
というサイドで攻め込まれた時にセレッソ守備ブロックでの約束事が曖昧になってしまうこともあり、右サイドの深い位置からクロスを入れられる場面もあったが、そもそもガンバはサイドに人数を書けすぎているので中央で合わせる人間が渡邉千真1人だけしかおらず、またソウザを含めたセレッソの守備ブロックも時間の経過と共に守備ブロックでの約束事が守られていくようになったことで、クロスを入れたとしても全くチャンスにはつながらなかった。
この試合でガンバ大阪は21本のクロスを入れているが味方に渡ったのはわずか2本、一方のセレッソがクロス12本中7本を成功させているのと対象的である。

こうした状況であれば、例えば幅を使ったり、背後を狙うことで奥行きを作ったりしてどうにかしてブロックを広げよう、動かそうとする考え方もあるのだが、ガンバの場合はあくまで人数をかけて密集+ショートパス+流動的なコンビネーションというスタイルを全面に押し出すので、例えば宇佐美がSBの裏に斜めに狙って奥行きをとかという動きはなく、行うのは下がってきてボールを受けてそこから密集にドリブルで突っ込むかワンツーで突っ込むかぐらい。なのでシュート本数は増えるのだが、そのほとんどがミドルシュート。そのミドルシュートもシュートコースは消されているし、キム・ジンヒョンも準備できているので、決まる可能性はほぼ無し。
セレッソがブロックの外側までボールを奪いに行かないのでガンバはボールを持つことはできたが、チャンスは全く作れていなかった。

■ガンバのボール非保持とセレッソのボール保持

次はガンバがボールを失った時、セレッソがボールを保持している時について。
ガンバはボールを失った時は基本的に敵陣からアプローチに行く。
これは敵陣でボールを奪い返すことができればゴールも近いしチャンスになるという「やりたいこと」という部分も半分あるが、ボール保持でサイドに人数を集めて流動的に動いている→そこでボールを失うとその瞬間にバランスのとれた守備陣形である4-4-2の形からも崩れているので4-4-2に戻す時間を作るためには敵陣からアプローチをかけて選手を移動する時間を作らざるを得ないという「やらなければいけないこと」という部分も半分ある。
もしここでアプローチに行くことができなければどうなるかというのが5分のシーン。
5分のシーン
ここは藤春のスローインを宇佐美がヘディングで流そうとするもミスになって藤田がボールを拾ったところから始まっており、藤田に対して井手口がアプローチに行くも少し遅れる。なので藤田はターンして前を向くところから一気に局面が動き出すのだが、藤田はすぐさま柿谷へパス、そのボールを受けた柿谷が相手ゴールに向かってドリブルで仕掛けていく。最後はパスが少しずれメンデスの折返しがそのままゴールラインを割ってしまったが、セレッソがガンバのペナルティエリア内に侵入した場面である。

この場面は結果的に最初の「藤田が柿谷へ直接パスを出せたのが大きい」というのもある意味1つのポイントだが、そもそもセレッソの戦い方だと藤田に対するガンバのアプローチが遅れるなら藤田は当たり前の様に素早い判断で柿谷へパスを出すことができるようになっている。
なぜなら、セレッソは藤田がボールを持った時に誰がどこにポジションを取るのかというのが決まっているからで、藤田は前を向くことができればその時点で少なくとも3つの選択肢があり、その3つの選択肢の中から優先順位の高い順にどれにするかを選択するだけだからだ。
ちなみに3つの選択肢とは、最優先が2トップが狙う相手DFの背後、次に柿谷、その次に丸橋。その中から最優先の背後に走るメンデスはガンバのCB2人の準備もできていたので、次の選択肢である柿谷を選んだ。

少し話しは逸れるが、セレッソの左SHはここだけが他とは少し異なり自由、というかオシム流にいうならエキストラキッカーのポジションになっている。
他のポジションは基本的に役割やプレーの優先順位というのが決まっていて、その役割が集まることでチームとしての約束事が出来上がり、先程の藤田の様に選択肢が与えられ、その中からそれぞれの選手が選択するという流れになっているのだが、この左SHが前を向いてドリブルし始めた時だけはこの選手が自分の判断で何をしても良い。いわば王様としてプレーしてもよい。だからこそここで清武がプレーしていたし、清武が離脱した後は柿谷が起用されている。
ただし自由を得るためにはチームの一員として正しいポジションを取らなければならない。例えばボールが欲しかったとしても、下がって受けに来てはいけない。
なぜなら下がってきてしまうと、チーム全体が正しいポジションを取ることでできるルールが破綻してしまうからである。
なのでもしかすると、左SHでプレーする清武や柿谷にとって、自分が理想とする、思っているよりもボールを受ける回数は少なくなっているかもしれない。しかし左SHが決められたポジションを取ることができれば、チームとしてそこまでボールを届けてくれて、チームとしてそこからドリブルできるように、自由にプレーできるようにお膳立てをしてくれる。それを踏まえて柿谷のパフォーマンスが試合を重ねるごとに上がっていること、そして試合後のコメント読むとまた少し印象が変わるのではないだろうか。
先制点につながった7分のシーン
話しを戻すと、次が7分のシーン。
これが最終的に8分の先制ゴールに繋がるのだが、まず最初にガンバがボールを失うとすぐにボールホルダーにプレッシャーをかけセレッソに一気にボールを運ばせなかった。なのでガンバはまずきちんと4-4-2の形に戻すことができている。
そして改めてセレッソのボール保持にアプローチをかけたがセレッソはGKを使って逆サイドに展開。ヨニッチにボールが渡ったところでもう1度宇佐美がヨニッチにアプローチをかけ、下がってきた藤田に対しても渡邉千真がついていった。
なのでヨニッチはGKに戻してもう一度逆サイドへ展開してやり直すという選択肢があったが、おそらくガンバのボランチが出てきてるということもわかってたし、近づいてきた松田という選択肢があること、さらには最悪ボールを捨てても良いというのもあったので前を向く。
すると水沼が少し下がった動きに対して藤春が引っ張られた。
その瞬間奥埜が藤春の裏へ斜めのスプリント。そしてヨニッチがそこにボールを出す。
これはSBの裏を取る動きであり相手のDFラインを下げ奥行きを作るの代表的な形の1つで、セレッソも普段からよくやっている形。
なのでもしかするとヨニッチのパスは苦し紛れに見えたかもしれないが、ヨニッチは奥埜を見ていたし、奥埜は藤春を見ていた。そして仮に藤春が水沼に引っ張られなかったらヨニッチには水沼という選択肢もあり、松田を使って逆サイドの柿谷へと持っていくという形もある。さらに最悪はボールを捨てればいい。なので苦し紛れでもなんでもなく、セレッソが狙っている形である。
先制点の直前
奥埜がSBの裏で起点を作ることに成功すると、そこに対して慌てて藤春が戻るも水沼に戻す。
そして水沼からメンデスを経由してボールはエクストラキッカーである柿谷の下へ。
プレビューでも書いたがセレッソはここにボールを届けることができた時点でチャンスが確定。
奥埜は藤春が水沼に引っ張られてできた裏に斜めに走ったことで起点を作っているのでガンバのDFラインの残り3枚はサイドに引っ張られているので柿谷は前向きの状態で右SBの高尾と1対1。
その外側に上がってきた丸橋に対して対応できる選手はおらず、折返しをメンデスがヘディングで合わせた。

ガンバ側からみると、最後のメンデスがフリーだったのは三浦とキム・ヨングォンで何とかできなかったのかという部分もあるかもしれないが、それ以上にかなり左右に振られているのでしょうがないかなという場面ではある。というかそもそもその手前で柿谷にボールが渡った瞬間にガンバは2枚のボランチの背後、つまりセレッソでいうところの2番目に守る優先順位の高い4-4の間でフリーで前向きにボールを持たれてしまっているのが大きな問題だ。
そして4-4の間にボールが渡ったのは奥埜の斜めの動きが起点である。なのでこの奥埜に対して例えばキム・ヨングォンが1対1でバシッと止めれば良いんじゃないかという見方もあるだろう。
ただ…確かにここで止めることができればもちろんいいのだけども、この位置で、さらに入れ替わられるリスクもある中、それをCBに求めるのは流石に可愛そう。というか入れ替わられるリスクを考える必要も無いほど確実にここで1対1で潰せるのならヨーロッパのクラブが放っておくはずがない。
じゃあ藤春が水沼に引っ張られたこと、さらにいえば全体で前からアプローチにいったことが原因?と遡っていくことになるかと思うが、答えとしてはその全部だと思う。
セレッソには相手がボールを奪いにきたところで裏返すビルドアップがある。なのでボールを取りに来てくれるのはある意味歓迎だ。
そしてガンバはボールを取りに来たが、セレッソの精度の方が上回った。シンプルにそんな得点だったと思う。

そもそもなぜガンバが前からボールを取りに行くのか。その理由はここまでで触れた内容以外にも3バックから4バックに変えたことの影響もあるだろう。3バックから4バック、つまりCBが1人減ることになるのでできるだけラインを上げたい。しかしその結果でセレッソに裏返された。そしてCBが3枚いればメンデスをフリーにしていなかったかもしれない。
ただ、プレビューでも書いたように最後の3バックだったマリノス戦の前半は引いて後ろで守る以外何もできていなかったという流れを思い返すと、宮本監督にとっても悩ましいところではないだろうか。

そして8分の先制点の3分後、11分にセレッソが決めた追加点もその起点となったのは奥埜が藤春を引っ張り出してその背後に斜めに走ったブルーノ・メンデスがファールを受けて得たFKから。
ソウザのFKがヨニッチにドンピシャで合い2-0とセレッソがリードを広げた。
このときのガンバの守備、ゾーンで守るセットプレーの守備に対して間が広いとか色々言われてる意見をツイッターで見たが、その切り取り方は少し可愛そう。サイドからのFKに対して壁1枚、ラインで6枚、さらにその前に2-1という並び自体はFKの位置から考えてもそんなにおかしいものではない。
しかし、ヨニッチにフリーで飛び込まれてしまった対応は残念なものだった。
そしてこの場面でより責任があったのはニアでメンデスに引っ張られた三浦ではなく、その後ろのキム・ヨングォンじゃないかと思う。
ゾーンのセットプレーの守備ではそれぞれの選手が対応するのは自分の前のスペース。なので三浦の後ろ、キム・ヨングォンの前ならキム・ヨングォンが見なきゃいけない。

ということでセレッソが2-0で前半を折り返すことになる。
こうなったのはセレッソが早い時間帯で2点取れたこともあるが、おそらくこれだけ早い時間帯に点が取れなかったとしてもいつかはセレッソが先制していただろうと思わせるほど両チームの内容には差があった。

ちなみに、セレッソも23分に前半で1度だけボランチ2枚の背後で渡邉千真にボールを受けられるという場面があった。しかしこの時松田が素早い判断で自らのポジションを捨てて執拗にアプローチ。その結果渡邉千真は最終ラインにボールを戻さざるを得なかった。
この松田のプレーは、それほど目立つプレーではなかったが、チームの成熟度と松田のクオリティの高さを表す素晴らしいプレーだったと思う。

■動けなかった宮本監督

前半で2-0というスコアは当然ながらガンバにとってはかなり苦しい状況。
なのでガンバは後半開始から選手交代もあるかな?と思った方も多かったんじゃないかと思うし、僕もその可能性はあるかと思った。ベンチにはパトリック、アデミウソンもいる。
しかしガンバは交代をしなかった。それよりも正確にいうとまだできなかったというところだろう。

交代できなかったのは、パトリック、アデミウソンを投入すると、FW、SHと入れ替える形になるからだろう。
対象となるのはFWだと渡邉千真、SHだと倉田。ここまで見せてきたプレーのクオリティを考えるとスサエタは残したいところだ。
しかしスサエタは加入後初先発なのでどこまでプレーできるかは不透明。
先に交代枠2つを使ってしまうと残り1枠。何かあった時に対応できない。

こうしてガンバは選手の入れ替えは行わなかったが、戦い方には若干の修正は見られた。目立ったのは宇佐美が背後に飛び出すプレー。
しかしセレッソも十分できる範疇なので徐々に前半同様の、ガンバはボールを持つが…という展開へとなっていく。

■試合を決めた3点目

56分、柿谷のクロスに水沼が飛び込みセレッソが3点目を奪う。
この攻撃のスタート地点は、ガンバが左サイド(セレッソの右サイド)で人数をかけて攻撃していたボールを奪ったところで、メンデスは一気に逆サイドの丸橋へパスを出す。
メンデスが素早い判断で丸橋へのパスを出せるのは、セレッソはここに柿谷と丸橋が出ていくことが決まっているから。そしてガンバは同サイドに人数をかけて流動的に攻撃しようとするので丸橋の周りには広大なスペースがあり一気にハーフウェイラインまでボールを運ぶ。
3点目につながったプレー
するとこの丸橋に対応したのは右SBの高尾、SBにSBが出てくるということはSBとCBの間にはスペースがある。先程のSBを引っ張り出すという状況が作れていることになる。
このSBとCBの間には井手口も懸命に戻っていたがセレッソもメンデスだけではなく柿谷もいる。
そんな中で丸橋が選択したのはよりゴールに近いメンデス。
このパスは少しずれてしまったので一旦は三浦に奪われるが、基本的にはサイドが入れ替わっただけでここまでの2点を奪ったのと同じ形である。

そしてメンデスがボールを奪い返すと、それを拾った柿谷が上手いコントロールからファーサイドにクロス。
このクロスに対して大外から飛び込んだ水沼が藤春の前でボレーで合わせた。

この場面は藤春が前に入られているのだが、おそらく藤春は水沼が見えていなかったと思う。そして柿谷が入れたクロスは1点目の丸橋のクロスといいセレッソはCBの頭を越えるクロスを狙っていたのだろう。
58分〜
3-0となりガンバも待っている場合ではないということで58分にパトリックとアデミウソンを投入。下がったのは予想通り渡邉千真と倉田。

ただ、この交代は選手が入れ替わっただけで特に何か戦い方の変化があるわけではない。
ガンバは選手の個性を並べてその組み合わせで攻撃を作っているので、選手が入れ替われば細かい部分では変わってくるのだが根本的には同じ。それよりもむしろ前線が入れ替わったことでガンバの前線からの守備はなくなり、セレッソが楽にボールを持てるようになった。
この試合で宇佐美とコンビを組んだのはパトリックではなく渡邉千真だったのはこの辺りの懸念が宮本監督にもあったからだろう。パトリックは自分がボールを取れると思ったときの守備はかなり頑張るが、チームとしての守備はあまり上手くないのは多くの人が知るところである。

なのでここからソウザがサイドチェンジを連発。
セレッソはここから追加点を奪うことができなかったが、決まってもおかしくないチャンスは何度も作っていた。
76分〜
そして70分にセレッソは柿谷に代えて田中亜土夢、ガンバは76分に藤春に代えてリーグ戦デビューとなるコンチャを投入する。
コンチャ投入後のガンバ
ガンバはこの交代でコンチャと高尾を最初から高い位置に張らせて何とかしようということだったようだが、そうするとビルドアップでサイドへの出しどころがなくなってしまったので、遠藤と井手口の両方が下がる、さらにビルドアップの出口になろうとスサエタが下がるという形になってしまい、何のことやらわからない状態になってしまっていた。
スサエタは前半は背後、後半はサイドで幅、そして後半の終盤はビルドアップの出口にとおそらく個人の判断で様々な役割をやっており、さらにそれが全て一定以上の水準なので、選手としてのクオリティの高さは十分感じさせたが、チームの中でスサエタが何をするのかということが整備されていないのでそのクオリティが活きている感じではなかった。
もし遠藤の様に自由を与えてフリーマン的に使うということであれば、もっと試合を重ねる必要があるだろう。
92分〜
セレッソは84分に奥埜に代えて高木を投入。
アディショナルタイムの90+2分にアデミウソンの個人技から1点を返される(記録はオウンゴール)も直後に水沼に代えて片山を投入し試合をクローズ。
3-1で試合終了となり、2012年3月以来の大阪ダービー勝利でリーグ戦5連勝。順位も首位と勝ち点差7となる4位にまで上げた。

■その他

完勝だった。これまでもここ数年はチームとしてのクオリティは上回っていたのだが、年に2回しか無い戦いではそれ以外の要素で敗れていた。
しかし今回はそのクオリティの差を結果につなげることができた。そういう試合だったと思う。
例えば前回の対戦からの流れを見ても、ガンバは3バックから4バックと変え、選手も入れ替わっているがチームとしての積み上げができているとは言えない状態。
一方でセレッソは着実に、一歩ずつつみあげてきた。
それがこの試合の差につながったのだろう。

ガンバはこれで14位。プレーオフ圏の16位鳥栖との勝ち点差は3、17位松本との勝ち点差は6。残り7試合で6差なのでとても安全圏とは言えない。またこのダービーの敗戦はかなりショッキングなものだっただろう。
ただ、セレッソの戦い方は他とは異なる特殊なものだし、ガンバの選手個々の能力は圧倒的。普通に考えるとそこまで落ちる可能性は低いと思う。
なのでこの試合の結果を受けて考えすぎない、むしろ変にいじらない方が良いんじゃないかとも思う。

そしてセレッソは、他の上位チームが軒並み勝ち点を落としたので4位。さらに残り7試合で首位FC東京との勝ち点差は7となった。
東京ラグビーワールドカップの影響で残り7試合中5試合がアウェイゲームということを考えると、次節で2位鹿島に勝利することができれば…
思わぬところでワンチャン出てきた。
けどあくまで、Partid a Partid。




2 件のコメント :

  1. いつもより詳しい解説ありがとうございます。
    勝てないんだろうなとか言ってすみませんでしたという完勝でした。

    質問ですが、3DF+2ボランチビルドアップで片残りを松田に担わせて丸橋に担わせないのは松田にできて丸橋にできない仕事や能力があるのか、それとも、今回解説されたように左SHを好きに仕事させるために左SBをSHのフォローをしやすい所に位置させて片残りできないのでしょうか?
    松田や丸橋が累積リーチで控えSBが力不足だと思うので優勝は厳しいのではないかと、ただACL出場は十分ありえるので、半年でいいからSBとかウインガーとかレンタルしてくれないかと思います。

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    返信
    1. コメントありがとうございます。
      右上げの片上げ3バックにしないのは左利きのサイドプレーヤーが丸橋しかいないからじゃないですかね。
      松田残りの左上げ片上げ3バックの時は水沼が右WBになってますし。
      残り7試合で勝ち点7差の4位なのでもちろん優勝は厳しいと思いますよ。
      普通にFC東京、鹿島が有利なのは当然ですから。

      削除

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