2020年1月6日月曜日

セレッソ大阪 2019年シーズンレビュー vol.1


シーズン終了から1ヶ月ほど。少し時間が経過してしまったが今回も2019年のシーズンを振り返る企画をやろうと思う。
まず第1回は2019年シーズンの総括から。


■18勝5分11敗 勝ち点59 39得点25失点

2019年の明治安田生命J1リーグ最終成績は18勝5分11敗 勝ち点59 39得点25失点で5位。
ルヴァンカップはプレーオフステージ敗退。天皇杯はラウンド16敗退。
第9節終了時点で2勝2分5敗だったことを考えると、そこからの25試合の16勝3分6敗という結果は見事だ。この勝ち点ペースは優勝したマリノスに匹敵する。

この成績につながった直接的な要因は失点数にあるといえる。
25失点は今季のリーグ最小失点。さらには2008年の大分の24失点に次ぎ、2011年の仙台と並びJリーグ史上2番目タイに少ない失点数である。
そして、さらに特筆すべきは1年間34試合で前半に喫した失点がわずか4という驚異的な数字だ。
近年では2017年に川崎が7失点という特筆すべき数字を記録したが、それよりもさらに3点も少ない。
これまでの最少記録は、リーグ戦が年間30試合(現在は34試合)だった2000年に鹿島が記録した6失点だったが、それよりもさらに少ないJリーグ史上最少失点(前半)を記録したのだ。
この記録は今後破られることがあるのだろうかというほどの驚異的な数字である。

歴代前半失点数ランキング(1999年〜)
4失点:C大阪(2019)
6失点:鹿島※(2000)
7失点:磐田※(2002)川崎(2017)
8失点:広島※(1999)鳥栖(2014)
9失点:鹿島(2008)東京(2018)東京(2019)
※1999〜2004は年間30試合
2005年〜は年間34試合

■全く新しいサッカーに取り組んだ2019年

今季のセレッソはリーグ最少失点数で表される「堅守」というキーワードで括られることも多いかと思うが、シーズンを通じてボール支配率がリーグ7位の51.0%を記録しているように、なんとなくイメージするようないわゆる守備的なサッカーをしていたわけではない。
かといって、歴代前半失点数ランキングで上位にいる2017年の川崎の様に、ボールを保持し失ったら即時奪回というやり方をとっていたわけでもない。
今季の成績はロティーナ監督が持ち込んだ、これまでのセレッソにはなかった、全く新しいサッカーがもたらせたものだった。新しいサッカーを徐々に身につけていき、第10節にあげた勝利をきっかけにそれ以降優勝チームに匹敵する勝ち点獲得ペースとなっていった。

そんなロティーナ監督が持ち込んだサッカーはこれまでセレッソが行ってきたサッカーとは全く違っていた。
もちろんこれまでのサッカーにも、一般的に攻撃的と言われるものや守備的と言われるもの、ロングボールを多用するものやショートパスを多用するもの、3シャドゥ、縦に速い攻撃など様々な特徴があり、それぞれに違いはあった。しかし、ロティーナ監督が持ち込んだ差はそれとは全く別次元。
言うならばこれまで行っていたサッカーは「局面」で勝負するもので、これまでの違いはその「局面での勝負の仕方の違い」に過ぎなかった。しかしロティーナ監督のサッカーは「局面」よりも1つ高いところからサッカーを捉えた「盤面」で勝負をしようとするものだったのだ。

ここでいう「局面」とは「得点の局面」や「失点の局面」などサッカーの試合90分間の中で起こる場面のことで、「局面で勝負する」というのは、得点を奪うために、失点をしないために、それぞれどういったプレーを行うかというもの。
それに対し「盤面」とは、サッカーの試合90分間全体のことで、「盤面で勝負する」というのは90分間を終えた時に相手よりも上回るにはその90分間をどの様に過ごすかということである。

つまりこれまでとはサッカーの試合に対するアプローチ自体が異なっていたのだ。

このロティーナ監督が持ち込んだサッカーについては、今後のまとめでさらに掘り下げていこうと思う。

■1年間のアドバンテージ

2019年はJリーグの歴史において、後に振り返った時に分岐点となる可能性があるシーズンだった。

ここ数年、ヨーロッパの考え方を踏まえたサッカーをするチームを洋式とし、従来のスタイルを和式とした「和式対洋式」の構図でサッカーが語られる事が増えているが、この構図は、やもすれば和式=古いもの=悪いもの、洋式=新しいもの=正しいものといった捉え方につながりかねない危険性もあると感じていたので個人的にはあまり好んでは使ってこなかった。

ただ、そんなヨーロッパの考え方を踏まえたサッカーをするチームはこれまでのJリーグにはなかった「新しい考え方」を持ち込んだことは間違いない。
そしてそんな「新しい考え方」を持ったチームの先駆者であるマリノスがリーグ戦では川崎の3連覇を阻止し、紆余曲折がありながらもヨーロッパの一線級の選手をかき集めることで「新しい考え方」を身に着けつつある神戸が天皇杯決勝で鹿島を下したのだ。

これから右に倣えですべてのチームが同じ方向に進むことは無いだろうが、積極的に取り入れようとするのか、少しずつ取り入れようとするのか、あえて独自路線を歩もうとするのか、など各チームはどのようなアプローチを取るのかの決断に迫られることになるだろう。

そんな中でセレッソはこのヨーロッパの考え方を踏まえたサッカーを2019年からガッツリ取り組み、さらに手応えを感じるところまで到達することができた。
2018年の中盤以降のチームの崩れ方や、シーズンの終え方、オフシーズン、さらにはロティーナ監督を招聘するにあたっての大熊清氏の発言などから察すると、クラブは計画的にそちらの方向に舵を切ったわけではなく、新しい監督を求めたクラブとステップアップを求めたロティーナの思惑が偶然一致したというだけだろう。
もう1年遅いと争奪戦だったはずなので、2019年シーズン開幕前にJ1で監督を探していたのがセレッソと鳥栖の2チームだけだったという状況は本当にラッキーだった(2019年の開幕を新監督で迎えたのはこの2チームのみ)。

そしてこの偶然により「2020年の進むべき方向性は既に決まっており、土台作りも既に出来ている」という1年間のアドバンテージを得ることができたことは本当に大きい。

あとはクラブが2018年と同じ間違いを犯さないこと。2020年シーズンから新体制となるチーム統括部門にはチームをサポートすることを徹底してほしいと思う。

1 件のコメント :

  1. はじめまして。
    サッカーを深く見てきていなかったので、このブログで9節まで何度も折れかけた心を支えていただきました。
    大変勉強になり、これからも参考にさせていただきます。

    選手の補強もですが、サポート面の強化もされてるようですね。フィジカルコーチや分析力のある方をひっぱってきているみたいで。
    去年、今年と、セレッソに確固たる土台が築かれつつあるのが楽しくて仕方ありません。

    引き続き、19年総括と20年の展望コラムを楽しみにしています。

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