2019年1月13日日曜日

セレッソ大阪 2018年シーズンレビュー vol.2

前回よりかなりの時間が経過してしまったが、今回はセレッソ大阪 2018年シーズンレビュー vol.2としてこの2年間を尹晶煥がこだわらなかったボール保持の観点から振り返ってみる。


■ボール保持にこだわらないサッカー


1年目はカップ戦2冠とリーグ3位、2年目はリーグ戦7位という成績で幕を下ろすこととなった尹晶煥体制。前回書いたボール保持率について言うなら、ベースとなっていたのはボール保持にこだわらないサッカーだった。

間違えてはいけないのは、決して「ボールを持たない」のではなく「ボール保持にこだわらない」ということ。なのでボール保持が50%を切る試合もあれば、50%を超える試合もあり、50%を超えた試合でも勝つ試合もあれば負ける試合もあある。
2017年はシーズンで喫した9敗のうち50%以下が5敗で50%以上が4敗と拮抗していた。
ただ、2018年はシーズンで喫した10敗のうちボール保持率が50%以下だった試合は3敗、50%以上だった試合が7敗と差が出ている。
これはチーム全体として、中断期間以降にボール保持率を高めるような戦い方を取ったからだろう。中断期間前の2敗は50%未満・50%以上が1試合ずつだったが、中断期間以降の8敗は50%未満が2敗、50%以上が6敗と差が生まれている。

ボール保持に徹底的にこだわり、2011年、2013年のU-17ワールドカップを率いた吉武博文氏は理想のゲームを「90分ボールを回し続け、ロスタイムに1点を取って、1-0で勝つ」と語っていたように、そもそもボール保持と得点数や得点力はイコールでは結びつくものではない。
サッカー以外でもバスケットやラグビー、アメリカンフットボールなどの敵陣にあるゴールを狙い合うボールスポーツに馴染みがある方はわかるかと思うが、実は最もゴールが手っ取り早く決まる瞬間はターンオーバー。つまり守備から攻撃に切り替わった瞬間である。
これらの競技のボールを保持する攻撃は、ラグビーでいうラックを作ってFWが中央を運ぶ形や、アメリカンフットボールのランプレー、バスケットボールのショットクロックギリギリまで使ったセットオフェンスにあたるが、これらは大量得点よりも時間を使うことで相手の攻撃回数を減らすことを目的としている。

それを踏まえると、まいど!セレッソ「特別インタビュー|株式会社セレッソ大阪 代表取締役社長 玉田稔【後編】
の中で玉田前社長が尹晶煥と契約更新をしなかった理由として
「チームの対前年比で失点は5点減っているものの得点も24点減っています。守備を重視した戦術を取ったわけでもない、やっぱり勝てなかった1つの要因は得点力不足です。」
と語りここを問題としているが、ボール保持率を高めた結果としては実にノーマルなもの。ボールを保持することで最も得点が入りやすい守備から攻撃へと切り替わる回数が減り、相手の攻撃時間も減るからだ。

サッカーは得点が入りにくいことからボールを保持=攻撃的とされることも多いが、その他の競技ではボールを保持して時間を使うよりもターンオーバーや縦に速い攻撃で攻撃回数を増やす形の方が攻撃的だと言われている。尹晶煥のサッカーは後者に近い考え方で作られていたと言えるだろう。

■GKからのフィードにみる尹晶煥サッカー


尹晶煥がボール保持にこだわらないサッカーをしていたということがわかる興味深いデータがある。

ここ数年はGKにもキックの精度が求められ、GKからのフィードは見逃せない要素の1つとなっている。
下の表は2018年のGKのフィード数とその成功率をまとめたものだ。
セレッソはGKのフィード数はリーグで2番目に多い293回を記録しているが、成功率はリーグ平均の73.2%を下回る65.2%。リーグで5番目に低い数字である。
キム・ジンヒョンは決してフィードが苦手という訳ではないので、少し意外な数字に感じるかもしれない。
しかしフィードを距離別でみるとその要因があきらかになる。
セレッソは30m以上のロングレンジのフィードが219回でリーグトップ。293回中219回がロングレンジなので実に74.7%がロングレンジのフィードでこの比率もリーグトップ。リーグ平均が54.4%なのでいかにこの数値が高いかがわかるだろう。とにかくGKからのフィードはロングレンジが多い。
そしてこのロングレンジのフィードをさらに分類すると、セレッソの成功率は53.9%とリーグ平均の51.8%を若干上回る数値だが、成功回数はリーグ平均の72.28回を大きく上回る118回でリーグトップ。
つまり尹晶煥はGKからのフィードで確実にボールをつなぐことよりも、半分近い確率でボールを相手に渡してしまたっとしても118回も一気に前線にボールを届けることが出来ていたことに価値を見出していたのだ。

そしてこれが成立していたのは、キム・ジンヒョンのキックの能力であり、前線でターゲットとなる杉本や山村の高さ。そして2列目のセカンドボール奪取力。
また半分近くボールを失う中でボールを奪い返すことができるCB2人とDH2人を中心とした4-4の守備ブロックの精度があったから。
もちろんこの尹晶煥のコンセプトがクラブにとって100%の正解では無いだろう。
しかし、昨季大きな結果を残したように、結果という面ではこれまでで最も正解に近づいたことは事実だ。このスタイルに順応しストロングポイントを発揮できる選手がセレッソには多くいたのだ。

ここに書いたような尹晶煥のコンセプトを、クラブはシーズン開幕前からどれだけ理解していたのか。
攻撃的や守備的といった曖昧な言葉ではなく、具体的に監督に何を期待して、何を行ってほしかったのか。2018年は降格こそ免れたが、これまで露呈してきたクラブの未熟さが再び現れたシーズンだったと言えるだろう。

7 件のコメント :

  1. クラブの未熟さ、という点はおそらく多くの人が痛感したでしょうね・・・

    尹監督の退任からこれまでの主力の流出を見れば、経緯など関係なくタイトルを狙うなどおこがましいレベルの醜態をさらしたといえるのでは。ただ、タイトルを取って今回のような事態が顕在化したことで、やっとクラブとしても次の段階へ向かう切っ掛けをつかんだのかもしれません。

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    1. 退任はともかく山口杉本は半年一年でノコノコ帰ってきたような情けない性格なので移籍しても特に驚きはないですね。今回の一件が無くても移籍していたと思います。

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    2. コメントありがとうございます。
      そうですね。今回の事態に対してフロントは適切に対応したのかどうかは大いに疑問が残るところです。
      きっかけとなるかどうかは、同じことを繰り返さないかどうかでしょう。

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  2. いつも分かりやすい説明ありがとうございます。
    ユン監督は現状の戦力を活かして、勝つ可能性が最も高いであろう戦い方に徹する監督という感じでしょうか。
    2年間見させて頂いて、全くキレイなサッカーに拘らずに、自分達のストロングポイントを生かし、とにかく勝利だけを目指してという戦い方は、ある種とても潔くて今までのセレッソには無かったサッカーの1番根本の部分を教えてもらった気がしました。
    しかし、そのサッカーは一部の選手には反感を買い、そのせいかどうかはハッキリ分かりませんが、これだけ結果を出したにも関わらず2年でサヨナラとは残念でなりません。蛍もユン監督だったら移籍していないように思うのです。タラレバを言っても仕方ないのですが。
    とにかくタイトルを取ってセレッソの歴史に名を刻んだ監督であるのは間違いないので、そこは本当感謝したいです。
    アキさんはフロントの判断の仕方には疑問をお持ちのようですが個人的には監督を交代すべきだったかどうかどう思われていますか?

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    1. コメントありがとうございます。
      個人的には尹晶煥のスタイルだったり一部の選手の反感を買ったかどうかは別に問題とは思っていません。逆に全く別のスタイルでもまた別の選手の反感を買ったでしょう。
      なので問題なのはそれに対してクラブが適切な対応ができたかどうかだと考えています。
      一昨季から見えていた問題を昨季開幕前に適切な対応ができずそれが半年後に爆発。その結果、監督とキャプテンがチームを去ることになった。というのが昨季だったのではないでしょうか。

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  3. お疲れ様です。
    ユン監督のサッカーは現実的で、データ上最も勝ちに近い方法を取るサッカー。17-18は選手もそれに相応しい選手がいたからこれだけの結果を残せたんでしょうね。
    川崎と横浜の2チームがボール保持をメインとしながらも順位に大きな差がある点をみてもポゼッション率単体に意味はないこともわかります。
    同時にポゼッションの両チームに対してハイプレスとカウンターを主体に戦っていたユンセレッソの相性が良かったのもわかります。パスが増えれば取り所も多いですし。
    にも関わらず、ポゼッション率や得失点の数字のみに拘ったフロントが監督を切ってしまい再度の方針転換は監督が変われば大きな方針が変わってしまう軸のない組織の悪いところが出た部分でもあり、軸があってそれに合った監督を連れてくることができる川崎や鹿島との決定的な違いのようにも思います。育成型を名乗る割には下部組織まで浸透した軸が無く、突出した個人の武器が無ければ出てこられない印象ですし。
    ポゼッションに拘り運動量の少ないサッカーを目指す割にはベテランを切っていたり、どうもちぐはぐな印象が多いですし。
    この状況を打開して長期的に強いチームを作る上でどうしたら変わるんでしょうね?個人的にはGMも強化部長も鹿島から連れてくるようなことをするほうが手っ取り早い気もしますが。

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    1. コメントあありがとうございます。
      そうですね。おっしゃるようにクラブが何をしたいのかがはっきりしていないのが一番の問題だと思います。
      戦い方を変えることや方針を変えることは特に問題ではありません。
      ただ、現在はその変換が思いつきにしかみえず、ちぐはぐになってしまっていることが問題なのでしょう。

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