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- 25' 柿谷 曜一朗
スタジアム | 松本平広域公園総合球技場 | 主審 | 吉田 寿光 |
入場者数 | 17,302人 | 副審 | 金井 清一、蒲澤 淳一 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 23.3℃ / 23% | 第4の審判員 | 佐藤 貴之 |
メンバー
スターティングメンバー |
- 監督
- 反町 康治
- 監督
- 大熊 清
試合経過
- 90+1'
- 87'
-
79'
- 73'
- 67'
-
58'
- 52'
- 46'
-
46*'
- 25'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 13 | 14 | 14 | 12 |
CK | 10 | 2 | 7 | 5 |
PK | 0 | 0 | 0 | 0 |
シュート | 10 | 11 | 11 | 14 |
警告/退場 | 0/0 | 3/0 | 1/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 大熊清監督松本山雅FC 反町康治監督
セレッソ大阪 柿谷選手、リカルド・サントス選手、杉本選手
セレッソ大阪 キム・ジンヒョン選手、山村選手、田中選手、茂庭選手
松本山雅FC シュミット・ダニエル選手、岩間選手
GW連戦で中3日での開催となる明治安田生命J2リーグ第11節、セレッソは初対戦となる松本山雅FCとアウェイで対戦し、前半に奪った柿谷のゴールを守りきり勝利。連敗を2で止める事に成功した。
■メンバー
前節メンバーを入れ替えたセレッソでしたが、今節は再び前々節のワントップにリカルド・サントス、右SHに杉本、CBには田中裕介というメンバーに戻す事を選択。おそらくこれは前節京都にセットプレーから2失点を喫してしまった事と、今節の対戦相手である松本はセットプレーがストロングポイントである事からでしょう。
またCBを茂庭から田中に戻したのはビルドアップの事を考えてとの事。これも大熊監督らしい選択です。
一方の松本山雅FCは、ここ5試合同じ先発メンバーを起用してきましたが、那須川が怪我で離脱した事で左WBに入るのは元セレッソの安藤。安藤はこのポジションで開幕から5試合は続けて先発していたので先発復帰という状況でしょうか。
オビナ、ウィリアンスはベンチからのスタートとなっています。
■強風が吹き荒れる中での一戦
この試合は松本平広域公園総合球技場の愛称「アルウィン」の名前通り、スタジアムの南側に位置する中央アルプスから強い風(ウインド)が吹く中での一戦となりました。コイントスに勝った松本は前半に風上を選択。
風上からだとゴールキックが相手GKに届くほど、風下からだと急激にボールが失速するか、また高く舞ったボールはかなりの勢いで戻されるという程の強風でした。
■松本がペースを握った風上以外の理由
試合は立ち上がりから松本がペースを掴みます。その要因の1つは風上だということ。風下のセレッソはクリアボールが強風に煽られて戻ってくるし、角度がついていればタッチを割ってしまうので敵陣にボールを運ぶのですら難しい状況。さらにシュミット・ダニエルからのGKですら一気にボックス近くやボックス内にまでボールが飛んで来るので簡単に自陣にまでボールを運ばれてしまいます。
ただ、押し込まれた理由はこれだけではなく、セレッソの守備にも要因がありました。
マッチアップ |
以前にも書いた事がありますが、セレッソの様に4バックを採用するチームにとって松本の様に3バックを採用するチームは単純に人を捕まえていくとミスマッチ、つまり誰が捕まえて良いのかわかりにくい中途半端な選手が出来てしまいます。
松本の前線の3人に対してセレッソの最終ラインは4人でここは捕まえる事ができて1人カバーリングの人間もいる状態、ボランチも目の前の相手ボランチとスタートポジションは向い合っているので噛み合っている状態です。
しかしサイドに目をやると安藤と喜山に対して杉本1人、田中隼磨と當間に対してブルーノ・メネゲウ1人とここは2対1の状況。つまりどちらかを捕まえるとどちらかが空くという状況になる。これがミスマッチです。
本来ならマッチアップが合っていなかったとしても、例えばポジションを守るゾーンディフェンスであればボールを持たない選手は捕まえる必要がないので関係ありませんし、マンツーマンとゾーンをミックスした形でもポジションや状況によってスライドしたり、受渡したりするのですが、現在のセレッソの守備方法ではとにかく目の前の人に喰いつくという形でしかない。という事でこのサイドを中心にセレッソの守備陣が捕まえられない選手が生まれていました。
特にそれが顕著に現れていたのがセレッソの右サイド。これはこの日の杉本がサボっていたとかって事じゃなく真反対。この日の杉本はいつも以上に守備意識が高く献身的だったからこそ起こっていたというのが切ない所です。
<2>喜山がフリーになる
14分にミドルシュートを放った場面や、その後喜山がボランチの横で配給するようになっていきそれを捕まえられない状態が続くのは、左サイドを安藤が上がっていく事でそれに対応しようと杉本が頑張ってついていくのでボランチの横で守る選手が誰もいなくなるからです。
先ほども書きましたが、これは杉本が悪い訳ではありません。
むしろ杉本はこの試合前半からかなり守備で頑張っていましたし、もしここで杉本がついていかないと左サイドで松田が2対1の状況を作られてしまいます。
なのでこれはセレッソの守備方法の構造上の問題です。
■立て続けにあったCKを防ぐ事ができたセレッソ
松本に前半から押し込まれた事で、立ち上がりから23分までで6本のCKを与えてしまいました。CKは前節京都に狙われたプレー。そして松本が得意とするプレーです。
セレッソは前節からそのCKの守備をさすがに変えてきました。
CKの守備 |
CKの守備ではこのストーン役の選手がかなり重要です。CKの時に怖いのはGKが出ることも出来ない低く速いボール。ふんわりしたボールはGKも出ることができるし、相手に背の高い選手がいてもし競り負けたとしても身体をぶつける事もできるから強いシュートを打ちにくい。
なのでまず防ぐべきは低くて速いボール。そしてそれを防ぐためにいるのがストーン役の選手です。ここにチーム内でも1,2を争う高さがある選手を置く事で高さの面で守るエリアを広げているのですが、さらにストーンを2枚立てるという事は守るエリアを横にも広げるという事です。
松本がCKの時に入ってくる人数は6人または7人。
なのでそれぞれ7人目まではマーカーが決めてあり、またこの試合ではやりませんでしたがCKの時にキッカーを2人立てたりショートコーナーも頻繁に使ってくるので、その対応役としてブルーノ・メネゲウがキッカーの近くにポジションを取るという形になっていました。
松本はここから23分までの6本のCKでバラバラに散ってスタートする形、なでしこジャパンが使い中継でなでしこトレインと呼ばれた事で有名になった縦一列に並ぶ形、そして金沢にもやられたゴールエリア内にとにかく人数をかけて密集を作る形の3パターンを使ってきましたが、そのうち2本はキックの精度や強風の問題もあってか大きく流れたものの、半分の3本をストーン役の山村が跳ね返す。残りの1本はストーンを外してファーの大外にいる飯田を狙ったものでしたが杉本がマークしてしっかり当てさせないときっちり対応する事ができました。
松本としては、前節京都がやってきた事でこうやってCKの守備を変えられたので堪ったものではなかったかとは思います。
■セレッソの先制点
押し込まれる時間が長かったセレッソは25分に柿谷のスーパーゴールで先制します。このゴールは個人技爆発というある種セレッソらしいゴールでしたが、ゴールへの質も高いものでした。
松本が押していた時間帯ですから完全に引いて守備を固めていたという訳ではありませんが、このゴールのシーンでは松本の3バック、逆サイドのWBや中盤の選手も十分戻ってきており決して人数が足りなかった訳ではありません。またセレッソも中に入っていたのはリカルド・サントスとブルーノ・メネゲウと柿谷の3人。決して人数を多くかけていたわけでもありません。
ただ、質を高めることができれば、むやみにクロスを入れなくても人数がそろっていた相手に対してでも十分崩せるという見本の様なゴールです。
得点の形 |
そして左サイドで丸橋がドリブルで敵陣までボールを運ぶところから始まります。そしてその時近くに杉本がおり、丸橋についていたのは工藤、杉本についていたのは田中隼磨でした。
ボールを運んでポイントを作った所で丸橋は下がってきた杉本とスイッチ、そして杉本は後ろにポジションを取るソウザにパスを出しました。このパスで中央から岩間がソウザに喰い付いてきます。
ただこの時点では中央で柿谷はしっかり宮坂が捕まえていたので、ソウザは丸橋にパス。そして丸橋がパスを受けた瞬間に杉本が一旦中央に入って相手の後ろを通ってサイドに出ていきます。
スイッチからのリターン田中隼磨が丸橋に喰い付いた事で、杉本を追いかけるのは工藤に代わり、そして杉本が工藤の背後に一旦入ってから縦に出たのでスタートが一瞬遅れます。
特にディフェンダーでもない選手ですし、遅れたディフェンスになるとそうなってしまいがちなのは飛び込んでしまう事。杉本の切り返しに飛び込んでしまいまんまとかわされてしまいます。
この時杉本に対して松本の守備陣、當間は前にでる、そして飯田も杉本を注視、喜山も杉本を注視しています。杉本がフリーなので仕方がない所です。そしてまたそれまで柿谷をしっかりと捕まえていた宮坂も柿谷をちょっと離してしまいます。
そしてこのタイミングでリカルド・サントスは杉本に気をとられているマーカー喜山の動きの裏を取るように背後、ファーサイドに動き出しています。
なので、杉本の折り返しに対して喜山は完全に遅れてしまい、リカルド・サントスは落ち着いて落とせる状態になる。
そして今度はリカルド・サントスの落としに対してボックス内のディフェンダー全員がそちらに気をとられていたので柿谷が完全にフリーとなる。
柿谷のシュートはとんでもない技術が発揮されたシュートで個人技爆発のゴールでしたが、崩す形としては理に適ったものでした。
守る相手を崩すために必要なものはこのゴールに全部詰まっていて、まずハーフスペースで相手DFを動かす。そして外から外で相手の目線を動かすなので中央でフリーになれるという事です。
相手ディフェンスをなかなか崩すことができずゴール数が伸びないセレッソに必要なものは、こういう形を意図して繰り返し作ること。
闇雲にクロスを入れたり、クロスの入り方とか、勇気とかなんだか正体のよくわからないものではなく、こういった状況を自分たちで繰り返し作り出す形を持つ事です。
■松本にあった隙
この得点シーンのきっかけとなったセレッソの左サイドでの攻撃とそこまでボールを運んだプレーでも現れていましたが、松本の守備にも隙があり、それまではボールすら運ぶ事ができていなかったセレッソでしたが15分頃から徐々にそこを使ってボールを運ぶ事が出来るようになっていました。松本にあった隙の1つは攻撃の形から守備の形へのポジションチェンジの間に起こるタイムラグ。
3-4-3から5-4-1に |
なのでどうしても守備のポジションに戻るまでに時間がかかってしまうので、WB前のポジションは空いてしまう事もある。なのでソウザが左サイドに開いたポジションを取ったりすると空くし、先制点の場面でも自陣深くからのスローインでしたがサイドチェンジすることで丸橋が一気に1人でドリブルでボールを運ぶ事ができています。
そしてもう1つはセレッソと同様に松本も比較的簡単に目の前にいる相手選手に喰い付いてしまう事。
これによってボランチ周りにも何度かスペースが生まれており、18分には松田からボランチを飛ばしたパスを出すとDFラインとMFのラインの間で杉本にボールを受けられる場面をつくることができています。
■セレッソ先制後の前半
とはいえ、セレッソがここから盛り返したという訳ではありません。もちろん風上にいるのは松本という事もあります。そしてそれ以外にも、15分以降はセレッソが立ち上がりに比べてボールを運べる場面が増えたというだけで、松本の隙を継続的につくことができていた訳では無いからです。以前にもどこかで書いた記憶がありますが、松本の両サイドの隙は3バックの相手の場合に必ず出来る構造的な問題です。WBをSHで押し下げる |
そしてまた、最初に書いたセレッソには松本の選手を捕まえられない場所。特に喜山が上がってきた時にどうしても捕まえる事ができないので、とても盛り返すという所までは持っていく事ができていませんでした。喜山には41分にボックス内にまで侵入されています。
■後半立ち上がりの攻防
後半開始〜 |
TVでは安藤が故障したのではないかという声もありましたが、もし何もなかったとしたら左サイドからチャンスを広げることができると踏んでの交代でしょう。
実際に喜山が何度も前に出てきていたわけですし。
石原はドリブルで中にも入ってこれる選手です。
セレッソは高い位置から守備をしようとして右SHの杉本が喜山にまでプレッシャーをかけにいくなら松田は山本に引っ張られているので石原が中に入って仕事もできる。また来ないならそのまま喜山が前に出ることができる。という計算だったのでしょう。
しかし後半の立ち上がりは、入れ替えた左サイドより前半よりも前に出てくる回数を増やした逆サイド田中隼磨が目立つ展開になっていました。
セレッソの右サイド、松本の左サイドではWBに対してSHがどこまでもついていくぐらいの勢いで下がって行ってたのですが、逆サイドのブルーノ・メネゲウは早めに丸橋に受け渡す事が多かったので、田中隼磨とマッチアップするのは丸橋という状況が多くありました。
これば、工藤が中央のDFラインとボランチの間に入ってボールを受けようとしている動きを見せていたというのもありますが、ブルーノ・メネゲウが守備をサボってるから丸橋になっているわけではありません。ブルーノ・メネゲウはおそらく自らの経験から、受け渡したほうが自分が前に残れるしカウンターを狙える可能性があると知っているからでしょう。
左右で異なるタイプの守備をする形もありますが、今回の場合はこの違いだけでもセレッソの守備に共通事項があまり無いことが伺い知れます。
松本は後半の立ち上がりに右サイドからFKやCKを獲得しますが、CKでは今度はストーンのリカルド・サントスが跳ね返していました。
後半はセレッソが風上なのですが、前半の終盤と変わらない状況が続いていました。
■お互い攻め手が無い状態に
58分〜 |
しかし状況はあまりかわらないままでした。
もちろん松本の方がボールをスムーズに運ぶ事はできていました。しかし決定機はほとんどありませんでした。
というのも、松本は前半から続く喜山が上がってくるプレー、そして石原の中央や縦に出るドリブルで、ボールは運べるものの、そこから先の形がほぼ見えてこないからです。
反町監督は中央からの攻めも出来るようになっているという感じのコメントを残していますが、ここからの攻撃で決定的な形はほとんど作ることができていません。
もしかすると反町監督もアイデアを出せと言っていたのかもしれませんが(笑)
また工藤が中央の間に入ってボールを受けに来るプレーも同様で、中央からは決して上手くいっているという状況ではなく、セレッソにとって怖いのはやはりセットプレーでした。
67分〜 |
これは右サイドの杉本は前半立ち上がりからかなり走っていたので、何かを起こされる前にエブリディハードワークの関口でなんとかしようという狙いだったのでしょう、
79分〜 |
一方の松本は79分に岩間に代えてウィリアンスを投入。工藤がボランチに下がります。
前がかりになって攻めてくる松本ですが、やっぱりセットプレー以外では可能性のあるチャンスは作れていないという状態に。
87分〜 |
90分には松本が山本が松田との競り合いで身体をぶつけた所からギリギリでボールを残して折り返すもキム・ジンヒョンがセーブ。
そして試合はそのまま終了し、0-1でアウェイのセレッソが勝利。連敗を止める事に成功しました。
■その他
前節やられたセットプレーですが、この試合では10回ものCKを与えたものの、今節から変えたストーン2枚を置く守り方で山村とリカルド・サントスの2人が半分の5本を跳ね返し、うまくハマりました。京都にやられた次の試合という事でこの守り方が初見だったのも大きかったかもしれません。
ただ、それ以外の部分の課題はやはり変わっていませんね。
本文中にも書きましたが、得点シーンの崩し方はほぼパーフェクトです。
引いた相手を崩すにはあの形を意図的に再現性をもって何度も作れるようになればいいと思うんですが、そういう考えはなさそうです。
また守備や組み立ての部分も同様ですね。
なのでセレッソが勝つにはまさにこの形という展開だったと思います。
後、初対戦となった松本ですが、プレビューにもも、また本文にも書きましたがボールをもった戦い方はやはりまだまだ。ボールを運んだ先からどのように崩すのかという共通理解が僕にはあまり見えませんでした。反町監督は柿谷は決めたが山本は決められなかったと話しており、おそらく68分のショートコーナーから石原が折り返した所を山本が身体に当てるだけでシュートを打てなかった事を言ってるんだと思いますが、あれを決めろというのはちょっとかわいそうかなと思います。
なのでやはり怖かったのはセットプレー。その部分でセレッソが新しい形で翻弄できたのは、この試合の結果には大きく影響したと思います。
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