スタジアム | キンチョウスタジアム | 主審 | 福島 孝一郎 |
入場者数 | 11,482人 | 副審 | 伊東 知哉、福岡 靖人 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 13.8℃ / 42% | 第4の審判員 | 柳田 翔 |
メンバー
スターティングメンバー |
- 監督
- 大熊 清
- 監督
- 森下 仁之
試合経過
- 90+4'
- 86'
-
83'
-
80'
- 74'
-
67'
-
63'
- 60'
- 26'
-
18'
-
4'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 10 | 8 | 13 | 13 |
CK | 1 | 5 | 4 | 5 |
PK | 0 | 1 | 0 | 0 |
シュート | 10 | 13 | 12 | 6 |
警告/退場 | 1/0 | 0/0 | 1/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 大熊清監督ツエーゲン金沢 森下仁之監督
セレッソ大阪 ブルーノ・メネゲウ選手、リカルド・サントス選手、山村選手、松田選手、杉本選手、柿谷選手
ツエーゲン金沢 メンデス選手、作田選手
セレッソが開幕4連勝で迎えた第5節、本拠地キンチョウスタジアムでのツエーゲン金沢戦はアディショナルタイムにPKを与え2-2の引き分け。前回昇格した2009年の開幕5連勝には届かなかった。
■メンバー
セレッソはクラブ内でインフルエンザが蔓延。前節ベンチ外となった玉田に続き、今節に向けて山下、丹野、橋本、田代が発症。茂庭と中澤が発熱。さらにキム・ジンヒョンが韓国代表で離脱中とかなり難しい状況でしたが、韓国代表のワールドカップ予選はこのAマッチウィーク中に1試合のみという事で、木曜日に試合を終えたばかりのキム・ジンヒョンをチームに戻し即先発。さらに山下も戻って来たという事で5試合続けて同じスターティングメンバーを採用。
しかしベンチからは橋本と前節決勝ゴールを決めた田代が外れ、玉田と扇原がベンチ入りとなっている。
一方の金沢は古田と可児がベンチスタートで玉城が今シーズン初先発となっていますが、最注目ポイントは金沢はこの試合に向けてシステムを変えてきた事。
先発メンバーの登録は4-4-2になっていたが、馬渡と阿渡というSBが2人に加え本職はCBながら前節左SBを務めたメンデスまで先発メンバーに名を連ねている。馬渡と阿渡はどちらも1つ前のポジションも出来そうな選手ですが、ボランチに入っていた可児が外れており玉城も攻撃的なポジションの選手。という事で金沢と言えば4-4-2のディフェンスが特徴のチームですが、もしかしたら3バックの可能性もあるのではないかと思っていたらフタを明けてみるとやはり3バックでした。
金沢をずっと追いかけている訳では無いので詳しくはわかりませんが、昨シーズンも少ないながらも何度か3バックを使っていた記憶はあります。
■立ち上がりの攻防
立ち上がりこそ勢いを持って入った金沢ですが、立ち上がり4分にブルーノ・メネゲウにセレッソに先制点を奪われるとブロックを落として守る様になります。
立ち上がりに勢いを持って入ったのはもちろん試合の立ち上がりだからという単純な理由もありますが、金沢がいつもの4-4-2ではなく3-1-4-2(3-3-2-2)の形を採用しているので、おそらくセレッソにかみ合わせがずれる事をつかませる前にできれば先制したいという狙いもあったのでしょう。
実際立ち上がりに押し込まれる形になったのはそのシステム変更の影響で、相手の誰がどこにいてどういった動きをするのかが予想できていないからでした。
ブルーノ・メネゲウの先制ゴール |
この時点ではまだ金沢のシステムについてセレッソは把握できていませんでしたが、金沢の守備が堅い事はわかっていたし、その為に裏を狙う動きが大切だという事も共通理解としてあったのでしょう。
また金沢の守備はボールから遠い所では人を捕まえる形では無い。その分ボールホルダーには必ずプレッシャーをかけなければいけないのですが、中盤3枚でさらに柿谷が引いてきた事もあって柿谷、杉本、松田とボールを繋いで戻した山村の所は完全にフリー。そのタイミングで3バックの右に入る作田の裏、右WBの馬渡の間でポジションをとっていたブルーノ・メネゲウの動き出し、そこに山村からのワンタッチでのパスがピタリと合うと金沢ディフェンスはもうどうすることも出来ない状況になっていました。
昨シーズンのホーム金沢戦でも決められなかったものの前半セレッソは対角のパスで何度もチャンスを作っていましたが、そもそも金沢の守備の方法はボールと逆サイドは基本的に捨てる事が前提になっているので、そこに精度の高いボールを出された時点で厳しい状況になります。なのでボールホルダーには精度の高いボールを出させないようプレッシャーをかけにいかなければいけないのですが、勢いを持って入った立ち上がりに背後にスペースがある中で、中盤が3人になっている事でそれができなかったといったという事でしょう。
■金沢の3バック
マッチアップ |
スタンドから見ていると気がつくことでもピッチレベルからではなかなか難しいので、先制後すぐはまだ金沢のシステム変更を把握できていないセレッソ。
おそらくセレッソは2トップに高い位置からプレッシャーをかけさせようと考えていたんだと思いますが、最初から3人いるので行ききれない。しかも無理して行くと2トップの背後に山藤がいてここが空いてしまう。そして前節の大槻と安柄俊は4-4-2の両SH。となると捕まえるのはSB。馬渡と阿渡はSBなのでSH。しかし馬渡と阿渡は4-4-2のSBにしてはかなり高いポジションを取りますし、大槻と安柄俊はボランチ脇の中途半端なポジションをとっている。
なので通常の4-4-2のミラーゲームだと考えてソウザや山村のセレッソのボランチが前に出ていくと、中間ポジションにいる大槻や安柄俊が空くし、そこにSBをムリに中に入れて追いかけさせるとSBの背後のスペースを馬渡や阿渡に突かれてしまう。
なので誰が誰を捕まえるのかがはっきりしない状態になっていたので、昨シーズンのボールポゼッションが21位で堅守速攻がチームスタイルの金沢にボールをつながれるという状況でした。
ピッチ内に金沢が3バックだと伝えられたのは時計が7分を過ぎた頃。スカパーの中継で7分17秒の松田のスローインでリカルド・サントスが作田にファールを受けプレーが止まったタイミングで大熊監督が山下に対して「3枚だ、ボールサイドを決めろ」との指示が入っています。
「ボールサイドを決めろ」と言うのは、マッチアップでも解るようにセレッソのSBの所で中盤の選手とWBで2対1の状況、SBがどちらを捕まえれば良いのかわからない状況になっているので、そこをボールサイドからDFラインがスライドして捕まえる相手をはっきりとさせるという事。なので例えば逆サイドにボールがでたらマークを受け渡してそちらのボールサイドにDFラインがスライドしてまた順に相手を捕まえていくという事です。
4-4-2のミラーゲームだとポジションチェンジ等をしない限りは基本的に誰が誰を見るかというのが決まっていますが、3枚でミスマッチが起こっているのでボールがどちらのサイドに有るかによって捕まえる人が変わるよという事、あとSBは捕まえている選手の外にもう1枚いるよという事ですね。
ただそれをセレッソが把握した所で当然すぐにキチッと止められるはずも無い。
例えば3バックの所と山藤の所はじゃあどうするんだという事がはっきりしないので、山藤にボールを捌かれるし、太田から長いボールも出てくる。そしてその組み立てに対して例えば安柄俊が2列目から飛び出すと相手には2トップがいるのでSBがついていくしかなく、WBに対してはSHが引いて対応せざるを得ない。
中継でも森下監督の「(相手の守備は)そこまでハマらないからボールを後ろに回さずに前につけても良いよ」との指示の声も聞こえます。
そして金沢の攻撃の形として最も注意しないといけないのがセットプレー。何度もやり直してチャンスを探っていく形や流動的にポジションを動かして相手のギャップを作っていくようなやり方は、金沢のチーム事情を考えると、ミスが起こる可能性やカウンターを受ける可能性とのバランスで現実的ではない。なので攻撃の最後はとにかくプレーを切る。そしてできればセットプレーをもらうというのが徹底されています。
数多くは無理でも、セットプレーならやり方次第でなんとかなる可能性があるし、それが最もリスクとのバランスが取れているという事ですね。
なのでセットプレーはいくつか準備されていました。
CKでは左利きの山藤と右利きの馬渡という両足のキッカーがおり、またセレッソの守備がマンツーマンだという事で対マンツーマン守備の代表的な方法の1つである密集を作ってしまうやり方。
マンツーマンの場合だと味方選手が1点に集まるとと最低でもそれと同じだけの相手選手も集まるのでスクランブル状態になりやすくマークも外れてしまう可能性が高まる。という事で1つはゴールエリアのスグ外側で密集をつくるパターンと、もう1つはゴールエリア内で密集をつくるパターンの2種類が用意されていました。そしてその後者の形の3回目で馬渡のキックをメンデスが決めてゴール。26分に金沢が同点に追いつきます。
5-3-2の守備ブロック |
よく守りを堅めるために使う前線が1トップの5-4-1ではないのは、1トップだとどうしても1列目の守備が機能しにくく撤退守備の形になってしまいがちなので、1列目の守備を作る事でそれを避けたかったという事なんだと思います。
最終ラインは前に出て潰す |
なので、その2列目を越えてきたボールや選手に対しては最終ラインから前に出てスペースを消しに来る形になっていました。
1ボランチ脇のスペース |
セレッソは金沢の3バックに対して、攻撃のミスマッチだけではなくこの守備でもかなり手を焼きます。そもそもセレッソの攻撃がビルドアップについてほぼ手付かずのグダグダのままなので、ここまでの試合でも苦労しなかった試合なんて無かったのですが(苦笑)。
おそらく金沢がこのシステム変更に踏み切ったのは、攻撃でミスマッチを活かしたいという事もあろうかとは思いますが、当然守備でもこの形で守れると判断したからでしょう。
先ほども書きましたが、日本国内では最終ラインを5枚にした時は中盤の守備を考えて2列目は4枚、なので前線は1枚となり5-4-1が多くなっています。
ただ5-4-1は前線で1トップが孤立しやすいという問題点もあります。
その解決策としては、例えば福岡みたいに時間を作ってくれるウェリントンというデカくて強い1トップを使って個人能力にお願いするか、広島や浦和みたいに後ろでパスを繋いで時間を作るかというのがあるのですが、残念ながら人材的にもチーム力的にもどちらも金沢は出来ません。
しかし、前節もクロスからCBの外でSBとFWが競り合う形に持ち込まれ失点しているし、セレッソは個人技の優れた選手が多いので最終ラインの所でスペースを消したいので3バック(5バック)にしたい。
そこで5-3-2なのでしょう。
通常中盤が3枚だとそこを外されたり、そこを揺さぶられたりして中盤のスライドが間に合わなくなり最終ラインの前にスペースを空けてしまう、そこに最終ラインから飛び出すと最終ラインにギャップを作ってしまう事になって守備が決壊するという可能性が高まるのですが、ビルドアップがクダクダなセレッソの攻撃では役割さえきっちりこなせればこの3枚を動かす事が出来ないから大丈夫だろうという事なのでしょう。
そしてその目論見は狙い通り。セレッソは実際この試合でも中盤の選手を動かす様なボールを運ぶ形は全く見られず、相手が待ち構えている所に長いボールを後ろからつけて潰される、跳ね返されるという場面が何度もありました。
攻撃と守備でポジション移動する選手 |
金沢の選手の中で攻撃と守備の時の陣形でポジショニングが変わるのがWBの選手。
なのでセレッソがボールを奪った時の守備から攻撃への切り替え、金沢にとっては攻撃から守備への切り替えのタイミングでこのWBの選手はポジションを移動して後ろに戻らないといけません。
という事は逆に言えば金沢のWBに入る選手の攻撃から守備への切り替えよりも速くセレッソが切り替える事ができればここはチャンスになるポイントだということです。
ここを狙っていたのがブルーノ・メネゲウ。これはおそらく彼自身の判断、大熊流にいうなら「アイデア」だと思いますが前半からブルーノ・メネゲウはセレッソがボールを奪った瞬間にしきりにここを狙っており、おそらくHTの指示でチームにもその話しがあって後半はその頻度を増やす。後半立ち上がりの47分にはクロスはリカルド・サントスに合わせられませんでしたが決定的な場面を作っていますし、その直後の50分にもこのスペースを使い、さらにこの試合の最後の最後にできたチャンスもこのスペースを狙っていたからこその形でした。
■後半のセレッソ
セレッソはHTでおそらく金沢のシステムを全員できっちり把握したのでしょう。
後半の立ち上がりはセレッソが高い位置から守備をしかける形を見せてきます。
それは相手の3バックに対し2トップがサイドを限定してそこからはめていく形。2トップの裏で浮いている山藤はボランチが前に出て捕まえます。
ただこれも最初のサイドで奪えれば良いのですが、開幕からあったように芋づる式でスペースを作ってしまうのでスペースを空け53分には玉城がCBの前のスペースでシュートを放つ場面も作られます。
ただ、金沢も先に書いたサイドの攻守の切り替え勝負で後手を踏んでいる場面もあるので、ブルーノ・メネゲウがチャンスを作る形でセレッソもチャンスを作る。
柿谷が倒されたシーン |
この場面は全くPKでもおかしくない場面でしたが、柿谷は足を残してドリブルしていたので主審からは貰いにいった様に見えたのかもしれません。
■セレッソの追加点から
60分〜 |
試合はどっちのものでもないものになっていたのですが、そんな中で金沢が攻撃しようとした所で玉城のバックパスがミスパスとなり杉本の下へと渡るという思わぬ形でカウンターの様な形を作ると、杉本は少し時間をかけすぎたかと思われましたが、太田がパスを警戒して距離を取って守っていた所をペナルティエリアの外側から絶妙のコースを突きミドルシュートを決めてセレッソ復帰後初ゴール。63分にセレッソは追加点を決めます。
このプレーの直前に関口は既に杉本との交代でタッチライン脇で準備をしていたので、ギリギリの所で決めたゴールでした。
最終メンバー |
1点ビハインドとなった金沢は74分に玉城に代えて古田とボールを持った時に仕事が出来る選手を投入。
またセレッソは茂庭が足の状態が良くないという事で80分に中澤と交代、83分には前線で身体をはり続けたリカルド・サントスに代えて澤上を投入。
さらに86分に金沢は安柄俊に代えて星野を投入してきます。
セレッソは前半にブルーノ・メネゲウがやっていた3バックの両脇にSHが入る形を後半にチームに徹底する事でサイドで2対1をつくろうとしていましたが、金沢もWBをむやみに前に喰いつかせずに中盤の3の両サイドでSBを見る形に修正した事で、ビハインドの金沢が前がかりになった分攻撃の機会はありましたが、それがチャンスにあまりつながらなくなっていきます。
とはいえセレッソはリードしているのでこのままでもOK。
ボールサイドと逆サイドのSBは上げない事を徹底し、最終ラインでリスクを負わないようにしていました。
ただ、この試合でセレッソの守備は一度もハマっていた事はありません。
ボールと逆サイドの相手WBに対してSHがしっかり戻る事で対応していたのですが、それだと押し込まれる。
なので相手にプレッシャーをかけに行こうと前から捕まえに行くと後半の立ち上がりの様にバイタルエリアを空けてしまう。
これはこの試合通じて言えることですが金沢の拙攻の前に助かっていた部分が多く、セレッソは1点リードをしていましたが実際の所ゲームは全くコントロールできていませんでした。
そしてアディショナルタイムに入るとカウンターを受ける事となり、それで相手に与えたCKを跳ね返すもののセカンドボールの競り合いで関口が山藤を倒してしまいPK。
それを山藤が確実に決めアディショナルタイムに金沢が同点に追いつきました。
アディショナルタイムの92分にPKを与え、蹴るまでに2分ほどの時間を擁した事で最後の最後に97分にはブルーノ・メネゲウが再三狙っていた馬渡の後ろから相手最終ラインの裏に飛び出しGKをもかわしますがシュートは作田が身体でブロックしてノーゴール。
試合は2-2の引き分けに終わりました。
■その他
最後の最後にPKを与えてしまうというもったない試合となってしまいました。
ただ、ここまで結果は残しているとはいえこの試合も含めてここまで試合内容自体は上向いていないので、上手くリードしていたとしてもどうしてもこういう事も起こりえるだろうなという試合だともいえます。
基本的にどの試合もゲームをコントロールすることができていないですからね。
その辺りをどう考えているのか。サッカーはこれをやれば勝てるってものはありませんが、このチームにはやるべき事が沢山あるように思うのですが。
相変わらず被シュート数が多いですね。
返信削除2ゴールも高い個人能力からですし。
そろそろシュートチャンスを作らせない守備と、
再現性のあるチャンスメイクからのゴールが見たいです。
無理かなぁ。
コメントありがとうございます。
返信削除再現性、見たいですね・・・
再現性が無いからボールを失った時に守備のバランスを整えるまでに時間がかかってシュートまで持っていかれるし、攻撃でも個人技頼みになっちゃうんですよね・・・(苦笑)