2020年6月30日火曜日

リーグ戦再開に向け改めて今季のセレッソ大阪について

約4ヶ月の中断を経て、いよいよ7月4日からJ1が再開される。
今季のセレッソはこれまでと比べ対外的な評価も高く、また個人的にも大きなアクシデントさえなければチャンスだと考えていた。

しかしご存知の通り新型コロナウイルスという超ド級・地球規模のアクシデントが発生。なんとも言い難い不確定要素の多いシーズンとなるのだが、それでも今季のセレッソは面白いチームであることは間違いない。Jリーグ再開に向けて今季のチームの戦い方にまつわる注目ポイント、見どころをまとめてみよう。


■システムは4-4-2

布陣は昨季途中から定着した4-4-2を継続。各ポジションに2人以上の選手が準備されているので、選手を入れ替えながら今季の過密日程を戦うことになるだろう。
ヴェルディ時代のロティーナは複数の布陣を使い分けていたこともあり「セレッソもいくつかの布陣を使い分けないのか?」との声を聞くこともあるが、個人的には変わったとしても2トップの並びが縦関係になるだけの4-2-3-1になるぐらいで、基本的には4-4-2で行くだろうと考えている。
というのもこの4-4-2は守備時(ボールを持っていない時)の状態を指しているだけであり、守備時に最もバランスが良いのが4-4-2であることは間違いなく、さらにJリーグには4-4-2で対応できないほど立ち位置にこだわったチームも現時点ではいないからである。

戦い方のキーワードは「バタバタしない」「じっくり」。攻撃(ボールを持っている時)も守備(ボールを持っていない時)も焦らず落ち着いた展開を狙う戦い方となるだろう。

■相手をズラす

まず攻撃面についてだが、当然ながら攻撃(ボール保持)の最終目的はもちろんゴールを決めることである。
ではそのためにどうするのかを順序立てて考えていくと、ゴールを決めるにはシュートを打たなければならない。シュートを打つためにはゴール前でシュートを打つことができるだけの時間とスペース(空間)をつくり、そこにシュートを打つ選手を送り込まないといけない。そのためには相手の守備をずらさなければならない。となる。

そして「相手の守備をずらすためにどうするのか」というのがそれぞれのチームの戦い方(スタイル)。
個人技(テクニック)で勝負する方法、相手が準備する前にボールを運ぶ方法、テンポアップして混乱させる方法、流動的に動き回る方法など、とずらす方法はいくつかあるが、セレッソが行っているのはピッチの縦と横を広く・大きく使いじっくり自陣からボールを前進させずらしていく方法。
縦と横を広く使うことで、相手の守るエリアを大きくし、少しずつズレの幅を広げようとしているのである。

もちろんチャンスであれば、素早く一気に前線にボールを届ける攻撃を狙うが、相手の準備が整っている時はキーワードである「バタバタしない」「じっくり」に則り少しずつズレの幅を広げようとしている。

ここからは「バタバタしない」「じっくり」と相手のズレの幅を広げようとする攻撃(ボール保持しボールを前進させる)の注目ポイントを段階別にまとめてみよう。

■多彩なビルドアップ

まずは第一段階。「ビルドアップ」と呼ばれている部分について。
ビルドアップとは、ピッチを3分割した時の最も自陣ゴールに近いエリア(自ゴールがある方の3分の1でディフェンシブサードと呼ばれる)から、ハーフウェイライン周辺の真ん中のエリア(中間部分の3分の1でミドルサードと呼ばれる)へボールを運ぶ動きの事。
対戦相手がいる状況を踏まえて言うならば、相手守備陣形の一番前の列にいる選手(通常はFW)の手前(自陣ゴール側)から、相手守備陣系の一番前にいる選手(通常はFW)の後ろ(相手ゴール側)へとボールを運ぶ動きの事。簡単にいえば攻撃の一歩目の部分である。

セレッソはこの攻撃の一歩目のバリエーションが豊富にある。
この時の主役はGKとDFラインの4人とCH2人。彼らが、相手FWの人数(何人で止めようとしているか)、守備意識(どれぐらい止めようとしているか)、守備のやり方(どうやって止めようとしているか)によって、誰がどこにいて、どこでボールを受けて、どこにパスを出すかを変えているので、是非そこに注目してほしい。

特に見ていて面白いのが右SBの松田陸。
昨季最も成長した選手の1人で、特にこのビルドアップではキーマンとなっている。
松田自身がボールを持っている時はもちろん、松田ではない他の選手がボールを持っているときも、松田がどこにいるか。どこでパスをもらおうとしているか。に注目すると面白いのではないだろうか。

■左右非対称の組み立て

続いては二段階目、攻撃の組み立ての部分。
これを先程のピッチを3分割したエリアで言えば、ハーフウェイライン周辺の真ん中のエリア(中間部分の3分の1でミドルサードと呼ばれる)から、最も相手ゴールに近いエリア(相手ゴールがある方の3分の1でアタッキングサードと呼ばれる)へボールを運ぶ動きのこと。
対戦相手がいる状況を踏まえて言うならば、相手守備陣形の一番前の列にいる選手(通常はFW)の後ろから、守備陣形の2列目にいる選手(MF)と守備陣形の3列目にいる選手(DF)の間、もしくは3列目(DF)の背後へとボールを運ぶ動きのことである。

この組立の部分、セレッソは右サイドと左サイドで性質が異なる。
右サイドの特徴はオートマチック。
右SBと右SH、さらにはFWやCHは同じ場所に重ならないように、それぞれへのパスコースを消さないように、ボールの位置や他の選手のポジショニングによって、それぞれの選手がどこに立つかが明確に決まっており徹底されている。
フィニッシュに向けて最終的に狙っているのは「ニアゾーン」などと呼ばれている、ピッチを縦に5分割した時の大外(アウトサイドレーン)と中央(センターレーン)の間にある「ハーフスペース」の一番奥(相手ゴール近く)。ここにボールを運びフィニッシュにつなげようとしている。
さらにその上で今季は右SHに坂元達裕や西川潤など左利きのアタッカーが起用されている。組織的でオートマチックな組み立ての中で、ゴール方向へドリブルできてゴールに向かうボールを蹴ることができる左利きの右SHはアクセントとして有効。昨季以上にバリエーションが広がり、面白い攻撃が見られそうだ。

一方の左サイドは自由度が高い。
もちろん右サイドで行われている様な動きの最低限のルールは徹底されているが、昨季も左SHには清武と清武が怪我で離脱してからは柿谷というJリーグを代表する「個人で違いを作ることができる選手」が起用されていたように、セレッソの左SHは特別な才能を持った選手が入るいわばエースポジションとなっている。
そのためデザインされているのは左SHの選手が、フリーで前を向く状況を作ること。
基本的には左SBが外、左SHが内側という立ち位置になっており、右サイドでのオートマティズムと左SBの幅を取るポジショニングによって、左SHは相手の守備陣形の2列目にいる選手(MF)と守備陣形の3列目にいる選手(DF)の間で前向きでボールを持ちやすいように組み立てられているのである。
もちろん左サイドでも「ニアゾーン」と呼ばれる「ハーフスペースの奥」は狙っているが、清武や柿谷には間で前向きにボールをもたせることで、彼らが自由に判断できる状況を作りフィニッシュまで持ち込もうとしている。

■3列の帯からなる守備

昨季リーグ最少失点を記録したセレッソ。シーズン25失点はJリーグ史上2位タイの記録で、前半での失点数4は今後破られることは無いのではないかと思わせるほどの驚異的な記録である。

もちろん守備でも「バタバタしない・じっくり」は守られている。
ボールホルダーを含めた相手の選手が準備できていない状況であればもちろん高い位置からボールを奪いに行くが、相手が準備できている、整理できている状況になれば必要以上にはボールを奪いにいかない。それよりもこちらの守備陣形を整える。そして相手のパスコースを制限しながら相手の攻撃をスポンジのように吸収しボールを奪い返すという守り方になっている。

これを実現させるためにセレッソが採用しているのは「ゾーンディフェンス」。
しかしこのサッカーにおける「ゾーンディフェンス」はかなり難解である。もちろん既に理解している方もおられるだろうが、ある理由で非常にわかりにくくなってしまっているのだ。
「ゾーンディフェンス」はサッカー以外ではバスケットボールなどでよく聞く言葉だと思うが、バスケットボールにおける「ゾーンディフェンス」はゴール下を中心に2-3や1-2-1などの並びを作って、「あらかじめ決められた担当場所」を守るディフェンスだとされている。
しかしサッカーでは全くこの通りに当てはまるのは、CKなどセットプレーの守備のみ。通常の守備の場面における「ゾーンディフェンス」は、この説明の内容に当てはまらず、この理解では不十分である。
というのもサッカーの「ゾーンディフェンス」は、英語では「Zone Defense(Zone Defence)」とは呼ばれていないからである。
実際に英語で「Zone Defense(Zone Defence)」を検索すると出てくるのはバスケットボールのことばかりでサッカーのことはほぼ無し。サッカーの「ゾーンディフェンス」を検索するためには「Zonal Defending」と検索しなければならない。なんと言葉が違うのだ。
もしかするとサッカーの「ゾーンディフェンス」は、最初に翻訳した方が間違えたのかもしれない。

その「Zonal Defending」だが、「Zonal」を辞書で調べると意味は「帯の、帯状の」。つまりサッカーの「ゾーンディフェンス」は、バスケットボール式の「あらかじめ決められた担当場所を守るディフェンス」というよりも、「帯状で守るディフェンス」となるのである。

実際にセレッソの守備を見るとこれがよくわかる。
4-4-2フォーメーションのそれぞれの3列では、隣の選手との距離を常に一定にし連動して動いており、まさに3列の帯になっている。セレッソのゾーンディフェンスはこの3列の帯の精度、連動性がJリーグで最も高い。この3列の帯が網となり、この網のきめ細やかさこそが昨季のリーグ最少失点を記録した秘訣と言えるだろう。

しかしこの「Zonal Defending」(ゾーンディフェンス)だが、もちろん万能というわけではない。
「Zonal」の内側はきめ細やかな網がはられている反面、当然ながら「Zonal」の外側には網は張られていないからだ。
となると相手は「Zonal」の外側(網の外側)からシュートを狙う場面も増えていく。

そしてもう1つ。この網を張ることができるのは地上のみで空中に網を張ることはできない。
相手には「Zonal」の外側(網の外側)からクロスやロングボールを入れ、ゴール前での空中戦で勝負するという選択肢がある。空中戦勝負になるといくら精度の高い3列の帯を作っても効果は薄くやられてしまう場面もあるだろう。

そのためサッカーにおける「ゾーンディフェンス」(Zonal Defending)で結果を残すためには、これら2つの弱点をカバーする必要がある。つまり「相手のミドルシュートに適切に対応できるGK」と「空中戦で勝てる、高さと強さを兼ね備えたCB」が必須となる。

ここまで書くとお気づきかと思うが、セレッソには10年以上に渡ってゴールマウスを守り続けるキム・ジンヒョンと、Jリーグ最高レベルの強さと高さを持つマテイ・ヨニッチがいる。

3列の帯で作られた精度の高い網、ゴール前で跳ね返すマテイ・ヨニッチ、抜群のセーブ力を持つキム・ジンヒョン。セレッソにはこの3つが揃っているため強固な守備組織を形成することができる。そして最初に書いた今季も4-4-2で行くだろうと思わせる最大の要因である。

■その他

ところどころで個々の選手の名前は出しましたが、基本的には全体的な仕組みについてまとめました。
今回は実際の試合に対するレビューではない分どうしても小難しい内容になってしまうため、あまり踏み込まず、いつも以上に戦術的な部分の入り口周辺を意識して書いたつもりです。
リーグ戦が再開し実際の試合を観る際には、頭の片隅にでもこの内容を置いていただけると幸いです。


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