2020年2月24日月曜日

2/22 明治安田生命J1リーグ第1節 VS 大分トリニータ @ ヤンマースタジアム長居

スタジアムヤンマースタジアム長居主審東城 穣
入場者数15,535人副審武田 光晴、浜本 祐介
天候 / 気温 / 湿度曇 / 12.5℃ / 90%第4の審判員大塚 晴弘
VAR山本 雄大
AVAR五十嵐 泰之
セレッソ大阪C大阪
 
大分トリニータ大分
 
  • 監督
  • ロティーナ
 
  • 監督
  • 片野坂 知宏

<監督・選手コメント>

セレッソ大阪 ロティーナ監督、ブルーノ・メンデス選手、清武弘嗣選手、マテイ・ヨニッチ選手、キム・ジンヒョン選手(セレッソ大阪公式)
大分トリニータ 片野坂知宏監督、知念慶選手、香川勇気選手(大分トリニータ公式)

2020年明治安田生命J1リーグ開幕戦、本拠地ヤンマースタジアム長居で行われたセレッソ大阪対大分トリニータの一戦は1−0でセレッソ大阪が勝利。ロティーナ監督率いるセレッソは1年前の同じ日に行われた開幕戦と同じスコアで勝利した。

■メンバー

セレッソ大阪の先発メンバーは、1週間前のルヴァンカップでのメンバーをベースに、体調不良でチームを離れていたキム・ジンヒョンが復帰し、左SHには清武を起用。藤田は引き続きベンチ外となったためルーカス・ミネイロがベンチ入りし、GKの控えには茂木秀が入った。

大分トリニータの先発メンバーは、こちらもルヴァンカップのメンバーをベースに入れ替わったのが2人。U21枠で左WBとして先発した高畑に代わって新加入の香川を起用。また右シャドゥには昨季ガンバから電撃加入し以降はWBとしてポジションを掴んだ田中達也が起用された。

■2ヶ月越しのセカンドレグ

昨季の最終戦がアウェイでの大分戦。そして今季開幕戦がホームでの大分戦。という事でリーグ戦では連戦となる大分との対戦。
選手も変わっているしそもそもシーズンが異なる。なのでプレビューでは「あまり気にならない」という風に書いたが、試合を振り返って考えると、この連戦は昨季最終節の試合を踏まえているかの様な、まるで2ヶ月越しのセカンドレグの様な印象すら感じさせる試合だった。

昨季の最終節を簡単に振り返ると、大分のビルドアップに対してセレッソは敵陣から網を張りサイドに誘導。そしてそこでWBに対してSBがアプローチをかける事で完全に蓋をした。またさらにセレッソのビルドアップに対して大分はプレッシングを狙うもセレッソはCBとCHの2-2の形+松田を使うことでプレス回避に成功。
スコアは2-0だったが片野坂監督が試合後に「セレッソは個の能力、強度。判断、そして組織としての規律、バランスなど。全てがJ1トップレベルであり、今季の最後の試合で我々が目指すチームのスタイルを学ばせてもらいました。試合は0-2でしたがスコア以上に完敗でした。」と語るほどの試合だった。

そして今季は両チームともに多少の選手の入れ替わりはあるが継続路線。もちろんこの試合はリーグ戦の単なる1試合だし、なんだったらここから試合が続いていく開幕戦なのだが、片野坂監督にとっては普段の1試合以上の、開幕戦というだけではない意味がある試合だったんじゃないかと思う。それほどきっちりと準備してきたことを感じさせる試合だった。

■大きな大きな先制点

開始早々の4分に瀬古が知念のプレッシングを受けボールを失い決定期を作られた様に危ない場面もあった試合立ち上がりだったが、先制に成功したのはセレッソ。清武のCKをブルーノ・メンデスがニアで合わせ8分に先制する。
このプレーは8分ながらCKが続いていたので4本目。それまでの3本は全てショートコーナーだった。そして今季は練習試合、プレシーズンマッチでもショートコーナーを多用しており、ショートコーナーで相手を前に引き出したところをインスイングのボールで大外ファーを狙うというパターンがほとんどだった。そんな中での尹晶煥時代にソウザがよく蹴っていたニアへの速くて落ちるボールということでより効果があったんだと思う。
こういったセットプレーで得点が奪えるとチームとしてはかなり助かる。この試合にとってもこの先制点は本当に大きなものだった。

■片野坂監督のセレッソ対策その1、プレッシング

大分前線からのアプローチ
大分の布陣は3−4−2−1。ということでセレッソはCBとCHの2-2でビルドアップを行う。
これに対して4分に瀬古が知念にボールを奪われた様にボールを奪いにきた大分。CHはCHで捕まえながら、2CBに対しては1トップとシャドゥの1枚でアプローチ。もう1枚のシャドゥはSBへのコースを切るポジションをとり、逆サイドのSBへはWBが前に出てきて捕まえるという形を取ってきた。
先制後にピッチリポーターから坂元と松田のポジショニングについて指示が出ているとのコメントがあったが何を指しているのかよくわからなかった。
ビルドアップを助けるために松田が下がる
CBとCHでのビルドアップがうまくいかない状況を見て松田が下がるポジションを取る様になる。
しかしこれではマッチアップが噛み合う形になる。全部が1対1なので坂元やメンデス、清武の個人の力で一気にボールを運ぶ場面もあったがビルドアップとしては合わされている分上手くいっているとはいえず、また大分に押し込まれることも増えていったため前半は最後までボールを運ぶことに苦労したままだった。

■片野坂監督のセレッソ対策その2、サイドに走らせる

大分のボール非保持で準備してきたのがプレッシングなら、ボール保持で準備してきたのがサイドの奥に走らせることだった。
サイドの奥に走る
大分のボール保持、CHの1人が最終ラインに落ちるミシャ式4バック化に対して前回同様網を張るようなポジションを取るセレッソ。昨季最終節はこれでサイドに誘導されサイドで蓋をされることで思うようにボールを運べなかった大分だったが、この試合ではその網をかいくぐるようにサイドに誘導されてもそこからサイドの奥にFWやシャドゥを走らせて長いボールを入れるという形を多用した。特に多用したのは知念を松田の裏に走らせる形だったのだが、その理由は後ほど。
長いボールなので当然ボールを失うことも増えるが確実に敵陣にまでボールを送ることができる。そしてボール非保持が機能している。ということでセレッソ陣内にボールがある、セレッソが押し込まれる時間が増えていく。

■片野坂監督のセレッソ対策その3、サイドチェンジ

大分がセレッソを押し込む時間が増えていくと大分のプランは次のステップに。
右から左へのサイドチェンジ
右サイドから左サイドの大外、香川へのサイドチェンジを多用する。
セレッソのボール非保持の4-4-2は徹底的に中を締める。なので大外は必ずフリーになっておりこのボールは比較的通りやすい。
SBとCBを狙う
このサイドチェンジが入るとセレッソは中に絞っていた松田が出て行くことで対応する。
すると大分の左シャドゥが広がったCBとSBの間に飛び出してくる。大分が狙っていたのはここだった。
ただしセレッソも昨季のリーグ最少失点チーム。なのでこのスペースを簡単に使わせたりはしない。
セレッソのやり方ではSBが引き出された時にこのCBとの間を埋めるのはボールサイドのボランチ。ということでデサバトが町田についてカバーするようになる。
しかしデサバトのポジションはCH。この形を何度も徹底されると間に合わない場面も出てくる。
遅れるとヨニッチが出て行かざるをえない
そうなるとヨニッチがカバーするしかなくなる。そうなるともちろんデサバトは最終ラインに入るのだがその場所はCBの位置。
つまりセレッソの最終ラインで最も強いヨニッチがゴール前から引き出されてしまうのだ。
大分が右から左へのサイドチェンジを多用していたのはこのため。もちろん単純にサイドチェンジからCBとSBの間を攻略出来るなら最高だが、もしそれが無理でもヨニッチを中央から引き出すことができればOKという判断である。
最初の長いボールで知念が松田の背後に走り込む場面が多かったのもこれと同じでヨニッチを引き出したいからだろう。

セレッソのブロックは簡単にスペースを与える様なことはほとんどないので何とか守り続けてはいたが、いわば骨格を殴られているような状態なのでこれを何度も続けられると流石に厳しい。
そして片野坂監督は30分頃に町田と田中のポジションの入れ替えを指示。骨格を殴るパンチをより強いものにしようとしてきた。

■ロティーナ監督の対応、坂元のポジショニングその1

坂元がSBの外側へ
この町田と田中のポジションチェンジの直後、35分頃にロティーナ監督は相手のサイドチェンジに対して坂元にSBの外側に下がるポジションを取るように指示する。これで香川には松田が出て行くのではなく坂元がそのまま対応する。SBとCBの間に飛び出そうとする田中に対しては松田が対応するように変える。
根本的な対応ではないが、まずは坂元のポジショニングを変えることで骨格を殴るパンチに対してガードを堅くすることで対応。これで前半は1-0とリードしたまま折り返す。
33分にブルーノ・メンデスが迎えたGKとの1対1を決めてくれていたらもっと良かったのは間違いないが、片野坂監督が仕込んできたセレッソ対策でペースを握られながらも1-0のまま折り返すことができたのはポジテイブだった。

■ロティーナ監督の対応、坂元のポジショニングその2

前半終盤の修正でガードは堅くしたセレッソ。ただ、これだけでは「我慢して耐える」しかない。もちろんそれでもいいし耐えれるのかもしれないが、ロティーナは後半の頭からもう1手打ってきた。
ロティーナ監督が打った手はボール保持の改善。前半から困っていた根本的な原因はビルドアップが安定せずボールを失う機会が多かったからである。
坂元のポジショニング
変わったのは坂元のポジショニング。前半は松田と同じレーンで重ならないように、松田が3バックの右の様な内側にいるなら坂元は大外。CB-CHのビルドアップで松田がサイドに出れば坂元は内側にいた。
しかし後半に入るとビルドアップはCB-CHで松田は右のワイドへ。そしてさらに坂元を松田と同じレーンの高い位置に立たせた。
これによって大分は前半と同じような形で1トップ1シャドゥでCBにアプローチをかけても、香川の前には坂元がいるので香川は松田のところまで前に出てアプローチをかけにいくことができなくなる。つまり坂元のポジショニングで香川をピン留めし、ビルドアップで松田をフリーにしたのだ。
これでボールを前進できるようになったセレッソ。後半は京都戦で見せたような松田からバイタルエリアへの斜めのパスという形も見られるようになる。
セレッソがリードしているのでリスクをかけて攻めるようなことはしないし、大分はビハインドなので前がかりになるので攻め込まれる場面ももちろんあるのだが、これによって前半の様な防戦一方ではなくセレッソも攻め込む時間を作る五分の状況に。前半の終盤から大分のサイドチェンジからの形にはガードを堅める方法を持っているのでセレッソにとってはこれでかなり楽になった。

■力押ししかなくなった大分

大分の優勢からロティーナ監督の修正により試合は五分の状況へ。しかしセレッソはリードしているのでこれでOKである。
63分〜
そこで大分は63分に町田に代えて渡を投入。前線のFW色を強めクロスに対して勝負できる人数を増やす狙いだろう。
そしてセレッソも奥埜に代えて柿谷を投入。ポジションは右FWなのでシステムは同じ4-4-2だが、坂元が松田の外側をカバーするときには柿谷はその前に入って5-4-1気味になる様な動きも見せた。
87分〜
さらに70分に大分は田中に代えて野村、75分にセレッソが清武に代えて豊川を投入し柿谷が左SHへ移動。続いて86分には木本に代えてルーカス・ミネイロを投入。最後は87分に大分が香川に代えて星を投入と両チームが次々と交代策を見せるも大分は前半までに見せていたような構造的優位に立つ様なプランは無くセレッソが着々と時計を進めて行く。
最後の最後に知念が放ったシュートはポスト、キム・ジンヒョンの背中とボールが当たりあわやという場面になるもそのまま試合終了。
開幕戦であり、大分との2ヶ月越しのセカンドレグともいえる一戦はセレッソ大阪の勝利に終わった。

■その他

スコアは開始早々の1点のみだったが両チームがが順に手を打ってくる本当に面白い一戦だった。
片野坂監督が打ってきたセレッソ対策は見事だったが、最後に勝負を分けたのはロティーナ監督の引き出しの多さだったのではないだろうか。
今回も片野坂監督は1点も取れず勝利することができなかったので、また次回の対戦では様々な手を打ってくるだろうし、今回セレッソは仕掛けられた側なので次回はセレッソがまた何かを仕掛けてくるかもしれない。
ロティーナ監督のサッカーは打ち合いみたいな展開になりにくいので、目標を達成するにはこういった拮抗した試合で勝ち点3を奪って行くことが特に序盤は重要となる。
開幕戦ではそのミッションをコンプリートできた。ここからさらに勝ち点を積み上げて行くことに期待したい。



1 件のコメント :

  1. 「セレッソ対策はいかにヨニッチをサイドに引きずり出すかだ」
    シンプルな結論ですけどシーズン前半はどこもこれやってくる感じですかね。
    松田ではなく片山をSBに使って右サイドのオーバーラップを抑制するようなゲームが増えてくるのかもしれません。

    しかし、坂元ホントいいですよね。
    右SBが上がれないような展開になっても彼と右FWの選手でかなりチャンス作れそう。

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