2017年10月27日金曜日

10/25 第97回天皇杯全日本サッカー選手権大会準々決勝 VS 大宮アルディージャ @ キンチョウスタジアム

天皇杯 準々決勝
2017年10月25日(水)19:03KO 金鳥スタ

スタジアムキンチョウスタジアム主審飯田 淳平
入場者数4,526人副審武部 陽介、作本 貴典
天候 / 気温 / 湿度晴れ / 16℃ / 66%第4の審判員武田 光晴
追加副審今村 義朗、三上 正一郎
スターティングメンバー
セレッソ大阪セレッソ大阪
 
大宮アルディージャ大宮アルディージャ
 
  • 監督
  • 尹 晶煥
 
  • 監督
  • 伊藤 彰
セレッソ大阪セレッソ大阪
大宮アルディージャ大宮アルディージャ
今回対戦今季平均
データ項目セレッソ大阪大宮アルディージャセレッソ大阪大宮アルディージャ
FK18111612
CK5947
PK0001
シュート710912
警告/退場2/00/02/02/0
公式記録(pdf) http://www.jfa.jp/match/emperorscup_2017/schedule_result/pdf/m82.pdf

<監督・選手コメント>

セレッソ大阪 尹晶煥監督
大宮アルディージャ 伊藤彰監督

セレッソ大阪 福満選手、藤本選手、関口選手、秋山選手、山村選手
大宮アルディージャ 大屋選手

セレッソ大阪 福満選手、澤上選手(Jリーグ公式)
大宮アルディージャ 瀬川選手(Jリーグ公式)

セレッソ大阪 福満選手、藤本選手、関口選手、秋山選手、山村選手、茂庭選手、澤上選手(セレッソ大阪公式)
大宮アルディージャ 河面選手、塩田選手、マルセロ選手(大宮アルディージャ公式)

第97回天皇杯準決勝、キンチョウスタジアムでのセレッソ大阪対大宮アルディージャという週末のリーグ戦と全く同じカードとなった一戦は、セレッソ大阪が2-0と勝利。2011年以来、6大会ぶりとなるベスト4進出を決めた。

■メンバー

会場まで含めて週末のリーグ戦と全く同じ組合せとなったこのカード。セレッソ大阪はこれまで同様カップ戦用のメンバーへとターンオーバー。前節のリーグ戦の先発メンバーから山口を除く10人が入れ替わる形になっている。
前線にはリカルド・サントスが入り、トップ下には福満。SHは右に関口、左に澤上。ボランチは秋山と山口が組い、最終ラインは右から酒本、藤本、茂庭、田中。GKは丹野が務める。
ベンチには、キム・ジンヒョンを始め、丸橋、木本、水沼、山村、清武、柿谷とリーグ戦でのファーストチョイスのメンバーが並ぶ。また山村については、10月5日に負った左膝内側側副靭帯損傷からの復帰。先日までの清武同様に順をおって徐々にという形になっていくかと思われるが、リリース全治3週間とのことだったのでちょうどそのぐらいだった。

一方の大宮アルディージャだが、こちらは前節のリーグ戦の先発メンバーから11人全員を変更。
左SBにはセレッソ下部組織出身の河面が入っている。
11人全員となったのはマルセロ・トスカーノがリーグ戦前節が出場停止だったという側面もあるが、ここまで大きくメンバーを変えたのは、当然ながら大宮にとってはJ1残留がかかる週末のリーグ戦の方が重要度はずっと上というだからだろう。
ただ、この日の大宮は人選というよりも配置でいくつかサプライズがあった。
まずはマルセロ・トスカーノのポジション。この夏に済州ユナイテッドから加入して以降、FWまたは2列目で起用されてきた選手だが、この日はいったポジションはなんとボランチ。ちなみにこれまでのキャリアではボランチの経験もあるそうだ。
そして同じく中盤では、岩上が入っていたのは右SH。本職はCHの選手だがサイドでの起用となっている。
さらに最終ラインでは右SBにはこちらもCHの金澤。そしてCBには大宮では左SBでの出場がほとんどだった大屋が起用されている。
ただ、この布陣には仕掛けがあった。

■大宮の仕掛け

マッチアップ
大宮の布陣は4-4-2。セレッソの布陣も4-4-2系の4-2-3-1。守備の時は福満が前に出て4-4-2になるのでもう4-4-2同士と言っても良い。
ただ、大宮の布陣として書いた4-4-2だが、これは守備の時の形でしかなく、攻撃の時は形を変えていた。
3バック化
大宮がボールを持つと中心にいるボランチの2人はそのままで、その他の選手が時計回りにグルッとポジションを動かし、3-4-2-1の形に変形させてビルドアップを行っていた。
大宮が普段からこの形を使っているのかどうかはわからないが、少なくともリーグ戦の前節柏戦ではやっていなかった。

もしかすると他の試合でやっていたかもしれないので、もしそうなら申し訳ないところだが、一つ気になるのが、この形はその前節で対戦相手だった柏が使っていた形だということ。
4-4-2で守る大宮に対して、柏は左SBのユン・ソギョンを前に出してWBの様な位置を取らせ、左SHのハモン・ロペスを中に入れてシャドゥストライカー的なポジションにそして右サイドの大外、WBには右SHの伊藤純也がずれるという3-4-2-1的なポジションにずれる。
これでファーストディフェンスとなる2トップ脇から4-4-2のブロックに侵入して、SBとCBの間、ハーフスペースに立つシャドゥ、大外のレーンに立つWB、そして逆サイドに展開してミスマッチという形で、大宮は4-4-2のブロックをかなり動かされてしまっていた。
もしかすると、前節に実際に対戦したところで次の対戦相手セレッソは4-4-2で守る。ならばということでやったのかもしれない。
なぜこういった書き方をするかというと、大宮のこの3バック変形は少し付け焼き刃感があったからだ。

この布陣で、マルセロ・トスカーノのボランチ起用は試合後の監督コメントにもあるように、ユーティリティ性が高いということで、ゲームコントロールを求めての起用だということだったようだが、4-4-2だと右SBにあたる金澤と左CBにあたる大屋は3バックでは両サイド。ボランチ経験も豊富なこの2人が3バックの両サイドに入りビルドアップの起点となることで、4-4-2を攻略しようという狙いがあったのだろう。

■カップ戦組の弱点

大宮のこの3バック変形は、立ち上がりからセレッソのゴール前に迫る場面を作った。
この試合で最初にボックス内でシュートチャンスを迎えたのは大宮、4分のことだった。
大宮4分のチャンス
そのきっかけとなったのが上のマルセロ・トスカーノから岩上へのサイドチェンジ。
大屋が2トップ脇をドリブルでボールを持ち運んでという、狙い通りの形でセレッソのブロックを動かしてからマルセロ・トスカーノに渡す。そしてこの時に大前が斜めに走ることでミスマッチの効果を産んで大外の岩上は完全にフリー。岩上からのクロスを清水がボレーという形だった。
清水のシュートは茂庭がブロックしたが、大宮にとっては3バック変形の狙い通りの形だといえる。
その後も5分にマルセロ・トスカーノが下がって金澤とポジションチェンジを見せたり、8分には今度は金澤の持ち上がりから裏抜けの清水に長いボールを入れてCKを獲得している。
その他にも序盤はマルセロ・トスカーノが中央でとにかくフリーでボールを持つ場面が多かった。いわゆるボールホルダーにプレッシャーをかけきれていない状態だ。

この形をつくられていたのは、セレッソの、特にこのカップ戦組の弱点が表れていた部分でもあった。
ルヴァンカップ準決勝のファーストレグや天皇杯の名古屋戦でもあったが、このカップ戦組はディフェンスラインを上げることがあまりできない。
それはCB2人の問題なのか、それとも天皇杯新潟戦の延長戦であった藤本と丹野のミスから起こったの失点シーンの様なGKの問題なのか。個人的にはそのどちらもが影響しているとは思っているが、とにかくDFラインを高い位置に設定できず、また押し上げもあまり出来ない。
ボランチがフリーに
そしてこの試合での大宮はボール保持の時に1トップ2シャドゥがいる。
となるとどうしてもボランチはシャドゥに引っ張られて下がってしまいがちになる。となると相手のボランチがフリーになるのだ。
大宮がボールを持って攻め込む場面が増えていたのはここに原因があった。
また、サッカーは攻守が連動しているので、この状態は当然攻撃に影響する。
この状態はボールを奪っても前線が孤立しているため、ボールを奪ってもなかなか攻撃に結びつける事ができなかった。
前線の選手がボールを納められない状態が続くと個人の問題にしてしまいがちだが、普通はどこかに原因があることが多い。

■大宮の付け焼き刃感

試合の立ち上がりは大宮がセレッソ陣内へとボールを運ぶことが多かったが、10分を過ぎた頃からセレッソも大宮陣内にボールを運ぶ場面が増えてくる。
そのきっかけになったであろうプレーが5分の福満が右サイドの裏へ飛び出した場面。
ここは大屋と交錯して倒れるもノーファール。大宮のゴールキックになった場面だったが、このプレーに1つのヒントはあった。
4-4-2への変形
最初に書いたように、大宮は攻撃の時に4-4-2からボランチ以外の選手が時計回りにズレて3-4-2-1に変化する。ということは守備の時は3-4-2-1から反時計回りにズレて4-4-2に変化するということでもある。
つまり守備の時もポジション移動が必要になっているということだ。
以前、ホームの鹿島戦の時にポジションバランスについて書いたことがあるのだが、今年のセレッソは4-4-2のポジションを攻守でほとんど崩さない。これが攻守の切り替えの速さにつながっている。同じ場所で攻撃と守備をするんだから普通に考えても当たり前のことだ。
しかしこの試合での大宮は攻撃と守備でポジションを移動する。ということはその分、攻守においてタイムラグがあるということでもある。
これを踏まえて、先程の5分の福満のプレーに戻ると、5分に福満が抜け出したのは大屋がいなくなって河面が戻ってくるべきポジションだった。
ここにセレッソはボールをうばってすぐに、河面が戻る前にボールを入れた。最終的に一番近い位置にいた大屋が対応したが、河面は戻ってこれていなかった。
そして10分にも福満が右サイドを抜け出してちょっとムリ目のシュートを放っているのだが、それも同じ場所。さらに11分のリカルド・サントスが折り返した形は、福満が今度は河面のすぐ後ろでポストプレーをしたのでそこに最終ラインに戻る途中の河面が対応した。なので最終ラインの他の3人は4バックのポジションに戻っていたが、左SBの河面だけがいない。そこをリカルド・サントスが抜け出している。

このズレはなにもここだけでなく逆サイドでも起こっている。
試合後のコメントで澤上が、「前半からあそこが結構あいていたので…」と話していたのは大宮の3バックから4バックへと変化する過程で金澤と岩上の関係のことを言ってるのだろう。
22分にセレッソが今度は左サイドから持ち込むのだが、岩上は金澤がズレてくるまで後ろが恐いので前に出られない。なので田中はフリーになりやすい。ということで田中が起点になってボールを運ぶ、そこから澤上にボールを出したところで金澤が対応するも、澤上が下がって田中が追い越すという形をつくったので、岩上と金澤のポジションがグチャグチャになり、セレッソがスローインを獲得した。

セレッソの先制点となったのはこのスローインから。田中のロングスローをリカルド・サントスがフリック、これは大宮がなんとかカバーしたが、そのクリアボールを拾った田中が入れたクロスを福満がヘディングで合わせて23分にセレッソの先制ゴールとなった。
このゴールは福満のシュートが見事で、塩田は全くのノーチャンス。とはいえ、金澤が福満に前を取られているので、金澤がここでディフェンダーとしての仕事をしないといけなかったのが難しかったのかもしれない。

で、大宮の付け焼き刃感だが、攻守でポジションを移動する場合は、この移動する時間についてどうするかというのが最大のポイントになるのだが、大宮はここがほぼ整備されていないように見えた。なので付け焼き刃感を感じた。
例えば、同じような形で変化する柏。そしてボランチの1枚を落として、両ワイドは張ったまま。ただしインサイドハーフにあたる選手がハーフスペースに突撃するという3バック変形を得意とするマリノス。この2チームなんかは、ファーストディフェンダーをとにかく早く決めて、高い位置からボールホルダーにアタックすることで相手の時間を奪うことでこのスペースを使わせなかったりする形。
大宮にも高い位置からアプローチをかけようという意思はみられたものの、グループとしての完成度は低く、にはこういった形にはほぼ持っていくことはできなかった。

そしてこの先制前後からセレッソの守備にも少し変化があった。
2トップの守備位置が少し後ろになり、ボランチのラインに合わせる。
これにより、試合の立ち上がりほど、マルセロ・トスカーノに自由にボールを持たれる場面は少なくなった。
38分にリカルド・サントスがマルセロ・トスカーノからボールを奪ってカウンターに持っていった場面なんかはそれを象徴するシーンだ。
また2トップの裏で受けられた場合は、山口を中心にきっちりアプローチをかける。大宮にすると大前と黒川のシャドゥがもう少し下がったりしながらボランチを止めて欲しかった部分はあるとは思うが、山口が自分で、そして秋山を使いながら大宮のボランチを自由にさせないようにと意識してプレーしていた。
秋山は攻守においてポジショニングにまだまだ難があるのだが、山口と並べると山口が動かしてくれるのでかなりバランスは良くなる。

そしてセレッソの守備が安定していく一方で、大宮3バックの両サイドがボールを運ぶ場面はかなり少なくなったのも付け焼き刃感を感じる部分だった。

■セレッソの追加点

後半、大宮のキックオフで始まると、大宮は前半と同じように河面を高い位置に出して、前半同様の3バックで左サイドを攻め込もうとするが、それを山口が奪うと前線にロングパス。リカルド・サントスと大屋が競り合う裏を福満が出ていってボールを運ぶ。この最初のプレーも前半と同じ形だ。
そしてその後、大宮が攻め込む時間が少し続くのだが、これもセレッソのディフェンスラインが押し上げられないから。ただ、セレッソは人数をかけて守るので、大宮の攻撃はスクランブル的な形でなんとかというものでしかなかった。

そして53分、セレッソは丹野からのロングボールを福満が抑えて右サイドに。これは黒川がシャドゥから左SHへとポジション移動するのに、最初にシャドゥの位置で守備に加わったのでスライドが遅れてしまい、大宮がなんとかボールを奪うもセレッソがそのセカンドボールを奪い返した。
そして右サイドで攻め込んだところで切り返してから関口がクロス。これを澤上が頭で合わせてゴール。澤上の今シーズン初ゴールで54分にセレッソが2-0とリードを広げる。
セレッソが特に大きく大宮を動かしたわけではないのだが、大宮のセンターバックのポジションがグチャグチャで、澤上は金澤と普通に1対1で競り合って、そして競り勝ってゴールを決めた。

■セレッソが危なげなく勝利

2点リード、そして時間の経過と共に大宮の変形にもセレッソがなれてきたこともあって前線からのプレッシングも機能し始める。そして攻撃でも早く縦に入れる形で大宮陣内にボールを運んでいた。
60分〜
ここで大宮は60分に、黒川に代えて前節の柏戦で復帰した瀬川を投入する。
瀬川はそのまま黒川と同じポジション。守備では左SH、攻撃では左シャドゥに入る。
ここから大宮もかなり積極的に攻めてこようとするが、セレッソは同じ弱点を狙う。
63分の酒本から関口にスルーパスを出し関口がクロスを入れた形は、まさにポジション移動の弱点をついたものだ。

瀬川はスピードもあって個人技もある。そして中だけでなくサイドに開いたり、下がって受けたりと黒川よりも幅広く動いていた。64分に瀬川が飛び込む岩上に対して入れた斜めのクロスは久々にミスマッチをいかしたもの。岩上がフリーなのは田中の戻りが遅れたからでは全く無く、田中はその前に大前と戻っている。なのでその外側で岩上がフリーに慣れたし、岩上の後ろを追っていたのは左SHの澤上だった。
83分〜
セレッソは78分に酒本に代えて丸橋を投入。田中が右にまわって丸橋が左SBに。そして83分には関口に代えて山村を投入。
山村は完全復帰に向けてという意図を持った投入なので、最終ラインではなく前線に入る。

大宮は前がかりになってくるのだが、この頃にはもうセレッソも大宮の形にも十分慣れている。
特に大宮はミスマッチを活かすような形もないので、シンプルに前に前にというものでしかなかった事もあって、セレッソに問題をつきつけるような事は無かった。

86分に大宮はゴール前でFKを獲得。大前が直接狙うも丹野がセーブする。
大前のキックも少しコースが甘かったのだが、FKはキックの精度も大切だけど、やはり駆け引きが大切なんだなあとつくづく思わせる場面だった。
個人的には中村俊輔が本当にスゴいのはこの駆け引きなんだと思っている。もちろんシンプルにキックもスゴいんだけど。
90分〜
90分にセレッソは澤上に代えて清武、大宮はマルセロ・トスカーノに代えて山田を投入。

大宮はさらに前がかりになって、アディショナルタイムには瀬川のスルーパスから大前がシュートを狙うも丹野がセーブ。
そしてそのまま試合終了。2-0でセレッソが勝利した。

■その他

試合を通じてみると、危なげなく勝利したというところでしょうか。
途中にも書いたように、カップ戦メンバーではどうしてもラインが低くなるのだが、この試合ではそれが人数をかけた守備となっていた部分もあった。
これで2011年以来の準決勝進出が決定。ここから先の試合はリーグ戦終了後となるので、リーグ戦のメンバーが中心となってくるだろう。
対戦相手は鹿島アントラーズをPK戦で下したヴィッセル神戸。会場はヤンマースタジアム長居に決定した。
随分先の試合となるが、ルヴァンカップに続いてファイナルに進むチャンスは十分あると思う。

そして大宮についてだが、試合後のコメントを見ると、伊藤監督はこの3バック変形に手応えを感じている様子も伺えるので、もしかしたら週末のリーグ戦でも使ってくるかもしれない。
ただどちらもメンバーが変わるとはいえ、もしそうであっても3日しかない準備期間でこの試合で見えた弱点は修正されるとは思えないけど。





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