スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 家本 政明 |
入場者数 | 29,845人 | 副審 | 数原 武志、勝又 弘樹 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 22.6℃ / 26% | 第4の審判員 | 日比野 真 |
メンバー
スターティングメンバー |
- 監督
- 尹 晶煥
- 監督
- 高木 琢也
試合経過
-
90'
-
86'
- 83'
-
72'
- 71'
- 70'
- 58'
- 54'
-
37'
-
30'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 14 | 9 | 16 | 15 |
CK | 4 | 5 | 5 | 4 |
PK | 0 | 0 | 0 | 0 |
シュート | 12 | 12 | 11 | 9 |
警告/退場 | 0/0 | 1/0 | 1/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 尹晶煥監督V・ファーレン長崎 高木琢也監督
セレッソ大阪 柿谷選手、丸橋選手、水沼選手、マテイ・ヨニッチ選手
V・ファーレン長崎 中村選手
ワールドカップイヤーによる連戦もセレッソ大阪にとっては一区切りとなる明治安田生命J1リーグ第13節。本拠地ヤンマースタジアム長居にV・ファーレン長崎を迎えての一戦は3-1で勝利。厳しい連戦の最後を勝利で飾った。
■メンバー
ACLに参加し残念するもグループリーグ敗退。しかし鹿島アントラーズはグループリーグを突破した関係で、この試合が連戦の最終戦となるセレッソ大阪。中2日での一戦だが、杉本、清武、ソウザ、木本と主力に怪我人が続出するなか前節から先発メンバーの入れ替えは1人のみ。柿谷が2試合ぶりの先発でヤン・ドンヒョンと2トップ。中盤以降は、SHは福満と高木、山口とオスマルがボランチ、最終ラインは松田、ヨニッチ、山下、丸橋と前節と同じメンバーが並ぶ。
福満はセレッソ加入後初の2試合続けての先発。ここにきて水沼とのポジション争いが激しくなってきた。
一方のV・ファーレン長崎は、前節の鹿島戦で徳永、中原、翁長らの主力を休ませていたこともあって彼ら3人は先発復帰。しかし古巣対決となる黒木は直近6試合で全て先発していたこともあってベンチ外となり新里が2試合続けての先発。また前線でもファンマがベンチスタートとなり、前節ゴールを決めている鈴木武蔵、中村慶太、澤田の3人が2試合続けて同じセットでの先発となっている。
■1トップ2シャドウを選択した長崎
長崎は3バックをベースにしているが、前線の形は2トップと1トップを使い分けている。高木監督がこの試合で選択したのは1トップ2シャドウ。この布陣を選択した狙いを探る。
長崎の守備 |
この理由はもしかすると連戦ということで運動量が厳しくなるという長崎側の都合もあるのかもしれないが、対セレッソということで取られた方法なのだろう。
その1つは、セレッソのCBはボールを運ぶ能力がそれほど高くないということ。なのでCBを放置しても大丈夫だと考えた。一方でボランチからの展開は危険。なのでボランチに自由にプレーさせない、ボランチにボールを簡単に入れさせないための立ち位置だと考えられる。
そしてさらにいうと、対セレッソで最も注意しないといけないのがロングボールに対してのセカンドボール。
前から守備に行くということは長崎のボランチの位置が高くなる。となるとボランチとDFラインの間が開く可能性が高くセカンドボール争いで後手を踏む。実際に前々節の広島戦ではボランチの裏でセカンドボール争いで後手を踏んでしまっていたのでそこに対するケアという目的は大きかったのではないだろうか。
5-4-1への変化 |
つまり、長崎は前から取りに行ってセレッソに早いタイミングで長いボールを入れられそこでセカンドボール争いをするよりも、ボールを持たせて5-4-1でブロックを作る方がセレッソの攻撃を抑えることができるという判断を下したのだろう。
実際にセレッソの最初のチャンスとなった3分の山口のクロスに柿谷が飛び込むような動きを見せた形は、長崎が少し前へとアプローチをかけたところで松田から長いボールでヤン・ドンヒョンに出したところから始まっていたし、17分の丸橋のロングボールを福満が落としヤン・ドンヒョンがシュートまで持っていった場面は警戒していたセカンドボールの形。
こういう形を多く作られたくなかったのだろう。
こうした形を作られると、その局面に対してかかわる選手の数が少なくなる。
となると質の優位性が大きく影響する。その最少である1対1なら上手い選手の方が圧倒的に優位だから当然だ。
その状況をできるだけ作らせたくない。長崎にはそういった狙いがあったのだろう。
■長崎の攻撃
守備であまり高い位置からのプレッシングを行わず、低い位置で5-4-1のブロックも作る選択をしていた長崎。そうなるとボールを奪う位置が低くなるためショートカウンターはできない。鈴木武蔵を背後のスペースに走らせる |
またさらにこの時セレッソのCBが鈴木に対応するポジションを取るため、そこでできたスペースに澤田と中村の2シャドウを入れるという形も行っていた。
逆サイドに展開して1対1をしかける |
前半の序盤に関しては、このボール保持攻撃で大きなチャンスを作ることはなかったが、サイドチェンジからWBの翁長や飯尾が1対1で仕掛けるという形は見られた。
長崎は3バックの布陣なのでセレッソの4-4-2に対してミスマッチが起こりやすい形になっているが、その使い方としてはボールを保持しながら左右にガンガン振ってディフェンスラインのズレを狙うというよりも、逆サイドでフリーになっているオープンサイドにボールを展開しWBがしかけるというシンプルな使い方が多い。
ただ、このサイドで仕掛けた後のクロスに関しては色々準備があったようで、クロスボールをDFラインとGKの間などのゴールに近い場所に入れるというよりもCBの前のスペースにマイナス気味のボールを入れたり、中の入り方としては15分の場面の様に1トップの鈴木後ろ、マイナス気味のポジションにシャドウを入れたりしていた。
この15分の場面は右サイドの飯尾に対して丸橋が出ていったタイミングでボールサイドのシャドウのポジションを取っていた中村がハーフスペースに出る。その結果山下が引っ張られてヨニッチが鈴木と澤田の2人を見ないといけない状態を作っている。
結局は鈴木の後ろに隠れていた澤田がヨニッチの前に入ってクロスを受けるもトラップが流れてしまい、セレッソはことなきを得たが実はかなり危険な場面だった。
■質の優位性を活かしたセレッソ
こうした長崎の狙いが見える形で進んだ前半だったが、30分に柿谷がゴールでセレッソが先制する。対峙する高杉をアンクルブレイクに陥れ、GKとの1対1を冷静に流し込んだ柿谷のこの得点はまさに個の力。先程書いた言い方でいうとセレッソが質の優位性を活かしたものだ。
そしてこの優位性を生み出す原因となったのは、柿谷のディフェンスから。
セレッソのブロックを作る守備に対して長崎は縦に速い攻撃ができなかったのでボール保持する形に。しかしここで柿谷のディフェンスで徳永からボールを奪ったことで、柿谷は広いスペースで高杉と1対1の状況を作り出すことに成功した。
そしてその8分後の38分には今度は丸橋がゴールネットを揺らす。
長崎のスローインからのボール保持を柿谷が再びボール奪取。ここから仕掛けたドリブルで得たFKを得ると、そのFK丸橋がこれまでのキャリアで見たことが無いような美しい弾道で決めてみせた。
個人的にはFKは駆け引きが半分以上を占めていると考えているが、このゴールに関してはそんなレベルを超越しているもの。まるで中村俊輔のFKの様な美しい弾道だった。
■3点目を奪うために必要なのは
長崎は立ち上がりからとった戦い方を考えると、もちろん先制できればありがたいが0-0でもOK。できるだけその時間を長くしてどこかで仕掛けてワンチャンスをものにしようというものだったのだろう。しかしセレッソが前半38分で2点リード。
前半の残り少ない時間でも、後がない長崎は攻め手を強め、ハーフスペースに立つ澤田が43分に中原からのパスを受けシュートを狙い、またその後何度かは、澤田が大外に移動すると遅れてWBの飯尾がハーフスペースに入ってくるという鹿島戦などでも見られたボール保持攻撃での変化も見せていた。
そして後半に入ってスグの54分。長崎は中村のゴールで1点を返す。
右サイドで飯尾からのクロスはGKとDFラインの間ではなくマイナスか平行気味のボール。これに対してヨニッチが前に出て対応しようとするがかぶってしまいファーサイドで中村がフリー。胸トラップから豪快に蹴り込んだ。
このクロスはおそらく長崎は狙っていた。この試合では前半からクロスはGKとDFラインの間ではなく、この平行マイナス気味のボールを繰り返していたからだ。
そしてこの質のボールに関しては、確か昨季のルヴァンカップガンバ戦のファーストレグだったかでも指摘した記憶があるのだが、セレッソのディフェンスはサイドからのクロスに対してもボールを基準にポジションをとり、その前後は個人の判断でカバーすることが多いのでどうしても空きやすい。
確か今季のACLホームでの広州戦でもこの位置を狙われている。
サイドを崩されるパターンの1つであるSBとSHの関係も含めて、クロスに対する対応はもう1段階整備する必要はあるだろう。
ただ後もう1つ気になったのは2点リードとなってからここまでの試合の進め方。
特にハーフタイムを挟んでからの後半は、もう少しこの2点リードを活かした戦い方。
ボール保持攻撃がそれほど得意ではない長崎にボールを持たせて、セレッソはきっちり4-4-2のブロックを作って対応。そして出てきたところを狙って追加点を奪う。
という形を取ったほうが良かったのではないだろうか。
しかし、後半開始から見せていたのはまるで0-0のような、チーム全体が前後に行き来する形。
その結果、後半開始直後からカウンター気味の攻撃を受けることもあったし、この失点場面では飯尾にボールが渡る前に4-4のブロックが下がりすぎていたのでセカンドボールを拾われ、長崎はボランチがフリーで右サイドに展開している。
試合を決める3点目が欲しいから普段通り攻めるということなのかもしれないが、先程のリードを活かした戦い方のほうが3点目を決めるためにも実は効果的。
攻守がつながっている以上、攻めればボールを奪われた時にピンチになるし、安易にボールを奪いに行けば自陣にスペースを作る。
折角そんなリスクを負う必要がなく、逆に相手が無理をせざるを得ない状況を作り出しているにもかかわらず、それを活かせていないチームに少し幼さのようなものが見えた。
■攻勢をかける長崎と対応するセレッソ
58分〜 |
そのままのポジションに入る。
CBの間でポジションを取る |
まずビルドアップ、ボール保持の時は安易にポジションを動かずCBの間にいること。
前半の鈴木は裏抜けを行うことでDFラインを動かし澤田と中村のスペースを作っていたが、デカくて強いファンマの場合はあえて中央にいることでCBを引っ張りSBの間を広げようというもの。WBも出てくるのでここで安易にSBが外を気にすると一気にこの間が開いてしまう。
セレッソの守備陣は簡単にスペースを空けることは無かったが、少し厄介な存在ではあった。
しかしここでSBがWBに引っ張られないということは外側は空き、WBは簡単にボールを受けることができる。
クロスに対してファーサイドにポジションを取る |
高さと強さがある選手を大外に置く。
これは今季首位に立つサンフレッチェ広島でパトリックが見せている形。
SBはCBに比べて高さがないのでかなりの確率で競り勝てるし、足下のボールに対しても優位に立てる。そしてクロスがCB近くに入ったとしてもファーサイドから助走をつけて飛び込むことが出来る分優位に立てる。「質の優位性」を活かすための方法だ。
攻撃でサイドチェンジを多用する場合、FWが常にポジションを移動しなければいけなくなる文ここまで徹底するのは難しいが、この日の長崎やサンフレッチェ広島の様にサイドチェンジをあまり使わない攻撃の場合はかなり効果的。そういえば尹晶煥監督率いるサガン鳥栖時代の豊田陽平もこのプレーを得意としていた。
60分のファンマからのパスを受けた中村のシュートは足下でつなぐ形だったが、ファンマは松田とマッチアップしていたので簡単に起点になれたし、70分の中原、ファンマと連続でシュートを放った場面はファンマがファーサイドにいることでCBが外に引っ張られ、そこで空いたスペースに逆サイドからWBの翁長が入ったところから始まっている。
72分〜 |
そして72分にセレッソは柿谷と福満に代えて山村と水沼を投入、5-4-1にする。
システムの変更はマッチアップをあわせる意味もあるだろうが、先程のファンマの動きを考えると3枚目のCBが欲しいという判断だろう。実際にこの試合で長崎の攻撃の中心だった右サイドからのクロスの時にファーサイドにいるファンマは山村とマッチアップするようになった。
2-0のままだと相手にボールを持たせてという形も可能だが、1点を返されてしまうと勢いにも乗ってくるのでそう入ってられない。はっきりとした対応策だ。
前線に関しては、コンディションについては柿谷の方が良さそうだったし、ヤン・ドンヒョンは流石に疲れもあってか後半にはいるとボールを引き出す動きもかなり少なくなっていたし、ボールもあまり収まらなくなっていたが、困った時のロングボールのターゲットと考えるとやはりおいておきたいのだろう。
ただ、柿谷にとっては悔しい交代かもしれないが、こうなったのは後半頭からのゲーム運びにも要因があるので自業自得の面もある。
この形になると必然的に引き込んでカウンターを狙うという形になるセレッソ。一方長崎は75分に中村が外にでて飯尾がハーフスペースに入る動きから飯尾がシュートを放つもセレッソがしっかりと対応している。
83分〜 |
本来はもう1つ前、シャドゥが適正だとは思うが、アタッカーをWBに起用してきた。
すると86分、キム・ジンヒョンからのゴールキックにヤン・ドンヒョンとチェ・キュベックが競り合った後のこぼれ球が高木に渡るとドリブル突破。徳永と高杉を抜き、慌てて新里がアプローチにきた直前に逆サイドの水沼にパス。これを水沼が流し込みセレッソが追加点。3-1とリードを広げた。
90分〜 |
しっかりと守り抜き、そのまま3-1でセレッソの勝利に終わった。
■その他
少しゲーム運びには課題を感じさせたが、優位性をうまく活かし、連戦の最後を勝利で終えることが出来た。ここまで失点も多く、勝ちきれない試合もあったが、かつて無いほどのこの厳しい連戦の中で主力メンバーに怪我人を出しながらも6勝5分2敗の勝ち点23という結果はまずまずだといえる。
ちなみにこの勝ち点はACL出場チームの中で最多だ。
あと、この試合で最後に片山を入れたのはどういう狙いがあったのか気になるところ。
なぜなら、本文中にも書いたように次回の対戦相手となるサンフレッチェ広島のパトリックはこの試合のファンマが見せたようなポジショニングを取る。
個人的にはそのパトリックに対応するために広島戦では、最初から片山を右SBに起用するのも面白いのではないかと感じているのだが・・・
分析お疲れ様です。鳥栖時代の尹さんも豊田にその戦術をさせてましたが、あの時のセレッソはタカなと身長が高い選手がサイドで競ったんでしたっけ?右サイドバックは片山、左ボランチにオスマルを入れて競らせるの方法か、あるいは未だ一度もないですが、最初から3バックで行くのが対広島戦術になりますか?
返信削除コメントありがとうございます。
削除ボランチに競らせていたのは自陣からのロングボールで、クロスなどでは当時のやり方は今の守備よりもずっと人を捕まえるやり方だったので当時とは少し違いますね。