スタジアム | Shonan BMW スタジアム平塚 | 主審 | 福島 孝一郎 |
入場者数 | 12,173人 | 副審 | 五十嵐 泰之、今岡 洋二 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 24.3℃ / 90% | 第4の審判員 | 中村 太 |
メンバー
- 監督
- 曺 貴裁
- 監督
- 尹 晶煥
試合経過
- 90+4'
-
87'
- 86'
-
78'
-
69'
-
40'
- 6'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 10 | 11 | 14 | 15 |
CK | 3 | 11 | 4 | 5 |
PK | 0 | 0 | 0 | 0 |
シュート | 9 | 21 | 9 | 12 |
警告/退場 | 0/0 | 1/0 | 1/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
湘南ベルマーレ 曺貴裁監督セレッソ大阪 尹晶煥監督
湘南ベルマーレ 大野選手、秋野選手
湘南ベルマーレ 大野選手、山口選手、石原選手、齊藤選手(湘南ベルマーレ公式)
セレッソ大阪 ソウザ選手、キム・ジンヒョン選手、清武選手、山口選手、丸橋選手
明治安田生命J1リーグ第27節、セレッソ大阪と敵地Shonan BMW スタジアム平塚で湘南ベルマーレとの一戦は、圧倒的に攻められていた湘南がワンチャンスを活かして先制するも、ラストプレーでセレッソが同点に追いつき1-1の引き分けに終わった。
■メンバー
今月頭にルヴァンカップの2試合を戦っているため20日弱の間に3度目の対戦となる両者。湘南ベルマーレの先発メンバーは前節から5人を入れ替え。ワントップには先発としては骨折をした第14節の清水戦以来となるイ・ジョンヒョプ、シャドウには小川と梅崎、ボランチには第25節以来の先発コンビとなる秋野と齊藤、WBには岡本と杉岡、3バックには山根、坂、大野が並びGKには秋元。
神戸でルヴァンカップに出場しているため出場できなかった小川以外にも秋野、齊藤のボランチコンビはルヴァンカップでの2試合にも出場していなかった2人だ。
一方セレッソ大阪の先発メンバーは、負傷離脱となっていた杉本と清武が先発に復帰。前線で山村が加わる1トップ2シャドウで、ボランチ以下は3バックでのいつものメンバー。山口とソウザがボランチに入り、左右のWBは丸橋と松田、3バックにはオスマル、ヨニッチ、木本、GKにはキム・ジンヒョンが入る。
ただ、杉本と清武が先発復帰したものの一方で柿谷はベンチ外。ベンチには水沼と高木のサイドアタッカーはいるもののFWはいないという状況で、さらにこの試合のファーストプレーで杉本が負傷してしまい交代。セレッソは前線のメンバーが揃わない状況がまだまだ続きそうだ。
■杉本が負傷
6分〜 |
セレッソとしては杉本が下がってしまうことは戦力的に大きな痛手。またこの試合についても速い時間帯の予定外の交代は交代枠を使ってしまうというだけでなく1週間準備したプラン的にもかなりの痛手だ。
■湘南のプランを破壊する30分間(1)
湘南は戦い方がハッキリしているチームで、コンセプトはハイプレス+ショートカウンター。ルヴァンカップファーストレグではそれにまんまとハメられたのだが、この試合でも当然同じ形で試合に挑む。
湘南の守備 |
3バックは4バックに対してミスマッチを作ることができる布陣ではあるが、守備の時はそのミスマッチを逆に活用されることもある。
なので湘南にとってはマッチアップがハッキリしていて、マッチアップ相手に対して距離を詰めやすい(アプローチをかけやすい)対3バックの方がやりやすいのだろう。
セレッソは開始10秒で杉本が怪我したことで高木が投入される6分までは10人。また高木が投入されてからも前線の立ち位置が変化したこともあって慣れるまでに若干の時間を要したが少しづつセレッソの湘南対策が見えてくる。
セレッソのビルドアップでのポジショニング |
強いていうならWBぐらいで、最初から前に出て行かないのは相手WBに距離を詰められないため。
これは同じく相手が3バックだった磐田戦でも見られた。
セレッソはこの立ち位置からビルドアップを行うのだが、特徴的だったのが山村をめがけて蹴るロングボールの出処をキム・ジンヒョンにしていたこと。
セレッソの3バックは普段どおりWBやボランチへのショートパスでビルドアップを始める。しかしここで詰まれば躊躇なくキム・ジンヒョンに戻し、キム・ジンヒョンが山村へのロングボールを蹴る。
湘南がイ・ジョンヒョプめがけてロングボールを蹴る時は3バックからがほとんどだったが、対照的にセレッソは3バックからのロングボールはほとんど無かった。
このロングボールから最初にセレッソが攻撃に結びつけたのはまだ高木が入る前の5分のこと。
そこからしばらくは湘南がセカンドボールを回収し攻撃をしかける場面があったが、9分のロングボールではセカンドボールは拾えなかったものの敵陣深くでのスローインに。
11分にはキム・ジンヒョンからのゴールキック(バックパスからではなく)からオスマルが先に頭にあてそのボールを山村が収め、丸橋のクロスへとつなげた。
■湘南の攻撃とセレッソの守備
11分の丸橋のクロスからの攻撃で最終的にセレッソが右サイドを完全に崩し、松田のクロスを山村が合わせるというセレッソにとって最初の決定機を作るが、湘南は既にそれまでの間に決定機を作っていた。10分の湘南のチャンス |
この試合でのセレッソのシャドウは、湘南のDFラインにボールがある時は1トップ脇とボランチ脇の中間的のどちらにも行くことができるポジションをとっていたが、最終ラインからWBやボランチにボールがでると両シャドウをきっちりボランチ横に戻して5-4-1で守る形をとっていた。
ただそうなると、戻る前のポジションである1トップ脇は空けてしまうことになる。
ここに誰がいつ出るのか、また1トップはどこまでプレスバックするのかがはっきりしなかった。
秋野が裏に飛び出したイ・ジョンヒョプにボールを出した場所がちょうどそこ。
ボールホルダーである秋野がフリーだったので飛び出すイ・ジョンヒョプとのタイミングをきれいに合わせることができていた。
ただこの1トップ脇のポジションにボランチが出ていくとボランチと最終ラインの間にスペースを作ってしまうことになる。20分の梅崎のシュートはまさにそんな形でボランチが前に出ることでボランチと最終ラインのスペースが広がり、そこに下がって受けようとする梅崎に対してオスマルは前にでてついていったが、ワンタッチで落とされ秋野が前向きで最終ラインに対して仕掛ける形を作られた。
湘南はセレッソの5-4-1に対してこの形での狙いは持っていた様で、秋野や梅崎はさかんに5-4-1の4の前、5-4の間でボールを受けようとしていた。
■湘南のプランを破壊する30分間(2)
こうして湘南がいくつかチャンスを作っていたが、15分にロングボールに山村が競り勝ちセカンドボールを拾ったように、セレッソはキム・ジンヒョンからのロングボールで前線に起点が作れるようになっていた。湘南としては前から3人で行きたいが行けばキム・ジンヒョンに戻されそこからロングボールを蹴られる。後ろでで跳ね返すことができれば問題ないが、ここで競り負け、またシャドウやボランチにセカンドボールを拾われるとなるとかなり厳しい。セレッソはDFラインでボールを持つときには先の図のようにソウザや清武が下がり気味のポジションを取るが、キム・ジンヒョンが蹴るときにはセカンドボールを狙うポジションに移動していた。
なので湘南の前線3人は前から行きにくくなる。しかしゆるくなればボランチやWBにつけられるだけでなく、21分に前に出てきた岡本の裏、山根の脇に高木を走らせるパスをオスマルが出したように一気に背後を取られるパスを出される。
このボールを出されると湘南はかなり厳しい。
さらにその1分後の22分にはセレッソが左サイドに開いた清武からのスルーパスで高木が抜け出しGKと1対1の場面を作る。
高木のシュートは秋元にセーブされてしまうが、ここまで両チーム合わせても最大のチャンスだった。
■湘南のプランを破壊する30分間(3)
こうしてセレッソが敵陣にボールを運ぶ回数を増やし始めると、今度は湘南のビルドアップに対して前線3人を中心にしてアプローチをかけはじめ、24分、26分と2度続けて高い位置でボールを奪いショートカウンターを繰り出す。ロングボールで起点を作られ、グラウンダーのパスでも湘南DFの背後のスペースを使われ、さらにビルドアップまで引っ掛けられるという、攻撃も守備も相手ゴールに向きで行うことをチームのスタイルとしている湘南にとってことごとくそのベクトルを逆に向けられるプレーが続くとさすがに厳しい。
28分に梅崎のパスからイ・ジョンヒョプがワンタッチで背後に出すも誰も出ていけなかったように徐々に攻撃でも前に出ていく選手が少なくなり、その直後のキム・ジンヒョンからのゴールキックを山村がそのままトラップしてシュートを放ったように守備でもルーズな場面が見られるようになる。
32分に高木と山村の守備でのポジションチェンジが乱れたことで、下がってきた梅崎のパスから秋野が抜け出しシュートという10分の場面に近い形を作られるが、前半の湘南のチャンスらしいチャンスはこれが最後。
30分以降、湘南はプレッシングに行けなくなり、セレッソはロングボールを使わずにビルドアップができるようになる。ちなみに湘南のボランチ脇でソウザと下がってきた清武が受けるというビルドアップの立ち位置は前半と立ち上がりと変わっていない。
押し込み始めるセレッソ |
おそらくセレッソとしては速く攻めるというよりも押し込むことを狙っていたのだろう。
押し込んでしまえば湘南はシャドウとワントップのイ・ジョンヒョプの距離が離れてしまう。
そうなると湘南が攻撃を仕掛けるには、イ・ジョンヒョプがとんでもないキープを見せるか、ボールを奪った位置で湘南がボールをキープするかのどちらかを行いシャドウが1トップの近くに移動する時間を作るしかない。しかしイ・ジョンヒョプはヨニッチに潰され、ボールを奪った所では押し込まれてしまっているのでポジションバランスは崩れ周囲にはセレッソの選手も多数いるためボールを奪い返されてしまう場面が続出する。
40分〜 |
小川のいた湘南の右サイドは、ソウザ、丸橋、オスマルがいるセレッソの左サイド。この3人に高木、清武が絡むことでセレッソの誰か1人は浮いてしまう状態になっており、湘南はブロックを下げてゴール前のスペースを消すしか方法が無くなっていた。
そんな状態でソウザのミドルという飛び道具があることを考えると、曺貴裁監督は決断の早い監督ではあるが、後5分待てばハーフタイムという5分が待てない状態だったのだろう。
■セレッソにとって計算外だったのは
後半も押し込むセレッソ |
先にも書いたが、セレッソは速く攻めるというよりも押し込むことをチームとして優先していたのではないかと感じた。
攻撃としては手数をかけて攻めるよりも相手が下がって守備を固める前に速く攻め込んだほうがよりシュートに持っていきやすいし得点もしやすい。しかしその反面ボールを失う回数も増える。
一方でこの試合の様に遅攻にはなるが押し込んで試合を進めると、相手が守備を固める時間ができる分得点する難易度は上がるが、湘南がボールを奪う回数は減りまたその場所はかなり自陣深い位置になる。さらに両シャドウは完全にサイドに押し込められポジションバランスが崩れ1トップは孤立。ボールを奪ってもカウンターを繰り出せなくなる。
この試合で湘南のディフェンシブサードでのパス成功率はわずか53.3%(リーグ平均74.8%)。湘南はカウンター型のチームなのでロングレンジのパスが多く今季平均で69.1%とそもそもディフェンシブサードでのパス成功率は低い傾向にあるのだが53.3%はその水準を遥かに下回る数字。
これだと確率的には、奪い返したボールの2本に1本しかつながっていないということであり、ディフェンシブサードからミドルサードへとボールを運ぶのに2本以上のパスが必要な状況ではほぼボールを失っていたということだ。
湘南をこういった状況に追い込んでいたセレッソだったが計算外だったのは、この展開でゴールを奪えなかったことだろう。
先に書いたように湘南が守備を固める分ゴールへの難易度は上がる。しかし前半から山村、高木。そして後半に入っても53分の山村の折返しに清武がボレーで合わせた形や80分のオスマルのスルーパスで丸橋が左サイドを抜け出し折返しを清武が合わせた場面、83分のソウザの個人技突破からのクロス、そのこぼれ球を松田が折り返しヨニッチが合わせた場面など何度も決定機を作っていた。
また重要な得点源となっているCKも今季の1試合平均5.0本を大きく上回る10本を獲得し、ここからも惜しい場面を何度も作っていた。
78分〜 |
その結果が87分の失点。
湘南のFKはセレッソが難なく跳ね返したが、そのこぼれ球を松田がつなごうとして中途半端に柔らかいボールを中央に入れてしまうというミス。
これを奪われ最後は大野にボレーを決められてしまった。
まさかの展開となったセレッソはこうなるとオスマルを前線に上げパワープレーを行うが湘南も完全に守備を固め、またセレッソが前がかりになっていることでカウンターでボールを運び時間を消化しようとする。
セレッソはチャンスを作れないでいたが、最後の最後でこの試合11本目のCKを獲得。
キム・ジンヒョンも上がってのCKは大混戦となるがその中で最後のこぼれ球をソウザが蹴り込みゴール。
ラストプレーで同点に追いつき試合は1-1の引き分けに終わった。
■その他
サッカーでは「決めるべき時に決めないと…」と言われることも多いが、特性上先制点が非常に大きな意味を持つ競技なので、比較的拮抗した試合も含めて幅広く使われる言葉になっている。しかしこの試合に関して言えば、かなり純度の高い「決めるべき時に決めないと…」という試合だったのではないだろうか。
立ち上がりにアクシデントがあったが、セレッソは偶然や展開に恵まれたものではなくきちんと手順を踏んで湘南のストロングポイントを出させないようにしていき、30分にはキックオフ時点とは全く別のチームにしてしまうことに成功していた。
ルヴァンカップのセカンドレグで後半から湘南が下がる選択をしたのと同じ様に見えるかもしれないが、この試合では湘南が下がる選択をしたのではなくセレッソに下げさせられた。この違いは大きい。
内容的に湘南にとってはかなり厳しい試合だったと思う。
押し込んでからの展開はどうして個人能力に依存してしまっていたり、セットプレーに頼らざるを得ないという長期的な改善点はあるが、試合の運び方としては万全に近いもの。試合では相手もあることなので「もうしょうがない」「長いシーズンにはこういう試合もある」と割り切るしかない試合だったと思う。
勝てなかったことをネガティブに捉えるよりも、アディショナルタイムのカウンターをキム・ジンヒョンが防ぎ、ラストプレーで同点に追いついたことをポジティブに考えるべき試合だろう。
繰り返すが、勝ち点3は奪えなかったものの運び方も含めた内容としては今後に希望をもたせるかなり充実した試合だったと思う。
0 件のコメント :
コメントを投稿