2019年7月13日土曜日

明治安田生命J1リーグ 第19節 vs 名古屋グランパス プレビュー

2019年7月13日 19時00分:ヤンマースタジアム長居

 予想スタメン

延長までもつれ込んだ天皇杯2回戦から中2日で迎える明治安田生命J1リーグ 第19節、セレッソ大阪は本拠地ヤンマースタジアム長居で名古屋グランパスを迎える。

■前回の対戦

前回の対戦は3月2日に敵地パロマ瑞穂スタジアムで行われた第2節。試合終盤に赤崎に2点を奪われ、2-0でリーグ戦で今季最多失点及び、最大得点差となった2試合のうちの1つだった。

都倉が移籍後初先発となり3-4-2-1のトップ下で起用。柿谷・清武がシャドゥで並び右WBには舩木が2試合連続スタメン、そしてボランチには奥埜とソウザという組み合わせて挑んだセレッソ大阪。
ジョー、シャビエルなどのタレントが豊富な名古屋だが、注目ポイントは開幕戦で鮮烈なデビューを飾ったシミッチをどう封じるのかというところだった。

ロティーナがとったシミッチ対策は左ボランチのシミッチに対して右シャドゥの柿谷が常に右側(シミッチにとっては左側)からアプローチをかけること。
このやり方だとブロックを作った時にも左シャドゥの清武よりも右シャドゥの柿谷がより内側となり、さらに清武よりも前に出ることになるので、非保持の形としては5-4-1とはならないのだがそれでもOK。シミッチのの左足を消すために常に右側からアプローチをかけ続けた。
これによって、開幕戦は49本の縦パスを入れたシミッチだったがこの試合では半分以下となる19本。シミッチにとって左側からアプローチを受け続けた結果、ほとんどのパスは右側へのパスとなり、シミッチ対策としては一定の効果を挙げている。
これにより名古屋の攻撃はなかなかスピードアップできず、ボールを保持するものの攻めあぐねるという展開となった。

しかしこの試合が行われた第2節の時点ではセレッソの攻撃もまだまだ。特にビルドアップに問題を抱えており、せっかく右サイドに逆足WBとして舩木を配置しても、その舩木に時間を与えることができないので不発。
名古屋は守備の時にSHが高い位置に出てそれに連動しようとボランチも動くので時折ボランチの裏にボールを入れることは出来ているのだがフィニッシュまで持ち込むこともほとんど出来なかった。
またさらに69分にはカウンターで千載一遇のチャンスを迎えるも都倉のヘディングは枠外に。これが勝負の分かれ目となった。

その後セレッソは勝負をかける交代を行うが、名古屋は後半に左SHの和泉が柿谷が前に出ることで空くスペースでボールを受け始めボール運びが徐々にスムーズになった影響からか交代で入った水沼はシミッチへ右側からアプローチをかけるやり方は取らなかったこともあり、シミッチの縦パスから最後は赤崎に決められ失点。さらにアディショナルタイムにはビルドアップのミスから再び赤崎に決められて2-0となった。

■名古屋グランパス

開幕から前回のセレッソ戦を含め3連勝。その後もFC東京、鹿島には敗れたものの勝ち点を重ね上位にとどまっていた名古屋だが第12節の川崎戦で引き分けると、ここからリーグ戦7試合で2分5敗と急ブレーキ。現在リーグ戦では2ヶ月近く勝利が無い。そして7月3日に行われた天皇杯2回戦でも鹿屋体育大学に0-3と完敗を喫している。
昨季もそうだったが名古屋は勝つ時期、勝てない時期がハッキリわかれる。
この不思議な傾向は、以前著名なブロガーのらいかーるとさんがおっしゃられていた「風間監督は監督ではなくコーチとして優秀だ」ということに尽きるのではないだろうか。
風間監督のチームは「止める・蹴る」という代表的なフレーズが象徴するようにパスをつなぐ攻撃的なサッカーだというイメージがある。
がしかし、実際の戦い方を見ていると実は結構変わっている。

例えば昨季前半の勝てない時期。この時期はとにかくショートパスを繋いで相手を押し込み中央突破を狙うようなチームだった。勝てなかったのはその分相手の守備も中央に固まるから。そしてそこでボールを引っ掛けられると面白いようにカウンターを食らっていた。

しかし後半戦に入ると突如として勝ちだした。
勝ちだした理由はおそらく攻撃の組み立て方が変わったから。それまではショートパスで相手を押し込む戦い方をしていたが、この時期は主にパスを繋いでいるのはミドルサードの中盤だった。そしてここでボールを動かしながら相手に隙ができると一気に縦パスを入れて攻撃を加速。アタッキングサードでは手数をほとんどかけず一気にシュートまで持ち込むことでジョーの爆発力が活きた。
この縦パスを出していたのが、夏に加入したエドゥアルド・ネットと丸山。この2人がキーマンだった。
がしかし後半戦も終盤に入るとまた勝てなくなった(セレッソは負けたが)。これは名古屋の変化に他のチームが気づき対策を行うことができたからだろう。

そして今季。序盤戦で勝利していたころの名古屋のサッカーのポイントは「即時奪回」だった。それを象徴するデータがアタッキングサードタックル数と敵陣タックル数。
アタッキングサードタックル数は前節までのリーグ平均2.5回/試合なのに対して名古屋は4.2回/試合。敵陣タックル数もリーグ平均の5.9回/試合に対して名古屋は8.0回/試合と大きくリーグ平均を上回りダントツのトップである。
この戦い方のキーマンとなっていたのは今季加入した前へのボール奪取力は日本でトップクラスの米本と、第5節からポジションを掴んだ長谷川アーリアジャスール。米本は言わずもがなだが、長谷川アーリアジャスールも前線でハイプレスをかけそこからのショートカウンターで輝くことは2014年のセレッソ在籍時、フォルランがチームに合流する前のACL開幕戦、柿谷の1トップ、長谷川アーリアジャスールトップ下という布陣で存在感を発揮していたプレーを思い起こすと納得だろう。
しかし今は勝てなくなった。これは結局ゴール前のスペースを消されると難しいという問題が解決していないことと、即時奪回でボールを奪い返しにいくぶんその動きの中で中盤にスペースを産んでしまうから。取りに行くことで相手の攻撃のスイッチを入れてしまうのだ。

ここまでを振り返ってもわかるように、風間監督のサッカーはかなり属人的である。
前回対戦時のプレビューでも書いたが、チームは個の集合体であるという考え方なのだろう。
なので、例えば中央突破に手こずるのであれば、監督が主導して組織として幅をどう作るかという形のアプローチはほとんど取らない(もちろん全くやらないわけではないだろうが)。
行うのは個々がより精度を高めるためのアプローチ。そのかわり組織によって個々の特徴が発揮しにくい状態にもしないし、個々がやりたいこと、できることを制限もしない。それがチームで発揮できるかどうかだけが判断材料となる。
だからこそ積極的に補強に動くし、選手が加わることでチームが大きく変化するのではないだろうか。
監督としての成果は結果のみで評価されるのかもしれないが、個人的にはこの考え方は非常に興味深いし、面白いなあと感じている。

■プレビュー

セレッソ大阪の先発メンバーだが、おそらく前節から変化は無いだろう。奥埜、木本、瀬古は天皇杯で先発し、木本は90分、瀬古に至っては120分、さらに水沼、藤田も長い時間プレーすることになったが、ここは層が厚くないので仕方がない。デサバトが復帰する可能性もあるが、今週頭のトレーニングではまだボールを触っていなかったので難しいのではないかと思われる。

一方の名古屋グランパスの先発メンバーだが、こちらは天皇杯を7月3日に終えているので披露面での不安は無い。がしかし、前節丸山が復帰したものの再び離脱となってしまったように最終ラインには怪我人がでておりかなり厳しい状態となっている。
そんな中で予想されるのは、前節丸山が交代後に使っていた3バック。宮原、中谷、吉田という宮原は世代別代表でCBの経験があるとはいえSB・CB・SBという並びの3バックで、その前にはエドゥアルド・ネット。さらにその前に米本とシミッチ。そして両ワイドにはマテウスと和泉。2トップは長谷川アーリアジャスールとジョーという布陣になりそうだ。
ただ、おそらく試合の中でこの布陣通りの並びになっていることはほとんどないだろう。
ボール保持ではエドゥアルド・ネットがCBに落ちてマテウスと和泉がSH。米本とシミッチがボランチ。宮原と吉田はSBになる4-4-2化。ボール非保持ではマテウスと和泉が最終ラインに落ちて中盤には米本、エドゥアルド・ネット、シミッチが並ぶ5-3-2となるのではないだろうか。
これであればボール保持での強度を保ちながら、ボール非保持もSHきっかけでボランチが動かされる可能性も減る可能性もある。

セレッソとしてはまずボール保持、ビルドアップでWBを狙いたい。この2人は本職ではない上に前に出たい。なので動かすことができるはずで、これをきっかけに3バックの両脇にいるSBを動かすという形でつなげていきたい。そうなればブルーノ・メンデス、奥埜、そして大外からの水沼、清武にチャンスが訪れるはずだ。

一方ボール非保持だが、これはいつもと変わらずブロックで封鎖しサイドチェンジを封じたい。
名古屋は先に書いたように3-1-4-2というよりもおそらく4-4-2傾向の強い布陣だと思われる。そして起点となる選手にシミッチ、エドゥアルド・ネットといるが、サイドに誘導したあとここをどう捕まえておくかがポイントになるだろう。
彼ら2人は視野も広くプレービジョンも豊か、そして左足のキックの精度も高くレンジも広いので自由にさせると押し込まれてしまう。
おそらく押し込まれてもある程度対応できるかとは思うが、ジョーの高さ強さやセレッソにコンディション面の不安があることを考えるとできるだけその時間は短くしたい。

天皇杯では序盤のCKのチャンスで山下が何度も足を滑らせていたようにピッチコンディションも難しいという状態は続くだろうが、理想は90分間、できるだけ長い時間試合をコントロールし勝ち点3を奪いたい。それができるだけのチーム力はあるはずだ。


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