スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 福島 孝一郎 |
入場者数 | 21,562人 | 副審 | 今岡 洋二、西村 幹也 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 11.2℃ / 41% | 第4の審判員 | 谷本 涼 |
メンバー
- 監督
- ロティーナ
- 監督
- 篠田 善之
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 ロティーナ監督清水エスパルス 篠田善之監督
セレッソ大阪 柿谷選手、水沼選手、清武選手、丸橋選手、藤本選手
清水エスパルス 竹内選手、河井選手、大久保選手、金子選手、六平選手(清水エスパルス公式)
今季のホーム最終戦となる明治安田生命J1リーグ第33節。セレッソ大阪と清水エスパルスの一戦は清水に先制点を許すも後半の2得点で逆転勝ち。
今季初の逆転勝ちで藤本康太の引退試合に花を添えることができた。
■メンバー
セレッソ大阪の先発メンバーは前節より2人入れ替え。外れたのは木本と鈴木孝司で、木本はコンディション不良とのことで瀬古が第25節以来の先発。そして鈴木孝司に代わって途中出場で復帰した清武が先発。それに伴い前節の清武投入後と同様に柿谷がFWで起用された。リーグ戦での柿谷のトップでの先発は第3節広島戦以来となる。また今季いっぱいでの現役引退を発表した藤本康太が昨季第28節以来となるトップチームでのベンチ入り。
8月31日に全治4ヶ月の大怪我をしているのでプレー出来る状態ではないが(実際にドクターのOKも出ていなかったそうだ)最後のホームゲームということでベンチ入りを果たした。
一方、清水エスパルスの先発メンバーは前節から1人入れ替え。外れたのは前節トップ下で先発した中村慶太で、今節は負傷から復帰した河井がそのまま同じポジションで出場。ボランチのへナト・アウグストはコンディションに問題を抱えているため先発を外れる可能性もあったが、前節同様に先発起用。負傷から復帰した六平がベンチスタートとなっていた。
■ほぼ完璧だった立ち上がり
キックオフからドウグラスの頭をめがけてロングボールを入れるという普段通りの立ち上がりで試合に入った清水だったが、立ち上がりから試合のペースを握ったのはセレッソだった。立ち上がりのボール前進 |
自陣からボールを繋ぐセレッソに対して清水は前線からボールを奪いに行きたい。ということで瀬古に対してSHの金子がアプローチをかけるが、セレッソはおちついてキム・ジンヒョンを経由し金子の頭を越えるパスで丸橋へ。この場面ではセレッソの左SH清武は内側にポジションをとっていたが、代わりに柿谷が左サイドに開いていたので、当初、清水は金子・エウシーニョそしてセレッソは丸橋・柿谷と2対2の同数だったが、金子が前に行ってしまったので1対2。
柿谷がドリブルで一気にアタッキングサードまでボールを運ぶことができた。
食いつくSHの背後を狙う |
なぜなら逆サイドの西澤も同じ様なプレーをしていたからで、セレッソが藤田を最終ラインに落として3バック化、ヨニッチをフリーにしてボールを届けた時にそのヨニッチに対して西澤が猛然とアプローチ。しかしそうなると松田がフリー、松田に対して慌てて松原が寄せると水沼がその背後に出ていくという形も何度もあったからだ。
食いつかなくともサイドを攻略される |
行かなければヨニッチがドリブルで持ち出して来て内側のSB-CB間にポジションを取る水沼を使われる。3分にペナルティエリアすぐ外で水沼が倒されセレッソがFKを獲得するが、その起点となったのはこの形だった。
ボランチの前をあけてしまう清水 |
なので清水はその内側に入ってくるSH、特に左SHの清武はボランチのへナト・アウグストで捕まえようという約束ごとがあったのだろう。マンツーマンでは無いがへナト・アウグストが比較的早めに清武を捕まえようとしていた。
しかしセレッソはビルドアップで自在に清水の1列目の後ろまでボールを運ぶことが出来ていた。そんな状況でボランチの1枚がSHをマークすると当然セレッソのボランチは空く。藤田、ソウザを竹内1人で見なければいけなくなるからだ。
なのでセレッソはソウザ・藤田を経由してSBから清水のボランチとCBの間に斜めのパスを入れる形をつくることができていた。
そしてその結果、清水は後ろで守るしか無いという状況になっていた。
■まさかの失点
こうしてほぼ狙い通りの形で試合に入ることが出来たセレッソだったが、先制したのは清水。セットプレーからだった。18分、清水2本目のCKはニアに低いボール。これを松原がフリックし中央でごちゃごちゃっとしたスクランブル状態を作られる。この状況にいち早く反応したのがエウシーニョ。エウシーニョのシュートがキム・ジンヒョンの手を弾きゴールネットを揺らし、今季前半4失点目は2008年に大分が記録した年間24失点を上回ってしまう25失点目となった。
清水にとってみればかなり難しい立ち上がりとなっていたのでしてやったりの先制点だっただろう。
セレッソにすれば完全に試合をコントロール出来ていただけにまさかの失点だった。
この失点のあとセレッソは少し浮足立つ様なプレーが続いたが、徐々にペースを取り戻していったのはポジティブだった。
清水はへナト・アウグストが清武を気にしているのでどうしても守備の1列目と2列目(4-4-2の2と4の間)が開く。この状況は変わらないのでそこを使ってセレッソがボールを運ぶことができていた。
セレッソのやり方だと必要以上に前線に人数をかけないし、やり直すことを選択する頻度も高い。なので清水のゴール前でスクランブル状態をどんどん作るというわけではないため「負けているのに攻めていない」と感じる方もいるかも知れないが、途中経過よりも90分間を通じてどう戦うかということを重視している。
それを踏まえて考えると、この前半は失点してしまったがそれ以外は問題ない、むしろ内容としては上々だったと捉えていいだろう。
■清水の選択
0-1と清水がリードして迎えた後半。注目のポイントは清水がどういう戦い方をするかだった。具体的にいえば引くのか続けるのか。前半に奪った1点を守ることを重視するのか、まだ半分0-0と同じだと判断し追加点を狙いに行くのか、どちらを選択するかである。そんな中で清水が選択したのは後者。1点リードしているがもう1度試合開始と同じ様に捉えるという形だった。
この選択は清水が今季ここまで守りきるだけの守備組織を作れることができていないからということも影響しているのだろう。清水はこの試合の前まで今季13試合に先制しているが7勝2分4敗。半分近くの試合で勝ち切ることが出来ていない。ちなみにセレッソは21試合に先制し16勝3分2敗である。
しかし前半を思い返すと、清水は先制したものの試合を支配したのはセレッソだった。なので同じ様に入ったとすると後半も当然試合をコントロールするのはセレッソ。清水は立ち上がりにあったSHがアプローチに行くことで自らサイドで数的不利を作ってしまうような状況だけはやめようということで、SHがあまり前から行き過ぎない様にはなったが、1列目と2列目の間が間延びしてしまっている状況は改善されず。
ということでやはりセレッソが試合をコントロールする展開となる。
60分〜 |
奥埜は2トップの一角に入ってはいるが、実際のプレーは単にFWとしてプレーというよりも他の選手を見てFW・2列目・サイドと役割を変えながらプレーをしている。しかしこの展開であればボールを保持すること、運ぶことには問題が無いという判断で、そんなマルチロールの奥埜からストライカーの鈴木孝司という判断だったのだろう。
先程も書いたようにセレッソはスクランブルを作ってというやり方を取らないので、何度も繰り返し、その中でこじ開けられるクオリティが重要だからだ。
そしてこのセレッソの交代の4分後の60分に清水はへナト・アウグストに代えて六平を投入。
こちらは戦術的というよりもアクシデント。50分にCKでヨニッチと競り合った時も着地の時についた手で肘か手首かを痛めた様な仕草を見せていたが、交代直前にも鈴木孝司と競り合ったあとの着地でついた手で肘を痛めた様子。元々痛めており懸念された足首ではなく違う形での負傷交代となった。
■何度も繰り返す
ここからはセレッソがアタッキングサードへボールを運ぶことを何度も繰り返す展開になる。元名古屋の監督だった風間八宏氏は「欧州の監督は組織的な戦い方を志向し、選手のプレーに制限をかける」といった主旨の発言をしていたが、実はロティーナのサッカーでは組織的に作るのはチャンスになりそうな形まで。実はそこから先の選手の選択については自由度が高く実際には「選手のプレーに制限をかける」ような事は無い。
なので清武や柿谷、水沼、ソウザ、鈴木孝司らがクオリティを発揮できる環境を作ろうと何度も繰り返す。
ただその前に立ちはだかったのは清水のGK大久保。セレッソは最終的に23本のシュートを放ち、内19本のシュートを枠内に飛ばしたが大久保が何度もその前に立ちはだかっていた。
しかしそれは75分まで。
セレッソはさらにゴール前に厚みを作ろうと田中亜土夢と澤上を準備したところで、何度も続いたCKから水沼がこぼれ球をボレーで叩き込みゴール。75分にセレッソが1-1の同点に追いつく。
清水も立田を準備していたそうだがその前にセレッソが同点に追いついた。
77分〜 |
これは清武が負傷あけということを考慮した時間的なものだろう。
この田中亜土夢投入後も状況は変わらず。そもそも清水が押し込まれているのは選手の問題ではなく組織の問題なので当然といえば当然である。
そして田中亜土夢投入直後の79分。ショートコーナーから田中亜土夢が放ったシュートのこぼれ球を柿谷がアクロバチックに押し込んでゴール。2-1とセレッソが逆転に成功する。
この2点は、クオリティを発揮出来るように何度も繰り返した中で実際にクオリティを発揮した2つだった。
84分〜 |
セレッソも逆転したことでテンションが上がりすぎたのか、リードしたにも関わらず熱り立ってオープンな展開に持ち込んでしまうが、イバンコーチがテクニカルエリアから大声で「落ち着け!」という指示で落ち着きを取り戻す。
90+2分〜 |
ホーム最終戦でついに今季初の逆転勝ち。2-1でセレッソ大阪が勝利した。
■その他
先制点を奪われるという展開にはなったが、内容的にも十分勝利に値する試合が出来たと思う。清水は先制点を奪うことには成功したが、勝利を引き寄せるにはそのロープは細すぎたと思う。
リーグ戦は残り1試合。この勝利で最終順位4位か5位かというのが確定したが、どちらになるにせよ残り1試合も無駄にせずきっちりと積み上げたい。
そして藤本康太について。
プレビューで言いたいことのほとんどを書いてしまったのであまり言うことは無いのだが、藤本康太の最後の試合に勝利できたのは本当に良かった。
プレー出来ない藤本康太をベンチ入りさせる判断をしたロティーナ。残念ながらそうはならなかったが、おそらくギリギリまで最後にピッチに立たせようと我慢したんだろう。
ピッチに立つことは出来なかったかもしれないが、この試合は15年間セレッソを支え続けた藤本康太が貢献した最後の勝ち点3として記憶にとどめたいと思う。
1点目の直前に亜土夢と澤上の2枚替を用意していてキャンセルになったシーン、もしそのまま交替したらロティーナがどのようなフォーメーションにするのか気になります。
返信削除私は清武、水沼に替えて 亜土夢、澤上をそのままのポジションにと妄想しましたがAkiさんならどのように考えられますか?
コメントありがとうございます。
削除池田さんのレポートでは澤上は瀬古との交代だったみたいなのでそのままじゃなかったみたいですよ。
なのでどうしたのか非常に気になります(笑)
風間さんはまた頓珍漢な発言をされていますね(苦笑)
返信削除欧州に限らず今はどの国も組織的な戦いかたをする時代で、実際ただ選手を並べているだけの森保ジャパンはフルボッコにされています。
そして風間さんも特に結果を残せているわけではなく解任されてしまっているわけです。
風間さんがその考え方を捨てない限りまた同じことの繰り返しになるだけでしょうね。
コメントありがとうございます。
削除風間さんのやり方だと問題が出てきやすい部分はありますが、個人的にはその考え方も「アリ」といえば「アリ」だと思っています。
レビューにも書きましたが、ロティーナとは正反対なので面白いです。
ロティーナと同じポジショナルプレーの信仰者グアルディオラも、攻撃時の最後の30Mは選手に任せると言っていましたね。
返信削除自分の仕事は、最後の30Mに到達するまでを手助けするだけだと。
やっぱり風間監督ってちょっとズレてるんですかね…
コメントありがとうございます。
削除個人的にはズレてるとは思いませんが、風間さんのやり方は任せている部分が非常に大きいんですよね。
そのためのトレーニングに特化しているようですし。