2020年1月9日木曜日

セレッソ大阪 2019年シーズンレビュー vol.4


シーズンレビュー第4回。今回はここまでの内容を踏まえて実際のシーズンを振り返ろうと思う。ここまで3回かかっているので流石に長すぎたと反省しています。


■3-4-2-1でスタート

プレシーズンでは4-4-2や4-2-3-1でもトレーニングマッチを行っていたセレッソだったが、開幕の神戸戦では3-4-2-1を選択した。そしてここからしばらく3バックを続けることになるのだが、その理由はボール保持と非保持で形を変える必要がないからだろう。

ボール保持でピッチを5つのレーンに分割したいわゆる「5レーン」を使いやすいのは奇数での組み合わせを作りやすい3バック、なので4-4-2系の布陣を使うとボール保持/非保持で形を変える必要が出てくる。可変というやり方だ。
しかし可変時にはどうしてもタイムラグと隙ができる。なので開幕からのシーズン序盤は、ビルドアップの精度がまだ低く「攻守の切り替わり」のマネージメントがまだ十分ではないという判断で可変の無い形で戦うことを選んだのだろう。

なので第7節の札幌戦で初めて4バックからスタートするが、この試合はボール保持/非保持共に4バックで戦っているので3バックの時と同じ理由だ。
そして「今季のターニングポイント」として捉えられることの多い第10節松本戦もボール保持/非保持共に4バックだったので実はこれまでと同じ。第7節と違う捉えられ方をしているのは単に勝ったからだろう。
そして第11節のマリノス戦もボール保持/非保持共に4バックだった。第12節のアウェイダービーでは4-4-2でスタートしたが相手が3バックで、さらに攻守の切り替えでコントロール出来ていない場面が目立ち始めると3バックに変更している。

■4バック⇔3バック可変

本格的に4バック⇔3バック可変が始まったのは第12節のFC東京戦だった。
プレシーズンでも試しており、ルヴァンカップでは4月10日の神戸戦からチャレンジしていたので取り入れられることは十分予想できたが、このタイミングでの導入となった。
これはシーズン当初に見送った問題点、ビルドアップの精度と「攻守の切り替わり」のマネージメントが大幅に改善されたことがまず1つ。そしてもう1つはこの試合から取り入れられた奥埜のFW起用と関係していると思われる。

セレッソの3バック化ボール保持は左サイドに比べて右サイドの方が複雑だ。丸橋、清武(柿谷)が入り個で違いを作れる左サイドはオートマチックにSBが前に出てSHが中央に入る。それに引き換え右サイドはSBは最終ラインに残るのか前に出るのか、SHが外なのか内なのか。これらは相手の状況を見て決まってくるのでよりポリバレントな能力が求められる。
そんな中で予想以上に急成長を見せたのが松田。開幕戦、第2節は先発ではなかったが、第3節以降は定位置を確保し、もはや替えの効かない選手となった。
しかし松田の1つ前のポジションはなかなか決まらなかった。

第10節に水沼が開幕戦以来の先発出場を果たすが、そこまでベンチスタートが続いていたようにおそらくロティーナの中では水沼の序列は当初それほど高くなかったと思われる。
元々ロティーナがこのポジションに求めていたのは外でプレーするだけでなく、外から中に入ってくるインサイドウイング的なプレー。3-4-2-1でいうところの右シャドゥでゴールに向かってプレーできる選手だったのではないだろうか(なので左利きを求めていたと思う)。
しかし水沼はどうしても内側に入った時のプレーに難があり、右利きなので外に出たがる。なので序列はそれほど高くなかったのだろう。

そんな水沼がレギュラーポジションを掴んだのは、第10節の松本戦で奥埜が見せた右奥に飛び出すプレーがきっかけだったのではないかと睨んでいる。そしてさらに奥埜がFWで起用されるようになり、内側に入った時、外に流れた時のプレーをお互いで分担し補完しあうようになったのだ。
これもどこかの試合で書いたと思うが、奥埜がFWに入った4-4-2は、ボール保持で3バック化しても前線の並びが2トップ2シャドゥになることは殆どない。
奥埜は、水沼が外にいる時は右シャドゥ、内側に入ってきた時は外やサポートできる位置など、水沼の動きを補完するようなポジションを取っていることが多かったのである。

この2人の関係によって4-4-2から松田が最終ラインに残って丸橋だけが前に出る左片上がりの3バック、藤田がCBの間に下がって松田と丸橋の両方が前にでる3バックのどちらでも前線の形が崩れなくなり、水沼が右SHで固定されるようになったのだろう。

ということでここからは現在の戦い方に一気に近くなる。
4-4-2のゾーンディフェンスと相手を見ての3バック化の使いわけ、安定して勝ち点を奪うことができるようになっていったのだ。

■得点力不足

こうしてビルドアップでボールを運び、試合をコントロールし、ボール非保持でも安定するようになったセレッソだったが、得点力という部分では最後まで物足りなさを感じさせた。来季に向けて最も改善すべき点がこの得点力不足だろう。
しかしこうなってしまうのはある種必然とも言える。

これまでの記事で書いてきたとおり、ロティーナのサッカーは攻守が切り替わる回数を減らそうとし、試合をできるだけオープンにしない。しかしこれのやり方はピンチも少なくなる反面、必ずチャンスも少なくなる。サッカーで一番点が入りやすいのが攻守の切り替え時だからで、ボールがあっち行ったりこっち行ったりして混乱しているオープンな試合こそが最も点が入りやすい試合だからである。なので失点も少ないが得点も少なくなる。

代替手段としてポジショナルプレー的なビルドアップを用意されているので、この精度を高めることでチャンスは作ることができる。相手の布陣にある程度の混乱も作ることもできる。
しかしそれはオープンな状況になっている時と比べると「ある程度の混乱」でしかない。
試合をコントロールしながらもチャンスは作れるようにはなった、チャンスの糸は細いのでどうしても得点力不足ということになってしまうのだろう。

個人的には「沢山点を奪うことができる」というのは1つの特殊な才能だと考えているし、その才能を持つストライカーにはお金を使うべきだと思っているので、このオフシーズンには全力で動いてほしいポジションではあったのだがどうなるだろうか。

もちろん補強がなかったとしてもこの戦い方での2シーズン目ということもあり、選手はこれまでとはチャンスの質が違うことも理解しているだろう。さらに去年は怪我でほぼ1年を棒に振ってしまった都倉、初めてのJ1を半年経験したことでJ1でのプレーへの順応も高まるであろう鈴木孝司もいる。彼ら2人を含めフィニッシャーとして覚醒する選手が生まれてくることに期待したい。

3 件のコメント :

  1. 昨年のレビューは4回で終わり、ということでしょうか。
    いつも楽しく読ませていただいてます。

    このレビューではロティーナの目指すサッカーが得点力不足の原因のひとつであり、それをカバーするための得点力が…というアプローチですが、私はむしろ起点を逆に考えています。つまり「得点力は結局のところ”点を取れる個人”にかかってる」という考え方が先にあって、それ以外の部分を戦術として考えたときにそれを生かすためのサッカー、ということでオープンでない盤面とポジショナルな攻撃というものが出てくるのじゃないか、という。

    Jのチーム、ひいては日本の指導者は長年の積み重ねの結果として「決定力にかける日本のサッカーではオープンな展開を増やしてチャンスを多く作ろう」と考えたり、より夢をみてそれこそバルセロナのようなポゼッション命みたいなものを求めますけど、そういう考え方自体が効率悪いのじゃないか、ってことになりますか。

    昔のカテナチオと現代のロティーナのサッカーは一見正反対に見えても「最後は点の取れるアタッカーに任せるしかない」というサッカーの真理(かもしれないもの)を追求した結果としては似たようなものなのかな、なんて思うことがあります。

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  2. それはちょっと違うような気がするような。個人にかかってると言うなら得点力以外の要素、例えば守備力や監督の采配等も全て同じです。点を取れる個人は都合よくクラブにいるわけではなく、常に活躍が約束されているわけではないので、よりチャンスを多く作るという考え方は間違ってはいないのではないでしょうか。

    バルサのポゼッションに関しては同感です。あれはただの手段で、それを目的とするのは本末転倒だと思います。

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  3. イーブン、またはリードしているときはオーガナイズされた、トランジションを抑えた戦術は効果的だと思います。柿谷と清武という、希代のアタッカーがいますし!

    ただ、リードされた後半に、トランジションを増やすオプションが欲しいところです。奥埜をCHに置けば、前プレできないですかね。
    少し話がそれますが、なでしこが強いとき、宮間はリスクの比較的小さい場所で、わざとネガティブトランジションを増やすプレーをしていたうな気がしていたんです。ピッチ上の選手がそんな選択をできるのでしょうか。もしそれができるのなら、それはすごいなぁと。

    返信削除

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