スタジアム | IAIスタジアム日本平 | 主審 | 飯田 淳平 |
入場者数 | 9,668人 | 副審 | 田尻 智計、松井 健太郎 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 13.7℃ / 29% | 第4の審判員 | 窪田 陽輔 |
VAR | 先立 圭吾 | ||
AVAR | 中野 卓 |
メンバー
清水
C大阪
- 監督
- 平岡 宏章
- 監督
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「収容率「50%以下」)での試合開催
※「ワクチン・検査パッケージに関する技術実証」対象試合のため、
<監督コメント>
<選手コメント>
2021年の最終節となる明治安田生命J1リーグ第38節。セレッソ大阪は敵地IAIスタジアム日本平で対戦し2-1で敗戦。今年も清水との対戦は互いにホームチームが勝利する結果に終わり、清水エスパルスのJ1残留が決定した。
■メンバー
清水エスパルスのスターティングメンバーは前節から1人入れ替え。前節前半の早い時間で負傷交代となった井林章(後に骨折と発表)が外れ、井林と交代で入ったヴァウドが今節は先発となった。古巣対戦となる片山瑛一は左SBで先発となる。
またベンチでは前節劇的な決勝点を決めた中村慶太はベンチ外となり、第35節の札幌戦で終了間際に同点ゴールを決めた滝裕太がベンチ入りとなった。
セレッソ大阪のスターティングメンバーも前節から1人入れ替え。前節は大久保嘉人と山田寛人の2トップでスタートしたが、今節は山田がベンチ外となり大久保と加藤陸次樹の2トップ。大久保は2001年3月17日から始まったJ1試合出場の通算476試合目と477試合目、最後の2試合を共に先発で飾ることとなった。
またベンチでは古巣対戦となる高木俊幸が第36節の川崎F戦以来2試合ぶりのベンチ入りとなった。
■ミドルゾーンのブロック
清水ボールのキックオフから始まった試合、清水にとってほぼ最初の攻撃でいきなりチャンスを迎えるなどペースを握ったのは清水だった。
最初に作ったチャンスはヴァウドからのロングボール。このボールをサイドに流れた鈴木唯人が瀬古との競り合いを制しクロスを入れると、それを松田陸が跳ね返すもこぼれ球を竹内がミドルシュートで狙っている。
この攻撃の起点となったのは鈴木唯人。身長はそれほどないが体格が良いので身体の強さがあり、動いてボールを受けることが出来て、ターンが上手くさらにテクニックとスピードも兼ね備えた選手。これがほぼ最初のプレーだったのでおそらく瀬古も鈴木唯人の強さは想定以上だったのだろう。
さらに3分には中盤でボールを引っ掛けたところからSBとCBの間に飛び出し今度は奥埜との競り合いを制してクロスを入れている。
清水はこれで得たCKから強風の影響もありヴァウドがヘディングで狙う場面も作ったが、立ち上がりは何とか無失点で切り抜けることに成功した。
ということで5分をすぎた頃から少しずつセレッソがボールを保持する展開に。
清水がこの試合で選択したのは浦和戦でも機能したミドルゾーンでのブロックだった。
清水は高い位置からDFラインに対してガンガンアプローチに行くのではなく、4-4-2でセットし中を閉める。2トップはCHへのパスコースを消して、CHはトップへのパスコースを消し、サイドに展開されると4-4-2のブロック全体がスライドする。
今季のセレッソも開幕直後や、小菊監督就任後によく見せるやり方である。
清水は昨季も終盤に平岡監督が就任したが、その時はもっと前からガンガン人を捕まえに行く形だった。前から人を捕まえに行く分相手選手から時間を奪うことはできるのだが、どうしてもその反面自分達がバラバラになりやすいという部分もあって、シーズン途中の監督就任だとそこを修正しながら落とし込む時間はないので、何とか気合と気持ちで乗り越えよう的なやり方に近かった。
しかし今回は同じシーズン途中就任で時間が無い中でありながらこうしてミドルゾーンのブロックを作って守る形を作れるのは、実は同じような環境だったセレッソの今年を振り返ってみてもこれがいわゆる「ロティーナの遺産」なのかもしれないなと少し感じた。
そしてこの清水のブロックに対してセレッソは、松田陸を最終ラインに残す形や、CHを1人最終ラインに落として松田陸を右の大外に出す形など立ち位置を動かしながら何とかボールを運ぼうとするがあまり上手くいかず。ボールは持つもののブロックの外側だけでボールを動かすだけになり、シュートはもちろんアタッキングサードまでもなかなか持ち込めないという展開が続いていた。
前節の名古屋戦では得点にはなかなか結び付かなかったものの比較的ボールを運べていたことに対して、今節は上手くいかなかったのはもちろん名古屋と清水の守備のやり方の違いもあるが、山田の存在も大きかったように思う。
前節のレビューでも触れたが、山田はサイズはあるものの実は少し下がって間でボールを受けるプレーを得意としている。
しかし今節は大久保と加藤。大久保もできれば前線で勝負したいし、加藤もムービングタイプの万能型だが下がってきて間で受けてターンするというタイプでもない。清武や坂元が内側に入り、トップへのクサビも含めて一度ブロックの内側にボールを差し込むことで清水のブロックを動かしそこからサイドに展開するという形がおそらくセレッソのやりたかった形だったと思うが、中を閉める清水のブロックを動かすことはできないままだった。
■清水の狙い
一方の清水だが、ボールを持てばセレッソもミドルゾーンでブロックを作るので攻めあぐねる場面がほとんど。ビルドアップの精度に関してはセレッソよりも清水の方が少し厳しいのでより難しい状態だったとも言えるかもしれない。
ただ違ったのは清水はボールを保持してのビルドアップにはそれほど興味はなく、ファーストチョイスはセレッソのビルドアップを中盤で引っ掛けてのショートカウンターだったこと。これで最初の攻勢をかけた時間帯以外もセレッソゴール近くに迫る場面を作ることができていた。
特に清水は前線のチアゴ・サンタナと鈴木唯人の2人の役割がはっきりしており、2人は横並びというよりもほぼ縦関係。
チアゴ・サンタナもできることは少ないが、できることを繰り返すことはできる選手なので、チアゴ・サンタナがDFラインを引っ張り、鈴木唯人がその後ろのMFとの間でボールを受けたり、そこから飛び出したりする動きはセレッソにとって厄介だった。
なので清水の中盤4人、特にCH2人の仕事は中央を消しながら入ってきたボールを引っ掛けること。
14分に松岡がイエローカードを受けた清武に対するタックルなんかもそんな意図を感じさせるプレー。ただ、このタックルは見返してみるとかなり危険なプレーだったので、カードの色が違っていてもおかしくなかった。
そうなるとこの試合で清水がやろうとしていたことの根幹部分にあるカウンターか中を閉めるブロックのどちらか、もしくは両方を失うことになりかねなかったので、。清水にとってはかなり厳しい展開となっていっただろう。
■困った時のセットプレー
セレッソは34分に加藤がこの試合最初のシュート。チームの初シュートが34分までかかったのだが、この場面ではビルドアップから奥埜が中で受け、さらに清武から加藤にクサビのパスという中を使うことができたので清水の守備ブロックを動かすことに成功した形である。
しかし加藤のシュートはポストにヒット。シュートの時に身体が少しぶれてしまったのでアウトにかかってしまった。
しかし直後のCKから清武のボールを大久保が折り返したところボールが竹内の身体に当たってゴールイン。35分にオウンゴールでセレッソが先制に成功する。大久保のキックがゴール方向に向かっていたわけではないので残念ながらJ1通算192得点目にはならなかったが、大久保はCKの時にいつもファーに流れてくるボールを待っているのでそこで見事に仕事をしてみせた。
ただこのボールもかなり変化しているので風の影響があったのだろう。
先制したことでセレッソは無理をする必要は無くなった。別にブロックの外でボールを動かし続けても問題がなくなったからである。
となるとここからは清水は最大の狙いであったカウンターを出しにくくなるので、ボールを持ってという形になる。
がしかし、先に書いたように清水もセレッソのブロックに対してボールを持って何かをするということはなかなか難しい。
45分には、原から鈴木唯人へのスルーパスが出てシュートを放つ場面を作ったがキム・ジンヒョンがセーブ。鈴木唯人について冒頭にいくつか書いたが、彼の最大の課題はプレーの最後。あれだけの能力を持ちながら去年は結局無得点だったし、今年もここまでわずか2得点。そしてシュートだけでなく、ラストパスの判断も良くなく精度も低いので直接のアシストも去年は2で今年は0である。
しかしアディショナルタイムの45+2分に清水が同点に追いつく。
決まったのは西澤のFKから。これもおそらく強風の影響があったのだろう、瀬古を超えたボールを鈴木義宣が合わせてゴール。1-1の同点になる。どちらも決めたのは難しい展開の中での困った時のセットプレー。
これでセレッソは先制したことで何とか手にしたアドバンテージも失ってしまった。
■改善できないセレッソ
両チーム交代なしで始まった後半。また前半からの焼き直しの展開になるかと思われた開始早々の50分に西澤が左足でミドルシュートを決めてゴール。清水が逆転に成功する。西澤は右足の精度の高さが特徴で、左サイドで起用されたときはカットインという形があるものの右サイドではそんなに積極的にシュートを打ってくるタイプでもないので清武はどうしても右足を切る様な守り方をしたのだろう。
西澤自身も試合後のコメントで「僕の左足はあまり注意されてないというか、危険だと思われてないというのはずっと思っていた」と語っている。そして西澤にボールが渡る前に鈴木唯人のドリブルからチアゴ・サンタナへのパスでペナルティエリア内に侵入されていたので中からの対応も遅れてしまっていた。
とはいえこのゴールは思い切って左足を振った西澤のシュートがとにかく素晴らしかった。
ここからは逆転に成功したことで清水はよりミドルゾーンのブロックからのカウンターを徹底。セレッソがボールをもつという展開になる。
しかしやはりチャンスにはつながらないセレッソ。前半の終盤あたりから前節山田がやっていた下がる動きを大久保がやるようになっていたが、どうしてもボール保持は手探りで清武や坂元が何とかするしかないような形。おそらく後半最初のセレッソのシュートは64分の大久保のミドルだったんじゃないかと思う。
おそらく小菊監督は立ち位置などを調整したり修正したりしているのだろうが、以前から書いているようにチームとしてどこで勝負しようとしているのかがはっきりしていないのでそれがなかなか改善にはつながらないのが現状である。
おそらく中島に求められたのは、これまでに見せたビハインドの時に清武をCHに入れたり、西川潤をCHで起用したりしていたことの一環で、3列目から前線に絡んでほしいということなのだろう。ここに清武じゃなかったのは前半に足首を痛めていたからかもしれない。
そんな中島は75分に一度スルスルっと清水のCHの背後に出ていってボールを受け前を向く場面を作ったが、その後はなかなかボールを受ける場所を見つけられず。この形で効果が出たのを見たことがない。
チャンスがあったのは76分の坂元のカットインからのクロスに大久保が頭で合わせた場面だったが、ここは権田がセーブ。
大久保は数年前から身体のキレで勝負するのは難しくなっているので、相手と正体してしまうと難しい部分もあるが、ボールを持っている味方がいて相手と駆け引きするという部分ではこれが現役最後のリーグ戦とは思えないほどまだまだトップクラスである。
清水はカウンターで追加点を奪うことはできなかったが、そのまま逃げ切り試合終了。
セレッソ大阪は2-1で清水エスパルスに敗れ、清水のJ1残留が決定。セレッソは今年も日本平で勝利することができなかった。
■その他
小菊監督就任以降のセレッソは勝ちパターンと負けパターンがはっきりしているが、先制したことでもしかしたらとは思わせたものの、セットプレーから追いつかれたことでやはり敗れてしまった。
最初に準備したきたことがはまらないとなかなか難しい。
ちなみに小菊監督になってからは引き分けたのはルヴァンカップ浦和戦のファーストレグのみ。その試合もトータル180分の前半90分という捉え方ができる試合なので、実際には勝ちパターンか負けパターンかのどちらかしかない。
少し前から「どこで勝負しようとしているのか」ということを書いているが、これに関しては天皇杯が終わってからのシーズンレビューでまたまとめたいと思う。
リーグ戦はこれで終了。最終順位は12位と厳しいシーズンとなってしまったが、天皇杯は何とか結果を残したい。
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