2016年9月4日日曜日

9/3 第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦 VS 京都サンガF.C. @キンチョウスタジアム

天皇杯 2回戦
2016年9月3日(土)19:00KO 金鳥スタ

スタジアムキンチョウスタジアム主審今村 義朗
入場者数5,518人副審山村 将弘、森川 浩次
天候 / 気温 / 湿度雨のち曇り / 29.2℃ / 65%第4の審判員青木 崇文
スターティングメンバー
セレッソ大阪C大阪
 
京都サンガF.C.京都
 
  • 監督
  • 大熊 清
 
  • 監督
  • 石丸 清隆
セレッソ大阪C大阪
京都京都サンガF.C.
今回対戦今季平均
データ項目セレッソ大阪京都サンガF.C.セレッソ大阪京都サンガF.C.
FK16231219
CK6386
PK1010
シュート176278
警告/退場1/06/11/03/1
公式記録(pdf) http://www.jfa.jp/match/emperorscup_2016/schedule_result/pdf/m60.pdf


<監督・選手コメント>

セレッソ大阪 大熊清監督
京都サンガF.C. 石丸清隆監督

セレッソ大阪 ソウザ選手、杉本選手、藤本選手、丹野選手、酒本選手
京都サンガF.C. 山瀬選手
京都サンガF.C. 菅沼選手、染谷選手、本多選手、堀米選手、山瀬選手、イ・ヨンジェ選手、清水選手

第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会2回戦、セレッソ大阪は1回戦で兵庫県代表バンディオンセ加古川を下した京都サンガF.C.と対戦。90分で決着はつかず延長戦に突入したが延長後半のソウザのゴールでセレッソ大阪が勝利し3回戦進出を決めた。

■メンバー

セレッソのメンバーは、1回戦に続き山口とキム・ジンヒョンが代表で抜けたボランチとGKにソウザと丹野が入る以外は、3バックの中央に藤本が継続して起用され、1回戦を休んだ山下と玉田も復帰した現時点のベストメンバーとも言える布陣。
今シーズンのセレッソはチームとしての戦略を仕込む事ができず、戦い方のほとんどをメンバー構成だけに頼っているので現状の流れを考えるとこのメンバーになる事は十分予想できた布陣です。

一方の京都は、リーグ戦の大一番松本山雅FC戦を次節に控えている事もあってその試合を累積警告で出場できないエスクデロはこの試合でもベンチスタート。またリーグ戦では今シーズン加入した菅野が守護神として全試合出場しているのでGKにはセカンドキーパーの清水が1回戦に引き続き先発。アンドレイはこの試合でもベンチからのスタートとなったが堀米、山瀬、イ・ヨンジェ、ダニエル・ロビーニョ、佐藤、本多、染谷、菅沼らの1回戦を休んだ主力メンバーは復帰している。
今シーズンの京都は対3バックを苦手にしており、今シーズンのベースは4バックながらもリーグ戦の前節札幌戦を3バックで戦っていたが、その松本戦の事も考えこの試合ではいつもの4バックで3バックの相手に対してどこまで何ができるのかという事もテーマの1つとしてあったのだと思われます。

■直近の対戦

同じ明治安田生命J2リーグで戦う両チーム。直近の対戦は約1ヶ月前の7/31に開催された第26節。この試合はスクランブル的ながらもセレッソが今シーズン初めてスタートから3バックで挑んだ試合で、ミス絡みの失点をきっかけに一気に3失点を喫してしまいましたが、その後捨て身の攻撃が実を結び3-3となりました。
失点したのは後半のミスをきっかけに前がかりになった裏をとられた事から、得点は4バックにしてからでしたが、前半は3バックのセレッソに対して京都の守備はあきらかに後手を踏んでおり、京都のボランチが下がってしまう事でセレッソのボランチをフリーにし、そこからのミスマッチを活かしたサイドチェンジに対してスライドで対応する京都の4バックはどうしてもバラけてしまい、セレッソは何度もチャンスを作る事ができていました。
この試合はセレッソの3-4-2-1に対して4-4-2の京都と前回と同じ構図となります。

■きっちりと準備をしてきた京都

今回の試合は立ち上がりから京都がペースを掴み何度もチャンスを作る展開となりましたが、そうなったのは京都がしっかりとセレッソに対して準備できていた事が理由でした。
前回京都が上手く対応出来なかったのは
前回京都がセレッソの3バックに上手く対応できなかったのは、4-4-2のブロックを作って守る京都のMFとDFラインの4-4が何度もスライドしないといけない状況、つまりミスマッチを活かすサイドチェンジを多用されたからでした。
サイドチェンジを多用されたのはボランチをフリーにしてしまう場面が多かったから。
それは3バックのセレッソは前線に1トップ2シャドゥと両WBの最大5人をかける事が出来るが京都のディフェンスラインは4枚。なのでボールサイドから順に選手を捕まえたとしても全て1対1でしかも大外の選手が余っている状況。その状況に対して京都のボランチはどうしても後ろが気になり、さらに前線の選手が引いてきた時にその選手もケアしなければいけない。
なので3バックの両サイドがボールを持った時にSHがプレッシャーに行くと優先順位的に京都のボランチは目の前にいるセレッソボランチよりも後ろや引いてきたセレッソの選手をケアする方を優先してしまうから。
その結果セレッソはボランチから楽に左右に展開出来るようになっていました。
4-4-2のブロック
今回の京都が修正したのは2トップとSHの役割を整理した事。
前回は攻め残り気味で守備にあまり加わらず、加わっても効果的でなかった2トップをセレッソの3バックのサイドの選手がボールを持った時にもボールサイドにきっちりスライドさせる事を徹底。これでSHがここに喰いつきに行かなくて済むようになり、前回対戦時はせっかく4-4-2でブロックを作っても喰いつくことで自らバランスを崩していた状態からきっちり4-4-2を堅持できるようになり、これによってセレッソのボランチを不用意にあけてしまう事がなくなったのでセレッソがサイドチェンジできる回数がガクンと減りました。
セレッソはサイドチェンジができなくなると前線の大外で余っている1枚はほとんど意味をなしません。セレッソが3バックでミスマッチを活かすならこのサイドチェンジが生命線なのでこうやって修正された京都の守備に対して「どこをきっかけに相手を動かすか」をチームとして落としこむのがチームとしての戦術ですが、残念ながら今シーズンのセレッソにはそういう事は一切ありません。

そして京都は攻撃に関しても明確な意図を持っていました。
セレッソの守備
セレッソの守備は基本的に5-4-1でセットします。
ここ数試合の守備の形
ただこれだと前線の高い位置で守備がしにくく撤退守備がメインになってしまう。撤退するなら撤退するで方向性をきちんと決めてどこから誰がいくのかを決めれば良いんですが、ここでもやはり残念ながら今シーズンのセレッソにはそういう事は一切なく、また形にかかわらず高い位置からアプローチに行かせたがる人がテクニカルエリアにいるので、その結果調整の末シャドゥが絞ったポジションをとって空きやすいボールサイドの相手SBにはWBが出て対応。全体が4-4-2的な形にスライドする方法が選手たちの手によって見られるようになっているというのが現状です。
セレッソの守備の動きを利用する京都
京都はそのセレッソの守備時の動きを逆に利用した形を準備してきました。
まずボランチの1枚、主に吉野が最終ラインに落ちたりする事で杉本を引きつけた所から右SBの内田に展開。すると内田に対して必ず丸橋が出てくる。丸橋がでてきた所で少し絞り気味にポジションをとらせていた堀米を丸橋の裏に走らせ、そこにボールを出すとセレッソの3バック+逆サイドのWBがスライドして対応してくるのでその間をイ・ヨンジェ、ダニエル・ロビーニョ、山瀬の3人に狙わせて来ます。
この形はセレッソの仕組み上必ず出来てしまうタイムラグとスペースを狙った形です。WBの裏に走って山下を引っ張りだす役割を堀米と2トップの1枚を入れ替えた形も準備出来ているという用意周到さで、このしっかりと準備できた形でセレッソは前半から個人ではなく仕組みで京都に殴られ続けました。

またここでは代表的な最初に引っぱり出される人を杉本で書きましたが、杉本がここで行かずに我慢したとしても、ソウザが出て行ってしまいます。
それはよく言われる「喰いつきグセのあるソウザ」の問題というよりも仕組みの問題で、ここに誰か行く事が前提になっているから、杉本が行かないならソウザが行くという設計上の甘さが招いている問題です。そもそも現場判断に任されていてきちんとした設計も無さそうですが(苦笑)。
ソウザが喰いつく事でやはり同じく山下と藤本の間を狙われる場面も何度も続きました。

京都の先制点はこの形をきっかけに右サイドを堀米とダニエル・ロビーニョで崩され上げられたクロスを田中と松田の間に山瀬が飛び込んで決めた形。
ケアしていた部分という事ですが、この仕組で殴られている状況をケアしているというのはちょっと厳しいかなという所です。

■ラッキーな同点ゴールの状況

京都に仕組みで必然的にやられ、しかもそれを修正する手立ても無さそうな前半でしたが、失点した9分後の23分に杉本がPKを獲得。25分に決めセレッソが同点に追いつきます。
このPKはスタンドから見ていても吉野が杉本を引っ掛けたのはペナルティエリアの外でFKだろうなというもので、実際ツイッターに流れていた画像でもあきらかにペナルティエリア外でのファールでしたが判定はPKというラッキーなものでした。
しかしあのファールが起こった状況は京都の問題点が出ているものでもありました。
最終ラインのスライドの穴
PKとなった場面はセレッソがボールを運ぶのに成功した後の状態で、京都のブロックを下げて右サイドから左サイドへボールを展開している中で下がってきた杉本がボールを受けた所から始まります。
この時京都の4バックは最初にセレッソが右サイドからボールを運んだ時にボールサイドにスライドして対応しています。そこから逆サイドに展開する中で本来は再び逆サイドに4人がスライドしないといけない状況だったんですが、杉本が下がってボールを受けたので菅沼はスライドせずに玉田をマークしたまま、菅沼が行かないので染谷と本多もそのまま、しかし内田は丸橋にスライド。なので内田と菅沼の間に大きなスペースを空けてしまう事になりました。
他の場面を見ると、おそらく京都はこの様なスライドができなかった状況の時は中盤の佐藤や吉野が最終ラインに落ちて後ろが5枚になっても埋めて良いともなっていたのでしょうが、攻撃を含めたチーム全体のバランスを考えるとできるだけ4-4のスライドで対応したいというのがあって、そこまであえて後ろを5枚にする方法を徹底していなかったんじゃないかと思います。なので5枚に入る人も方法もバラバラでした。なのでここではスライドに問題がでてその5枚にする形も上手くいかずスペースを空ける事になり、スペースに突っ込む杉本を吉野が遅れて対応せざるを得ない状況になったのでしょう。

京都は全体的に2トップによるファーストディフェンスが機能し、サイドチェンジをさせない守備が機能しスライドの問題を上手くカバーできていましたが、どうしてもこの問題が表面化する事もいくつかあり、その1つかこの同点ゴールの場面。そしてもう1つ、54分に起こった染谷の退場の場面もスライドの途中に間に入ってこられた玉田を染谷が引っ張ってしまって起こったファールが2枚目のイエローカードとなっています。

また前半の京都ですが、序盤仕組みでガンガン殴って来ましたが同点後は少しペースダウンします。前半の中盤過ぎからセレッソがサイドチェンジをできそうな場面も見られ始めていたように立ち上がりから行っていた形では2トップの守備負担がかなり大きかったのかもしれませんし、まだ前半だしリスクを負い過ぎないようにという判断だったのかもしれませんが、京都のWBの裏を狙う攻撃の形に対してセレッソは全く対応できていませんでしたし、54分の染谷の退場でゲームが大きく変わる事になるので、結果的にはここでペースダウンしてしまった事は京都にとって裏目に出る事になります。

■染谷の退場後

57分〜
染谷の退場を受けて京都はダニエル・ロビーニョを下げ岩沼を投入。岩沼は左SBに入り本多がCBにスライド、4-4-1の形になります。
しかしこの4-4-1の形はこれまで京都がおこなってきた4-4-2の2トップによるファーストディフェンスができなくなる。その結果ここからセレッソはガンガンサイドチェンジを見せて4バックに4-4にスライドを迫る場面を作る事ができるようになり、一気に押しこむ場面が増え始めます。
68分〜
そこで京都は68分にイ・ヨンジェに代えてエスクデロを投入するタイミングで吉野を菅沼と本多の間、最終ラインに入れる5-3-1に変更。セレッソの前線が最大5人になる事に対してスライドをする必要が無い様に人数を合わせた5バックにして対応。こうする事で攻撃の形はエスクデロが頑張ってそこに堀米なり山瀬が頑張って絡むというカウンターのみしか無いかなり難しいものになりますがそれ以上にスライドで起こる不安点を消そうという考えだったのでしょう。

そして京都のこの判断は成功します。
セレッソは今シーズンこの試合で32試合目の公式戦ですがチームとしてどうやって相手を崩すかという形は未だに全くありません。
それが対4バックであればミスマッチが起こる事から京都が4-4-1だった約10分間の様にサイドチェンジができるならそのズレを使う事ができるのですが、自分たちから相手をズラす方法は皆無。なので待ち受けている京都に対してひたすらクロスを上げるしかない攻撃だったり、ずれない相手を前に横パスを繋ぐしかありません。田中がリスクを承知で上がって行く場面も作りますが中ではしっかりと人数が揃っているので全くチャンスらしいチャンスも作れず、また京都は時々エスクデロがその能力を活かしてポイントを作ってカウンターチャンスを作ったり、CKを獲得したりする場面もあり、ここからしばらくの時間帯は本当にこのチームはノープランなんだなあという事を実感させられる、今シーズンのセレッソを象徴するような場面が続きました。セレッソは81分に酒本に代えて関口、87分に玉田に代えてベサルト・アブドゥラヒミを投入しますが、人の入れ替え以外の意味を持たない交代ですので全く変化はありません。

試合は90分を過ぎ延長に入っても同じ展開が続きましたが、京都が勝負をかけようとアンドレイを準備した延長後半の107分にソウザが個人技でミドルシュートを決めてセレッソが逆転。
108分〜
その後京都もアンドレイを投入し人数が少ないながらも反撃を見せたもののセレッソがそのまま逃げ切り2-1で試合終了となりました。
京都にとってアンラッキーだったのは、おそらくアンドレイは最初ソウザのゴールの前延長後半開始から投入予定だったと思いますが、吉野が少し違和感があったのか少し投入を遅らせ吉野の状態を確認しないといけなかった事。少しプレーして吉野はOKサインをベンチに向かって出し、その後アンドレイがタッチライン横に立ちましたが、次にプレーが切れたのはソウザのゴールの場面となってしまいました。

■その他

この試合は采配としては完全に負けでしたが、PKもそうですし展開的にもかなりラッキーな形で勝利する事が出来ました。
前半の立ち上がりの事を考えるとセレッソが勝つにはこういう展開しか無かったと思います。
そしてノープランの中奮闘しなんとかそのチャンスを掴んだ選手たちのプレーは素晴らしかったと思います。
京都にとってはアンラッキーな敗戦だったでしょう。
ただ、京都にとってこうなってしまった原因はやはり京都の4バックの対3バックへの脆さ。
4-4-2の守備など様々な形で弱点をカバーしていましたが、結局はスライドで対応しきれない脆さがPKや退場をうみ、最後は5-3-1のカウンターのみしか選択肢が無くなってしまったんじゃないかなと思います。

これで3回戦は天皇杯としては久々のアウェイとなるベストアメニティスタジアムで明治安田生命J1リーグ2ndステージ3位のサガン鳥栖と9/22に対戦する事が決まりました。


4 件のコメント :

  1. いつもブログを拝見しております。さて、伺いたいのは、健勇離脱が濃厚になってしまったセレッソが今後取るべき戦術について。柿谷ブルーノ健勇蛍ジンヒョンと主力の大半を欠いてしまっている状況ですが、ここに来て、一番現実的な采配はどういうものだとお考えでしょうか。

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    1. コメントありがとうございます。
      現実的な采配がどういうのかというのは難しいですが、大熊監督にできる事は選手を入れ替える事だけですからね…
      空くのはシャドウなのでシャケ、清原、関口にソウザあたりが入る感じではないでしょうか。

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  2. お疲れ様です。
    WBの裏を狙われる問題、健勇とソウザの食いつき問題はあの監督ですからおそらく解決はないでしょうね。
    健勇の代わりは沢上か田代、リカルドあたりをそのまま置いてやり方は変えずっていうウイイレ采配でしょう。
    宮本さんは行けると言い切った昇格ですが、正直プレーオフは避けられないかなと思ってます。
    丸岡を使えばスペースを作ったり走り込んだりができるのでまた違った戦い方ができそうではありますが根本的に問題の解決ではないのが残念なところですね。
    余談ですが杉本の骨折痛いですね。あれは完全にボールが関係していないプレーなので悪質ですし、杉本に与えられたPK含めあの審判はちょっとどうかと思います。

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    1. コメントありがとうございます。
      健勇の代わりですが、健勇はシャドウですけど田代やリカはCFですからね。シャケ、清原、関口にソウザとサブで澤上。って所じゃないでしょうか。


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