2019年4月27日 14時00分: ヤンマースタジアム長居
予想スタメン |
ミッドウィークのルヴァンカップからまたもや中2日で行われる明治安田生命J1リーグ 第9節 。セレッソ大阪は本拠地ヤンマースタジアム長居で昇格組ながらも4位と大躍進を見せる大分トリニータとの対戦となる。
■大分トリニータ
昇格組かつJ1で実績のある選手はほぼ0。そんな中で5勝1分2敗11得点6失点で4位と大躍進を見せている。この躍進の鍵となっているのは片野坂監督が作り上げた特徴的な戦術にあることは間違いない。
大分のスタッツを見るとボール支配率は55.0%でリーグ5位。パス数は594.9本/試合でリーグ4位。これを見るとボールを持ってサッカーをするチームに見える。
しかし実際の大分のゴールシーンを見るとそのほとんどがカウンターのような形。相手DFの枚数が少なく、スペースを使って一気にアタッキングサードに入りフィニッシュまで持ち込んでいるのだ。
それはスタッツにも表れておりリーグ6位タイとなる11得点を決めているのだが、シュート数はリーグ最少となる7.9本/試合。
30m侵入回数は32.1回/試合でリーグ15位でそこでの(30m以内)プレー数は125.4回/試合でリーグ最少。どれもこれもカウンターのチームにありがちなスタッツだ。
この不思議な傾向はもう少し細かいスタッツをみるとその正体が明らかになる。
パス数594.9本/試合の内敵陣でのパスは216.9本/試合。半分以下でしかない。
さらに3分割でみるとアタッキングサード89.4本/試合・ミドルサード297.8本/試合・ディフェンシブサード207.7本/試合。
アタッキングサードのパス数はリーグ17番目の少なさだが、ミドルサードは3番目、ディフェンシブサードに至ってはリーグ平均を100本近く上回るダントツトップの数字となっている。
つまり大分は低い位置で多くのパスをつなぎアタッキングサードでは手数をかけずに一気に攻略しているのだ。
それを象徴しているのがGKのパス数。大分は自陣でのボール回しにかなり積極的にGKが絡む。昨季はマリノスの飯倉のポジショニングが話題になったが、大分のGK高木は飯倉以上にペナルティエリアの外でプレーしている。なので高木の平均パス数はなんと55.25本/試合。ボックスストライカータイプのFWなら90分出場してもこれ以下のパス数になることも普通にありえるぐらいのパス数である。
そしてこの低い位置でパスをつなぐことで狙っているのは相手を引き出すこと。つまりボールを取りに来るように仕向けている。
そして取りに来ると待ってましたとばかりに取りに来た選手が元いたスペースをつかって一気に前線へ。ということで大分はボールを保持し相手が取りに来ることでカウンターの状況を作理出す「疑似カウンター」を行っているのだ。
ほとんどの試合でそのトリガーとなっているのが3バックの両サイドにいる選手。
ここに例えば4-4-2だとSHの選手がアプローチに来たタイミングで、縦にボールを入れ、WBや中盤、シャドウなどでボールを繋ぐことで芋づる式に相手のバランスを崩しカウンターの形をつくっている。また3バックの両サイドは右に岩田、左に福森と元SBの選手で、WBはスピードがある選手が起用されているのも大きなポイントになっている。
そしてもう1つ特徴的なのはボールを奪い返す位置がかなり低いということである。
失点数はここまで6とリーグ4番目の少なさなのだが、被シュート数はリーグで2番目に多い14.4本/試合とかなり多い。
これは5バックで守備をすることがベースになっているからで、この形の場合どうしても相手にボールを運ばれやすい。
しかし攻撃のやり方を考えるとそれでOK。自陣の低い位置で守り切ることができれば敵陣にはスペースがある。つまりより疑似カウンターが繰り出しやすくなるからだ。
そして実はこれは森保監督が広島で優勝していたときの考え方に比較的近い。
それもそのはず。片野坂監督は2010年のペトロヴィッチ監督終盤から森保監督が連覇を達成した2013年までサンフレッチェ広島でコーチをしていたからである。
その当時の広島のコンセプトをより細かく落とし込み、さらに発展させた形が今の大分の戦術のベースとなっているのでは無いかと感じさせる場面も比較的多い。
■プレビュー
セレッソの先発メンバーだが、普通に考えると前節と同じ11人となる可能性が高い。松田はルヴァンカップでもフル出場しており中2日となるが、前々節でも先発しいけるとことまでという感じだったので今節も同様となるだろう。しかし、大分戦ということを考えると何かを仕掛けてくる可能性もある。その理由は後述するが、ちなみにルヴァンカップのグループリーグでは左WBに松田を起用している。
一方の大分トリニータの先発メンバーもルヴァンカップから中2日だということを考えると前節と同じ11人となる可能性が高い。ルヴァンカップでは11人全員を入れ替えていたからだ。
ただしこちらも何かを仕掛けてくる可能性も十分ある。
ここまでの大分の躍進は、これまで対戦したことのない、未知なる戦術の前にJ1クラブがまだ効果的な対策を打てていないというところにあるとも言える。
しかしそんな中でロティーナはヴェルディを率いて2017年、2018年で4試合戦っている。いわばロティーナ監督にとっては、ある種他のJ1クラブよりもよく知るチームが大分なのだ。
そしてこの2人の対戦で2018年第29節、大分ホームで行われた試合は個人的にかなり印象に残っている。結果は0-0だったが、僕が昨季見たJ2の試合の中ではベストゲームの1つだった。
ロティーナ監督と片野坂監督は異なる点もあるが、比較的共通点も多い。特にスペースを攻略しようという考え方はかなり近いものがある。
ここで去年の試合についてあまり細かく書いても仕方がないので割愛するが、昨季の大分対ヴェルディの試合は相手の出方をみながら試合中にどんどん立ち位置が変化していき、どちらがスペースを攻略できるかということを戦術的にぶつけあった試合だった。
それを踏まえるとこの試合も同様の戦い方になる可能性が高い。
ロティーナ監督も片野坂監督もともにしっかりと準備してくるだろう。
両チームともに5バックでレーンを埋め、そこからのボール保持でどれだけ試合をコントロールすることができるかという試合になるはずだ。
セレッソとしてはその中で清武、柿谷といったところがアタッキングサード、大分のボランチの裏で仕事ができるかどうかがポイントとなるはずである。
ちなみにロティーナ監督率いる東京ヴェルディは片野坂監督率いる大分トリニータと4度対戦し2勝2分と負けたことが無く、ロティーナ監督のJリーグ初勝利は2017年J2リーグ第2節の大分トリニータ戦だった。
大分戦、BSで拝見しました。
返信削除確かにAkiさんのおっしゃる「ロティーナのやりたいこと」もわかるし、
そのサッカーが熟成されているのも理解できます。
ただ、その熟成の先に選手やサポの求める未来が待っているのかな、
という不安はどうしても拭えないですね・・・
そもそも「ユンさんのサッカーじゃいまの選手に合わない」
ということでロティーナを呼んだのだから、
ロティーナのサッカーが選手にマッチしてないのであれば
(今後どれほど熟成できるとしても)方向性が間違ってることになります。
清武の例のコメントや得点できない現状を見るにつけ、
どこかでボタンを掛け違えているのではないかと見えるのですよね・・・
akiさんではないですが、失礼ながら返信させていただきます。
削除ユンさんのサッカーじゃいまの選手に合わないということでロティーナを呼んだ
のではなく、
ユンさんのサッカーはフロントが目指すサッカーと違ったのでロティーナを呼んだ
のほうが最適ではないかと思います。
ユンさんのサッカーはリアルなフォアチェック、カウンターを主体とし、運動量と、激しいプレーを必要とされる選手個々の負担が大きい。それでいて、観ている側もボールを支配していないので劣勢に見えるし1-0になったら2-0,3-0を狙うようなこともなく、一言で言えば面白くないんでしょう。
実際のところ、ポゼッションサッカーに対抗する最適解がそれであり、ポゼッション主体の川崎や横浜に強かったのもそれが所以です。
選手個々の負担が大きくなると、怪我も増えますし、やりたいポジションよりも勝つために役割が変わることを余儀無くされる選手も出ます。選手は個人事業主であり、サッカーは長い選手生活ではないので、選手にとって怪我、最適でないポジションでの仕事による評価、査定のダウンは致命的、というのもあり、一部の選手(というか一人?)からは不満が出たんでしょう。
それを受けてかどうかはわかりませんが、今のフロントは、ポゼッション率が上がれば勝率が上がると思っているのでは?と思える節があり、去年のノルマとして科せられたポゼッション率向上、目標ポゼッション率に設定された数値はリーグトップのチームが叩き出した数値を上回る現実的に不可能な目標値でした。強化部長が監督の時も能力が高い選手を集めればアイデアで何とかなると思っていた節はありましたし。スカウトマンとしては優秀なのでしょうが…。
話は戻りますが、現行のチームで言えば、ヨニッチ、都倉なんかは戦術にあっていない選手になるんじゃないかと思います。
二人の能力を否定するわけではありません。都倉選手は日本人ではリーグ3番目?ぐらいの上背とフィジカルの強さがありますが、ストライカータイプで、ポストプレイは得意ではない。(よくゴツい選手=ポスト みたいに言われますが豊田、川又なんかもポストプレイヤーではありません。)
スペースに抜け出したり、クロスに合わせるのを得意としますがどちらもあまり今季の戦術上多用されません。
ヨニッチは強いフィジカル、対人対空守備を持っていますが2タッチ以上でボールを保持したり、運ぶことやキープを得意としません。ポゼッションサッカー自体も、今までのチームで経験していません。なのでポゼッションでショートパス縛りの中フォアチェックに来られるともたつきます。
ソウザも武器としてミドルを持っていますが、遅攻が故にブロックができていることが多く今年は中々打つ場面すら見せられません。
リトリートに枚数をかける分、攻撃で前に繋がるのが遅い。
前に残っていてもボールが来ないため清武が本来のポジションから下がって受けることも多くなっています。
守備のブロックをつくってリトリートすることと、そこからポゼッションを保ちつつじわじわと前に行く、という点は徐々に良くなっている部分だと思いますが、前に行った後どう点を取るのかという部分が開幕から全く変わらない点。カップ戦は相手チームも控え組主体で精度が低いことや思い切りのいいプレーをしていたりと結果は出ていますがリーグで成績が伴わないのはこの部分かと。
お二方ともコメントありがとうございます。
削除色々書いていただいてもはや僕には書くことがありません(笑)
そんな中で最近感じていることをなんとなく書くと、ロティーナのやろうとしているサッカーは、近年サッカーがバスケットボールとかハンドボール化していると言われている中で行われているものだと思うんですよね。
なので同じポゼッションサッカーでも川崎とか名古屋とかとは全然違うので日本では珍しいですけどヨーロッパでは結構普通にある、ボールを奪う位置は低くなるけどそこから論理的にボールを運びましょうという感じでポゼッションを上げていこうとするものだろうなと。
ワールドカップでもハイプレスを行うチームはほとんど無かったですし。
で清武なんですけど、僕は最近セビージャ時代のナスリみたいなプレーをイメージしてるんじゃないかと思うようになっています。清武はナスリが入ったことでポジションを失ったんですが(笑)
お二方ともわざわざ返信ありがとうございました。
返信削除まず「フロントが目指す~のほうが最適」については、本音としてはそうでしょうが、建前としてはそうじゃない、で、いまセレッソが目指しているのは建前としての「選手に合うかどうか」なのでああいう風に書いたわけです。
さらにいえば、最新の大分戦レビューに引っ掛けていえば、サポや観ている人が「つまらない(理解できない)」というのはともかく、やっている選手自身がそう思っているのではないか、というのが心配されるわけです。
それはともかく「バスケやハンドボールのような」というのは、見かけ的には例えば、
・お互いがディフェンシブサードとアタッキングサードをすばやく往復し、
・アタッキングサードでショートパスとポジションスイッチを多用して崩す
というようなものを考えればいいんでしょうか。
もしくはより踏み込んで、アタッキングサードでのデコイランの多用とか、
味方選手をスクリーンに使ったプレーなどを含むのでしょうか。
バスケでのそういったプレーを連続して行う(フレックス、でしたっけ)のはサッカーではなかなか大変だろうな、と思いますけども。
ご返信ありがとうございます。
削除やっている選手がつまらないと感じているかどうかは、前回同様僕は別に気にすることでも無いしどちらでもいいかなと思っています。つまらないと感じたらそれはそれでしょうがないんじゃないですかね。
あとバスケやハンドボールのようなというのはまずは前者ですが、バスケやハンドボールが前者としての要素をもっているからこそスクリーンなどの後者が発達した(もちろんコートが狭いことも大きな要因ですが)ように後者のような発展もあり得るかもしれないですね。