スタジアム | 駅前不動産スタジアム | 主審 | 清水 勇人 |
入場者数 | 4,697人 | 副審 | 平間 亮、中野 卓 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴れ / 24.5℃ / 49% | 第4の審判員 | 作本 貴典 |
メンバー
- 監督
- 金 明輝
- 監督
- ロティーナ
<監督・選手コメント>
サガン鳥栖 金明輝監督セレッソ大阪 ロティーナ監督
サガン鳥栖 小野選手、高丘選手、豊田選手
セレッソ大阪 水沼選手、田中選手、高木選手、マテイ・ヨニッチ選手
3回戦からおよそ1ヶ月ぶりに行われた、第99回天皇杯全日本サッカー選手権大会ラウンド16。敵地駅前不動産スタジアムでのサガン鳥栖対セレッソ大阪の一戦は、前半に先制点を奪ったサガン鳥栖がリードしセレッソ大阪が追いかけるという展開となり、セレッソ大阪も2度同点に追いつくも最終的には終盤2得点を奪ったサガン鳥栖が4-2で勝利。セレッソ大阪2019年の天皇杯はラウンド16で敗退が決定。これで今季のカップ戦は全て敗退となり残すはリーグ戦のみとなった。
■メンバー
ミッドウィークに行われる天皇杯だが、次の週末のリーグ戦はお休み。さらにサガン鳥栖は前節から中3日だがホームでの試合。セレッソ大阪は続けてのアウェイでの試合となるが中4日。ということで両者ある程度のターンオーバーは行うが主力も起用されているという中での試合となった。サガン鳥栖の先発メンバーは、リーグ戦前節から5人を入れ替え。GK高丘をはじめ高橋祐治、高橋秀人、三丸、原川、アン・ヨンウが続けて先発となり、原、パク・ジョンス、松岡、豊田、小野が代わって入った選手。
原を除く4人は前節ベンチ入りもしていた。
この夏に加入しリーグ戦前節で先発だった金森、金井はそれぞれ鹿島、名古屋で天皇杯に出場しているので鳥栖では出場出来ない。
高橋祐治、高橋秀人、パク・ジョンスとこれまでCBとして出場していた選手が3人先発メンバーに入っていたことでどういう並びになるかと注目されたが、パク・ジョンスは中盤に入っていた。
一方、セレッソ大阪の先発メンバーは、リーグ戦前節から6人が入れ替え。引き続き先発となったのが丸橋、ヨニッチ、レアンドロ・デサバト、水沼、ブルーノ・メンデスの5人で、GK圍、片山、瀬古、ソウザ、田中亜土夢、鈴木孝司が代わって入った選手。この6人は全員前節ベンチ入りしていた選手でもある。
また鈴木孝司は移籍後初先発。そして高木は8月13日に椎間板ヘルニアで離脱が発表されてから初の、そして7月20日のリーグ戦仙台戦以来となるベンチ入りとなった。
■攻守にはまらなかった前半
この試合では20分に豊田がヘディングシュートを決め前半は1-0の鳥栖リードで終わるのだが、内容的にはもっと点差が開いてもおかしくなかった。前半のシュート数で鳥栖の6本に対してセレッソは2本。それ以上に鳥栖の枠内シュートが5本に対してセレッソは0本。
2分にあった小野による鳥栖の初シュートが、セレッソがよく見せる右サイドで人数をかけるもそこから左SHへ展開して一気にボールを運ぶ形を作ろうとして左SHの田中亜土夢にボールが届きながらも、そこでボールを奪われてという形だったことからが象徴するように、セレッソは攻守においてやりたいことができていなかった。
■鳥栖のボール保持
鳥栖がみせた3バック化 |
今回その左SBを高い位置に出すためのキーマンだったのが本来CBながらボランチで起用されたパク・ジョンス。パク・ジョンスがCBの左に下がって3バック化することで三丸を高い位置にあげようとしてきた。
下がったパク・ジョンスをフリーにしてそこからパスでどうこうという訳ではないので厳密に言えば違うが、仕組みの原理としては懐かしのマルチネスー丸橋システムである。
右サイドを崩されるセレッソ |
この形でセレッソは何度もセレッソの右サイドから鳥栖に攻め込まれる場面が見られた。
その中の1つが20分の豊田が決めた鳥栖の先制ゴール。
このころには水沼がパク・ジョンスに対して出ていくこともほぼなくなっていたが、三丸に対して最初水沼がアプローチに行き、そこから縦に運んだので水沼は片山に任せたが片山のアプローチが遅れたことで三丸に時間とスペースを与えてしまい狙いすましたクロスを入れられることになった。
またこの3バック化でのビルドアップはサイドでのボールを運ぶ形以外に、アンカーというか1ボランチになる松岡にボールを入れそこをボール前進の起点とする形も用意されていた。
前線の動きとしては三丸とアン・ヨンウ(時に原)が幅を作りながら、豊田はビルドアップではボールサイド、サイドで前進するとボールと逆サイドに移動と動きがシンプルなので、隙間に小野と原川が入るという形でボールを運ぶ。
3バック化しているW高橋のCBとパク・ジョンスの3人共がボールを運んで相手をひきつけ次の選手に時間とスペースを送るプレーが上手く無いので2トップの2人を外すのに(2トップ裏にいる松岡にボールを運ぶのに)3人必要となり効率はそれほど良いわけでは無いが、サイドでのボール循環も加えての形なのでこの試合では効果的だった。
これに対してセレッソもデサバトなどボランチの1人が出て松岡を捕まえようとするプレーを見せていたが、困ったら豊田を目掛けて蹴れば良いという最終手段があるので手こずった。
ただ、時々松岡が我慢できずにパク・ジョンスよりも先にCBの間に落ちてボールを動かそうとするが、こうなると結局豊田目掛けてけるしかなくなるので、もし鳥栖がこのビルドアップの形をリーグ戦も含めて今後も続けるのであれば改善点の1つだろう。
■ボールを運べないセレッソ
鳥栖のプレッシングの仕組み |
鳥栖は4-4-2をベースにしながらボール保持では3バック化していたが、守備へと切り替わったネガティブトランジションの時にボール非保持でもSHを1つ前に出して3トップ化してプレッシングを行ってきた。前に出てくるのは基本的に右SHのアン・ヨンウとなっている。
ただこの3人もプレッシングを行う時だけで、セレッソがボールを保持するとアン・ヨンウは2列目に戻り4-4-2でセットする。
ビルドアップで両SBが前に出るも |
それを踏まえて鳥栖のプレッシングを見ると、前に出てくるのは右SHのアン・ヨンウ。セレッソにとっては左サイドにいる選手である。
ということで片山のところにはほとんどプレッシャーがかからないというか、アプローチに来るのは内側から外へという形になる。
ここで片山は3バックとして最終ラインにとどまるのではなく積極的に前に出た。来ないから(もしくは内側から来るから)前にでてボールを受ければという考えだったのだろう。
となるとセレッソのビルドアップの形は2CB+2ボランチによる形だけになる。
そして普段のセレッソの2CB+2ボランチによるビルドアップでは、ボランチの1枚がCBの間に下がったり、脇に下がったり、そのままの位置でいたりと様々なバリエーションがあるが、この形でのキーマンは藤田。CBの間にボランチが下がる場合にほとんどのケースでその役割を担っているのが藤田だからだ。しかしこの試合では松田同様にベンチだった。
ということでデサバトが最終ラインに下がる動きを見せる動きを見せるようになるが、セレッソはビルドアップが上手くいかず、鳥栖が先制し3人でのプレスをやめるようになるまで、また豊田が何故か1人で暴走気味にプレスに行く場面以外ははほとんどボールを運ぶことができなかった。
■2トップ2シャドゥ?
2トップ2シャドゥ |
この状態はいつものブルーノ・メンデスと奥埜の2トップの時も同じでは無いかと思われるかもしれないが、実はブルーノ・メンデスと奥埜が2トップを組む時は同じ高さにいることや、近い距離に2人いることは極端に少ない。
これは2人の役割の違いからくるものだと思われるが、奥埜がCFの位置に入るのはブルーノ・メンデスがボールサイドで背後を狙った時やシャドゥの位置に下がってボールを受ける場面ぐらいで、それ以外のブルーノ・メンデスがトップにいる時はボールサイドのサイドに流れる位置にいたり、シャドゥの1枚がビルドアップの出口になっている時は、そのシャドゥの1枚がポジションを取れないシャドゥの位置に入っていたりしている。
つまりポジショニング的には2トップ2シャドゥにはなっていなくて、原則は1トップ2シャドゥ+αという並びになっているのだ。
これまでの試合でブルーノ・メンデスと鈴木孝司は常に入れ替わる形で交代しており、2人同時に出場するというのが初めてだったということもあり、前半はバランスが悪くなっていた。
■片山を残した3バック
後半立ち上がりの48分、片山のロングスローがゴール前を通過する形になってCKを得ると、そのCKからのセカンドチャンスで田中亜土夢からのクロスをヨニッチが頭で合わせてセレッソが1-1の同点に追いつく。鳥栖はラインを上げていたのでヨニッチはオフサイドポジションだという認識だったと思うが、大外で片山にマークについていた原が残っており、それに気づいた原も慌ててラインを揃えようと上がるが間に合わなかった。
この同点ゴールに直接絡んでいた訳ではないのでわかりにくいかもしれないが、セレッソは後半立ち上がりから戦い方を変えていた。
片山を残した3バックに |
これによりボランチの2枚はそのままの位置にとどまり、水沼が右WBの様なポジション、そして前線も1トップ2シャドゥの様な立ち位置を取れるようになる。
片山が後ろから持ち出すことで鳥栖の守備ブロックを動かす |
ということで前半全くボールを運べなかったビルドアップ問題が一気に解決し、セレッソがボールを運ぶことができるようになっていた。
後半も結果的に片山が高い位置をとる場面も増えるのだが、ボールがどこにあって、どのタイミングで、どこのポジションをとるかで状況が大きく変わるわかりやすい例だと言えるだろう。
ちなみに同点ゴールの場面でも片山がドリブルでボールを持ち出したところから最初の攻撃は始まっていた。
■結果に直結したミスからの失点
同点に追いつき、前半の問題点を改善したことで試合を一変させたセレッソだったが、その同点ゴールからわずか3分後の51分にアン・ヨンウにミドルシュートを決められ再び鳥栖にリードを許すことになる。きっかけになったのはヨニッチのミスパス。
小野に後ろからアプローチをかけられていたのは確かだが、それほど難しい場面ではなかっただけに悔やまれるミスパスだった。また圍もブラインドになっていたのか簡単に決められてしまった。
試合の進め方としては前半45分間の戦い方がもったいないという試合だったが、試合結果に直結したのはこの2失点目だった。
70分〜 |
62分に田中亜土夢が迎えた決定機(片山が最終ラインに残る3バック化した立ち位置で言うと右WBにいる水沼から右シャドゥにいるブルーノ・メンデスを走らせ、1トップの鈴木が潰れて左シャドゥの田中亜土夢がシュート)など2-1となってからもセレッソはシャドゥを中心にチャンスを作っていた、が決められなかった。
なのでこの70分の交代はシャドゥの入れ替え。
田中亜土夢が右SH(3バック化したときの右WB)にまわり柿谷は左SH。そして高木は2トップの一角にはいった。
そして高木と柿谷、そして丸橋の3人で左サイドから押し込むとそれで得たスローインから。片山のロングスローから田中亜土夢が折り返したボールを柿谷が合わせてゴール72分に2-2とセレッソが再び同点に追いつく。
85分〜 |
そして85分、鳥栖が松岡に代えて高橋義希を投入すると、時間が無いので前がかりになったセレッソが自陣深い位置でボールを取りに行くも入れ替わられる形になり最後は豊田に決められ4-2。
試合はそのまま終了となり鳥栖の勝ち抜けが決定。
セレッソ大阪の第99回天皇杯全日本サッカー選手権大会はベスト16敗退に終わった。
■その他
3失点目の大外折返しはセレッソのやり方だと最も守りにくい形で、4失点目はもはや前がかりになっていた。ということで1失点目を含めた前半45分間のセレッソの戦い方で試合をかなり難しくしてしまい、さらにミスからの2失点目で試合を決めてしまった。そんな試合だったと言えるだろう。
後半修正して持ち直したように、入れ替わった選手達にも戦術的な部分は確実に落とし込まれているし、十分できるのだが、そこに至るまでの認知や判断の面ではどうしても少し劣ってしまうということが出てしまった。
リーグ戦でメンバーをかなり固定しているので仕方がない部分もあるのだろうが。
GKを使ってビルドアップするにしても、圍はリーグ戦での出場はないもののカップ戦では安定したプレーをみせていたのだが、例えば1つ奥につなぐことはできなかった。
これでカップ戦は全て敗退が決定。
チーム力は確実に上向いていたので結果は残念だが、ここがチームとしての現在地。
今季残り期間でのトレーニング、そしてリーグ戦でレベルアップしていくしかない。
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