スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 池内 明彦 |
入場者数 | 27,201人 | 副審 | 西尾 英朗、田中 利幸 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 27.5℃ / 66% | 第4の審判員 | 中井 敏博 |
メンバー
- 監督
- ロティーナ
- 監督
- 鬼木 達
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 ロティーナ監督川崎フロンターレ 鬼木達監督
セレッソ大阪 鈴木選手、瀬古選手、マテイ・ヨニッチ選手
川崎フロンターレ 守田選手、小林選手、中村選手、長谷川選手、下田選手、マギーニョ選手(川崎フロンターレ公式)
明治安田生命J1リーグ第25節、セレッソ大阪が本拠地ヤンマースタジアム長居にチャンピオンチーム川崎フロンターレを迎えての一戦は2-1でセレッソ大阪が勝利。今季4度目の挑戦にして初の3連勝を記録。そして対川崎戦の不敗記録を6に伸ばした。
■メンバー
セレッソ大阪の先発メンバーは、前節から1人入れ替え。清武が負傷離脱となり左SHに入ったのはプレビューでもその可能性に触れた柿谷。柿谷だとFWになるのではという向きのあったが、セレッソの左SHはボール保持の時にインサイドに入るのでここまでカップ戦などで見せてきたプレーを考えると左SHの方が適任。トップに求められるボール保持時の背後、ボール非保持の対ボランチという面でも奥埜をトップに置いた方が戦い方としては組み立てやすいとの判断だったのだろう。不安点があるとすると、しばらくやっていないサイドの守備ということになるが、3バックだった時にはシャドゥに入り非保持時は5-4-1のサイドの守備もやっていたので、全く知らないという訳では無い。
一方の川崎フロンターレの先発メンバーは、前節から2人入れ替え。前節負傷交代した齋藤学に代わって右SHに入ったのは家長、1トップにはレアンドロ・ダミアンに代わり小林が起用されている。
鬼木監督のコメントによると間や裏でセレッソのブロックを崩す役割を小林に、また右SBのマギーニョを活かすためにボールを持てる右SHに家長という決断になったようだ。
■先制パンチ
3連覇を狙うチームでありながら5試合勝利から見放されている状態の川崎。いわば崖っぷちの状態である。なのでこの試合で必要なのは勝利。アウェイの試合であり、直近5試合の対戦成績が1分4敗のセレッソ相手だとしても、川崎がここヤンマースタジアム長居でのリーグ戦で勝利したのが2000年ファーストステージ最終節のあの試合だけだったとしても(ヤンマースタジアム長居でのリーグ戦通算成績:1勝3分4敗、カップ戦では2014年のナビスコカップ準決勝ファーストレグで勝利している)、川崎にとっては勝ち点3を奪わないといけない試合である。
川崎はCBにまでアプローチに行く |
キックオフから藤田に戻したボールには小林が、藤田からヨニッチに戻すとCBにまで中村憲剛が追ってきた。
「この試合の立ち上がりはこういう感じで行きますよ」という意思表示である。
これに対してセレッソは松田とデサバトで一旦はミドルゾーンにまでボールを運ぼうかという形になるが、デサバトに対して下田が一気に距離を詰めてきたのでやり直しのバックパス。さらにヨニッチに中村憲剛がもう1度追いかけてきたのでヨニッチはロングキックを選択する。ここまでは川崎の狙い通りの形だろう。
セレッソが逆サイドに展開 |
しかしこのとき柿谷はバランスを崩してしまったので戻ってくる家長に追いつかれ、ファールで止められてしまった。
この場面谷口の跳ね返しを「セレッソが拾った」場面なのだが、セレッソの試合を見ている人ならこういう感じでビルドアップでロングキックを選択せざるを得なくなった時でも、その跳ね返しを「セレッソの選手が拾う」場面はよく見るんじゃないかと思う。そしてその場面でボールを拾っているのは大概がボランチ。つまりこの状況の時にセレッソはボランチを必要以上に動かさないので「セレッソの選手が拾いやすく」している。
そして次に柿谷がドリブルし始めた場面。ここはいつもは清武なのだが、ここにボールが入って前向きにドリブルを始める場面は今季セレッソの攻撃でよく見られ、そしてサポーターにとっては期待感を抱かせる場面だろう。
セレッソはヨニッチ、松田のところで相手からアプローチを受けたときはこの左SHにボールを届けることがビルドアップのゴールになっている。ここにボールを届けることができれば外側を出ていくSB、背後を狙うFW、FWが開けたスペースに入るもう1人のFWもしくはSH、逆サイドの大外を出てくるSHもしくはSB。
ヘディングで跳ね返されたボールを拾ってからだったが、開始1分の時点で狙い通りの形を作ることに成功していた。
そして川崎が前からくるということは背後は空く。となるとセレッソは素早くそこを狙う。
柿谷が倒されたFKから瀬古が逆サイドへ一気にサイドチェンジで松田へ。松田が縦に抜けて上げたクロスをマギーニョがCKに逃げる。
そしてこのCKから瀬古が押し込んでゴール。開始2分でセレッソが先制する。
川崎はここまでの未勝利期間5試合で2度CKから失点しており、広島戦でも開始4分で失点。低いボールだったがニアで触って佐々木が押し込んでいる。そしてニアのストーン役が中村憲剛。ということで完全に狙っていたのだろう。
ただし、ゴールが認められるプロセスとしては少し疑問が残るものとなった。
確実にゴールラインは越えているのでゴールなのだが、実際にそのプレーが起こっていたタイミングでは主審も副審もゴールのジェスチャーをしていなかった。このプレーはDAZNのジャッジリプレイでも取り上げられ、上川さんによると主審と副審がお互いの持っている情報を突き合わせて協議した結果だと話していたが、中村憲剛がタッチラインに大きく蹴り出した時には主審は通常のスローインのジェスチャーをしていた。なのでおそらくセレッソの選手が抗議しなければ主審は副審と協議しなかったのではないだろうか。
ゴールに入っていたのは入っていたので誤審ではなく、むしろセレッソにとっては誤審にならなくて良かった案件なのだが、誰が何を見てゴールの判断を下したのかというプロセスに少し疑問が残るものだった。
■前半から後半のような
セレッソを押し込む川崎 |
セレッソも最初は普段の前半の様にプレーしようとしている様子も伺えたが、川崎は両SBを高い位置にあげ、セレッソにボールを奪われた時に前線が2対2でもOKぐらいの勢いで攻め込み(実際にはセレッソの2トップの1人が川崎のボランチに行くので2対2では無い)、さらにセレッソの4-4はかなり狭く中を閉めているが、外側を使ってボールを運ぶことができるので川崎はアタッキングサードまでボールを運ぶことができる。
さらにサイドでは中村憲剛がボールサイドに寄るとそこで確実に数的有利を作ることができるため、セレッソのブロックはいつもの後半の様にどんどん下がってしまうようになっていた。
下がってしまうとどうしても事故は起こり得る。
家長のクロスに対してキム・ジンヒョンとヨニッチが重なってしまうような形になりキム・ジンヒョンのパンチングは不正確に。小林に当たったボールが阿部にわたり、左足のシュートでゴール。13分に川崎が同点に追いつく。
阿部のシュートの上手さも際立っているが、セレッソとしてはキム・ジンヒョンとヨニッチが重なったところ。
ただ、そうなってしまったのは押し下げられてしまったからなのだが、もう1ついえばクロスを入れた家長に対して柿谷と丸橋の対応が少しお見合い気味になってしまったことも悔やまれる場面だった。
試合中はキム・ジンヒョンがやらかした的な雰囲気で、もちろんパンチングが上手く当たらなかったという部分もあるが、それを原因にしてあげるのは可愛そうかなという場面だった。
■20分ごろからボールを持てるようになるセレッソ
同点に追いついてからもボールを保持し攻め込む姿勢を崩していなかった川崎だったが、20分ごろからは徐々にセレッソもボールを持つ時間を作ることができるようになる。そうなっていった要因の1つはセレッソがブロックで川崎のパスを引っ掛ける場面が増え始めていたこと。
川崎はこの前半20分ぐらいの時間帯までにもかなりの数のパスを繋いでいたが、シュートまで持っていく場面は作れていない。というかセレッソのブロックの前にシュートを打つスペースと時間を作れていない。
18分に中村憲剛がロングシュートを放つが、実はこれが川崎2本目のシュート。なので20分まで(実際にはこの後40分のCKから谷口のヘディングシュートまで)で放ったシュートは同点に追いついた阿部のシュートとこの中村憲剛のロングシュートだけだった。
ボランチを下げる3バック化でビルドアップを行うセレッソ |
これは川崎が前線からプレスをかけに来たときの3人目(小林、中村憲剛の次に出てくる選手)がSHの阿部や家長だったことを認識したからだろう。SHが出てくると松田が残る3バックならそのまま阿部のアプローチを受けることになる。なので下がってくるのは藤田、藤田とマッチアップしている守田や下田は背後や横に柿谷と水沼がいるのでここまで出てくることができない。そして松田を前に出すことで川崎のSHを出てこれなくした。
こうして攻守に置いてトランジションの機会を減らし試合をコントロールできるようになるセレッソ。
いつもの前半の流れに持ち込んでいったところで前半が終了。
両者1点を奪い合うまでは少しバタバタしたところもあったが、その後は通常のゲームに持っていった。
欲を言えば立ち上がりに川崎がハイプレスをしかけてきた影響もあるのだろうが、ゴールキックでキム・ジンヒョンが蹴ってしまう場面が多いのが少し気にかかるところ。川崎のプレスのかけ方だとセレッソはボールを逃がすことができそうなのでゴールキックでも繋いでいけば右サイドで詰められても柿谷にボールを届けて前を向いてボールを運ぶ場面が作れたのではないだろうか。
■いつもと逆の後半立ち上がり
53分〜 |
ロティーナはよく戦術的な50分交代をやるが、この交代はそうではなくブルーノ・メンデスに内転筋の違和感があったからとのこと。
清武が離脱し、FWでは都倉はもちろん高木もまだ戻っていない状態なので重くないことを祈りたい。
そして時間帯は前後するが、前半にゴールキーパーからボールを繋ぐ場面が少なかったことはおそらくHTの指示でもあったのだろう。
GKを使ってビルドアップを行うセレッソ |
このプレーでキム・ジンヒョンから松田、松田から水沼とつなぎ水沼がデサバトに出したパスがずれてしまったので守田にインターセプトされ中村憲剛、中村憲剛から小林へのスルーパス(瀬古がクリア)という形になったが、ここはセレッソにとってもう少しでという場面。水沼からのパスがずれずにデサバトに通っていたら守田の脇にかまえてきた柿谷にボールを届けるセレッソが狙っている形が作れそうな場面だった。
ということでしっかりと立ち位置を取り前半の終盤以上にボールを運ぶ回数が増えるセレッソ。それは鈴木投入後も同様、川崎が1度アタッキングサードに運ぶ間にセレッソは4度運ぶと、水沼のアーリークロスが下田に当たりそのボールが上手く右サイドに出ていったデサバトへのパスに。
そしてデサバトのクロスを鈴木がヘディングで合わせゴール。54分にセレッソが2-1と再びリードする。
この場面の鈴木はまさにストライカーといえる見事な動きだった。
デサバトが右サイドで縦に出ていった時にニアの前ゴールに近い位置に走り、クロスを上げる前にストップ。
ゴールを決めるためのシュートを打つのに必要な時間とスペースを自分の周りに作った。
ストライカーには上手/下手とはまた違う、沢山ゴールを決めることができる能力というのが別にあると思っている。これを持っている選手はコンスタントに得点を決めることができる。
それを「嗅覚」という言い方などで表現されることも多いが、個人的には「自分がゴールするために、シュートを打つためにはどういう条件が必要かを理解していて、その条件を作るための準備ができるかどうか」だと思っている。
この鈴木のゴールはまさにその準備が産んだ、実にストライカーらしい、カテゴリこそ違うもののこれまで沢山ゴールを決めてきた選手だということを感じさせるものだった。
一方、得点を決められた側の川崎だが、水沼のクロスが下田に当たって右サイドのデサバトへという展開だったのである種アンラッキーな面はあったと思う。
しかしデサバトがクロスを入れた瞬間の中は3対3。数的同数になっている。
そして実は水沼が下田にあたったがアーリー気味にクロスを入れたときも3対3だった。だから水沼はクロスを選んだのだろう。
だがこの場面はセレッソのカウンターでも何でも無い。
むしろ川崎がボックス内に人数を揃える対応をした藤田のロングスローから始まっている。
そのロングスローを川崎がクリア。そこからもう位置どセレッソがボールを拾ってというところから水沼にボールが渡るのだが、水沼へボールが渡ったときも例えば川崎がカウンター気味に出てきたところを裏返したわけでもなんでも無く、セレッソはロングスローで上がっていたヨニッチがCBのポジションに戻るのを待ってから右サイドへパス。つまりセレッソも川崎も組織を作り直す時間があった。
にも関わらず中央は数的同数。直近5試合で10失点と失点が止まらない原因はこの辺りにあるのではないだろうか。
■力技へと変わる川崎
66分〜 |
「その後もチャンスをなかなか作れない川崎」とサラッと書いたが、川崎の後半最初のシュートは交代直前に放った家長のミドルシュート。最終的に川崎はこの試合で14本のシュートを打ちセレッソのシュート数10を上回るのだが、この時点ではセレッソのシュート6本に対して川崎は4本。枠内シュートに至っては1-1となった阿部のシュート1本しかない。
前半からパスを多く繋いでいた川崎だが、そのボール保持攻撃のポイントになっているのは中村憲剛がボールサイドによって数的有利を作ってという形がほとんどなのだが、そうなるとブロックの中で勝負しているのは小林だけ。これは尹晶煥が監督をしていたときにも書いた記憶があるが、結局それだと中を閉めてしまうとフィニッシュまで持っていくことができない。
ゴール前30Mの川崎とセレッソのブロック |
川崎のこの動きは例えばマンツーマン気味に人についていく守備であれば、引っ張られて、スペースができて、逆を取られてということになるのだろうが、配置で動かすという概念はあまりないのでセレッソは尹晶煥時代からやってる中を閉める守備で十分対応できるだろうということを選手も感じながらプレーしているんじゃないかと思う。
ということで、残り30分近くある中サイドで仕掛けられる長谷川とクロスで勝負できるレアンドロ・ダミアンを投入。
セレッソの守備はサイドにスペースがあるのでサイドまではボールを運ぶことができる、そこからどうゴールに結びつけるか、どうシュートまで持っていくかの答えが2トップ+サイドアタッカーという力技とも言える形だったのだろう。
73分〜 |
家長と中村憲剛がいなくなったことで低下したビルドアップ、ボール前進を盛り返そうということだったのだろう。
83分〜 |
川崎にチャンスがあったのは片山投入前の時間帯。
77分にサイドで深く侵入した長谷川ピンポイントクロスに小林が頭で合わせるがクロスバー。
そして80分には脇坂がハーフスペースに侵入、折返すも瀬古が中央でクリア。
この2つは決定的ともいえる川崎のチャンスだったがセレッソは守りきった。
すると82分にカウンターで3対1の状況を作ると水沼の折返しから田中亜土夢が決定機を迎えるが、チョン・ソンリョンが一気に距離を詰めセーブ。川崎も守り切る。
そして試合はそのまま終了。セレッソ大阪が2-1で勝利し対川崎戦の負けなし記録を6に伸ばし、今季初の3連勝。セレッソと川崎の勝ち点差は1にまで迫った。
■その他
先制点後は押し込まれることとなったが、再び盛り返して決勝点を奪うという素晴らしい勝利だった。4度目の挑戦にして今季初の3連勝を達成できたのも非常に大きい。
鈴木孝司の素晴らしさは本文中でも書いたので、久々の先発となった柿谷について。
左SHでの起用は個人的には予想通り。そしてプレー全般としてはまずまずだったと思う。
久々でというところと、守備面での意識が強かったのもあるのだろうが、もう少し中に入ってプレーをしても良かったと思う。それができればもう少しチャンスも増えたんじゃないだろうか。
清武が時間がかかりそうなので、その間に改善していってほしいところだ。
いつもお疲れ様です。
返信削除去年までは攻撃が個の寄せ集めだった分、清武が怪我をするとその個の良さを使う側の選手が居なくなって終了という感じでした。
今年は組織としてしっかり攻守共に戦術や動き方の決まりあって、理解度が高い分怪我で簡単に崩れないのは強さな気がします。
瀬古のゴールのジャッジについて、ラインズマンもゴール後普通にコーナーには止まらず抗議を受けるまでオフサイドラインを追ったりしていたので正直なところお互いのイメージを擦り合わせたというより抗議や雰囲気に流され状況から判断したという印象が強いです。
結果合ってたからあのサラッと終わった流れでも済みましたが確認までのプロセスが悪かったですね。その直後もタッチを割ったボールでセレッソボールを川崎ボールにして主審が訂正する場面もありましたし。
残り9試合、東京が五部に近い成績でもセレッソは全勝ペースでないと優勝はないのでギリギリACL圏内にいけるかどうかというところですかね。
柿谷も守備でよく貢献していた印象です。
コメントありがとうございます。
削除おっしゃられるように今季は戦術や決まりごとがはっきりしていること、もっと言えばその戦術や決まりごとで何をしようとしているかの目的がはっきりしていることが強みになりつつあると思います。
得点のプロセスには少し疑問はありましたが、副審はポジションが決まってる分どうしても見えないこともあるので、スローインのジャッジに関しては許してあげてください(笑)。
どうしても久々に先発した柿谷に注目をしてしまってたんですが、チームのために出来るこを全て出していたように思いました。
返信削除ただ残念なのが失点のシーン。裏に抜けようと走っていった選手に柿谷が付いていって、空けたスペースを家長に使われて楽にクロスを上げられましたが、丸橋は柿谷がそこにいると思ってマークを受け渡したんでしょうか?
気になるところです。
コメントありがとうございます。
削除失点シーンの柿谷は、失点につながってしまったので残念でしたが久々の左SHなのでしょうがない範囲のミスだと思いますよ。