スタジアム | 札幌ドーム | 主審 | 東城 穣 |
入場者数 | 12,443人 | 副審 | 岡野 宇広、赤阪 修 |
天候 / 気温 / 湿度 | 屋内 / 21.6℃ / 41% | 第4の審判員 | 阿部 将茂 |
メンバー
- 監督
- ペトロヴィッチ
- 監督
- ロティーナ
<監督・選手コメント>
北海道コンサドーレ札幌 ペトロヴィッチ監督セレッソ大阪 ロティーナ監督
北海道コンサドーレ札幌 鈴木武蔵選手、菅野選手
セレッソ大阪 柿谷選手、マテイ・ヨニッチ選手、キム・ジンヒョン選手、木本選手、舩木選手
前節の敗戦で優勝争いからは遠ざかった中での明治安田生命J1リーグ第29節。セレッソ大阪は敵地札幌ドームで北海道コンサドーレ札幌と対戦し0-1で勝利。
土曜日の試合で川崎が引き分け、広島が勝利したため順位を1つ上げて5位となった。
■メンバー
北海道コンサドーレ札幌の先発メンバーはリーグ戦前節から3人を入れ替え。韓国代表で北朝鮮とのアウェイゲームにも参加していたク・ソンユンはJ1リーグ戦では累積警告で出場停止となった2017年第20節セレッソ戦以来先発メンバーから外れ、GKに札幌加入後J1リーグ戦では初出場となる菅野を起用。またリーグ戦前節、ルヴァンカップセカンドレグにも出場していたジェイ・ボスロイド、荒野の2人はベンチからも外れアンデルソン・ロペスと中野を起用。中野は第14節の広島戦以来となる先発でシャドゥとしては札幌加入後初先発となっている。一方、セレッソ大阪の先発メンバーは予想通り前節から1人入れ替え。負傷の丸橋に代わって舩木が起用されている。また片山も今週のトレーニングで負傷とのことでベンチにはどちらも今季初のトップチーム帯同となった斧澤と丸岡が入った。
またなぜか中継では日程面に触れられることが多かったが、たしかにセレッソは既にルヴァンカップで敗退しているので国際Aマッチウィーク期間中は全く試合はなかったものの、札幌もルヴァンカップセカンドレグが日曜日だったので中4日あり、さらにいえばホームゲーム連戦。特別意識する必要もなく日曜日から金曜日は普通の日程だと思う。
■鮮やかな先制ゴール
開始6分という早い時間帯に柿谷のゴールでセレッソが先制する。6分の先制点 |
ここからソウザに渡ったところで宮澤がボランチの位置から前に出てソウザにアプローチをかける。
するとソウザは松田へリターン。その瞬間奥埜が宮澤が前に出て空いたスペースに入っていきそこへ松田から斜めのパス。これでもう1人のボランチ深井も奥埜に近づく。そしてブルーノ・メンデスが福森とキム・ミンテの間を抜け出そうとしたのでキム・ミンテはこれに反応、となると進藤もさらに絞って奥埜の前に。
となったので奥埜からのパスをブルーノ・メンデスがヘディングで戻した瞬間には柿谷はフリー。
その柿谷がワンタッチで放った鮮やかなシュートがゴールネットを揺らした。
解説の曽田さんが札幌は人数が揃っていたのにプレッシャーをかけることができていなかったという旨の解説をされていた様に、札幌は5人のDFライン、2人のボランチの全員が揃った状態で守備を始めているのだが、宮澤がソウザに対してプレッシャーをかけようとアプローチに出たことがきっかけとなり、セレッソはそれでできたスペースを次々と芋づる式に使ってゴール前の柿谷をフリーにした。この形はまさにセレッソが狙っている形で、このブログでも何度か書いている逆サイドのSHにボールを届けることが出来た時点でチャンス確定のパターンの1つである。
■再現性のある攻撃
この早い時間帯の先制ゴールは、偶然でもラッキーでもない形だったことからもわかるように、試合は立ち上がりからセレッソがペースを握った。というよりも札幌はセレッソのボール保持を全く捕まえられずかなり混乱していた。マッチアップ |
そしてここから札幌は高い位置から守備を行う。
4バックに対して1トップ2シャドゥの3人なのでボールが出た時にアプローチをかけ、セレッソのボランチはボランチで捕まえようとする。
セレッソでは条件が揃っていない時以外はほとんどやらない高い位置からの守備だが、高い位置でボールを奪い返すことができればゴールまでの距離が物理的に近いし、相手守備陣の人数が揃うまでに攻め込むこともやりやすい。
バスケットボールやハンドボールなどボール前進にミスが起こりにくい手を使うタイプのスポーツではあまり見ることがなくなってきたが、サッカーはコントロールしにくい足を使うスポーツであることからミスも起こりやすく一般的にはリスクに対してリターンの方が大きいと考えられており、もはや「前線からの守備=いい守備」という感じで誤解してしまうほどよく見る。
セレッソのビルドアップ |
ミスマッチを作る |
これに対してセレッソの選手は水沼がサイドに開き、奥埜が少しズレ、柿谷が中央へ、そして逆サイドの舩木が前に出てくる。
こうなると実はセレッソのビルドアップで札幌の選手が誰も捕まえられていない、ミスマッチを作られていることがハッキリわかる。
例えば奥埜や柿谷は誰が見るのか。サイドにいる福森や白井が出ていくと、水沼や舩木が空く。
キム・ミンテや進藤が出ていくとそのスペースにブルーノ・メンデスに走られるという形になっているのだ。
そしてこれは先制点を奪ったときの形と同じ。
11分のブルーノ・メンデスが迎えた決定機、25分の右サイドから奥埜が折り返したチャンス(この場面では奥埜と水沼が途中でポジションチェンジしている)も同じ。
何度も同じ形でチャンスを作っている。
何度も同じ形でチャンスを作ることができていたのは、この攻撃のスタート地点がキム・ジンヒョンも含めた最終ラインのビルドアップからで、GKから始まる攻撃はセレッソがやろうと思えばいつでもできるからである。
キム・ジンヒョンの選択肢 |
GKのヒートマップ |
しかしそれは単に場所の問題でしかなく、実際のスタッツとしてはボールタッチ数は菅野の32回に対してキム・ジンヒョンは43回。意図したパスの成功数(前線のターゲットを目掛けたロングキックなどを除くパス)も菅野の14回(成功率60%)に対してキム・ジンヒョンは20回(成功率71%)。
とキム・ジンヒョンが上回る結果となっていた。
そしてこのキム・ジンヒョンのスタッツの中で特筆すべきはミドル・ロングレンジのパスで11/19(成功率58%)を記録。菅野の5/13(成功率38%)と比べると大きな差があった。
これは単純に菅野よりもキム・ジンヒョンの方がどうこうという話し以上に、先程紹介したキム・ジンヒョンには複数の選択肢が用意されていたという部分、つまりチームとしての戦い方、そのクオリティの差だといえるだろう。
ただまあ、いつもそうというか今のチームの課題の1つなのが、これだけチャンスを作り出すことができていながらも得点が1点しか取れなかったこと。
少なくとも先制点以外に、立ち上がりのハンドの誤審、ブルーノ・メンデス、奥埜の折返し、水沼と4度のビッグチャンスがありながらも決めることが出来ていないというのは厳しい。
もちろんシーズン序盤に比べると、チャンスの兆しがチャンスになり、チャンスがビッグチャンスになり、そして実際に得点も増えているのだけれども、まだまだ得点は増やせるはずだ。
■続けることができた札幌
先にも書いた通りこの試合は高い位置から守備をしようとする札幌の対してセレッソがチームの構造として上回りチャンスを作るという展開で進んでいた。この試合で札幌がとった高い位置から守備をしようというやり方は、ここまでの内容からもわかるようにピッチの広く使うチームと対戦する場合には非常にリスクがある。
ただし効果もある。
プレッシャーがかかっている状態とかかっていない状態であれば、もちろんプレッシャーがかかっていたほうが相手もミスをしやすいからで、どうせ運ばれてズラされるなら入り口のところで制限をかけてミスを誘ったりしたほうが、ゴールも近いしチャンスもある。
ちょうどこの試合では入れ替わることになったが、尹晶煥時代のセレッソがミシャシステムなどのミスマッチ系の相手に対してだけは敵陣からプレッシングを行ったのが思い出される。
実際に尹晶煥はこのやり方でミシャサッカーに対しては打ち合いに持ち込み勝率は良かった。
この試合の話に戻すと、内容的にはセレッソがかなり上回っていた。
しかしセレッソが奪った得点は1点のみ。最小得点差である。なので札幌はおそらく試合前からやろうとしていた敵陣からの守備を続けることが出来たし、ショートカウンターやサイドチェンジを狙う形を続けることができた。
やろうとして準備してきたことを続けることができるのか、それとも全く変えなければいけないのかというのはチームの士気に関わるので非常に重要なポイントだったりする。
ということで徐々に札幌もボールを持ってセレッソ陣内へと入ってくる場面が増えてくる。
24分〜 |
セレッソの守備陣形 |
これに対してセレッソは、いつものように敵陣からボールを奪いに行くということは殆どない。
1度進藤にプレッシャーをかけボールを奪い水沼が決定機を迎えた場面はあったが、こうして前から行くのはよほど条件が揃った時だけ。
なので基本的には4-4-2でセットする。
この時に特徴的だったのは4-1-5の1を2トップの距離を近づけて2人で挟もうとしていたこと。
いつもの中央を閉めてサイドにボールを回させるのと同じといえば同じなのだが、札幌は4-1-5なのでそれがよりわかりやすく現れていた。
なのでサイドからボールを運ぶ札幌。これに対してセレッソはスライドで圧縮するので4-1-5のミスマッチはあまり関係ない。また警戒すべき福森からのサイドチェンジに対してはサイドからであればスライドが間に合うので問題なし。
この部分でよかったのは柿谷の守備のポジショニングと、舩木が4度あった空中線ですべて競り勝っていたことだろう。
第2節以来の先発でリーグ戦では今季初めて左SBで先発した舩木だったが、白井とのマッチアップを含めてオーガナイズが整っていた時間帯の守備は全く問題なかった。
セレッソの守備は前線から行かないので札幌がセレッソ陣内に侵入する回数も徐々に増えたが、前半に関して言えば札幌のシュート5本の内4本がボックスの外から。福森のFKにしてもキム・ジンヒョンが十分対応できていたのでチャンスらしいチャンスはつくらせていなかったと言えるだろう。
ただそんな中でも心配だったのはCK。前節はCKから失点し、札幌との前回対戦時にも失点しているCKが前半に7本も与えてしまったが、この試合では危なげなく対応。
ゾーンの泣き所でもあり、札幌が得意としているファーサイドの対応は、前回対戦時から木本と舩木(前回は丸橋も)の立ち位置を入れ替え、木本が大外をケアすることで対応していた。
■セレッソもう1つの課題
後半になると圧力を強める札幌。76分〜 |
基本的に札幌の攻撃はセレッソのブロックを崩すというよりもガードの上からひたすら殴るという形なので、よく見るとそこまでチャンスを作っていたわけではないのだが攻撃回数は多く押し込まる時間も増えていた。
そうなったのはセレッソのもう1つの課題。自陣からのボール前進にある。
前半のビルドアップからもわかるようにセレッソは自陣からボールを前進することができるチームなのだが、押し込まれるとボール前進のキーマンとなる左SHと2トップの距離が広くなり、相手が躊躇なくここにアプローチをかけることができる。
そうなるとここでボールを失い再び押し込まれることになる。
当たり前のことだがサッカーでは攻守は表裏一体であり、セレッソは自陣からのボール前進があるから引き込むゾーンディフェンスがあって、引き込むゾーンディフェンスがあるから相手のスペースを使ったボール前進ができるという関係にはなっているのだが、一定以上のプレッシャーを受けた時にどうしてもこのボール前進の部分で後手を踏む。
ここはチャンスに得点を決める部分と合わせて今後改善していかなければいけない課題の1つだろう。
85分〜 |
アディショナルタイムには舩木が少し対応に迷いを見せて危ない場面を作られてしまったが、ヨニッチの素晴らしいカバーで事なきを得て0-1でセレッソが勝利した。
■その他
試合の流れやチームのクオリティから考えるとセレッソがもっと点差をつけて勝利をしなければいけない試合だったと思う。ただ、そんな中で追加点を奪えなかったとしてもこうして0-1で勝利。
チャナティップの不在などの影響もあるが、日本に配置やミスマッチの効果を広く知らしめたミシャに対して配置で完全に上回り、ガードの上から殴ることしかさせなかったのはチーム力に対する手応えを感じさせるものだったと思う。
そして本文中にも少し書いたが、柿谷はこの試合で左SHとしては5試合目となるがここまで最高の出来だった。特に守備面ではポジショニングが整理されておりかなり安定感があった。
プレビューでも書いたように柿谷、舩木、ソウザが入る左サイドは新しい選手ばかりということもあり不安点の1つでもあったのだが、この出来であれば次節以降はもっと自信をもって戦えるのではないかと思う。
お疲れ様です。
返信削除サッカーの戦術に関してはわからないことだらけでしたが、Akiさんのブログのおかげで少しづつ理解できるようになりました。
今のセレッソの問題点である、文中に書かれた「押し込まれたら繋げない問題」はどうすれば解消できるんでしょうか?
コメントありがとうございます。
削除そう言っていただけると嬉しいです。
「押し込まれたら繋げない問題」を解消する手っ取り早い方法はびっくりするほど収まるポストプレイヤーを起用することですが、そうはいかないでしょうから、ラインの高さ、サポートの距離などを調整していくしかないでしょうね。
いつも楽しみにしています。このゲームCKでソウザがショートコーナーをよく選択していましたが、それに何か狙いがあったのでしょうか。
返信削除コメントありがとうございます。
削除あれだけ続けていたのでもちろん狙いがあってのことでしょう。
一般的にショートコーナーは相手を動かすためだったりするのですが、札幌はCKの守備がマンツーだしスカウティングでボールウォッチャーになりやすいといった分析があったんじゃないかと思います。