2021年1月20日水曜日

セレッソ大阪 2020年シーズンレビュー Vol.4


2020年シーズンレビューの最終回。今回はチームを去った監督や選手について。

第1回の冒頭にも書いたが、このオフシーズンは激動という言葉では物足りないぐらいの大きな変化を決断した。

こういった内容は例年あまり触れていないが、今回は最後にその変化について触れておこうと思う。


■ロティーナ監督の退任

2020シーズン限りでロティーナ監督、イバンコーチ、トニ・ヒル・プエルトフィジカルコーチ、小寺真人通訳兼分析担当が退任した。

以前退任が発表された際には「金銭面が主な要因ではないか」と書いたが、後任のクルピ監督はロティーナ監督以上に費用がかかることや、その後の発言や動きを見るとどうやらそうではなかったようだ。

そしてシーズン終了後には「育成」というキーワードで、現在のチームにはベテランが多いことなど編成面に触れていたり、育成部門にあたるセレッソ大阪スポーツクラブに風間氏を招聘するという動きを見せていたが、このどちらも監督の退任とは直接関係ない。

さらには、上位陣に勝てなかったことなども理由の1つとしてあげられていたが、そもそも来季の編成について動き出す9月・10月ごろから既にロティーナ監督抜きでの編成・補強に動いていたことを考えるとおそらくそれも直接関係ないだろう。


そういったことから考えると、実は梶野氏がクラブに戻ってきた2019年シーズンオフから2020シーズンでのロティーナ監督の退任、クルピ監督の招聘は頭にあったのではないかと思う。梶野氏とクルピ監督の関係を考えるとこういう形になることは不思議ではない。

もちろんロティーナ監督継続の可能性が全くなかったわけではないだろう。例えば優勝していたら流石に継続していたはずだ。

しかしそこには至らなかった。そんな中迎える2021シーズン。新しいスタジアムができるシーズンである。

おそらくクラブは、このシーズンをクルピ監督・香川真司のセットで迎えたかったのではないだろうか。「ロティーナ監督の継続」と「クルピ監督&香川真司の復帰」を比べ後者を選択したのだ。だからこそオファーを断られているにも関わらず香川真司の名前を出したのだろう。

クラブのこれまでの実績や成果を表すにはベストな組み合わせである。そしてそこから海外にはばたく若手、言い換えれば新しい香川真司が生まれてくる。これがクラブにとっての理想のシナリオだった。そんな気がしてならない。


香川真司の現時点での復帰は本人により否定されてしまったが、まだ可能性としては無くなったわけではない。なのでおそらく今後も動いていくだろう。

とはいえ、もしかすると帰ってこないかもしれない。それを踏まえての大久保嘉人の獲得なのだろう。

普段からJリーグを見ている人にとっては、セレッソのこのオフシーズンでの最大の補強は原川力の獲得だと感じている人がほとんどだと思うが、地上波のスポーツニュースで取り上げられたのは「大久保嘉人の復帰」だった。


■柿谷曜一朗の移籍

もう1つの大きな衝撃は柿谷曜一朗の移籍だろう。ここ数年の状況を考えると移籍やむなしというところもあるが、これまでセレッソで8番を背負った選手の国内移籍は初。いわばチームの看板が移籍するのだ。

ただ、これはもうこの道しかなかったんじゃないかとも思う。

柿谷とクラブの関係はおそらく他のクラブと選手ではみられない、特殊な関係だったんじゃないかと思う。

クラブの下部組織から出てきた初めての世界レベルの才能だったこと、そして本人がクラブに愛着を持っていたこと、森島寛晃の存在、さまざまな先輩、香川真司というライバルの存在、など色々な要因があって出来上がったのだろうが、クラブは彼を甘やかしたし、彼もクラブに甘えた。

そして彼はそのクラブから8番という背番号を託された時、これからはクラブの象徴であろうと自分自身で決めた。

8番を背負った最初のシーズン、2013年の大ブレイクはこれが上手くいったのだろう。当時はこのブログでも彼のことを「覚悟を決めた」と書いた記憶がある。彼にとってもその覚悟がモチベーションになっていたのだろう。

しかしその後の海外移籍や怪我、そしてチーム戦術の変化により徐々にそれが足枷になっていったのではないだろうか。

思うように活躍できない、エースであり看板としてチームを引っ張ることができない。しかしクラブの象徴ではある。

その結果がここ数年の度重なる移籍騒動なのだろう。

そして2018年にはその移籍騒動が結果的にチームの崩壊にもつながった。ここまでこじれてしまえば若手への影響力を考えると、もはやこの道しかなかったんじゃないかと思う。


とはいえプレーヤーとしての柿谷は天才であることは間違いない。

他の選手ではあり得ない異常なほど広いボールコントロールできる範囲を持ち、それによりプレーの選択を最後まで変えることができ、他の選手には思いつかない選択もできる。

これまで彼のキャリアをサポーターとして見てきた者にとって今回の移籍は残念ではあるが、足枷を外し1プレーヤーとして自由にプレーすることで再び輝きを取り戻して欲しいと思う。

以前にも書いた記憶があるが、柿谷は一見その高い技術で色んなことができそうに見えるが実は間で受けたりするのはあまり上手くないので、FWとして最終ラインと駆け引きさせるのが一番いいと思う。


■ブルーノ・メンデス、レアンドロ・デサバト、木本恭生、片山瑛一らの移籍

ここからはその他主力選手の移籍について。

ブルーノ・メンデスの期限付き移籍終了は、昨季も一旦は新外国籍FWの獲得に動いていたことを考えると想定内といったところだろう。

ブルーノ・メンデスの保有権を持つデポルティーポ・マルドナルドは南米などでよくある移籍金ビジネスをしているクラブなので、買い取るか買い取らないかの選択肢しかない。買い取りはできないだろうから、今回の体制変更とはあまり関係なく満了という形になるのは十分予想できた。


一方でレアンドロ・デサバトは監督交代の影響もあっただろう。アルゼンチン人の彼はスペイン語でロティーナ監督と直接コミュニケーションを取れるのは大きなメリットだっただろうからだ。

しかし2021年からはブラジル人のクルピ監督。彼もヴァスコ・ダ・ガマでプレーしていた様にポルトガル語もある程度できる可能性もあるが、ブラジル人の獲得に動いたんじゃないかと思う。

ただし今回は新型コロナウイルスの影響で新外国人の獲得が難しい状況に陥ってしまっているので、思う様に獲得することは厳しそうだ。


クラブにとって最もダメージが大きいのは木本恭生の移籍だろう。

出場機会は瀬古と分け合うような形になっていたが、レギュラーCBとして計算できCHもできる貴重な人材だった。

ただ、彼に関してもこれまで何度か移籍オファーがあり、その中でなんとか残していたという状態だったので、この夏の契約残り期間半年というタイミングで契約満了後のフリー移籍という形になった。

大熊清氏が強化担当していた頃は、加入時に複数年契約をし契約満了と同時にフリー移籍でチームを去るというサイクルで補強戦略を進めていたので、残念ながらもはや止めることができなかったというところだろう。

おそらく名古屋でもCBとしてレギュラーポジションを掴むのではないかと思う。


ロティーナ監督についていく形となった片山瑛一。彼も木本のところで書いた様に契約満了でのフリー移籍である。

ただロティーナ監督はセレッソで前任の東京Vから1人も選手を引き抜かなかったことから考えるとロティーナのリクストだったとは考えにくい。なので片山にロティーナ監督の下でという意識が強かったのだろう。彼のキャリアを考えるとそう考えてもおかしくない。

片山にとってロティーナ監督はかなり大きな存在だと思う。


最後にヨニッチについて。まだ契約が発表されておらず中国への移籍の噂もある。

チームにとっては最も重要な選手の1人で、彼がここで移籍となるとあまりにもダメージが大きいが、移籍金を満額支払われてしまうとどうしようもないのが移籍市場のルール。

コロナ禍で新外国人を獲得するのが難しいので何とか残って欲しいところだが。。



今回クラブは大きな決断を下したわけだが、全4回のシーズンレビューでその決断の是非について触れるつもりは無かった。

触れたかったのは、どういうチームだったか、どういうことをしていたのか、どういう考えだったのかという部分。

それを踏まえ、読んでいただいた方それぞれが何かを感じていただければ幸いです。


今回で2020年シーズンレビューは終了。長々とありがとうございました。


1 件のコメント :

  1. 最高のブログでした。抽象的なことなどない、明確さが好きでした。反対の意見をもち、同じレベルで話せる相手がいると、なお良かったと思います。いそうもないですが。
    daznの解説の内容は私でもできそうなレベルだし選手名、チーム名すら間違える酷さなので、あなたに解説者になって欲しいです。

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