2020年シーズンレビューの第2回の今回は実際の戦い方について。第1回で触れた哲学をベースに、実際にピッチ見せたものについてまとめていこう。
■ベースとなった4-4-2
2020年シーズンセレッソ大阪の基本布陣となったのは4-4-2。公式戦では2019年4月10日に行われたルヴァンカップグループステージ第3節の名古屋グランパス戦で初めて採用し、リーグ戦では5月4日の第10節松本山雅戦以降で定番となった布陣である。
この4-4-2によるゾーンディフェンスはリーグ屈指の精度を誇った。
ちなみに、この2年間でロティーナの代名詞ともいえる程の存在となった4-4-2だが、東京V時代は4-4-2を一度も使っていない。
主に使っていたのが3-4-2-1と4-3-3。4-3-3であればボール非保持ではIHが一列前に出る4-4-2という形も考えられるが、実際に使っていたのは中盤で5人を横に並べた4-5-1だった。
なのでこの4-4-2は、セレッソが2017年にカップ戦2冠を取った時の「やりなれた形」にロティーナが合わせたもの。だからこそ2019年の第12節、大阪ダービーで後半3-4-2-1に変え敗れてしまって以降、2019年シーズンは一度も3バックを使わなかったのだろう。
■特徴的な守備ブロック
セレッソの4-4-2のゾーンディフェンスは一昨季はリーグ最少失点を記録し、昨季もリーグ3位の失点数と堅守を誇った。
しかし特徴的だったのが、守備ブロックの高さが低かったこと。
DFのタックルラインはリーグで最も低い25.6mで、1回のボール被保持における30mライン被侵入数も0.52とリーグで最も高い。つまり相手にとっては最も30mラインまでボールを運びやすいチームだったのである。
しかし、被シュート到達率は0.27でリーグ3位。ということは30mラインに侵入できたとしてもシュートにまで至ることができないチームだったということである。
これはまさにボールを中心に守るというゾーンディフェンスの特徴がよく現れたスタッツだったといえる。
■低い守備ブロックを可能にしたもの
しかしこの低い守備ブロックはマイナスのイメージを持つ人も多いかもしれない。ロティーナの退任報道が出たときにセレッソの戦い方が守備的だという話しもあったが、守備的だと見るのはこのあたりに原因があるのだろう。
実際に中継でも解説者の方が高い位置で守ることこそ良い守備だと言ってしまっていることも多い。
なぜ解説者の方などが高い位置から守ることを良い守備だと言うのか。
その理由は、低い位置で守れば1つのエラーが失点につながってしまう可能性が高いからだろう。そしてさらに高い位置でボールを奪うことができれば、狙うべき相手のゴールまでの距離が近い。
もし低い位置でボールを奪っても相手ゴールまでの距離が遠いので途中で奪い返される可能性も上がるが、高い位置だとそのそのリスクも下がる。相手ゴールにより近づくことができれば先程の裏返しで相手の1つのエラーが得点につながる可能性も上がる。
できるだけ相手のゴールに近い位置でプレーすることこそ安全であり、チャンスに繋がりやすいという考え方である。
なのでJリーグに関するデータを扱っているサイト「FootballLAB」でも守備と攻撃を評価する指標としてKAGIとAGIという項目ができたのだろう。
守備では相手が自陣ゴールよりも遠い位置でボールをもたせること、そこからボールを運ばせないことを評価(KAGI)し、攻撃では相手ゴールに近い位置にどれだけ速く運べたか、そして相手ゴールに近い位置でどれだけ長い時間ボールを持てたかを評価(AGI)するという指標である。
しかし単純に守りやすさだけで考えると、実際は低い位置で守った方が守りやすい。
これは他の競技を見てもあきらかで、高い位置から守るということは単純に守る範囲が広くなる。広いエリアと狭いエリア、同じ人数ならどちらが守りやすいかといえば、狭いエリアの方になるのは当然である。なので解説者の方の話しをよく聞くと守備ブロックを下げる選択肢に触れられていることも実はある。
しかしサッカーは手に比べると精度が落ちる足でボールを扱う競技なので不確定要素が比較的高い。そのリスクを考えると高いほうが安全だということなのだ。
となると、この問題点が解消できればどうか。エラーを極力減らすことができ、自分たちでボールを運ぶ術を持つことができればどうか。そこにチャレンジしたのがセレッソの戦い方である。
エラーを減らすのが先程も書いた相手に依存しないゾーンディフェンス。
ボールを運ぶ術が安定したビルドアップ。
この両輪がセレッソの核であり、前回書いたロティーナの哲学を実現するための大きなポイントだった。
エラーがほとんど起こらないので相手がボールを持っていても想定外の状況を作られることが少なかったし、自分たちでボールを運ぶことができるのでボールを奪う位置が低くても問題では無かったのだ。
これまでも守備面、特にゾーンディフェンスについては触れられることも多かったが、実はそれを実現していたのは安定したビルドアップだった。
前回のロティーナサッカーの哲学に続き、今回はロティーナサッカーの概要について。
次回は2020シーズンを時系列で振り返ろうと思う。
ロティーナのサッカーが間違っていたとは言いません。
返信削除合理的かそうでないかといえば間違いなく前者です。
ただ、サッカーは相手があって相対評価されるもの。
結局のところ、川崎がセレッソと正反対に見えるサッカーで大成功してしまったこと、
(ラインの高さ、トランジションの激しさ、育成面など)
それが評価に関するあらゆるマイナス面に反映されたのだと思います。
コメントありがとうございます。
削除ただちょっと頂いたコメントの主旨が理解出来ませんでした。
哲学やスタイル、ゲームモデルは相対評価されるものなんでしょうか?
というか誰が相対評価するのでしょうか?
マイナス面に反映されたというのは何のことなのでしょうか?
ゲームモデルにはに正しいとか間違いとか、どっちが上とか下とかは無いと思うので、最初に書いたとおり主旨が理解出来ませんでした。
ごめんなさい。
この二年は帰る場所があったのが大きかった。「自分達のサッカーに自信を持って」。調子悪い時期も選手達はそう答えていました。フィロソフィー的なものがここまで落とし込まれたことはなかったかも。
返信削除また、ロティーナ政権下ではDF、GKの脳内が活性化して成長する気がします。清水の立田君、原君はポテンシャル高く、ロティーナやイバンに学べばブレイクする可能性があると思ってます。移籍もそれを見越した節はありますが。
とりあえず、ヨニッチが心配です。