セレッソ大阪の監督に通算4度目となる復帰を果たしたレヴィー・クルピ監督。
歴代監督の中では最も長い8シーズンにわたってチームを率いているため古くからのサポーターにとってはおなじみの監督ではあるが、2013年以来8年ぶりの就任ということできっと若いサポーターの方にとってはわからない部分もあるかと思うので、どういった監督なのかをまとめておこう。
■クルピ監督とセレッソ大阪
まずはクルピ監督とセレッソ大阪との来歴についてまとめよう。
クルピ監督が最初にセレッソ大阪の監督に就任したのは1997年。当時まだ40代の若手監督としてブラジルで注目を集め始めたクルピ氏に対して、ブラジルにあるヤンマーの現地法人を通じてコンタクトがあったという。この時は1年で退任となるが、このシーズンに梶野智氏がチームの主力選手としてプレーしてたことが大きなポイントだった。
クルピ監督が再びセレッソ大阪にやってきたのが2007年5月。成績不振を受けてシーズン途中、チーム統括部長に梶野氏が就任すると後任監督としてレヴィー・クルピ氏を招聘したのである。ここから2011年シーズン終了後にクルピ監督自身の決断で退任するまでの5シーズンにわたって監督を務め、まずは香川真司や乾貴士らを擁してチームをJ1復帰に成功。J1では昇格1年目で3位、翌年のACLで準々決勝進出と成績を残しながら、清武弘嗣、家長昭博、倉田秋、キム・ボギョンらが大きく成長しブレイクを果たした。
そして翌2012年、開幕は梶野氏が新たに招聘した監督でスタートするもシーズン途中に解任。わずか半年でクルピ監督が3度目の復帰を果たす。
ここから2013年シーズン終了までの1年半でブレイクしたのが柿谷曜一朗、山口蛍、扇原貴宏。
2013年は4位でシーズンを終え、2度目のACL出場権を掴んだ。
2018年に就任したガンバ大阪ではわずか半年で解任となったが、セレッソでの成績は3位1回、4位1回でACL出場権を2度獲得。さらに数々のタレントを輩出したことでクラブにとって代表的な成功体験だと言えるだろう。
ちなみに梶野氏がクラブの強化責任者として過ごしたおよそ8シーズンのうち、6シーズン半はクルピ監督。(残り1年半の内訳は、2012年前半のソアレス監督半年と、2020年のロティーナ監督1年)自身が招聘した監督は6シーズン半のクルピ監督と半年で解任したソアレス監督の2人だけ。
梶野氏にとってレヴィー・クルピは唯一無二の存在なのである。
ここまでクルピ監督とセレッソ大阪が歩んできた来歴について書いてきたが、この辺りはちょっと調べればわかること。せっかくなのであまり記事などでは触れられてこなかった部分について書いていきたい。
クルピ監督は強烈なキャラクターを持っている人物。チーム始動日にはまだ来日していないことはざらにあり、年末の天皇杯はブラジルに帰りたがること、日本では難波のスイスホテルに住んでいること、試合後のインタビューでは常にカメラ目線なこと、シーズン終了後の挨拶でいきなりブラジルでオープンする日本料理屋の宣伝を始めたり、ガンジーさんこと白沢通訳との関係…などエピソードには事欠かないが、そこは他の方に任せて「監督レヴィー・クルピ」について書いていこうと思う。
■最適解を探す
前任のロティーナ監督は明確な哲学、ゲームモデル・プレーモデルを持ち、それをチームに落とし込み、対戦相手を分析し、という形でチームを組み立てていったが、クルピ監督のやり方はそれとは全く異なる。
クルピ監督のやり方は、チームにいる選手を組み合わせて最適解を探すというもの。
本人曰く「自分の好みの戦術に選手を当てはめたりせず、選手の特徴を尊重する」タイプの監督である。
なのでその時々や選手によって出来上がるチームは結構変わる。
今回クルピ監督が就任するにあたって「攻撃的」という言葉が使われていたし、本人もそれをアピールすることも多いが、これまでのチームを見ると、香川・乾を中心にJ1に昇格した2009年のチームはどちらかといえばカウンター型のチームだったし、昇格した2010年以降の3シャドゥと言われたチームはボール保持型。そして2013年のチームは柿谷の裏抜けを最大の武器としたロングカウンターのチームだった。
そしてこの最適解をみつけるための期間が、かつてクルピ監督自身も語ったことがある「連携を構築するのに開幕から10試合ほどかかる」というもの。
最初から設計図があるわけではないのでチームとして最適解を見つける方法はどうしても実際の試合となるから。なのでトレーニングもほとんどがゲーム形式で組み立てられておりそれをクルピ監督が見て実際の試合でぶつける。それを繰り返すことで最適解を見つけ出すという形になっている。
個人的にクルピ監督が優れていると思っているのはこういった形で最適解を見つけ出すことができる目だと思っていて、もちろんガンバの時の様に半年間で見つけられなかったこともあるが、これがセレッソでも、そしてブラジルでも何度も成功してきた要因なのだろう。
■若手を抜擢する?
この目という部分は選手を抜擢するという部分でも活かされている。
香川、乾、清武、南野と数々の若い選手がクルピ監督の指導を経て海外に旅立ったことから特に知られているのは若手を抜擢するという部分だろう。成績を残せなかったガンバ大阪でも中村敬斗を抜擢したのはクルピ監督だった。
ただこれは当然ながら若手だから使うというわけではない。
自身が良いと思えば、年齢やキャリアに関係なく若い選手でも躊躇せずに使うというというものである。
なので例えば丸橋祐介は2年目からレギュラーポジションを掴んだ一方で同期の山口蛍は2011年後半まで出場機会はほとんど無かったし、南野拓実がルーキーイヤーからポジションを掴んだ一方で同期の3人はほとんど出場機会は無かった。
しかし抜擢された選手はほぼチームの主力として成長し海外へと羽ばたいていくので、目の確かさは流石である。
■選手との間には明確に一線を引く
クルピ監督はメディアに対しても冗談をよく言い、サポーターに対しての距離も近い親しみやすいキャラクターの人物だが、監督としては選手との間に明確に一線を引くタイプである。
監督には選手にとっての兄貴分のような感じで距離を縮めるというやり方を取るタイプもいるが、クルピ監督はそれとは全く異なり自分がボスであるということをハッキリとさせるために選手との間に明確に線を引く。
なので実は規律を守ることに関してはかなり厳しい。なので監督批判など選手の領域を逸脱するようなことは絶対に許さない。実際に2014年のアトレチコ・ミネイロ監督時代はチームの中心選手だったロナウジーニョをチームから追放したこともあったし、柿谷(クラブが徳島に期限付き移籍させた)や乾(後に謝罪を受け入れチームに復帰)もチームから外されたこともある。
■レギュラー11人のための監督
そしてさらにチーム内でも、レギュラークラスの11人+α、サブ組の11人+α、それ以外で明確に線を引く。
先にトレーニングはゲーム形式がほとんどということを書いたが、なのでそのトレーニングを行うのは基本的にこの22人。しかもそのトレーニングの中でクルピ監督はレギュラー組だけを見るという形を取る。
なので最初にこの22人から漏れてしまうと、クルピ監督が見る機会がほとんどなくなるので挽回のチャンスすらなかなか巡ってこない。ゲーム形式のトレーニングがほとんどということで、選手からもトレーニング自体は楽だという声を聞くことも多いが、自主性が認められフィジカル的にも楽な部分がある反面、こういった厳しさもある。選手がクルピ監督のチームでやっていくにはとにかく最初が肝心なのだ。
また外国人監督、特にブラジル人監督に多いのだがこういった線はチームスタッフ内にもハッキリと引く。外国人監督を招聘した場合よくクラブ側からの希望で日本人スタッフをコーチとして入れ監督のやり方を学んでもらおうとするが、監督にとってはそういったコーチは後に自分の首を脅かす存在にもなり得るのでクラブの思惑通りにならない場合が多い。
特にブラジルではかなり頻繁に監督の首を据えかえるのでその傾向はより強い。
クルピ監督もその傾向が比較的強い監督で、クルピ監督、マテルコーチの2人が絶対的な存在となり、日本人コーチの役割は2人のサポート役となる。
なので、日本人コーチの主な仕事は22人から漏れている選手、サブ組には入るもののそこからなかなか主力組に入れず試合に絡めない選手のサポート。チームはレギュラーの11人だけでシーズンを戦い抜ける訳はないので、彼らをサポートする日本人コーチの役割は本当に重要となる。
親しみやすいキャラクターを持ち、選手個々に任されている部分も大きいチームを作る監督だが、その分これまでとは異なる厳しさもある。
今季のチームは昨季までとは全く異なるキャラクターとなるだろうが、このチームが成功するかどうかはクルピ監督の手腕にかかっている。
どんなチームが出来上がるか。楽しみに待ちたいと思う。
昨シーズンの柿谷のリーグ唯一の得点だった神戸戦、
返信削除10人になって1トップで奮闘していたあの試合は結果的に、
ロティーナの采配の確かさと同時にクルピの炯眼も示していたのかも。
FWでなかった彼に1トップでDFとの駆け引きに集中させて少ないチャンスを生かす、
というのは普通の監督が持てない引き出しだったと思います。
セレッソ大阪を分析するブログ様
返信削除はじめまして。
私は世界の様々なスポーツ試合速報を、リアルタイムで発信しているサイト“Flashscore”の小川大輔ブランコ と申します。
これまで、私共は日本以外の国でスポーツ速報サイト&試合データ・スタッツのデータ会社として様々な情報を発信して参りましたが、日本語サイトがなかった事から日本のスポーツファンの方々と交流がございませんでした。
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