2021年6月11日金曜日

6/9 第101回天皇杯全日本サッカー選手権大会 2回戦 VS ガイナーレ鳥取 @ ヨドコウ桜スタジアム

スタジアムヨドコウ桜スタジアム主審松尾 一
入場者数副審浜本 祐介、竹長 泰彦
天候 / 気温 / 湿度晴れ / 27.6℃ / 50%第4の審判員大内 隆

セレッソ大阪C大阪

 

ガイナーレ鳥取鳥取

 
  • 監督
  • レヴィー クルピ
 
  • 監督
  • 金 鍾成

<監督コメント>


<選手コメント>


昨年の超縮小版から今年は例年通りのフォーマットで開催される天皇杯全日本サッカー選手権大会。2回戦から登場するセレッソ大阪の初戦、J3ガイナーレ鳥取との一戦は2-0でセレッソ大阪が勝利。無事3回戦進出が決定した。
また、この試合はリニューアルされたヨドコウ桜スタジアムでの最初の試合だが、緊急事態宣言発令中ということもあり無観客試合。さらにTV中継の予定も無しという誰も見ることができないままで試合が行われるところだったが、大阪府サッカー協会公式YouTubeチャンネル「大阪府FA TV」で急遽ライブ配信された。

■メンバー

セレッソ大阪のスターティングメンバーはリーグ戦前節から4人を入れ替え。外れたのが代表組の3人、キム・ジンヒョン、坂元達裕、アダム・タガートとダンクレー。変わって入ったのが、ダン・バン・ラム、西尾隆矢、大久保嘉人、加藤陸次樹となり布陣は前節から変更した3-1-4-2。前節は前線で起用された奥埜が坂元に代わって右IHに入り、前線は大久保と加藤の2トップとなる。
またダン・バン・ラムはこれが加入後初出場。本来はダン・バン・ラムも代表でベトナムに帰国する予定だったが、チーム内に新型コロナウイルス陽性反応者が出たためチームに残ったことで初出場となった。

ガイナーレ鳥取のスターティングメンバーもリーグ戦前節から4人を入れ替え。外れたのが小牧成亘、新井泰貴、原田虹輝、大久保優。変わって入ったのが世瀬啓人、安藤一哉、田口裕也、永島悠史となっている。
布陣としては4-1-4-1っぽくもあるのだが、普段のリーグ戦では3-1-4-2を使っているそうなので、通常の4-1-4-1よりも3-1-4-2からFWを1枚後ろに持っていったという方が近い。
また元セレッソ組では魚里直哉はベンチ外、秋山大地は怪我から復帰しベンチスタートとなっている。

■3バックの両サイドをめぐる攻防

杉井颯選手の試合後のコメントによると「前半0-0」というのが鳥取のプランだったようだ。
それを踏まえた上での鳥取の布陣だったのだろう。

セレッソのボール保持に対して鳥取は4-1-4-1の様な形でセット。1トップの石川は最初からCBにアプローチに行くのではなく。まずは原川を捕まえる。そして永島と可児のIHも中を閉めているので、まずは中には入れさせないぞという形である。

ここからセレッソが3バックの両サイドの選手にボールを出したところで鳥取のプレスはスタート。
セレッソの左サイドを例に出すと、瀬古にボールが入った時にアプローチに出てくるのが右SHの安藤。彼の動きがスイッチとなって丸橋には右SBの世瀬が一気に出て行く。このプレスでボールを奪う、もしくは長いボールを蹴らせて、4-1-4-1の後ろの4-1で回収したいというのが狙うだったのだろう。

理想的な形は9分の西尾から松田に出たボールを松田が奥埜に渡そうとしたところで田口がカットした場面だろう。

ここでボールを奪うと、攻撃ではここからサイドを縦に運んでクロスに逆サイドのSHが飛び込んでくる。WBの背後をとって3バックの脇のスペースから逆サイドの3バックの脇でフィニッシュというのが狙いだったのだろう。

しかしセレッソが少しずつ清武が中途半端なポジションを取って右SBの世瀬を引きつけるようになっていく。
となると右SHの安藤が瀬古にアプローチに出ていけない。どうしようかと中途半端になったところで瀬古から丸橋へと一気にスルーパスが出たのが4分。

抜け出した丸橋を世瀬が追いかけるも、その背後をさらに清武に走られてクロス。これを大久保嘉人が頭で合わせ5分にセレッソが先制。
セレッソにとってはかなり楽になる早い時間の先制ゴールだった。

■対応を変えた鳥取

先制後も度々セレッソは同じ形で左サイドを崩していたように、鳥取はここの対応にかなり苦慮していた。
おそらく事前に想定していた通りにはいかなかったのだろう。

その結果、15分の少し前あたりから鳥取は3バックの両サイドにアプローチに行く選手をかえる。それまではSHがアプローチに行っていたがIH に変更。SHはSBについて行く。

そしてボールサイドのIHがアプローチに出たときに、逆サイドのIHが中盤に戻り、逆サイドのSHは絞るという4-4-2に近い形で守るようになった。

しかしこうなるとIHはボールサイドによって前に出たり、後ろに下がったりしなければならないので、どうしても瀬古や西尾へのアプローチは遅れる。その結果徐々にセレッソが押し込む時間が増えることになる。また、押し込むにあたって瀬古から松田へのサイドチェンジがかなり効いていた。
そしてこの押し込んでいる時間帯は、セレッソの高い位置からの守備が比較的機能していた。先日の3バックの記事で「高い位置からの守備がセレッソの新システムを機能させる上で重要なポイントとなる」と書いたが、こういった時間帯をいかに増やしていくかが今後のセレッソのポイントとなってくるだろう。
ただし、現段階ではまだまだ。押し込んでいる時間帯でも原川の脇のスペースを起点に何度か鳥取にボールを運ばれていた。

そんな中、飲水タイム明けの27分ごろに鳥取にアクシデントが発生。パスを出して動き出そうとした安藤が膝から崩れ落ちる形でピッチにうずくまる。安藤はそのままプレー続行不可能となり29分に大久保優と交代する。
リーグ戦ではFWのレギュラーであり、また天皇杯1回戦では2得点の活躍をみせていることから考えると、おそらく大久保優は後半からの切り札的存在としてベンチにいたのだと思われるがここで緊急投入。サイドプレーヤーの安藤からストライカーの大久保優ということでプレースタイルは異なるが、まずはそのままの役割で投入された。

その直後の31分、セレッソは松田のクロスに奥埜が頭で合わせ2点目を決める。
ポイントになったのは先ほど有効だと書いた瀬古から松田へのサイドチェンジだった。

このサイドチェンジ自体は4バックに対して3バックでミスマッチを作る時の鉄板パターンの1つ。
3バックのサイドの選手がボールを持った時に逆サイドのIH(3-4-2-1の場合はシャドゥ)が逆サイドのCBとSBの間を裏に抜ける動きを見せる。これをされるとSBは内側に走るIHについて行かざるを得ない。行かなければ隣にいるCBにとってはブラインドサイドなので一発で裏を取られてしまうからである。しかし行けば大外のWBはフリー。悠々とサイドチェンジが通る。
この形は特にミシャシステムではかなり頻繁に使われており、過去のペトロヴィッチ監督との対戦では何度も触れている形である。
そして奥埜はペトロヴィッチ監督の下でプレーしたことはないが、仙台でミシャシステムに近いコンセプトを持つ渡邉晋監督の下でプレーしていた。なのでこのあたりはお手の物なのだろう。

そして得点となったシーンでは松田にボールが渡った時に左SHの田口が戻ってきたのだが寄せが甘い。なので左SBの杉井はヘルプに出れば良いのか、出ない方がいいのかと中途半端な対応になってしまう。そしてこの時にセレッソは大久保嘉人と加藤の2トップがゴール前に入って行く。となるとCBはこの2人に対応しなければいけないので動けない。その結果SBとCB、杉井と藤原の間にスペースができる。そこに目掛けて松田がクロス、そこに入ってきた奥埜がヘッド。なので鳥取のDFは人数が揃っているように見えるが、奥埜はフリーだった。

前半はこのまま2-0で終了。セレッソとしてはまずまずの前半だっただろう。一方の鳥取にすればサイドのハメ方やクロスを警戒した上での普段の3-1-4-2ではなく4-1-4-1だったと思うので、サイドを破られ、クロスで2失点というのは苦しいところ。さらに負傷者も出してしまった。

■鳥取が動く


2点ビハインドの鳥取は後半開始から2枚替え。右SBの世瀬と左SHの田口に代えて小牧成亘と原田虹輝を投入。小牧と原田はそのまま右SBと左SHに入るが、鳥取は大久保優を前線に出して石川と2トップ、右SHには永島が入る4-4-2の布陣にしてきた。
これはおそらく、前半途中からボール非保持ではSHがWBをケアする4-4-2的な布陣になっていたから。IHの出入りがあった分下がってしまうことになっていたので、はっきりと2トップにしてきた。

そしてこの布陣で興味深かったのはボール保持。非保持は4-4-2なのだがボール保持では両SBが同時に上がってSHは内側に入る2-2-4-2の様な形になっていたことである。2-2-4-2と書くとかないリスキーな布陣の様に感じるが、CHの1枚石田が最終ラインに下がれば可児がアンカーの3-1-4-2。普段の鳥取の形である。
鳥取がこの布陣を取ったことでセレッソの清武と奥埜はターゲットになるSBがいなくなり、さらに後ろには内側に入ってIH化したSHがいるので必然的に下がる。となるとセレッソの2トップもCBにまで積極的にはアプローチに行かない。となると鳥取の石田もCB間に下がって3バック化する必要がないので先ほど書いたような2-2-4-2とも言える布陣になっていたが、仕組みとしては3-1-4-2だった。

後半立ち上がりは鳥取のこの布陣変更に少し面食らう形になったセレッソ。目の前の人が前半とは違う動き方をするので立ち上がりから押し込まれることになる。

46分にはハーフスペースをわられペナルティエリア内で折り返しを原田にフリーでシュート打たれる。シュートは大きく枠を外れたが完全に崩し切った決定機だった。


再び鳥取の2-2-4-2に。この布陣はボールを失えば4バックの両SBが上がっている形になっている。そのためネガトラで必須なのが2トップと2SHでプレッシング。これでSBが下がる時間を作る。
これは3-1-4-2のセレッソが仙台で立ち上がりにやろうとしていた形に近いので、おそらく鳥取も普段の3-1-4-2でやっていることなのだろう。
鳥取としてはここでボールを奪い返しショートカウンターに持ち込めれば最高だが、SBを下げる時間を作ることができればまずOKである。

そしてセレッソの攻撃を遅らせてセットした状態に持ち込めば、2トップの1人が原川を捕まえて、もう1人がセレッソのDFラインにアプローチをかける4-4-1-1に。
このアンカーを捕まえる人とDFラインにプレスに行く人がはっきりしたので、以降鳥取は簡単に押し込まれることがなくなった。

しかしそうなればセレッソはシンプルにDFラインの背後に加藤を走らせる場面を増やす。
鳥取とすれば痛かったのは最初のセレッソが鳥取の布陣を把握する前に得点を奪えなかったことだろう。いやそれ以上に前半に2失点したことか。セレッソは2点リードしているので無理をする必要がない。つまりリスクを負ってボールを取りに行く必要も、奪ったボールを繋ぐ必要もなかった。

後半の飲水タイム開けの71分、セレッソは2枚替え。西尾と加藤に代えて高木俊幸と豊川雄太を投入。4バックに変えて奥埜がCH、清武が右SH、高木は左SHに入る。同時に鳥取は永島に代えて秋山大地を投入。可児が右SHに移動する。

セレッソが4バックに変えたのは鳥取のSBがオートマチックに上がってくるのでその背後を狙いたかったのだろう。

そしてさらに81分にセレッソは大久保嘉人に代えて中島元彦を投入。清武はトップ下に移動し中島は右SHに入る4-2-3-1に。

直後には高い位置からの守備がハマって豊川がゴールを狙うもシュートはわずかに枠の左。
試合はそのまま2-0で終了し、セレッソ大阪が3回戦進出を決めた。

■その他

危なげない勝利だった。早い時間に先制点を奪えたことで、終始落ち着いた形でサッカーをすることができたことが大きかった。
相変わらず原川の脇は使われたし、リトリートした時に怪しさはあったので新しい3-1-4-2が特に良くなったというわけではないが、そこはJ3のチームとJ1のチーム。落ち着いて試合を運ぶことができれば危なげない試合になる。
ただ、ということは問題点の改善もこれから。本文中にも書いたが、どれだけ高い位置で守備ができるかがポイントとなるだろう。

一方の鳥取に関しては、こちらも本文中にも書いたように警戒していた形で前半に2失点したことがあまりにも痛かった。
セレッソを焦らせるという展開に持ち込めなくなってしまった。
ただ、後半の変化は興味深かった。「最初からやっておけば」という意見もあるかもしれないが、あれを前半からやるのはあまりにもリスクは大きい。なので前半0-0、後半勝負というプランだったんじゃないかと思う。
リーグ戦ではかなり苦しんでいるようで現在も3連敗中となっているが、面白いサッカーはしていると思うので金鍾成監督の下、是非調子をあげて欲しいところ。
また負傷交代となった安藤一哉は左膝前十字靭帯損傷および左膝内側側副靱帯損傷で全治8ヶ月の大怪我とのこと。
是非回復し、再びピッチで輝く姿を見せてほしい。



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