2021年6月1日火曜日

5/30 明治安田生命J1リーグ第17節 VS. ベガルタ仙台 @ ユアテックスタジアム仙台

スタジアムユアテックスタジアム仙台主審高山 啓義
入場者数8,346人副審木川田 博信、塚越 由貴
天候 / 気温 / 湿度晴 / 21.6℃ / 41%第4の審判員堀越 雅弘
VAR大坪 博和
AVAR西尾 英朗

ベガルタ仙台仙台

 

セレッソ大阪C大阪

 
  • 監督
  • 手倉森 誠
 
  • 監督
  • レヴィー クルピ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き

(入場者数上限「収容率「50%以下」)での試合開催

<監督コメント>


<選手コメント>


この試合が終われば長期にわたる中断期間に入る明治安田生命J1リーグ第17節。敵地ユアテックスタジアム仙台でのベガルタ仙台対セレッソ大阪の一戦は1-1の引き分け。これで5月の6試合は1勝もできず中断期間に入り、天皇杯、ACLに挑むこととなった。

■メンバー

ベガルタ仙台のスターティングメンバーは前節から5人入れ替え。皆川佑介、マルティノス、加藤千尋、松下佳貴、吉野恭平が外れ、赤﨑秀平、関口訓充、氣田亮真、富田晋伍、平岡康裕が起用された。
吉野の欠場は前節終盤に脳震盪の疑いで交代しているので十分予想できたが、代わって入ったのが前々節に負傷交代した平岡。仙台にとっては平岡が戻ってくることができたのは大きいだろう。
他のメンバーについては、連戦ということでターンオーバー。今季の仙台はこういう形で主要な選手以外を入れ替えながら戦っている。

一方、セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から2人入れ替え。外れたのは加藤陸次樹と藤田直之。代わりに加入後初先発となるアダム・タガートと前々節に負傷交代をしたチアゴが戻ってきた。
CHの藤田に代わってCBのチアゴが起用されたということで布陣は3-5-2(3-1-4-2)。3バックに右からダンクレー、チアゴ、瀬古歩夢。
中盤はセンターに原川力が入り右に坂元、左に清武。奥埜とタガートが2トップに入る。
ここで書いたか、clubhouseで喋ったかは忘れてしまったが、4月に「今後クルピ監督は3バックに手を出すんじゃないか」と3バックの可能性について触れたが、このタイミングでその決断が下された。

■3-5-2のセレッソ

この試合の最大のトピックはセレッソが3-5-2の布陣を取ってきたこと。きっとこの3バックは仙台も予想していなかっただろう。

攻撃の起点となるのは3バックの両サイド。このポジションに入るダンクレーと瀬古はパスも出せるしドリブルでボールを運ぶこともできる。
4-4-2の仙台に対し2トップの脇で彼らがボールを持つところから攻撃が始まる。

セレッソの右サイドを例に上げると、ここでダンクレーに対して仙台の左SHの氣田がアプローチに行けば、大外のレーンにいる松田が浮く。なので序盤から松田、丸橋とWBが高い位置で起点となりDFラインの背後にアーリークロス気味のボールが入る場面が多かった。

 ならばとこのWB、松田に対して左SBの石原がアプローチに行くと今度は石原の背後に坂元が飛び出す。ここには坂元だけでなく2トップの1人奥埜が飛び出す形もある。

こうなればきっかけとなっている最初の左SH氣田はダンクレーへのアプローチをできるだけ我慢して中盤のラインに残ろうとする。
となると、坂元がSHの内側に降りてくる。
ここに氣田が引っ張られると同じように松田は浮いてくるし、松田に石原が行けばその背後に奥埜が飛び出すことができる。
近年ヨーロッパでも3-5-2が広く使われ、最近ではJリーグでも使うチームが増えているのだが、そうなったのはこのように対4-4-2に絶大な効果があるからである。

その結果仙台はWBに対してSHが対応する場面、ブロックを下げて対応する形が増える。つまりセレッソが押し込む形になる。
セレッソが試合序盤からボールを保持し仙台陣内に踏み込む場面が多かったのはこの形によるものだった。

ただしこのセレッソのボール保持は両WBを前に出すことが前提となっているので当然リスクはある。

CBからのビルドアップのところでボールを奪われてしまうとWBは置いていかれるので、セレッソの3バック1アンカーに対して仙台の2トップ+2SHで一気に4対4。アンカーの原川がネガトラ対応に出ていくがここで外されてしまうと3バックは下がってスペースを消すしかなくなる。CBにとっては優先的にスペースを消すのはゴール前なので色々と他のスペースが空くことになり、CBの前はその1つ。
11分の西村のシュートがクロスバーを叩いた場面はまさにそういう場面だった。

そして全体的なボール非保持については、

セレッソのボール保持に対して仙台がSHを下げて対応する形に持ち込めば、例えボールを奪われたとしてもSHのポジションが低く出ていくのに時間がかかるためカウンターには持って行きにくい。また一気に前にボールを送ろうにも西村と赤﨑に対して対人も強いダンクレー、チアゴ、瀬古。ここで簡単に起点も作らせない。ということで押し込む形にまで持ち込めばカウンターを浴びる危険性はかなり低くはなっていた。

またセレッソは清武と坂元が内側に入っているのでボールを失った時には2トップと合わせた4人で素早く中を閉めて対応できることが可能。
これにより前に出ているWBを最終ラインに戻らせる時間も作ることができていた。

となると仙台はSBをボールの逃がしどころにする形になるのだが、ここに対しては坂元や清武のIHがアプローチ。さらに出てきたSHに対しても最終ラインに下がったWBが迎撃する形で前に潰しに行くことができる。
ビルドアップでボールを奪われた時に一気に危なくなるように、セレッソの3-5-2は後ろの人数を削ったリスクのある形だが、押し込んでしまえば最大の懸念事項であるネガトラの部分はある程度カバーできていた。

ただしサイドでボールを運ばれた後のセットディフェンスになると危うさが顔を覗かせる。

非保持でセットした時の形は5-3-2。そして3の両サイド、坂元と清武は相手のSBに対しても出ていく。
となると原川の両脇は常にスペースが生まれやすい状況になっている。SHが、CHがFWがここに入ってきた時にどう対応するのか。中盤を3人で組んだ時に出てくる構造上の問題、いわゆるアンカーの脇問題である。

また、以前にも少し書いたと思うが、セレッソはダンクレーとチアゴのCBコンビになってから守り方が変わった。
それまでの松田、西尾、瀬古、丸橋の時は昨季のやり方を知っている選手がほとんどだったので、昨季のやり方がベース。基本的にはCBはあまり動かさないようにしていて、SB-CB間などスペースが空いた時には基本的にはボールサイドのCHが落ちてカバー。ただし川崎F戦などCBのスライドを優先させてCHの落ちる場所を変えたりもしていた。
しかしダンクレーとチアゴのCBコンビになってからは動くのは原則CB。この2人は昨季までのやり方は当然知らないし、守備組織全体のことを選手間だけで落とし込むことも不可能。ということでCB2人には比較的自由にプレーさせることにして、奥埜と藤田のCH2人が彼らの動いた後をカバーするという形に変わっている。

そんな中でこの試合は5-3-2。例えば先ほどの原川の脇問題でもFWが下がってきた場合はダンクレーがついていくことも多かったが、この時に原川はそのスペースを埋めるのか埋めないのか。原川が下がってしまうと残る中盤は坂元と清武のみとなってしまう。
ダンクレーのところで潰し切れればいいが、そうならなかった時には難しい判断を迫られるという状況もあった。

前に出てきた訳では無かったが31分の赤﨑のシュートがクロスバーを叩いた場面もその1つ。

この場面は石原から斜めにペナルティエリア内に走る西村へのパスからスタート。
西村にチアゴが対応したのでダンクレーは中央に。しかし原川もペナルティエリア内に入ったので最終ラインの前にいたのは両サイドの清武と坂元。左サイドから内側に入ってきた赤﨑はフリーでシュートを放っている。

■前半はスコアレスで折り返す

ボール保持率ではセレッソが60%と大きく上回ったが、シュート数5本ずつ。クロスバーに2本当てていることを思えば得点の可能性を感じさせたのは仙台だったか。
とはいえ、セレッソも前節に比べるとアタッキングサードまでボールを運ぶ回数は明らかに増えており、前節の前半のように清武でキープできて原川と丸橋がサポートに入ることができれば敵陣でボールを持つ時間が始まるという形では無いのでアタッキングサイドでも左右両方からボールを運ぶことができていた。
というよりも奥埜がサポートに入って絡む分、右サイドでボールを運ぶ回数の方が多くなっていた。

ただ、気になるのが、仙台にボールを運ばれていのがカウンターだけでは無かったこと。
通常ボール保持率が60%と40%でシュート数が同じであれば、片方が押し込んで、片方がカウンターでといった展開になっていることが多いのだが、そうではなく普通にボール保持からボールを運ばれていた。
それが手倉森監督のハーフタイムコメント「相手をもっと動かそう」ということにつながっているのだろう。これはボール保持の指示である。

そして前半に仙台にはアクシデントが起こっていた。13分ごろのプレーでフォギーニョがハムストリングを痛めてプレー続行不可能に。
ということで16分に仙台はフォギーニョから中原彰吾への交代を行っている。

■セレッソの先制点

両チームともにハーフタイムでの交代はなしで後半スタート。
セレッソとしてはやり方も狙いもあまり変わらなかったが、後半に入ると仙台がよりボールを運ぶ回数を増やした。
先ほど紹介したように手倉森監督のハーフタイムコメントでボール保持のことに触れているように、奪ってから運ぶという部分で具体的な指示が入ったのだろう。

前半はセレッソの前4人で中を閉めて両WBを下げる時間を作るを作って、そこからサイドに押し出すことができていたが、後半に入るとサイドからダイレクトに原川の脇にボールを刺されるようになっていた。

ただ、その分試合はオープンになった。仙台も運ぶ、セレッソも運ぶとなったことで行ったり来たりの展開が増え始め、全体が間延び傾向になっていた。
その結果増えたのが仙台のファール。短時間で坂元に対して2回続けてファールをしていた2回目はアタッキングサードに入ったあたりの右サイド。
ここからのFKで、原川のボールにチアゴが頭で合わせてゴール。53分にセレッソが先制に成功する。
前半から仙台ゴールに近づいてプレーしていたものの、そこまで決定機は作れていなかったセレッソだが、チアゴ、ダンクレー、瀬古と揃えられるセットプレーには可能性を感じさせていた。そのセットプレーがここで決まった。

■同点に追いつかれる


仙台は60分に2枚替え。赤﨑と氣田に代えてフェリペ・カルドーソとマルティノスを投入する。
これはおそらくあらかじめ予定していたものでもあっただろう。もしセレッソが先制していなかったとしても同じタイミングで交代させていたと思う。フェリペ・カルドーソはそのままFW。マルティノスは右SHに入り、関口が左にまわる。とはいえマルティノスは内側にポジションを取ることが多く、イメージとしてはフェリ・ペカルドーソを頂点にアンカーの両脇をマルティノスと西村でという形だったのかもしれない。
一方のセレッソは65分に原川に代えて大久保嘉人。大久保は前線に入り奥埜がCHに下がる。
原川の交代自体はこれもある程度予定していたものだろう。原川は1ヶ月半ぐらい離脱していたのであまり無理をさせたくない。
ただ、リードした中で原川に代えて投入するのが大久保だということには少し驚かされた。
とはいえ、おそらくクルピ監督にとっては普通の交代だったのだろう。
クルピ監督にとってはこの試合の3-5-2、そして中盤を清武、原川、坂元の3人だったことはリスクでもなんでもない。
むしろメンバー的にも通常の4-4-2からCHをCBに代えているのだからリスクは減らしているだろうぐらいの感覚なのでは無いかと思う。
なので普通に奥埜を中盤に下げて大久保を前に入れる。

とはいえここから試合はさらにオープンに。
70分には坂元が必殺技からCKを獲得すると、清武のキックにチアゴがドンピシャで合わせるもヤクブ・スウォビィクがスーパーセーブ。さらにこぼれ球を押し込もうとした大久保のシュートもセーブしてみせた。

CK直後の72分にセレッソはタガートに代えて藤田直之を投入。そして仙台は74分に石原と関口に代えて蜂須賀孝治と加藤千尋を投入する。

ここからセレッソの布陣を3-4-2-1にしているが、はっきり言って最初は奥埜のポジションがよくわからなかった。
というのも藤田の脇に戻ってくることもあるが、基本的には高い位置でプレーしようとしていたからである。

しかし76分に藤田が入れ替わられ一気にカウンター。最後はマルティノスのシュートをキム・ジンヒョンがキャッチしたが、藤田の入れ替わられ方が中盤1人だと考えうるとあまりにも不用意だったからである。

ただこのカウンターの後はボール非保持では奥埜は完全に藤田の隣に入ることに。
そして78分にはキム・ジンヒョンからのスローイングは仙台のCH脇に立つ清武に。そして清武からのスルーパスで一気に坂元が抜け出す場面を作ったが、またもやヤクブ・スウォビィクがスーパーセーブ。追加点を奪えなかった。

すると79分、仙台が左サイド(セレッソの右サイド)でボールを運ぶと、蜂須賀が右足からインスイングで大外へのクロス。
それをマルティノスが合わせてゴール。仙台が同点に追いつく。
インスイングのボールでファーサイドというのはセオリーの1つである。

この後、5-4-1でブロックを作るセレッソに対して仙台が押し込み、セレッソは1トップなので奪い返してもボールを運べず、仙台の攻撃がしばらく続くという時間帯もあったが、意外と仙台もボールを持たせてくれるのでセレッソ的には助かった。

その後はお互いが攻め合うオープンな展開が続くがどちらも決めてにかけゴールネットは揺らせず。
アディショナルタイムの90+4分にカウンターから西村が走り、ペナルティエリア内で清武に倒される形になるが、高山主審の判定はノーファール。おそらく接触はあったが軽いものでファールではないとの判断で、VARもそれに同調。なのでOFRも行われず、そのまま試合終了。
1-1の引き分けに終わった。

■その他

クルピ監督が「互角の戦い」と振り返ったが、チャンスの数や質から考えてもまさにその通りの妥当な引き分けだったと思う。
セレッソも仙台もほとんどの時間で試合をコントロールすることはできていなかった。
これで5月の6試合は3分3敗の未勝利。リーグ戦は1ヶ月半ほどの中断期間に入り、チームは6月9日の天皇杯、6月24日のACLプレーオフに挑むこととなる。

そしてクルピ監督はこの試合に「手応えを感じている」とも語っている。
30mライン侵入回数もこれまでの平均38.2回からこの試合では60回となり、ペナルティエリア侵入回数もこれまでの平均10.4回を上回る13回を記録。決定機が多かったかどうかは別にしても、前日会見で語ったセレッソらしさ「結果にかかわらず、攻撃的に戦い、決定機を多く作るサッカー」に近づいたという認識なのだろう。そのための3バックだった。

この試合について判断が難しいのは、ドローという結果、そして5月勝ちなしという結果は別にして、以前にも書いた「どこに目線を置くか」で評価が変わってくるからだろう。Twitterでも特にここ最近の試合は不満が溜まっている声をよく見るが、開幕前にこのチームに対する目線を一致させなかった、というよりもより大きく見せようと格好をつけたからじゃないかと思う。

前節から話題の「らしさ」も、監督本人が「結果に関わらず」と言ってしまっているが、大きく分類すれば「負け方」の話しでもある。

今回、3バックの現象的な部分を数多くピックアップしたものの、根っこの部分にはあえて触れなかったのだが、おそらく今後しばらくはこの形を継続させると思うので、3バックに関する考察を今回の中断期間中にまとめたいと考えている。



3 件のコメント :

  1. 最近は相手チームの分析ブログっぽくなってましたが、久しぶりにセレッソの分析ブログを見た気がしますw

    今回の布陣だったり攻撃が前日に決められたとか言われてますが、人が変わっても再現できるチームとしての戦術なのか、清武坂元原川奥埜だから機能したものか見極めていきたいです。

    それと、前節の失点に絡んだようなチアゴの飛び出しディフェンスやダンクレーの高い位置へ出てのディフェンスを見てると、CB版ソウザみたいな感覚で楽しんでます。ソウザ好きだったのでw

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  2. お疲れ様です。
    実質下から2番目のベガルタ相手にしか互角の戦いができないのであれば本来危機感を覚えても良いようなものなのですがクルピの中では手答えなのですね。
    チアゴとダンクレーが自由に動く点は今後リスクがかなり高い気がします。原川や藤田、奥埜が最終ラインに落ちると言うことは距離が後ろ寄りになるので攻撃面でサイドチェンジなどがきたいできなくなることが一つ。ダンクレーは広島戦の誤審のシーンの後のように置いて行かれたときの手癖足癖が非常に悪く去年もかなりカードをもらう止め方をしていたことです。
    今年はもうこの体制でいくのかもしれませんが、点を取れなくても攻めてれば攻撃サッカーなのか?など疑問だらけです。ロティーナの2年目より点取れてないですしね。

    返信削除
  3. いつもありがとうございます。
    個人的に正直勝ち点1と引き換えに監督を替えるタイミングを完全に逃したと思います。まあ監督を替えたところで今のフロントが次にいい監督を引っ張ってこれるとは到底思えないですが・・・

    返信削除

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