2017年5月29日月曜日

5/28 明治安田生命J1リーグ第13節 VS ヴィッセル神戸 @ ノエビアスタジアム神戸

第13節
2017年5月28日(日)17:03KO ノエスタ

スタジアムノエビアスタジアム神戸主審松尾 一
入場者数20,391人副審平間 亮、中野 卓
天候 / 気温 / 湿度晴 / 22.8℃ / 52%第4の審判員村井 良輔
スターティングメンバー
ヴィッセル神戸神戸
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • ネルシーニョ
 
  • 監督
  • 尹 晶煥
ヴィッセル神戸神戸
C大阪セレッソ大阪
今回対戦今季平均
データ項目ヴィッセル神戸セレッソ大阪ヴィッセル神戸セレッソ大阪
FK18141412
CK1544
PK0000
シュート14111111
警告/退場1/00/01/01/0

<監督・選手コメント>

ヴィッセル神戸 ネルシーニョ監督
セレッソ大阪 尹晶煥監督

ヴィッセル神戸 ウエスクレイ選手、渡邉千真選手
セレッソ大阪 水沼選手、山村選手、柿谷選手、杉本選手、松田選手、澤上選手、関口選手

ヴィッセル神戸 岩波選手、小川選手、渡邉千真選手(ヴィッセル神戸公式)

明治安田生命J1リーグ第13節、セレッソ大阪はルヴァンカップから中3日で連戦となるヴィッセル神戸と敵地ノエビアスタジアム神戸で対戦は、山村、水沼がゴールを奪ったセレッソ大阪が1-2勝利となった。

■メンバー

水曜日に行われたYBCルヴァンカップグループリーグ第6節とまったく同じカードとなる明治安田生命J1リーグ第13節。
セレッソ大阪はルヴァンカップでは大きくメンバーを入れ替えて戦っている為、先発全員が交代となるが、リーグ戦としては4/30の川崎フロンターレ戦から5試合連続同じ先発メンバーとなっている。
一方ベンチメンバーには若干の変更があり、ルヴァンカップで故障から復帰した水沼宏太、またそのルヴァンカップで今シーズン初のトップチームでのプレー、またJ1でのデビューを果たした澤上がベンチ入りとなっている。

一方のヴィッセル神戸はルヴァンカップに引き続き先発となるのはトップの渡邉千真、ボランチの高橋秀人、最終ラインの伊野波雅彦、岩波拓也、GKのキム・スンギュ。
前線で渡邉千真とコンビを組むのは3節以来の出場となり今季初先発となる小川慶治朗。中盤の両サイドにはルヴァンカップでと週出場となった大森晃太郎と中坂勇哉。ボランチにはルヴァンカップできっちり休ませたニウトンが入り、最終ラインは、伊野波、岩波、渡部博文、松下佳貴が並んでいる。渡部博文は2節ぶりの出場、松下は先日のルヴァンカップで橋本和が負傷交代をしているため左SBでの出場となっているが、驚きは昨シーズンの開幕戦からリーグ戦連続フル出場中だった高橋峻希がベンチからも外れた事。
ルヴァンカップでフル出場をしており負傷の可能性もあるが、もしかするとセレッソはセットプレーをストロングポイントとしているが181cmの橋本和が欠場となることで、セットプレーの高さを考え170cmの高橋峻希を外し、179cmでCBの経験もある伊野波という決断を下したかもしれない。

■神戸のチーム設計

キックオフ直後は前線から激しくプレッシングを見せた神戸。しかし5分を過ぎた頃から、もちろんセレッソの選手のボールの持ち方や身体の向きによっては襲いかかる場面はあるものの、基本的にそれほど高い位置からプレッシングに行く場面は少なくなる。
神戸の守備
そうなったのは神戸の守備のやり方が、少なくとも2トップの内の1枚はセレッソのボランチをケアする事になっていたから。
ネルシーニョは相手のストロングポイントを消す事に長けた監督である。なので例えば東京戦や鹿島戦では中盤にアンカーを置いた4-3-3としインサイドハーフをボランチにぶつけてきている。ただその場合前線がトップ1枚に対してCB2枚となるのでプレッシングに行っても外される可能性が上がる。4-4-2だとCB2枚に対して2人で行けるがボランチを潰しに行くのがボランチとなり、その後ろにカバーの選手はおけなくなる。
そして神戸がこの試合で選択したのは守備の時に4-4-1-1的な形になり、セレッソのボランチに対しては神戸のボランチではなく、2トップの1枚が下がって対応する形。これはおそらくセレッソの両SH、柿谷と清武がインサイドに入ってきて2トップと絡む形をケアしたもの。特に清武はボランチの背後でボールを受ける事が非常に上手いのでそれをさせないためにボランチを前に出さない形を選択したのだろう。
神戸の攻撃
一方で攻撃の形はまず両サイドを走らせようというものがあったが、セレッソの守備がセットすると基本的にはルヴァンカップの時とあまり違いがない両SHを中に入れてトレーラーゾーンでボールを受けさせようとする形を狙っている。ただ、違うのは渡邉千真とコンビを組む選手に小川を起用した事。小川はとにかく背後のスペースを狙うようになっており、特に丸橋と山下の間、そして丸橋の裏に何度も飛び出していく形を見せていた。
ルヴァンカップでもピッチサイドから背後にとびだせという指示を送っているというレポートがあったので、その時はこの部分がかなり不満だったのだろう。裏を狙う事でセレッソの守備ブロックを押し下げる。最終ラインと中盤のラインの間を広げたいという狙いがあった。

■セレッソペースで進んだ前半

しかし結果的にこのネルシーニョの策は上手くいかず、前半立ち上がりに丸橋が上がって杉本の折り返しから山村が飛び込む形や、清武とのワンツーで杉本が飛び出す形など、立ち上がりからセレッソがボックス内に侵入する場面をいくつも作っていた。
神戸の守備が4-4-1-1になっていた事で、セレッソの最終ラインは比較的楽にボールを持つことができ、また丸橋や松田もそこまでプレッシャーを受ける場面も少なかった。また杉本と山村の前線2人も神戸がCB2枚とボランチ2枚で中央を閉めているものの、その両脇に出てボールを受ける事で起点になれる。そこを起点にセレッソはボールを運び神戸陣内にボールを運ぶ事ができていた。もちろん神戸のボランチが閉めている事で、清武と柿谷がなかなかボランチ裏でボールを受ける事は出来ていなかったが。
そしてもう1つ。神戸は4-4-1-1の形でボランチ裏を消す為に最終ラインが押し上げて4-4の間を狭くすることを徹底していた。しかしその結果前線の1-1でボールを持つディフェンスラインやボランチにプレッシャーがかなりにくいにもかかわらず、最終ラインの背後にスペースを作っている事になっている。
その為セレッソは裏のスペースに飛び出すプレーを何度も見せていた。神戸もラインを高く上げている自覚はあるので素早い戻りでカバーしていたが、それが実ったのが前半29分。
ヨニッチが出したロングボールに山村が抜け出しセレッソが先制点を奪う。
ただこの場面は試合後のコメントでも言っているように岩波のミス。多分岩波は最初、同時に飛び出した清武へのボールだと思ってコースを取っていたんだと思う。
それが実は自分の後ろにいる山村がターゲットだったことで対応が遅れ、キム・スンギュも飛び出しきれなかったことで山村は落ち着いてゴールに流し込む事ができた。

■ネルシーニョの素早い決断

36分〜
前半36分、神戸は大森に代えてウエスクレイを投入。ウエスクレイがトップ下に入り、小川が左SHに移動。4-2-3-1の形となる。
大森は中央に入っても守備範囲の広い山口とソウザのダブルボランチに潰されていたのでボールを受けられずポジショニングが中途半端になっていた。また中央からサイドに出てくる小川を効果的に使えていなかった。ということなので十分ありえる事だが、これまで全試合に先発している神戸の中心選手と言ってもいい大森を、まだ前半で、ハーフタイムまで残り10分ほどのタイミングで代える。この辺りは実にネルシーニョらしい決断である。
トップ下を作った神戸の狙い
4-4-2から4-2-3-1、セレッソの守備に対してトップ下を作る形というのは実はルヴァンカップでもやっている。
そしてそのルヴァンカップを経て再度起用したこの形は効果抜群だった。
まずセレッソの4-4-2のブロックだが、かなり強固になっているものの、実はボランチ2人による所が非常に大きい。この2人は幅広くカバーできるしボールも奪えて確実にスペースも消せる。
開幕当初、ソウザは練習中尹晶煥になんどもポジショニングを修正されていたが、今では言われることもかなり少なくなっている。
ただ、その半面SHはそこまでの精度にない。特に柿谷はそもそも最近はこのポジションを務める事も少なくなっていたし、徳島時代はもっと単純に人につく守備だったので、結構ソウザと柿谷の間は穴になり得る場所でもある。しかしこれはSHに入る柿谷や清武にはもっと違う、攻撃面でのタスクをより求めているからで、その為尹晶煥自身もそれを承知で、この2人をSHに起用している。
しかし、ネルシーニョはトップ下にウエスクレイを置き、ソウザと山口の間にポジションを取らせ2人にぶつけることで中盤のスライドをやりにくく、また2人の間から下がってくる事でボランチの前で前向きにボールを持たせるようにした。
その結果ボランチとSHの間が開くようになり、神戸が徐々にセレッソゴールに迫る場面を作り始める。
そして39分、ウエスクレイが起点になり、ソウザと柿谷の間に入った中坂、山口と清武の間にはいった高橋秀人とつないだボールが渡邉千真に渡ると、渡邉千真は見事な反転シュートでゴール。神戸が1-1の同点に追いついた。
渡邉千真のシュートはさすがJリーグを代表する日本人ストライカーと思わせる素晴らしいものだったが、ネルシーニョの狙いがピタリとはまったゴールだった。

このウエスクレイの投入で一気にペースを取り戻した神戸がその後も攻め込む場面を増やしながらもそのまま1-1で前半終了となる。

■サイドハーフをどうするか

後半は両チーム共にメンバー交代無しで始まるが、前半の終了間際に少し杉本が痛めていたので、もし杉本が厳しいなら、そして今の神戸にペースを握られている状況をカバーするなら、杉本に代えて関口か水沼を入れて柿谷をトップに出す形もあるかな?と思われた。
が、セレッソもメンバー交代無し。まずは杉本がプレーを続けられるという事なのだろう。

後半のセレッソは神戸のエクスレイがトップ下に入った攻撃に対して、全体的な構造は変化が無いが、前半は例えば左SBの松下にボールが入った時にちょっと横着して松田にいかせていた清武がしっかりラインに戻って守備に入るようになり、また山村がディフェンスのサポートに入る機会も増え、そして山下がトップから下がるタイミングで潰しに出る形で対応することでなんとかカバーをする形になる。
そして、神戸は前半の立ち上がりは4-4-1-1で守っていた形を4-4-2にして高橋とニウトンのダブルボランチがソウザと山口にアプローチをかけるようになっていたので、清武がボランチの裏、中央に入り込みプレーする回数も増えるようになっていた。
ただ、勢いを増した神戸がどちらかと言えば優勢だった。
59分〜
そこでセレッソは59分に柿谷に代えて水沼を投入。水沼が右SHに入り、清武が左SHへとポジションを移す。SHを本職の選手に代える形である。
柿谷をこの早い時間帯で下げる事になるのは、柿谷のプレーも少しボールロストが多かった事もあるのだろうが、守備の強度を上げる為にはここのポジションをどうにかしないといけない事は明白だったので納得のいく所だろう。

ただ神戸はより勢いを持って高い位置から守備をし始めることでショートカウンターの場面も作るが、セレッソがそこを外す事ができれば少しディフェンスラインがばらつく場面も見られ始め、63分には清武と伊野波が入れ替わる形で抜け出し山口がミドルシュートを放つ場面を作る。この時ニウトンが伊野波にめちゃめちゃ怒っていた。
そしてその直後の64分、ソウザが持ち出したボールを中央に入った清武に渡すとそこに伊野波が食いついてディフェンスラインの右SBの場所に大きなスペースができることに。清武はそこに走り込む山村にスルーパスを送りボックス横でセレッソが起点を作ると、神戸のディフェンスライン残り3枚はスライドしてくるので大外は完全にフリー。山村はそこに柔らかいクロスを入れると水沼は豪快にボレーでキム・スンギュのニアを抜きゴール。1-2とセレッソが再びリードを奪う。

■4-4-2のブロック

68分〜
リードを奪ったセレッソは65分、杉本に代えて澤上を投入。杉本はゴールの少し前にベンチに一度合図を出していたが大丈夫という事でプレーを続けているという状態だったので、尹晶煥をリードを奪った事で交代の決断に至ったのだろう。
一方の神戸も68分、両サイドの小川と中坂に代えて田中順也と小林成豪を投入。
これは戦術的な交代ということよりも65分を過ぎ少し疲れがみえていた、また小川は久々の出場という事で両サイドの強度をフレッシュに戻すための交代だと思われる。
ネルシーニョはこういう終盤に一気に両サイドをフレッシュにして強度を高めるという交代もよくする。

ビハインドとなった神戸は攻守によりアグレッシブに、ということで守備が前から捕まえにいく場面がさらに増える。ただ、前から捕まえに行くという事は後ろはマンツーマン気味になるということで、ここで途中投入の澤上が身体の強さを見せキープすることでチームを助ける事になる。
組織的な守備の中でキープするとなるとまた別の面も出てきますが、神戸の守備はマンツーマン気味になっているので、渡部博文や岩波に対して競り負けなければボールを収める事ができる。その強さを澤上は発揮する。
そしてマンツーマン気味という事はディフェンスラインもバラける事になっているので、スペースもできる。神戸が前掛かりになって攻撃し、セレッソもカウンターで対抗するという形になっていき、80分には山村のキープから抜け出す清武にスルーパスを送るも、少しタッチがズレてしまいキム・スンギュがセーブ。しかしこの場面は決定的な形だった。
ただ神戸にとっては投入直後から後半途中まであれほど効果的だったウエスクレイがサイドまで流れてしまうようになっていったので、前にはボールを運ぶもののよかった時間ほどチャンスになっているわけではなかった。
そしてこのウエスクレイがサイドに流れるようになったのはセレッソがSHの守備をテコ入れしたから。SHがしっかりボランチとの距離を詰めることで、ソウザと山口は迷いなく対処できるようになっていたからだった。
86分〜
86分、セレッソは3枚目の選手交代。清武に代えて関口を投入する。
後半の清武は守備もサボらず、また攻撃の起点としても奮闘しており運動量を増やしていたので、クロスを空振りした事で尹晶煥は決断する。
これでセレッソはこのはは4-4-2で試合終了までプレー。70分に山村が傷んだタイミングで一旦木本を用意しようとしていたので、おそらくここで交代となれば5バックになったんだと思われるが、SHを入れ替えたセレッソは最後まで4-4-2の守備強度を維持しそのまま試合終了。
1-2でセレッソの勝利に終わった。

■その他

1週間で2度神戸に勝利するという、チームにとって会心の勝利だった。
この試合は神戸にとって水曜日に敗れている再戦、しかもホームだけあってどうしても勝利したい試合だったはずで、そこを正面から叩いての勝利だっただけに尹晶煥監督としてもしてやったりの試合だっただろう。
ただ、ここまで見え隠れしていたものの、ハッキリとまではいっていなかったSH問題が明るみになった試合でもある。
例えば柿谷に「きっちり守備をすればいい」というのは簡単だが、それは彼が本来持っている能力を求めるものではない。
また山村が時折見せているものの、チーム全体として柿谷が得意とする裏抜けは足りていない。
ここをどうするのか。とりあえずこのままで良しとするのか、それとも何か手を加えるのか。それは配置なのかやり方なのか人なのか。
尹晶煥監督がどういう決断を下すのかに注目したい。





6 件のコメント :

  1. いつも分析見ています。つまり、セレッソは攻撃時に柿谷清武が中に入る4222になる時が多いですが、ネルシーニョの作戦は神戸のボランチが中央から動かずに試合展開することで有効な攻撃を失わせよう、という理解でよろしいでしょうか?またずっとの懸念事項ですが。今回は2得点とも神戸のミスを付けましたが、こういう堅い守備ができるチームに対しての有効打がチーム戦術として存在しないことが段々無視できなくなっています。これが無得点引き分けラッシュに行かないかが心配です。

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    1. コメントありがとうございます。
      そうですね、柿谷・清武のスペースを消そうという狙いはあったと思います。
      あと、攻撃面に関しては、そうなることもありえると思います。
      ただ、ここから全部引き分けても勝点46だから、残留は十分できます(笑)

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  2. 監督同士がよく動いて試合を動かす采配対決では、こういう深い言及をしている御ブログがとても重宝します。

    さて、今回の裏抜けにかぎらず攻撃面を懸念されていますが、具体的にどういった攻撃・布陣ができるようになればひとます及第と考えられているのでしょうか、尹監督が鳥栖を指揮した後期によく見せた、中央の豊田を使うと見せかけてトレーラーゾーンに誰かを飛び込ませるような二段攻撃とかでしょうか。
    最近の試合後のスタッツを見ているとシュート、特に枠内シュート数が増えているので攻撃は緩やかながらも機能してきているのではないかと個人的に感じていますが。ただ2節にあの浦和の連携攻撃を見ているので、DAZNマネーを狙う・タイトルを獲るにはたしかに全然物足りない攻撃だとも思います、が、あちらは監督就任6年目ですからね。

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    1. コメントありがとうございます。
      攻撃の形に関しては、どこに及第点を持っていくかですよね。
      なので現状でも及第点といえば及第点です。
      またこんな形が見たいんだ!みたいなものも無いこともないですが、それは僕の好みの問題なのであまりどっちでも良いかなと思います。
      この話しは長くなるのでまたどこかの試合で踏み込んで書きたいと思いますが、
      簡単にいえば、即興性にまかせている所と、相手を見れて無さそうな所が気になります。

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  3. いつも楽しみに拝見させていただいています。
    ケンユウ山村の2トップ以外のバリエーションとして柿谷の使い方って今後重要になりそうですね。
    選手の良いとこ出してほしいですね。
    ちなみに、今年は勝敗云々ではなく、意図的な試合ができているため、Akiさんも分析されていても楽しいのではないでしょうか。
    某大熊のときは地獄の修行ではなかったでしょうか(笑)

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    1. コメントありがとうございます。
      前線の使い方は、今後どうにかするのか、それともこのままでいくのか、非常に気になりますね。

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