- NHK BS1
スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 佐藤 隆治 |
入場者数 | 25,738人 | 副審 | 相樂 亨、山内 宏志 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 20.5℃ / 55% | 第4の審判員 | 西橋 勲 |
メンバー
スターティングメンバー |
- 監督
- 尹 晶煥
- 監督
- 鬼木 達
試合経過
-
87'
-
84'
-
82'
-
77'
- 76'
-
67'
-
65'
- 64'
- 46*'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 15 | 15 | 13 | 16 |
CK | 8 | 3 | 4 | 6 |
PK | 0 | 1 | 0 | 0 |
シュート | 16 | 8 | 11 | 12 |
警告/退場 | 1/0 | 0/0 | 1/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 尹晶煥監督川崎フロンターレ 鬼木達監督
セレッソ大阪 清武選手、山村選手、キム・ジンヒョン選手、丸橋選手
川崎フロンターレ 奈良選手
川崎フロンターレ 奈良選手、谷口選手、田坂選手、阿部選手、小林選手、三好選手、ハイネル選手、大塚選手、板倉選手(川崎フロンターレ公式)
両チームとも3勝4分1敗で勝ち点が並ぶ中迎えた明治安田生命J1リーグ第9節。セレッソ大阪が本拠地ヤンマースタジアム長居に川崎フロンターレを迎えての一戦は、攻守共に充実した内容を見せたセレッソが2-0で勝利。セレッソ大阪は5位にまで順位を上げる事となりました。
■メンバー
ミッドウィークにカップ戦が入るゴールデンウィーク連戦中に行われる今節。セレッソ大阪は水曜日に行ったYBCルヴァンカップのアウェイ鳥栖戦から中3日、川崎フロンターレは火曜日に行ったACL水原三星戦から中4日で迎えることとなっています。セレッソ大阪のメンバーは前節から1人変更。右SHを関口からルヴァンカップ鳥栖戦で久々の先発復帰、そしてフル出場を果たした清武に変更しています。
それによりベンチに入るのは関口や水沼。古巣対決となる杉本健勇は先発、田中裕介はベンチスタートとなっています。
一方の川崎フロンターレも前節から1人変更。ACL水原三星戦では登里が直前の負傷で外れましたが、今節は復帰。しかし前日練習で中村憲剛が腰を痛めたということでメンバー外となっています。中盤の中村憲剛がおらず、これまで同じポジションで起用されていた田坂と登里が共に先発となったことでどのような布陣になるかと思われましたが、谷口を中盤に上げCBには車屋が入り右SBには田坂、左SBには登里が入る形となっていました。
■川崎フロンターレの布陣
川崎のボール保持時の形 |
この形は中村憲剛のいるいないにかかわらず一部で「セレッソ戦にむけてやっている」との報道もあった形で、中盤のソウザと山口の前に人を立たせること、そしてその後ろに谷口がいることで中盤でのスペースを作りたかったのではないでしょうか。
川崎のほとんど全ての選手は相手を外す動きがすごく上手いので、彼らは相手を外す為に大きく動く必要はありません。なので山村や杉本のプレスバック、ソウザと山口の守備で前へ出てくる力をいなすために、前に立たせてスペースを広げたいという狙いがあったのでしょう。
相手ボール時の形 |
基本的にボール保持の時にはかなり流動的に中盤の選手が動くチームなので、まずはカウンターを避ける為にも高い位置でプレッシャーをかけに行きますが、セレッソのボランチの所には4-4-2でダブルボランチになる森谷や谷口がアプローチをかけるもののDFラインに迄アプローチをかけることはまれ。カウンターを受けないことが第一目標なのでそこさえ防いでおけばOK.
あとは4-4-2のブロックで守りましょうという考え方です。
■セレッソの守備から攻撃
この日のセレッソは高い位置からと自陣で中央圧縮の4-4-2を使い分ける守備を行ってきました。相手陣内からの守備 |
この時に川崎は谷口のポジションを落として中盤の形を変化させることでボールを保持しようとしてきますので、まずはボールをサイドに出させることが狙いです。
この時に後ろのソウザと山口のダブルボランチ以下も連動して全体のブロックを上げる。
ここでは基本的にボランチには出させない様にしていますが、もし出されたらソウザか山口、そうして2トップのプレスバックでボール奪取を狙う。ただ、攻守で中盤の形を変えてくるので、ボランチ2枚は同時に出ない。それでボールを奪う事が出来なかったり時間を作られて中盤の形を変形することが完成すればプレッシングは終了。全体のブロックを落とします。
またSBに出されたらこのSBにはSHがアプローチをかけていく。ここでボールを奪えれば最高。長いボールを蹴らせても成功です。またこの時も原則的にボランチ2枚は同時に前に出ず1枚は後ろをカバー。
川崎にとって最も手っ取り早いのは、小林悠や前から中途半端なポジションに落ちてくる大塚への縦パスです。これを通されると一気にピンチになります。なので残っているボランチの1枚はここをカバーしており、この試合の立ち上がりからソウザや山口がこのパスを奪うシーンが見られていました。
またここでもSBの所やその次でボールを奪えたり、蹴らせることが出来なかったら自陣に撤退します。
自陣での4-4-2の中央圧縮 |
守備のスタート地点はハーフウェイライン付近で、インサイドハーフがボールを受ける為に降りる動きを見せた時は2トップ程度の高さまでは付いて行く。なのでそれ以上降りたり、またアンカーの谷口が下がる形を取ってもそこは放置し2トップを含めたブロック全体のスライドで対応します。
この試合ではこの2つの守備の使い分け、いつ行くのか、いつ戻るのかがはっきりしており、またブロックを作った時の陣形もコンパクトに維持。なのでどこに戻るのかも徹底されていたので、いわゆる「守備の戻りが速い」状態が出来ていました。
守備の戻りだけでなく、走行距離なんかも結局は同じことなんですが、走れる、戻れる為に最も大切なのは「いつ・どこで・誰が・どこに」が決まっており、それが共有されていることです。この日のチームからはそれが徹底されていることがうかがえました。
前半の立ち上がりから川崎は、このセレッソの2つの守備に苦しむ展開が続きます。
川崎はセレッソの守備ブロックを前に中央突破を狙いますが、縦パスは入れる事が出来ず外に押し出され続け、また縦パスは狭くなっているのでセレッソの選手に引っかかる場面が続出。
川崎にミスパスが多かったのは、セレッソの中央圧縮のブロックが効果的なことを表していたともいえるでしょう。
またセレッソがボールを奪う場面では高い位置からのショートカウンターだけでなく、ブロックで奪ってからのボール前進も機能していました。
セレッソのボール前進 |
川崎のボールを失った後に高い位置からアプローチを掛けてくる形については、CBが開き、SBとSH、ボールサイドのボランチの3人で川崎のアプローチを外します。
もしこれでダメなら後ろに戻してロングキックという形もあるので、あまり無理はしません。
しかし、SHには清武・柿谷、ボランチにはソウザ・山口がいるので簡単にボールを失う事もありません。
川崎の守備はセレッソがボールをサイドに出すとそこに人数をかけてきますが、ボランチが動くとキープ力のある杉本と山村へのパスコースが空くので寄せきれない。なので、ここからボールサイドのSHの動きに引っ張られて前に出てきたSBの裏へFWを走らせる形や、が逆サイドに展開して逆サイドのSBとSHで素早くボールを運ぶ形でセレッソは川崎陣内にボールをどんどん運んでいきます。
ですから序盤から川崎ゴールに迫ったのはセレッソ。立ち上がりから丸橋のクロスが何本も入り、また高い位置でボールを奪うショートカウンターの形で前半16分には清武がボレーシュートを狙う形をつくっていました。
ただその前に立ちはだかったのは川崎のGKチョン・ソンリョン。
もし、GKがチョン・ソンリョンでなかったら前半からセレッソが何点も決めていたんじゃないかと思われるぐらいスーパーセーブを連発していました。
■川崎が3バックに
3バックにシステム変更 |
変えたのは谷口のポジション。
谷口は奈良と車屋の間に入って3バックを形成し、ボランチは大塚と森谷、WBに田坂と登里となり、前線は小林悠のワントップで三好と阿部がシャドゥ気味に並ぶ形になります。
おそらくこの狙いは攻守両面。
攻撃ではブロックの中をほとんど使えていませんでした。
一方守備ではセレッソにサイドで起点を作られておりそこからクロスを入れられる場面が続いていたので、前線の枚数は減るもののCBを3枚にすることで跳ね返せそうという意図もあったんだと思います。
川崎はこの3バックもよく使う形の1つですから選手にとっても違和感はないのでしょう。
攻撃の意図 |
阿部と三好がとったのはSH・SB・CB・ボランチの中央。とにかくブロックをなんとかしたいということがうかがえます。そしてこの修正直後には右サイドで阿部にフリックされ小林悠が裏に抜け出す場面を作りますが、ここはキム・ジンヒョンがセーブし難を逃れます。
守備陣形 |
SHが中央に入る |
そして43分のPKをとられた場面は3バックに変えた事が川崎にとって上手く行った場面だったかもしれません。このきっかけとなったのは三好がSH・SB・CB・ボランチの中央でボールを受けた事。ここでボールを受けたことで裏に飛び出す小林にボールが渡りシュート。そのこぼれ球を詰めようとした三好をヨニッチがバイシクルでクリアしようしたプレーをファールとジャッジされたからです。
録画を見る限りヨニッチの足はあたっていない様に見えますが、主審の位置からはちょうどブラインドサイドだったので蹴った様に見えたのでしょう。追加副審が必要な場面でした。
しかしこの川崎にとって千載一遇のPKを小林がパネンカ(クッキアイオ)で狙いますがクロスバーに弾かれて失敗となります。
■川崎の修正もセレッソペースは変わらず
後半開始〜 |
川崎はボールを持って試合をコントロール出来ているわけではないので大塚のボランチはやはりこわい。また3バックにすることで2つゴール前にボールを入れれているのでこの3バックを継続するなら守備力があって身体も強い板倉をという事なのでしょう。
攻撃の形 |
しかし後半立ち上がりこそ何度かボールを運んでチャンスを作りかけるものの、セレッソのボール保持に対して守備では5-4-1で守るしかなかったために、ボールを奪った瞬間に中盤の両サイドからポジションを移動しなければいけないシャドゥまでボールを入れられない事も多く、再びセレッソが押し込むことに。特に清武は全く捕まえられない状況が続きます。そうなると川崎はゴール前に人数をかける撤退守備で何とかカバーするしかなく、セレッソが攻めて川崎が守るという展開が続く事になりました。
65分〜 |
一方セレッソは65分に松田に代えて古巣対決となる田中裕介を投入。松田は少し前に足首を痛めた様子がありましたのでその影響もあったのかもしれません。
ちなみにBSの中継でハイネルとソウザは元チームメイトだという紹介がありましたが、これは2012年のナウチコでの事。ちなみにこのチームにはセレッソを退団した後のマルチネスもいましたし、アラウージョもいてこの4人が共に試合に出場していました。
この時間帯は川崎がほぼ守り一辺倒になってしまっており、67分についにセレッソが先制。
清武のワンタッチでのスルーパスから山村がファーサイドに放った低くて強烈なシュートがゴールネットを揺らしました。
この時の山村がボールを受けたポジションは登里と車屋の裏。
セレッソのボール保持にプレッシャーをほとんどかけられておらず、ボールを奪えない事にじれた車屋が中盤に喰いつきにいったものの、1人では全くボールを奪えなかった事でその裏を使われてしまいました。
ただ、前半3バックに変更する直前の"山村のクロスから杉本が空振りし、こぼれ球を山口ミドル"の場面もこのSBの裏からで、その後もここはちょこちょこ空いていた場所。そこに清武がワンタッチで相手3人を置き去りにするスルーパスを通した事が大きなポイントとなりました。
■カウンターを狙うセレッソ
76分〜 |
しかしセレッソはこの交代後、最初にプレーが切れたタイミングで山村をCBに移動。
川崎が前線の人数を増やした事、そして終盤になるとどうしても足がとまって来るので、そうなると3バックの川崎にミスマッチを活かされる危険性があるからという事なのでしょう。
またこの展開だと川崎は前がかりになる事は明らかなので、相手を引き込んでカウンターから杉本、柿谷、清武の3人でカウンターを狙いたいという事なのでしょう。
84分〜 |
さらに84分にはソウザに代えて秋山を投入。ソウザは試合前から負傷の情報もありました。
5-4-1で守ってカウンターを狙うセレッソ。1度目のチャンスは実りませんでしたが、キム・ジンヒョンからのキックを杉本が落として清武が拾ったところから、柿谷のシュートはチョン・ソンリョンが弾きますが、こぼれ球を清武が詰めてゴール。2-0とリードを広げこのゴールで試合を決めました。
最後は川崎は奈良を前線に上げ、セレッソも何度もジャンプを繰り返していた杉本が足をつらせる事になりますが、そのまま守りきり試合終了。
セレッソが勝利に終わりました。
■その他
攻守ともに川崎を上回る完勝とも言って良い内容だったと思います。川崎にとっては、中村憲剛、大島、エドゥアルド・ネットという中盤の主力が軒並み不在という苦しい状況ではありますが、それ以上にセレッソにほとんど何もさせてもらえないという厳しい試合だったのではないでしょうか。
清武は夏に新天地に移籍して、そこからオフ期間無くまた冬にキャンプを行うというコンディション的に難しい状況でしたから負傷が出てしまうこととなりましたが、少し休んだ事でいよいよコンディションも良くなってきた様です。
清武が入っても守備の強度を保つ事ができましたし、またそこを起点にすることで柿谷も活きるようになってきましたので、今後にもさらに期待が集まりますね。
いつも楽しく読ませて頂いております。
返信削除この試合を観た時に先日のルヴァンカップの守備は対川崎戦も睨んでのことだったんですね!
去年まで気持ち以外に改善や進化することが全くなかったのでこういうチームが強くなる過程が観れるのはうれしいですね!
コメントありがとうございます。
削除そうですね、次が川崎だからという事ではないでしょうけど、これからはブロックだけじゃなく使い分けれるようになれなければダメだという考えはあったと思います。