2019年6月17日月曜日

6/14 明治安田生命J1リーグ第15節 VS 鹿島アントラーズ @ 県立カシマサッカースタジアム

スタジアム県立カシマサッカースタジアム主審荒木 友輔
入場者数10,208人副審聳城 巧、堀越 雅弘
天候 / 気温 / 湿度曇 / 21.6℃ / 65%第4の審判員川崎 秋仁
鹿島アントラーズ鹿島
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • 大岩 剛
 
  • 監督
  • ロティーナ

<監督・選手コメント>

鹿島アントラーズ 大岩剛監督
セレッソ大阪 ロティーナ監督

鹿島アントラーズ 名古選手、永木選手、安西選手
セレッソ大阪 ブルーノ・メンデス選手、清武選手、水沼選手、藤田選手

国際Aマッチウィークあけ、金曜日開催となった明治安田生命J1リーグ第15節。セレッソ大阪は敵地県立カシマサッカースタジアムで鹿島アントラーズと対戦し2-0で敗戦。
圧倒的に試合を支配した前半につくったチャンスを決められず連勝は2でストップすることとなった。

■メンバー

鹿島アントラーズの先発メンバーは前節から2人入れ替え。
前節右サイドで先発するも途中交代となった中村充孝、山本が外れ右SHにはレアンドロ、右SBでは前節スタートではボランチだった永木を起用。そしてボランチにはリーグ戦初先発となる大卒ルーキー名古が起用された。
またベンチには今年3月にベルギーのシント・トロイデンから期限付き移籍で加入した小池裕太が加入後発のベンチ入りを果たしている。(流経大2年時の2016年に鹿島の特別指定選手としてヤマザキナビスコカップ(当時)1試合に出場している。)

一方、セレッソ大阪の先発メンバーは、前節と全く同じ11人。
ただしこの中断期間で怪我人が復帰しており、山下、柿谷がベンチ入り。またU-20ワールドカップに出場していた瀬古も大会を終え復帰しておりベンチ入り。
その結果、藤本、福満、山田の3人はベンチ外となっている。

■試合を完全にコントロールしていたセレッソ

この試合の前半は完全にセレッソがペースを握っていた。
その要因はセレッソのビルドアップからのボール前進。セレッソは狙ったとおりに狙った場所へボールを運ぶことができていた。
セレッソのビルドアップ
セレッソのビルドアップは4-4-2でスタート。時計回りにポジションを移動する片上げ3バックではなく、スタートは4-4-2のまま。そして鹿島の守備陣形も4-4-2で始まる。
ここからセレッソのボール前進では鹿島の選手がどう動くのかを見て、ボールや人の動き方が決まる。
例えばスタート時点で、鹿島の2トップがCBに対してアプローチをかけなければ藤田がCBの間に下がって3バック化する。
藤田がCB横に下がって3バックに
もし2トップが2CBにアプローチをかけてきた時は藤田はCBの脇に下がる。
藤田が左に下がったとすると、鹿島は右SHのレアンドロが藤田にアプローチをかけに来る。2トップがアプローチをかけに行っているので連動するのは当然だ。
するとセレッソはそれと同時に清武が中央へ移動し、丸橋は前へ出る。
清武が内側から外側へ
ここから藤田は丸橋へパス。そうなると今度は永木が丸橋に対してアプローチに来る。
これも鹿島の守備は連動しているので当然出てくる。
すると今度は清武が内側からチョン・スンヒョンと永木の間を縦に、永木の背後へと飛び出す。
この動きに対して鹿島はチョン・スンヒョンはメンデスとマッチアップしているので出ていくことはできず、対応するのは名古。しかしこの清武の動きに対して名古の対応が遅れたのが、9分に迎えたセレッソ最初の決定機。名古が遅れたため、丸橋からのパスを受けた清武はフリー。このクロスに中央で水沼が絶好のチャンスを迎えるが、シュートをクォン・スンテに当ててしまい得点とはならなかった。
清武へのパスを消されると、FWが下がってきて起点を作る
この清武を警戒し名古がきっちりついて行ったとすると、今度はメンデスが清武と名古のいたスペースに降りてくる。
同サイドに人数をかけてくるとサイドチェンジ
メンデスを警戒して三竿、白崎がスライドしてくると今度はデサバトを経由して松田へとサイドチェンジ。
鹿島はセレッソのビルドアップから始まるこのボール前進に全く対応ができていなかった。
そうなったのは、セレッソは鹿島の人を捕まえに来るという戦い方の根本部分を踏まえ、その中で鹿島がどう対応するかを見てからプレーを選択しているから。
そしてもし途中で詰まったとしてもキム・ジンヒョンに戻せばいい。なぜならこの形はセレッソのビルドアップから始まっているので何度もやり直しがきく。

ここまでは藤田が3バックのサイドに降りたところからの続きを書いたきたが、鹿島の2トップがセレッソのCBにアプローチに来なかった場合も基本的には同じ。藤田がCBの間に入って3バックになると、藤田の両脇の木本、ヨニッチがドリブルでボールを運ぶことでSHを引っぱることで同じ状況を作っている。

この結果、鹿島は2トップは行けばいいのか、いかないほうがいいのか。SHは、ボランチは、SBはと、もう何をどうすればいいのかをピッチ上だけでは解決できない状態に。

そうなるとキム・ジンヒョンから水沼へと一発でパスも通る。

ただ、セレッソはこうして何度も何度も意図した形でチャンスを作っていたが、シュートを決められなかった。
28分には水沼のクロスからメンデス、奥埜と立て続けに決定機を迎えるも決められず。
43分にはあまりに守備ではまらないからか、SHとDHの間に下がってきた清武に右SB入る永木が無理気味について来たためDFラインには広大なスペースが発生。そこに丸橋からのスルーパスでブルーノ・メンデスが抜け出すもシュートは決められなかった。

さらにこの試合ではビルドアップからの形以外にも、CKで鹿島のマンツーマン守備に対して水沼がスクリーンを行うという形も準備できており、木本、ヨニッチ、水沼と前半だけで3度のチャンスがあったが決められなかった。

そしてこれがこの試合の結果に大きな影響を与えることとなった。

■後半立ち上がりの鹿島

0-0でハーフタイムを迎えたが、鹿島にとっては特にボール非保持の部分(セレッソがボール保持しているときの内容)でこのまま何もしないわけには行かないほどの前半だった。
とはいえハーフタイムはわずか15分。今から何か新しい事はできない。

となると、鹿島ができることは大きく分けて2つ。
1つはさらにハイプレスの強度を上げること。そしてもう 1つはプレスに行かない。
このどちらかである。

この2つはいわば緊急対応、なのでどちらのやり方でもデメリットはある。
ハイプレスの強度を上げる方法は、セレッソがそれ以上のテンポでボールを動かすことができたならもう目も当てられないぐらいボロボロにやられる可能性がある。つまりイチかバチかのやり方だ。
プレスを諦める方法は、守備面では安定する可能性は高い。がしかしセレッソにボールを渡してしまうことになるので、セレッソの戦い方に従属してしまうことになりかねない。つまりセレッソに押し込まれる時間帯が増え、ボールを奪ったとしてもポジショニングはぐちゃぐちゃ。チャンスを作れなくなる可能性が高くなる。

そんな中、鹿島が選んだのは後者。プレスに行かないということだった。
鹿島がこの決断を下した要因の1つに、セレッソの守り方があったのではないだろうか。
セレッソの守り方は奪いに行くというよりも受け止めるという形になっている。以前解説者の岩政さんが「相手の攻撃を吸収する」と表現されていたがまさにそんな感じだ。
なので、セレッソに対して全くボールを持てないかというとそんなことはない。前への圧力をかけながらもリスクをかけすぎないボール回しを行うと、ゴールに直結するかどうか、効果的かどうかは別にして、ボールを持つ時間ということであれが比較的簡単である作りやすい。
実際に前半もセレッソが優勢だったが、鹿島がボールを保持する時間が全く無かったわけではなかった。
ただし、それが可能なのは比較的早い時間帯。セレッソのボール保持で守備時のポジショニングをぐちゃぐちゃにされてしまう前に限る。

ということで鹿島はプレスに行かないという決断と同時に、後半立ち上がりからボール保持ではかなり前がかりになり、セレッソを押し込んでくる。
そしてその勢いのまま、後半立ち上がりにペナルティエリア内で丸橋がレアンドロを倒してしまいPK。これをセルジーニョが決め50分に鹿島が先制する。

セレッソにとっては本当に痛い、そしてもったいない失点だった。

■より効果が現れた鹿島の奪いに行かない守備

奪いに行かない守備
鹿島がボールを奪いに行かないという決断をしたため、後半は図のように丸橋や松田のSBに対して基本的にはレアンドロと白崎のSHがついていくことになった。
もちろんそれでも時には出ていくことはあるので前半と同じ様な状況になりかけることもあったが、そうなっても鹿島はプレッシングで取り切れないことを想定しているので戻ってくる意識が高い。
なので守備ブロックの高さは下がることになるが、ゴール前では人数をかけることができるのでまだ守りきれる可能性が上がる。
そして鹿島は地味にボランチの左右を入れ替えていたことも見逃せない。
前半は右に名古、左に三竿となっていた鹿島のボランチは、後半に入ると右に三竿、左に名古という並びに変わっていた。
これはセレッソが丸橋、清武のところでよりチャンスを作っていたからで、そこのカバーに行く選手を新人の名古からより能力の高い三竿にしたかったということなのだろう。
66分〜
この並びは66分の名古からレオ・シルバへの交代で再び三竿が左に戻る。

ただ、当然ながらこの鹿島の守備に対してセレッソは全く攻めることができなくなったわけではない。
がしかし前半の様にオートマチックにスペースができていた状況ではなくなった。鹿島の重心が下がった分スペースがなくなり、簡単に鹿島の選手が動かなくなったので、セレッソの選手はより判断するための条件が難しくなったのだ。

そしてそうなると、時間の経過と共にどうしてもミスが増える。
セレッソは前半圧倒しながらも得点を奪えず、さらに後半の失点で1点ビハインドなので当然だろう。どうしても前に攻めたいという意識が芽生えるので、それぞれの認知の基準が合わなくなっていくのだ。
例えるならシーズン序盤のtotoは冷静に判断できるが、シーズン後半になると順位争いしているチームについつい負けや引き分けのマークをつけたくなるのに近い。

そしてミスが生まれるとカウンターを受ける場面が増える。

■そのミスで生まれた2失点目

70分〜
70分、セレッソは奥埜に代えて高木を投入。そのままトップに入る。

がしかしミスが生まれる状況は変わらず。
そして72分、キム・ジンヒョンのフィードミスからボールを奪われると、白崎にミドルシュートを決められ失点。大きな大きな2失点目を喫することとなった。
88分〜
失点直後の73分にセレッソは水沼に代えて柿谷を投入。清武が右SH、高木が左SHへとポジションを移動する。
しかし鹿島も77分に白崎に代えて小池をそのまま左SHに投入すると、88分にはレアンドロに代えて山口を投入。

セレッソは藤田がチャンスを迎える場面もあったが決められず、そのまま試合終了。2-0で鹿島の勝利に終わった。

■その他

セレッソとしてはかなり悔しい敗戦となった。
試合に向けての準備もゲームプランも完璧だった。しかしそんな中で迎えた多くのチャンスを決められない。さらに後半これしかないという形で失点。
本当にもったいない試合だったと思う。
「チャンスに決められないとこうなってしまう」といったことはサッカーではよく言われたりもするが、実際のところそれ以外の要因の方が大きい試合がほとんどである。
しかしこの試合に関してはかなり純度の高い「チャンスに決められないとこうなってしまう」という試合だったのではないだろうか。
これで今季リーグ戦7つ目の敗戦となったが、試合内容的には個人的にこの試合が最も悔しい敗戦だった。

こういう試合でこういう負け方をするんだからサッカーは難しいなあということを再確認させられた。




4 件のコメント :

  1. 分析ありがとうございます。
    ポジショナルサッカーを指向している海外強豪チームは先制されて相手がカウンター待ちになるとどのように対策して追いついたりしているのでしょうか?ポジショナルがやっていることはボールや選手の動きで相手を揺さぶってできるスペースやギャップを使っていくので、そういうものがなくなってしまうと打つ手が全くないという印象を受けました。ビルドアップは見ていて気持ちいいんですけどね。
    今年はセットプレーでかなり工夫して点をとろうとしているのでフェライニみたいな選手を獲ってベンチに置くのが一番効果的かと思いました、去年までは居たんですが。

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。
      カウンター待ちというか引いた相手を崩すというのはどのチームであっても難しいもので、だからこそスモールクラブはビッグクラブに対して引いて守るという選択をするんですよね。
      で崩し方ですが、待ってる狭い中でも全く動かないということは無いので、少しのスペースで何度も繰り返していますね。
      その中で質的優位を活かすという感じです。
      例えばフェライニのような高さも一種の質的優位ですが、それを活かすには相手を動かした方が効果的だからです。
      シティなんかはかなり狭いスペースでもシルバやデ・ブライネから飛び出したアグエロやジェズスにボールが入ったりもしますしね。
      高さだけじゃなく、どこに優位性があってそれをどうやって活かすのかということだと思います。

      削除
  2. いつもありがとうございます。
    仕事でラスト15分くらいしか見れなかったのでブログ拝見後見直していもったいないというか、ペップが7割のポゼッションで8割勝てると言っていたのを思い出しました。
    最近よく思うのですが点を取りに行くときのオプションとして4ー3ー3はないのでしょうか?
    4ー4ー2にしてからうまくいっているとは思いますが、ボランチを一人下げて奥埜やソウザのインサイドハーフ、水沼や高木のウイング清武はどちらもできるしおもしろいと思うのですが?

    返信削除
    返信
    1. コメントありがとうございます。
      4-3-3も無いことは無いでしょうし、今後取り入れる可能性はあると思いますよ。
      実際にヴェルディでは4-3-3もやってましたし。
      ただ今のセレッソだと4-4-2が一番良いと感じているのだと思います。

      削除

新着記事

人気の投稿

セレッソ大阪公式Twitter

楽天

楽天トラベル