スタジアム | パナソニック スタジアム 吹田 | 主審 | 池内 明彦 |
入場者数 | 10,509人 | 副審 | 浜本 祐介、赤阪 修 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 7.6℃ / 27% | 第4の審判員 | 岡 宏道 |
メンバー
G大阪
C大阪
- 監督
- 片野坂 知宏
- 監督
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「20000人以下」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
ルヴァンカップグループステージ初戦となった敵地パナソニック スタジアム 吹田で行われたガンバ大阪との大阪ダービーは2-3でセレッソ大阪が勝利。これでアウェイでの大阪ダービーは4連勝。通算成績ではまだ大きく負け越しているが、2017年にJ1に復帰してからの対戦成績は6勝4分5敗と勝ち越しとなった。
■2022ルヴァンカップ概要
まずは簡単に今季のルヴァンカップについて。
4チームが4つのグループに分かれH&A方式での2回戦総当たりで対戦するグループステージからスタート。
グループステージに参加するのはJ1の18クラブから今季のACLに出場する川崎F。浦和、横浜FM、神戸の4クラブを除く14クラブ+昨季J2に降格した4クラブのうち上位2クラブ(昨季J1での17位徳島、18位大分)の16クラブ。各グループの上位2チームの合計8チームがプレーオフステージに進出する。
プレーオフスタージはグループステージを勝ち抜いた8チームによりH&A方式の2試合で対戦。
このプレーオフステージを勝ち抜いた4チームとACL出場4チームの8チームでプライムステージとしてH&A方式でのトーナメント戦を行い、決勝は10月22日に一発勝負で行われる。
セレッソ大阪は、鹿島、G大阪、大分と戦うAグループに入った。
■メンバー
ガンバ大阪のスターティングメンバーはリーグ開幕戦から全員入れ替え。GK加藤大智、DF福岡将太、三浦弦太、佐藤揺大、MF福田湧矢、奥野耕平、山本悠樹、中村仁郎、FWレアンドロ・ペレイラ、ウェリントン・シウバ、山見大登という11人が入った。
布陣が開幕戦と同じ3-4-2-1だとするとWBの選手は福田だけなのでどういう配置になるかと思ったが、左利きの右サイドアタッカーである中村が右WBで起用された。
ベンチには開幕戦でアンラッキーな形で退場となったパトリックを含め、石川慧、柳澤亘、倉田秋、石毛秀樹、宇佐美貴史と開幕戦で先発をしていた選手に加え、中村と同じくユースから昇格組の坂本一彩が入っている。
セレッソ大阪のスターティングメンバーはリーグ開幕戦から10人を入れ替え。残ったのは右SBの松田陸だけで、GK清水圭介、DF鳥海晃司、舩木翔、山中亮輔、MF中島元彦、鈴木徳真、為田大貴、中原輝、FW上門知樹、北野颯太くんという11人。
山下達也が怪我で離脱しているCBには宮崎キャンプでもこのポジションで起用されていた舩木翔が入る。小菊監督が「高さもあって」と評した舩木は、身長177cmではあるものの2019年にトップチームでプレーしていたときも空中戦ではまずまずの成績を残していたこともあってCBでテストされていたのだろう。U23では数試合ではあるもののCBで出場していたこともある。
またセレッソもベンチには新井晴樹に加え、開幕戦で先発していたキム・ジンヒョン、進藤亮佑、西尾隆矢、清武弘嗣、原川力、ブルーノ・メンデスが入っている。
コロナ禍ということや怪我などコンディション面での問題もあるが、開幕直後の試合なので今季を戦うにあたって両チームともにできるかぎりのターンオーバーを行ったというメンバー編成となった。
■両チームの攻撃と守備のスタート
試合はまだ落ち着く前の7分に鈴木のFKから為田がバックヘッドで流し込みセレッソが先制する。
この得点につながったファールは、後ろ向きでここから一発で何かができる状態ではなかった為田に対して中村が後ろからファールをするというG大阪にとっては勿体無い形で与えたものだった。
早い時間帯での先制点により、セレッソはここから楽に試合を運べる状態になっていきセレッソがペースを握る展開になるのだが、これは「先制点がきっかけ」という訳ではなく、そこまでの短い時間でもセレッソの方が優位に立ちそうな状態は少しづつ見られていた。
両チームで差があったのは攻撃の起点となるビルドアップと、それに対応する守備。
まずG大阪のボール保持に対するセレッソについて書くと、
G大阪の3-4-2-1に対してセレッソは4-4-2でセットした状態でスタート。
ここから守備のスイッチが入るのは3バックの両サイドにボールが入った時。ここにボールが入るとFWがアプローチをかけ、そこからWBに出たところでSHが一気に距離を詰めてはめ込みに行く。
G大阪としてはWBに相手が食いついたときにシャドゥがサイドの前のスペースに飛び出して背後をとる、もしくはWBからCFへのクサビのパスコースを作るというのが狙いだったと思うが、セレッソの守備ではここにSHが行けるので斜めに背後を狙うシャドゥに対してSBで十分対応できる。CFのパスコースに関してもCHで消せるし、CFに対してもボールサイドのCBが十分対応できるという状態になっていた。
となるとG大阪がボールを運ぶには「中に折り返してCHを経由し逆サイドに展開する」ということになるが、ここがセレッソの第2の狙い所。WBからの折返しを受けるCHに対してCHでアプローチをかけ、さらにそこにFWのプレスバックで挟み込むという形で何度もセレッソがボールを奪い返していた。。
G大阪はこのセレッソの守備に対して苦労し、ほぼボールを運べないという。右WBの中村は慣れていないポジションということもあり完全にセレッソの狙い所になっていた。
一方でセレッソのボール保持に対するG大阪について、
5-4-1/5-2-3でセットするG大阪に対してセレッソは松田が残り気味の形でビルドアップをスタート。
G大阪とすると、おそらく前線の3人でセレッソの最終ラインに対してプレッシャーをかけに行きたかったと思われるが、ウェリントン・シウバが松田に引っ張られ、山見が舩木と山中のどちらにも対応したいという立ち位置をとるのでCFのレアンドロ・ペレイラが孤立。となるとCHに差し込まれるので、G大阪のCHがセレッソのCHに食いつくようになるが、そうなると段差をつけたセレッソのFWに直接クサビが入ったり、左SHから中央に入ってくる為田が浮いてしまったりする。
その結果10分を少し過ぎた頃から前線の3人はアプローチに行けなくなりズルズルと下がるしかない状態に。
しかし下がっても守備のきっかけがないままの状態が続いているので、ボールホルダーはフリーというなかなかに厳しい状態となっていた。
■G大阪の修正とセレッソの追加点
厳しい状態だったG大阪の最初のチャンスは21分に山見が放ったシュート。
これは中島のミスパスからだったが清水がセーブしたことで難を逃れる。
その後のCKが終わったタイミングでG大阪は中村と福田のWBの左右を入れ替え。
これをきっかけにほぼアプローチに行けなくなっていた守備を改善しようと前線の3人でビルドアップ隊にアプローチをかけること、そして前と連動してCHがCHを捕まえること、さらにFWに対するクサビにはマンツーマン気味にマッチアップしているCBが食いついていって潰しに行くことを徹底し始める。
これによりG大阪はボールを奪う位置が高くなり、敵陣でプレーする時間は増えた。
しかし24分には北野くんがプレスバックで山本からボールを奪いシュートを放つ場面を作る。またウェリントン・シウバが前にアプローチをかけるために内側に絞って縦にプレーすることが増え、最初のプレスでCBを追い込めないと松田からセレッソがボールを運ぶ場面も目立つようになる。
G大阪のボール保持でも3バックの左に入る福岡がドリブルで持ち出すことでセレッソの2トップによる最初の守備をぼかす場面もあったが、やはりやりたいことをできているのはセレッソという状態は変わらないままだった。
そして41分、セレッソが松田のところからボールを前進させると最後は松田と中原のコンビでハーフスペースの相手ペナルティエリア内、いわゆるポケットと言われる場所に中原が侵入。中原に対して中村が対応するもうまく外して折り返しを上門がゴール。リードを2点に広げる。
上門のシュートはワンステップながら見事なシュート。G大阪としては結果的には中村が外されてしまったのだが、ペナルティエリア内にGK以外に7人もの選手がいながらもサポートに行くことができていなかった。
■後半立ち上がりの優勢と失点
後半開始から両チームともに選手を入れ替え。
セレッソは松田に代えて進藤。G大阪はレアンドロ・ペレイラとウェリントン・シウバに代えてパトリックと柳澤亘を投入する。
セレッソの交代は今回のスターティングメンバーで松田だけが開幕戦から続けての出場となっていたので45分での交代というのはプラン通りだろう。おそらく毎熊はプレーできない状態なので同じく週末にもプレーするだろう進藤と45分ずつ分担するという形である。
一方のG大阪はパトリックはアンラッキーなレッドカードで週末のリーグ戦にはプレーできないので早めの投入。そして前半の出来からすると普通に考えれば柳澤と交代するのは中村ということになるのだろうが、今季のトップ昇格選手である中村を不慣れなポジションで起用し、ダメだったからとそのまま交代させてしまうと本人へのダメージも大きいし、下手をすればその後のキャリアにも関わる可能性もある。なのでそのまま交代ではなく本人の得意なポジションに移動させて後半もプレーさせたという片野坂監督の決断だろう。
後半開始からパトリックという困ったときの逃げ場所を作り、2点ビハインドなので前半終盤以上にアグレッシブに圧力をかけてこようとしたG大阪だったが、51分、53分に北野くんが決定機を迎えるなど後半開始からゴールに迫ったのはセレッソ。特に上門がボールを奪ってからのカウンターで、再びボールを受けた上門の折り返しに北野くんがシュートするも佐藤にゴールライン上で跳ね返された53分の場面は決めたかった。
ガンバが前がかりになってくることに対して、セレッソは少し危なっかしさはあったが、2トップの守備の起点とプレスバック、そしてスライドで対応できていた。
しかしその危なっかしさが失点につながることに。59分に山見のクロスを舩木が跳ね返すも、そのこぼれ球を山本がダイレクトでシュート。これがゴールとなりG大阪が1点を返す。
この失点につながったG大阪の攻撃は、自陣でのボール保持からスタート。三浦からパスを受けた福岡が、ドリブルでボールを縦に持ち出すことで福田を前に出し、そび福田にパスをつけたところから始まっている。
この福田に対してアプローチをかけたのが進藤。しかしその結果、ボールサイドのシャドーである山見が進藤の背後に飛び出し、ここに対応するために鳥海が引き出されることに。となるとその穴を産めるためにCHは最終ラインに下がらざるを得ず、山見のクロスは舩木がクリアするもペナルティエリアのすぐ外にいた山本はフリーとなっていた。
山本がフリーでシュートを打てたのはここを埋める中島がペナルティエリア内に戻っていたからで、中島がペナルティエリア内に戻っていたのは鳥海が引き出されたから。なので全ては進藤が福田に食いついたところから始まっている。
前半の守備でうまくいっていたのはこの福田(WB)には中原(SH)で対応することが多かったから。ここをSHで対応すればシャドゥの飛び出しにSBで対応できていたのでCBは引き出されなかった。
しかしこの場面では、「福岡がドリブルでボールを運び福田のポジションを前に出したことで、進藤が福田に食いつきやすい状態にした」という上手さはあったが、プレーを振り返ると途中までは中原も福田にアプローチをかけようとしているので、それまでと同じ形で対応することも可能だった。しかし進藤が一気に寄せたので中原は行くのを止め、それをきっかけにズラされてしまった。
先に危なっかしいと書いたのは後半頭からこうしてSBが食いつきそうな場面が少し見えていたからである。
これが進藤の判断なのかどうなのか、実際の所はわからないが、おそらく2点リードしているがアグレッシブに戦おう的な指示なり雰囲気がチームにあったんだと思う。というのもこうして食いつくことでピンチを招いたのは横浜FM戦の1失点目と同じ構図だからだ。あの場面では最終的にはクロスからの失点したが、投入されたばかりの為田が松原に食いついたことで横浜FMの攻撃がスピードアップしたことがきっかけだったからである。
■追いつかれるも突き放す
1点差に追い上げたG大阪は直後の60分に山本と山見に代えて倉田秋と宇佐美貴史を投入。準備していたのは1点を返す前だったがさらに勢いをつけるためにはそのままGOである。
続くセレッソも64分に中島と北野くんに代えて原川力とブルーノ・メンデスを投入する。
失点直後にも前半頭から行っていた2トップのプレスバックでボールを奪い最後は上門が得意のミドルシュートを放つ場面を作っていたが、どうしても強度が落ちてきていたのでFWとCHを入れ替えたということだろう。
メンデスはスペースに抜けるのもうまいので、前がかりになったG大阪の背後のスペースを狙いたいというのもあったと思われる。
そしてその直前に中村からのクロスをファーサイドで福田に合わされるという決定機を作られている。
セレッソはさらに71分に為田に代えて清武弘嗣を投入。続く72分にはG大阪も奥野に代えて石毛を投入。
G大阪は倉田と石毛がCHに入るというかなり前がかりな布陣となった。
そして74分、CKの跳ね返りを再び拾った宇佐美が入れたクロスに柳澤がニアで合わせてゴール。ここでG大阪が2-2の同点に追いつく。
これを受けてセレッソは、78分に上門に代えて新井晴樹を投入。清武がトップ下に入る4-2-3-1に変更する。
同点に追いついたG大阪はさらに前がかりになり押し込もうとしていたが、実際にはかなりギリギリだったと思う。
というのもCHが石毛と倉田で、石毛は前に出ていこうとするし、倉田はボールサイドに流れるので、ボールを奪われたときに中盤に誰もいないといった状況も起こりかけていたからだ。
押し込んでボールを持っていればいいが、逆転を目指して仕掛けるのでボールを失う回数も増える。そうなった時に三浦が思い切って前に出ることで何とかカバーしていた場面もあったが、チーム全体のバランスは良くなかった。
そんな状態が最初に顕著化したのが82分。CBの舩木から始まったゆっくりとしたビルドアップで、原川がG大阪のCH2枚の間を通す縦パスを清武につけた。G大阪にとってはCH2枚の裏で前向きに清武にボールを受けられてしまうという状態を作られた場面である。清武からのパスを受けた中原のシュートは加藤がセーブしたがセレッソの決定機だった。
そして84分。今度は鈴木からのパスをCH脇で中原が受ける。ここから中原は前向きでドリブルを始めるのだが、この時点でG大阪のCH2枚は置いていかれてる。つまりG大阪の最終ラインは前向きにドリブルをする中原にさらされている状態で、さらに局面としても4対4。
ここで清武を経由し最終ラインの背後に抜け出した新井からの折り返しを中原が決めてゴール。セレッソが勝ち越し点となる3点目、G大阪を再び引き離す追加点を決めた。
2点ビハインドだったG大阪にすればバランスが崩れるリスキーな形であったとしても、そうするしかなかったのだろうし、それで同点に追い付けた、ダービーなのでさらに逆転を目指すしかない、ということだろうが、セレッソは終始バランスを大きく崩すことなく戦い続けていたので徐々にペースを握るのも必然だった。
その後も決められなかったが、新井の折り返しからメンデスが決定機を迎え、進藤の個人技からチャンスも作っている。
進藤の右SBは戦術的なバリエーションやできることは少ないので難しい部分もあるが、G大阪はもはや組織としてのバランスは崩れ、個対個の勝負といった状況になっている。そうなれば進藤の攻撃面での思い切りの良さは活きる。
試合はこのまま終了。2-3でセレッソ大阪が勝利し、アウェイでの大阪ダービー4連勝となった。
■その他
後半に一度は追いつかれたものの、試合序盤からのアドバンテージを活かして最後は勝ち切ったという試合だった。
上門、中原、鈴木の新加入組と2種登録選手である北野くんという新しい選手の活躍はチームにとって大きな成果である。山中のプレーも終始安定していたし、CBにチャレンジした舩木のプレーも良かった。
またこの試合のようなテンポ、G大阪のような戦い方であれば立ち位置をとったビルドアップで効果的にボールを運ぶことができたことも収穫だろう。
そんな中で課題といえるのが1失点目につながった食いつく場面。
本文中にも書いたが、横浜FM戦の1失点目もきっかけとしては近い。
受ける守備がダメだとか前へアグレッシブに守備にするのがいい守備だという風潮がなんとなくあるが、普通に考えてもそんなことはあるわけはなく、攻撃でも守備でも必要なことを必要なときに行うことが良いに決まってる。
しかし試合の中で「必要なこと」ができなくなることもあって、そうなった時に取り戻すためのきっかけとして「積極性」や「アグレッシブさ」を求めているのだろうが、実際にはそれが少し空回りして失点につながる試合が続いているので、その辺りをうまく修正したいところである。
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