スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 今村 義朗 |
入場者数 | 23,442人 | 副審 | 植田 文平、大川 直也 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 30.3℃ / 61% | 第4の審判員 | 松本 大 |
メンバー
スターティングメンバー |
- 監督
- 尹 晶煥
- 監督
- 城福 浩
試合経過
-
89'
-
87'
-
79'
- 73'
- 60'
-
45+1'
- 19'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 10 | 15 | 15 | 14 |
CK | 5 | 6 | 5 | 6 |
PK | 0 | 0 | 0 | 0 |
シュート | 11 | 9 | 11 | 11 |
警告/退場 | 1/0 | 0/0 | 1/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 尹晶煥監督サンフレッチェ広島 城福浩監督
セレッソ大阪 キム・ジンヒョン選手、清武選手、ソウザ選手、杉本選手
サンフレッチェ広島 柏選手、水本選手(Jリーグ公式)
真夏の12連戦最終戦となる本拠地ヤンマースタジアム長居で行われた明治安田生命J1リーグ第24節、セレッソ大阪対サンフレッチェ広島の一戦は前半に奪われたリードを取り戻せず0-1の敗戦に終わった。
■メンバー
セレッソ大阪の先発メンバーは、予想通りリーグ戦4試合連続同じ選手が並ぶ11人。なかなかトレーニングの時間が取れない連戦の中で4-4-2から3-4-2-1へとフォーメーションを変えたことで、メンバーを固定することでこの布陣での精度を高める形をとっており、FWには怪我人が続出していることを考えるとこれ以外の選択肢はない。一方のサンフレッチェ広島の先発メンバーも予想通りの11人。広島はシーズンを通じてメンバーがかなり固定されており、選択肢はCBを水本、野上、千葉のうちどの2人を起用するか、FWでパトリックと組むのは渡なのか工藤なのかぐらい。また前節の川崎戦で城福監督の采配ミス的な要因もある敗れ方をしているので、この試合ではこの11人以外の選択肢は無いだろう。
■プレッシングにこなかった広島
広島は前節川崎戦でも見せていた様に立ち上がりは前線からハイプレスをかけてくることが多い。ショートカウンターで得点を決めることができれば最高だが、狙いとしてはここで主導権を握ることがメイン。実際に立ち上がり15分の広島の得点数はリーグ最少。全く多くない。ただ、この試合の広島は立ち上がりに前線からのハイプレスは行わなかった。
その理由として考えられるのはロングボール対策。広島は前回対戦時にロングボールにたいして比較的自由にやらせ、結果的にこのロングボールから決勝点に繋がっている。
ハイプレスをしかけるということは自陣にスペースを作ってしまう。そしてプレッシングに行くとセレッソは躊躇なくロングボールを蹴る。
それを踏まえて、ロングボールを蹴ってきたとしてもしっかりと準備できる形で対応できるように、ハイプレスという形を取らなかったのではないかと思われる。FC東京と対戦した第8節に長谷川監督が取ってき考え方に近い。特に今回のセレッソは前回と異なり杉本の1トップ。ターゲットが1枚しかいないのでそこに野上を当てて対応しようという事だったのだろう。実際に杉本に対してはほとんどの場面で野上が対応していた。
■6バック状態になることも厭わない守備
ただ、ハイプレスに行かないということは相手に自陣では比較的自由にボールをもたせてしまうことにもなる。なのでハイプレスをしないということは、相手がボールを持って攻撃してきた時にどう守るのかがセットでないといけない。
広島の守備 |
それに対して広島はSHをはっきりとSBの外側に下げ、場合によっては6バック状態になることも厭わない形で守ってきた。
広島がこの様な形で守ってくるので試合の立ち上がりはセレッソがボールを持って押し込みサイドで左右にボールを動かすという場面も多かったが、完全にスペースを消してきたのでボールは持つものの攻めあぐねるという状況になっていた。
15分に強引にソウザ、杉本が絡んで中央を割って高木を前にだしたがシュートまで持っていかせず、最後は松田がシュートを放ったがコースは無く林がセーブした場面なんかは、最終ラインで人数をかけスペースを与えない広島の守備を象徴する場面だっただろう。
しかしこの形で守るということはボールを奪う位置が低くなる。ということはボールを奪っても攻撃につなげるのが難しいということでもある。
しかし広島は低い位置でボールを奪うということに対してある種慣れている。というのも昨季前半までやってたミシャシステムは守備は5-4-1撤退がメイン、ここからボールを繋いで前線までボールを運ぶという戦い方を行ってきたからだ。
青山、水本、柏はもちろん佐々木も野上も稲垣も森保監督時代に獲得した選手。もちろん今の戦い方はミシャシステムほどオートマチックにポジションを取るわけでもないしそもそもの布陣も違うが、広島の選手は他のチームよりも比較的ボールを繋ぐことができる選手が揃っている。
そしてもう1つ。広島にはパトリックという強烈な存在がいる。
この試合では右サイドに走り出すパトリックに対してはちょうどオスマルがマッチアップする形になり、前半はやられてしまう場面も少なく五分の戦いができていた。
しかし自由にさせなかったとしてもタッチラインに逃げたりする回数は増える。となるとゲームは広島のスローインから始まるので、広島にしてみたら自陣の低い位置からボールを出すことに成功している。
そもそもセレッソの守備は、ボールを失った瞬間はアプローチに行くがそこを外されると基本的には自陣でブロックを作る形をとるので、試合立ち上がりこそ広島が押し込まれる時間が長かったものの、徐々に広島もボールを持ち、セレッソ陣内に攻め込むようになっていった。
■広島の先制点
広島はボール保持の時、左SHの柏が最初からトップ下の様なポジションを取っていて、右サイドのハーフスペースに入ってくる。空けた左サイドは佐々木が上がってくるという右サイドで人数をかけた攻撃を行ってくることが多いが、この試合の序盤はその形もほとんどなく柏は普通に左サイドの開いた位置にいることが多かった。これもおそらく守備のことを考えてのことだろう。前線からハイプレスに行くときは人数をかけた右サイドでボールを失ってもそこでそのまま多い人数でプレッシングに行くことができる。
しかしこの試合の様に下がって守る時は、攻撃時のポジショニングが守備時のポジショニングと離れてしまうと、当然移動する時間が必要になるのでその分隙を作ってしまうからだ。
そんな柏がいつもの様に中央から右サイドにまで流れるプレーを数多く見せるようになったのは15分を過ぎたころから。立ち上がりの時間が終わって両者一旦落ち着き、広島も青山を起点にボールを動かしながら攻めるようになった頃からだった。
広島がボールを動かしながら攻め始めるとセレッソは5-4-1で守ることになる。
5-4-1で守る時にはファーストディフェンスで1人しかいないので制限をかけきれず、結果5-4のブロックが下がってしまうことになりやすい。そしてそうなると相手のボランチが自由になってししまう。
ただこれに対してどう修正するかというのは非常に難しい。
例えば単純に1トップを戻してボランチを自由にさせないという手もあるが、ここで1トップまで頻繁に下がってしまうと、ボールを奪った時にその1トップにクサビを当てられなくなり、攻撃するのはかなり難しくなるからだ。
試合が落ち着き始めた15分からセレッソは5-4のブロックが下がりながらも1トップの杉本は前に残るという形になっていた。
5-4が引いてスペースを埋めているので、6バック化する広島を攻めあぐねていたセレッソ同様に、広島もスペースを消されているのでなかなか攻めきれない場面が続いていたのだが、19分に広島が先制。
どうしても空きやすいボランチの稲垣がミドルシュートを決めた。
柴崎が右サイドから入れたクロスはセレッソの守備陣も中央で人数が揃っているのでヨニッチが跳ね返したが、そのこぼれ球がちょうどボランチの稲垣のところに転がりそれをダイレクトで決められてしまった。シュートはヨニッチの足の間をすり抜けているのでキム・ジンヒョンもどうすることもできなかった。
■広島のパターン
プレビューでも書いたがこの試合は先制点が非常に大きな意味を持つ試合だった。広島はこの試合の前までの今季、先制した試合が14試合あり12勝1分1敗と抜群の勝率を残している。一方でセレッソも先制した12試合で無敗。
サッカーは統計的に先制したチームが6割以上勝利するスポーツだが、相手が守備を固めなければ、広島もセレッソも自分たちの守備陣形から大きく形を変えなくても追加点を狙えるチームなので特に先制した時に強さが発揮できるチームなのだ。
ここからの広島はその強さを存分に発揮した。
まず前提としてあるのはセレッソの守備に対してボールを繋ぎながら攻め込むことができること。なので広島のボール保持攻撃に対してセレッソは5-4-1になる。
そして、同点直後こそ稲垣が前に出ていくこともあったが徐々にその回数を減らし、CB2枚とボランチ2枚の中央4枚で素早い攻守の切り替えからセレッソのカウンターをしっかりとケア。セレッソはどうしてもシャドウと1トップの位置距離が遠いので、杉本はヘディングするにも簡単では無く、足下のボールも長い時間キープしないといけないので、カウンターの難易度は高くなっていたという側面もあり、この4枚が中央を締める対応は安定していた。
となるとセレッソの攻撃はボール保持からという形になる。
渡のプレスバック |
なので、セレッソが狙うの相手の陣形を片方に寄せてボランチ脇から一気に逆サイドにサイドチェンジして折り返すこと。その折返しはダイレクトであればより効果的だ。
この形はかつてバルセロナが引いた相手を崩すのによく使っていた方法で、それこそイニエスタが相手のボランチ脇から後ろから大外に飛び出してくるダニエル・アウベスに出しその折返しを中央で合わせるという形をよく見た。
そしてなによりこの形は、オフサイドとミスジャッジされてしまい取り消されたが、前回対戦時の前半5分に山口からのサイドチェンジをダイレクトで福満が折り返し、杉本がネットを揺らしたシーンと同じものだ。
前回はセレッソも4-4-2だったが今回は3-4-2-1。より松田が逆サイドでフリーになりやすい。
しかしこの試合ではこの形をほとんど作らせてもらえなかった。
その要因となっていたのが渡のプレスバック。渡はセレッソボランチに対して献身的に、徹底したプレスバックを繰り返し、ほとんどの場面でボランチに自由を与えてくれなかった。
そうなると、セレッソ側からすると中盤で最終的には1人余っているので逆サイドに展開はできるのだけど、そこに持っていくまでに一手間余分にかかる。となると広島のディフェンスラインも十分スライドすることができるのでサイドでクロスを上げるところまで持って行けない。その結果ボールを下げるしかなくなりスタートに戻る。
なので広島のブロックの外側でボールを動かすか強引に行くかしかない。強引に行ってもペナ幅を4人で守る人の壁に引っかかる。
で、ボールを奪えばパトリックを走らせる。パトリックのカウンターをケアして早めに下がればボールを持つ。完全に広島のパターンだ。
ちなみにサイドで張ってる選手がマンチェスター・シティでいうところのサネやスターリングの様に1対1でとにかく勝つという選手ならそこで1対1を仕掛けることもできるのだろうが、セレッソの両ワイドはSBなのでそうはいかない。
神戸戦や川崎戦を見ても、そしてこの試合でも、広島も先制後ハッキリとした戦い方に変わるまでに5分ぐらいはかかるので、セレッソはその間に一気にペースを上げて同点に追いつきたかったのだがそれができず。完全に広島の術中に。
後半に入るとセレッソが少し守備のスタート地点を高くしたことでいくつかカウンターを見せたり、清武がサイドに開いてボールを受けたりして広島のSHとSBの関係を入れ替えようと工夫を見せたりしていたが、チャンスにまではつながらなかった。
■ボランチ脇が使えるようになるも
60分〜 |
この交代は広島のパターン、渡はどの試合も60分ごろに交代している。攻守にかなり連続して走っているのでこれぐらいの時間帯が限界なのだろう。この交代直前に渡のプレスバックが遅れて、松田にクロスを入れられ枠外だったが杉本がヘディングシュートを放っている。
ティーラシンはカウンターで走れるし起点にもなれる、リードした状態で後半途中に入ってくる選手としてはかなり厄介なタイプだ。
広島はこの交代で入ったティーラシンに対しても守備のタスクとして与えられていたのは渡と同じものだったのだろう。
投入直後からボランチに対してプレスバックをし、ファーストディフェンスでも頑張っていた。
ただ、ティーラシンは渡よりもこの守備の精度は甘かった。渡が守備で平気で2度追い3度追いしていたのに比べて、ティーラシンは外されるとそこまで献身的では無い。(実際にはティーラシンが献身的ではないというよりも渡が異常に献身的なだけなのだが)
その結果セレッソがシュートまで持っていく場面が増え始める。
71分のシーン |
オスマルと丸橋で広島の右サイドを押し込みそこから高木が中に向かってドリブルしたのだが、ここに対してティーラシンはプレスバックに行くことができていない。
なので高木は逆サイドの大外で余っている松田へ一発でパス。少し高木からのパスがズレたので松田はトラップすることになったが、松田の折返しを杉本が合わせ、さらにそのこぼれ球という形を作った。
これはまさに先程書いた片側に相手を寄せて逆サイドにサイドチェンジを行う形。オスマルがリスクをかけている分、パトリックにカウンターで走られることにもなるのだが、それまで渡がプレスバックで完全に潰していた形をセレッソは作れるようになる。
ただ、もうちょっとセレッソとしてはこの形を何度も繰り返しても良かったんじゃないだろうか。
73分〜 |
吉野はボランチに入り、稲垣が右SHとなる。セレッソのボール保持攻撃は左からスタートすることが多いので、SBの横まで下がる柴崎はここまでかなり多くの仕事をしていたこともあるだろうが、柏を残したのは川崎戦の反省もあるのだろう。
79分〜 |
セレッソは渡が下がった時間帯から徐々にチャンスを作れるようになっていたのでここまで引っ張ってきたが、決められなかったので2トップにしてという決断になったのだろう。
尹晶煥は山内をFWで起用しているので2トップなら福満ではなく山内となる。
山内は投入直後にサイドチェンジの形を狙うがミスとなりカウンター。パトリックに走られるがシュートは枠外。パトリックのこういうシーンは甲府時代からよく見る。
そしてさらにその1分後には再びカウンターから稲垣にシュートを打たれるがこれまキム・ジンヒョンがスーパーセーブ。追加点を許さなかった。
89分〜 |
終盤はセレッソはかなり前がかりになり、アディショナルタイムに清武がシュートを放つも林がセーブ、CKから片山、山口がシュートを放つも枠外となりそのまま試合終了。
0-1でサンフレッチェ広島に敗れた。
■その他
まんまと広島の術中にハマり敗れてしまうという試合になった。さすがに先制してからの戦い方は上手かった。それだけにセレッソとしては先制点を与えたくなかったし、たとえリード出来ていなくても0-0のまま進めることができれば、広島も決して戦い方の幅は広くないのでセレッソができることも増えたのだが。この試合はセレッソが勝てれば可能性がある残り10試合で首位との勝ち点差が10に持っていけるということもあったが、前節広島は川崎に采配ミス的な面もある形で敗れていたので、ここで連敗してしまうと通常の1敗以上のダメージがある敗戦となる可能性も高かった。
それだけにセレッソはどうしても勝ちたかった試合なのだが、0-1とはいえ思い通りの展開で勝てた広島は逆に通常の1勝に大きな意味がある試合にしてしまった。
もちろん最後まで何があるかわからないし、特に広島は両SBとパトリックの代えが全くいない状態で戦っていることを考える、もしこれらの選手に何かが起こると一気にペースを落とす可能性もある。しかし、もしそういうアクシデントがなければ、この試合は広島にとって今季の大きなポイントとなる試合となったかもしれない。
セレッソは、リーグ戦次節の浦和戦はそのまま行く可能性が高いとは思うが、前線の怪我人も全体トレーニングに復帰し始めていることを考えるとルヴァンカップから4バックに戻す可能性もありそうか。
よく読ませてもらっています。
返信削除セレッソとしては今期のリーグタイトルはほぼ無理になってしまいましたが、
今後はルヴァンに主力を移してリーグは来期を見据えて戦うことになるのか、
それとも昨年と同じようにこのままリーグで主力を使っていくのか。
そのあたりの判断が気になるところです。
コメントありがとうございます。
削除ルヴァンカップは決勝以外国際Aマッチウィークにやるので、メンバー的にどうこうってのは無いような気がします。