スタジアム | 札幌ドーム | 主審 | 村上 伸次 |
入場者数 | 21,614人 | 副審 | 三原 純、鈴木 規志 |
天候 / 気温 / 湿度 | 屋内 / 24.1℃ / 71% | 第4の審判員 | 藤井 陽一 |
メンバー
スターティングメンバー |
- 監督
- ペトロヴィッチ
- 監督
- 尹 晶煥
試合経過
- 90'
-
86'
- 82'
-
73'
-
62'
-
7'
- 6'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 8 | 14 | 12 | 15 |
CK | 5 | 7 | 5 | 5 |
PK | 0 | 0 | 0 | 0 |
シュート | 8 | 18 | 12 | 11 |
警告/退場 | 1/0 | 0/0 | 2/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
北海道コンサドーレ札幌 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督セレッソ大阪 尹晶煥監督
北海道コンサドーレ札幌 ク・ソンユン選手、宮澤選手、石川選手
北海道コンサドーレ札幌 三好選手、チャナティップ選手(Jリーグ公式)
セレッソ大阪 マテイ・ヨニッチ選手、木本選手、オスマル選手、杉本選手
ミッドウィークにスルガ銀行チャンピオンシップがあっての明治安田生命J1リーグ第21節。敵地札幌ドームでのセレッソ大阪対北海道コンサドーレ札幌の一戦は1-1の引き分け。セレッソ大阪はこれで中断期間あけから7試合勝利なしとなった。
■メンバー
北海道コンサドーレ札幌の先発メンバーだが、ペトロヴィッチ監督はメンバーを固定する傾向が強いためこの日もいつもの面々が並ぶが、左CBの福森が内転筋を痛めているということでベンチ外。代わりに入るのは同じく左利きの石川。石川は福森がいない時やボランチで出場する時にはかならず代わりに入る選手で、バックアッパーとしてはかなりペトロヴィッチ監督から信頼を置かれている。一方のセレッソ大阪のメンバーだが、ミッドウィークのスルガ銀行チャンピオンシップでつかった3-4-2-1をこの試合でも引き続き採用。1トップに杉本、シャドゥには高木と清武、ボランチには山口とソウザ、左右WBには丸橋と松田、3バックにはオスマル、ヨニッチ、木本が入る。リーグ戦でスタートから3バックを採用するのは尹晶煥監督就任後初めて。スルガ銀行チャンピオンシップで手応えを感じたこともあるだろうが、前線の柿谷と山村が再び怪我で離脱してしまったことも3バックを採用した大きな要因だろう。
■3-4-2-1を採用したセレッソ
マッチアップ |
ミシャシステムは4バックに対して1トップ2シャドゥ+WBの5枚をぶつけてくる形なので3-4-2-1だとWBが下がることで最終ラインでミスマッチは生まれにくい。マッチアップとしては図の様になる。この形は対ミシャシステムとしてはこれまで最もよく使われた対策方法の1つだ。
そして、今季の札幌のミシャシステムは前回対戦時など3バックのままビルドアップを行うことも多いのだが、この日のセレッソは3-4-2-1、つまり3バックのままだとセレッソの前線と同数になるということで札幌は宮澤が下がって4バックになる4-1-5でビルドアップを行っていた。
■両チームがゴールを奪い合った序盤
この試合は前半立ち上がりに両チームがゴールを奪いあった。先制したのはセレッソ。6分に丸橋のCKからヨニッチが今季初ゴールを決め先制する。
今季はなかなか決められていなかったヨニッチだったがボスロイド、キム・ミンテの前に入り見事にニアで合わせた形だ。
そしてこのCKを獲得した形も5バックからのカウンターとしては理想的な流れ。自陣でボールを奪い丸橋が相手のファーストディフェンスをかわして持ち出したことで札幌はリトリートするしかなくなるのだが、それより前に杉本へのクサビのパスを入れ、そこから杉本が左サイドで3バックの脇を抜け出す高木にスルーパス。ここでフィニッシュには行けなかったが右サイドの松田に展開しCKを奪った。
しかしそのわずか1分後の7分にチャナティップのゴールで札幌が同点に追いつく。
チャナティップのシュートはスーパーで、キム・ジンヒョンも準備ができていなかったのか良い対応ができていなかった。ただ、そこまでの形は札幌の狙い通りのものだろう。
札幌の同点ゴール |
ミシャシステムではセットするとゴール前の最終局面以外は基本的に選手が自由に(勝手に)ポジションを動かすことはない。ポジションから動くことで相手を混乱させる効果はあるので動くことはもちろんあるが、その動き方にもルール(規制)が存在している。特に制限されているのが斜めの動きで、それはいわゆる5レーンと言われる5つに分けたレーンを移動することになるから。ミシャのやり方だとこのレーンにそれぞれ1人ずつ配置されていることが重要なので、安易に斜めに動いてしまうとある1つのレーンでは人がいなくなり、違うレーンには2人いるということが起こり得るから。
そしてこうして人が斜めに動かない分ボールは徹底的に斜めに動かそうとする。
でこの場面に話を戻すと、石川が上がり、菅が中に入り、チャナティップが下がるとでそれぞれが最初のポジションから動いているのだが全てミシャシステムの根幹となるポジショニングの原則は変えることなくポジションチェンジが行われている。そしてボールの動きは全て斜めにレーンを移動。パスは1つずつ隣のレーンに動いただけなので大きく動かしたわけではないが、ミシャシステムでやりたい形そのものだといえる。
そしてこの場面、一見すると単にチャナティップに対して山口が戻りきれなかったとも見えるが、先程書いたように左サイドの3人は1つずつ時計回りにポジションを動かしている。なのでもともとはチャナティップと対峙していたのは山口ではなく右CBの木本だった。しかし木本の前には菅が来て、もともと菅と対峙していた松田の前には石川が来た。なので木本は対峙していたチャナティップについていくことができず、結果的に山口が戻りきれなかった様に見えたという方が正確なのではないだろうか。
■ボールを奪いに行った時
セレッソの守備 |
そしてこの試合ではこの5バックで5-4-1になりリトリートするのではなく、ラインを高くし前線からボールを奪いに行こうという守備を行っていた。
ミシャのチームなのでボールを回させると厄介だという判断もあったのだろう。そしてそもそも普段の4-4-2でミシャシステムに対抗する時は前線からハイプレスを仕掛けてきたので、前線からボールを奪いに行くのは自然な判断だったのだろう。
杉本、清武、高木の3人でCB3人に宮澤が加わった4バックに対してアプローチをかけ、それにボランチやDFラインが連動していく。
しかしこの試合ではこの前線からボールを奪いに行く形が上手くいくこともあったが、全般的にみるとボランチとDFラインの間にスペースを作ってしまうことも多く、ここでチャナティップや三好にフリーでボールを持たれる場面もあった。言ってみれば札幌の同点ゴールの場面も、山口の後ろでチャナティップにボールを受けられているので状況的には近いかもしれない。
これまでの4-4-2の時は違う場面でボランチ裏を空けてしまうことはあっても、ボールを奪いに行った時に空けてしまう場面はそれほど無かった。しかしこの日そんな形が見られたのはおそらくシステムを変えた影響があったのではないかと思われる。
当然ながら5-4-1はボランチの選手からすると普段の4-4-2に比べると自分の前の選手が1人少ない。もちろんボールを奪いに行った時にも1枚少ない。となると奪いに行くには自分が出ていく必要がある。しかし後ろの選手は4バックの時のCBやSBと同じ様な感覚でプレーしている。
そうなるとボランチが前へ動く頻度が高い分、どうしてもその背後・間が広がってしまうのだろう。
ボランチが出ていくならDFラインの5枚もそれに合わせて押し上げたり、または下がる選手に対して普段以上についていかなければいけない。もしくはWBは普段のSBではないので前のスペースに対しては普段以上に出ていき、ボランチが動かなくても良い様にしなければならない。
それが、この試合が3バックでの2試合目。そしてそれほどトレーニングの時間も取れていないのだろう。いずれも徹底されていなかった。もしこの形を続けるのであればここは改善する必要がありそうだ。
■札幌とセレッソの違い
またこの試合ではセレッソと札幌が同じ3-4-2-1で戦ったことで攻撃面での両チームの違いがよりはっきりと出ていたんじゃないかと思う。先程、チャナティップの同点ゴールのところでも書いたが、札幌の戦い方ではゴール前の最終局面以外は選手の動き方に様々なルールがあって特に斜めの動きを制限。5つのレーンに1人ずつ配置されている形は原則崩さない。
ということはボールを受ける選手は受ける前から自分の右に何人いて左に何人いるということを把握できている。なのでどっちを向いてボールを受ければいいのか、またどこを狙うのかの判断が非常に速く行うことができる。
一方のセレッソにはそういったルールはほとんどない。
なので清武が左サイドまで来て高木の近くでプレーしたりもするし、そこにまた別の選手も絡んでくる。前線はかなり流動的だ。この流動性は尹晶煥だからというよりも、今のセレッソのルーツとなっている2010年からの3シャドゥ時代や、その前進の香川・乾の2シャドゥ時代からそう。というか当時はこの流動性こそが売りだった。
しかし流動的ということは、誰がどこにいるのかが一定していないということでもある。なのでどうしてもボールを持っている選手が味方を探さないといけない。なのでどうしても札幌に比べるとセレッソの方が攻撃にスムーズさが欠けるようなシーンが目立っていた。
とはいえ、札幌も前線の5人のポジショニングが決まっているため、セレッソが5バックでマッチアップをあわせた事でどうしても位置的な優位性を出しにくい。だからなのか、ボール保持して攻撃するというよりも守備ブロックを下げて攻撃はカウンター気味に行う場面が多かった。
それに対してセレッソは先に書いたボールを奪いに行った時の危うさはあったが、マッチアップがはっきりしているためオスマルや木本が三好やチャナティップがカウンターでボールをドリブルで運ぶプレーをかなり制限することができていた。
そしてさらにこの2人は攻撃時には基本的にフリーでボールを持てるので彼らを起点としてボールを保持。そこから流動的な攻撃の中でも味方を探す判断が非常に速い清武を中心にセレッソが札幌ゴール前に迫るという前半になっていた。
この後も繰り返すこととなるのだが、18分の丸橋のFKのこぼれ球拾った杉本がフリーでシュートを放った場面で決めることができていればもっと一気に試合は動いたのかもしれない。
■試合はうごかず
後半に入っても試合展開は変わらず。ハーフタイムコメントでペトロヴィッチ監督は前半のチームについて「少し下がりすぎ」だと言っていたが、だからといって前から奪いに行くという訳ではなく、基本的にはブロックを作ってカウンターを狙いたいという形だった。そんな中で48分、クイックリスタートから高木が完全に抜け出しGKと1対1の場面を迎えるが、ク・ソンユンがセーブ。決めきれなかった。
ということでここからも膠着した状態が続く。セレッソにしてもオスマルや木本が起点で清武を経由したり、ソウザがなにかできればチャンスになりそうなので交代をするにも選手の入れ替えぐらいしか手がない。一方の札幌も同じでできるとしても選手の入れ替えぐらい。
73分〜 |
選手の入れ替えを行う。
82分〜 |
するとその直後に、木本、田中裕介、清武が絡んで右サイドを突破。石川を引っ張り出しキム・ミンテとの間に木本が飛び出すもシュートは枠外。さらに85分には杉本の落としたボールを山口がミドルシュートを放つもク・ソンユンがセーブ。この2つはセレッソが流動的に攻めるからこそ作った絶好のチャンスだったがここも決まらなかった。
90分〜 |
一方セレッソは90分に木本に代え山下を投入。木本がいっぱいいっぱいの状態だったのでそのまま入れ替え。
この山下投入の直前には清武の個人技からオスマルも絡んで杉本が絶好のチャンスを迎えるもここでも枠外。
試合はこのまま1-1で終了。引き分けに終わった。
■その他
試合自体はチャンスの数なんかを考えると勝ってもおかしくない試合だったと言えるだろう。この日リーグ戦では初採用となった3-4-2-1はボール保持攻撃の精度やボランチの背後など攻守に渡って改善しないといけない部分も沢山あったし「攻守に圧倒した」というわけではないが、この試合だけを考えると勝つ可能性もかなりある試合でもあった。
ただゴールチャンスをことごとく決められなかったので引き分け。
こういう試合で勝てたらかなり楽になるのだが・・・
次は相手は4-4-2の清水。離脱している選手がどれだけ戻ってこれるかにもよるだろうが、4-4-2に戻すのか。それとも3-4-2-1を続けるのか。気になるところだ。
いつも楽しく拝見しております。現地で観戦してきました。6番とバックラインの間が開いていて気になったのですがレビューを読んでそうだったのかと。同点でしたが選手はバンバンシュートしてくれたので個人的には今後が楽しみです。Akiさん、これからも頑張ってください。
返信削除コメントありがとうございます。
削除セレッソは形を変えた事もあってこれまでと違った課題も出ていた試合でした。
ありがとうございます。