スタジアム | 神戸総合運動公園ユニバー記念競技場 | 主審 | 大坪 博和 |
入場者数 | 7,414人 | 副審 | 大塚 晴弘、赤阪 修 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 5℃ / 37% | 第4の審判員 | 吉田 哲朗 |
メンバー
- 監督
- フアン マヌエル リージョ
- 監督
- ロティーナ
全ての試合において 21 歳以下の選手を 1 名以上先発に含める。※1
※1 但し、以下の場合は出場義務を負わない。
・対象選手1名以上が日本代表試合または日本代表の合宿その他の活動(ただしA 代表またはU19以上のカテゴリーの日本代表に限る)に招集され、試合日に不在の場合。
・対象選手が試合エントリー後の怪我等のやむを得ない理由により出場ができない場合。
※1 但し、以下の場合は出場義務を負わない。
・対象選手1名以上が日本代表試合または日本代表の合宿その他の活動(ただしA 代表またはU19以上のカテゴリーの日本代表に限る)に招集され、試合日に不在の場合。
・対象選手が試合エントリー後の怪我等のやむを得ない理由により出場ができない場合。
<監督・選手コメント>
ヴィッセル神戸 ファン・マヌエル・リージョ監督セレッソ大阪 ロティーナ監督
ヴィッセル神戸 宮選手、安井選手
セレッソ大阪 西川選手、藤田選手、瀬古選手
ルヴァンカップグループステージ第2節。セレッソ大阪は敵地神戸総合運動公園ユニバー記念競技場でヴィッセル神戸と対戦し0-0の引き分け。リーグ戦第2節から続く連敗は3で止めたが勝利とまではいかなかった。
またこの試合で3月5日に来年の加入内定が発表された桐光学園高校2年生西川潤君が特別指定選手としてJリーグデビューを飾った。
■メンバー
ヴィッセル神戸の先発メンバーは、リーグ戦前節から11人全員を入れ替え。GKには前川、最終ラインは右から藤谷、渡部、宮、橋本と並び、アンカーには那須。インサイドハーフに安井と三原。3トップは右に左利きの田中順也、左に右利きの小川あ入りCFにはウェリントンが起用されている。またこのメンバーはルヴァンカップグループステージの前節、名古屋戦と比べると小林友希から宮、郷家から安井と2人を入れ替え。さらに前回対戦となるリーグ開幕戦に出場していたのは三原の1人だけとなっている。
そして、ルヴァンカップ前節から入れ替わりでベンチ外となった郷家は、キックオフ前に松葉杖をついている姿が映像で映し出されている。
一方、セレッソ大阪の先発メンバーは、リーグ戦前節から9人を入れ替え。GKには今季初出場となる圍。3バックには山下、ヨニッチ、瀬古が入り、WBには水沼と舩木。ボランチには藤田とソウザが並び、1トップにはブルーノ・メンデス、シャドウにが福満ち田中亜土夢が入っている。
またこのメンバーはルヴァンカップグループステージの前節、大分戦から比べると6人を入れ替え。さらに前回対戦となるリーグ開幕戦でも先発出場していたのは、山下、ヨニッチ、水沼、舩木、ソウザの5人となる。
■那須のポジショニング
ロティーナ監督は「前半はヴィッセル神戸がゲームを支配して、我々は自陣から出て行くのが難しい展開でした。」と語り、一方のリージョ監督は「前半は中盤でコントロールされているゲームでしたが…」と両者正反対のことを語っているが、これはどちらも前半の中でも指している時間帯が異なるからだろう。リージョ監督のコメントで「23分ぐらいから」という言葉が出ていることと合わせると、前半の前半はセレッソ、前半の後半は神戸がペースを握っていた。
そしてこの前半の中で前半の前半と前半の後半で2つの流れができたきっかけは、ウェリントンが痛めた時にリージョ監督が呼んで指示を出したという那須のポジショニングだったのではないだろうか。
マッチアップ |
このミスマッチに対しボールを持っていないチームがボールを奪い返すには、ミスマッチに対して選手の配置を移動させて高い位置からボールを奪いに行くか、もしくは自陣でスペースをコントロールする形で網を張りそこでボールを奪うか。大きく分けるとその2つのやり方がある。
セレッソはこれまでの試合でとってきたのは後者。おそらくこの試合でも、キックオフ直後こそDFラインにアプローチをかける場面が見られたが、基本プランとしてはこれまでの試合同様だったのではないだろうか。スペースを管理する守備に関してはかなり高い精度でできるようになっているからだ。
CBの間に落ちる那須 |
しかし、そもそも4-3-3と3-4-2-1、セレッソの1トップに対して神戸は2CBなので那須が下がる意味は何も無い。さらにセレッソは網をはる守備がメインである。
そして、那須がCBの間に下がるということは、CBは開き、SBは上がり、両WGは中に入る。つまり那須が下がることをきっかけに4-3-3から3-4-2-1へと形を変えるということである。
神戸は4-3-3で得ていたミスマッチを放棄しわざわざマッチアップをあわせる形にしてしまっていたのだ。
これによりセレッソは神戸のボール保持を無理なく中盤で阻害できるようになった。
神戸はごちゃごちゃっとした中から入れ替わるプレーやカウンターのカウンターみたいな形で数度セレッソゴール前までボールを運ぶこともあったが、ほとんどの場面でボール前進に苦しんでいた。
セレッソのボール保持に対する神戸の4-1-4-1 |
その結果セレッソはフリーになりやすい山下や瀬古を起点としたボール回しで、9分のブルーノ・メンデスの落としから田中亜土夢がボックス内に侵入したプレーや、12分の舩木のワンタッチでの折返しなどいくつか意図した形で神戸ゴール近くにボールを運ぶことができていた。
サッカーは相手を見ながらプレーをしなければいけないという代表的な例だろう。
■那須のポジショニング改
那須のポジショニングが修正されたのが、28分にウェリントンが痛めゲームが中断したタイミング以降。ウェリントンが痛めた時にリージョ監督が那須と宮を呼び寄せ、特に那須に対して身振り手振りを加えて丁寧に説明していた。これ以降、那須は安易に最終ラインに下がるプレーを止める。
CBの間に落ちなくなった那須 |
しかし30分に、自陣で宮と橋本がボールを繋ぐことで角度を変え、ソウザが浮いている那須に少し近づいたタイミングで宮からソウザの裏にいる三原へと縦パスを出された。
このプレーをきっかけにセレッソは、ブルーノ・メンデスが何度も前に出るように要求していたが、2シャドウが徐々に前にアプローチに出られなくなる。
また那須が中盤に残ることでインサイドハーフの安井や三原が下がってくる動きにも効果がでてきた。
その結果、セレッソはシャドウも自陣に下がりWBが完全に低い位置に押し込められ、5-4-1でブロックを作る場面が増える。
神戸のボール保持 |
起点になっていたのはセレッソの選手がアプローチをかけきれないCBの特に宮。
この選手はミスもあるが、左利きでパスの能力は高い。
神戸は例えば左サイドだと宮の前に橋本、小川がいてその内側に安井がいる。なので宮から橋本、那須という2つのパスコースが常にある状態で、中を閉めれば橋本が常にフリー、外にスライドすれば那須を経由して逆サイドという形が準備されている。そこでここでシャドウとボランチが人に引っ張られて中にスペースを空けるとウェリントンへ一発の縦パスがある。
セレッソはこれまでの試合同様に中を閉めるブロックは徹底できていたので簡単に縦パスを入れられることはなかったが、この形でかなりサイドから押し込まれることになった。
またこれは右サイドからだが33分に藤谷がクロスを入れた様に、どうしてもSBに対してはアプローチが遅れるのでアーリークロスを入れられ危ない場面も作られるようになる。
そして押し込まれると起こってくるのが1トップの孤立。
もちろんブルーノ・メンデスのポジショニングにも改善の余地があったりするのだろうが、これはリージョ監督が2011年にフットボリスタのインタビューでバルセロナについて語っていた
「ボールを支配し、君を自陣に押し込んで、従属させると何が起こると思う? 君の選手のポジションは滅茶苦茶にされる。多くの人がバルセロナのボール奪取能力を称賛するが、あれはプレスによって生まれているのではない。プレスは二次的なものだ。その前に散々従属させられたせいで、ボールを奪った時は全員がポジションを失っている。ほとんどの選手が自陣で守備をさせられ、長い時間自分たちのゴールを見ながらプレーさせられて、味方を探すのにボールタッチを2度しなくてはならず、しかも相手ゴールははるか彼方だ。こんな状態でどうやってカウンターに出る?
たとえるとこういうことだよ。君の家を大幅に模様替えして、両目を覆った状態で帰宅させられたとする。サロンがトイレで、台所とプールの位置が逆……あちこち体をぶつけている時にボールを持たされても、整理整頓する時間はない。しかも一団となって攻め込んでいるバルセロナの選手たちにとっては、奪われたボールがすぐ近くにある状態だ。攻撃と守備は別々に存在するものではない。それらは関わり合って一体となっている。ボールをすぐに奪い返せたのは、ボールを持っている時にいいプレーをしていたから。その、プレーを連動したものと捉えている点で、バルセロナは世界一のチームであると言える。彼らほど攻守を一つのプレーとして理解しているチームはない。そう理解することが、選手たちのプレーの解釈を深めている」
という内容とリンクしている。
もちろん神戸がそこまでボール保持で圧倒していた訳ではないが、狙い通りの形でボールが保持できるようになり、セレッソの選手の前線に出ていくためのポジショニングが崩されたことによって、「自陣から出て行くのが難しい展開」となった。
しかし、今季のセレッソはこの様な状況でも簡単にスペースの管理を間違うことが無い。
これは昨季から積み上げてきた部分でもあるかもしれないし、ロティーナ監督がより徹底させた部分でもあるかもしれない。
なので、ボールは保持され、「自陣から出て行くのが難しい展開」となったが、それほど大きなチャンスを作らせることなく、前半を0-0で折り返す。
■ロティーナの修正
前半の後半は神戸のボール保持に従属させられる形になっていたセレッソだったが、後半になると展開は一転。再びセレッソがペースを握ることとなる。WBが前にでてアプローチをかける |
後半に入ると、前半の後半はフリーになっていた神戸のSBに対し、セレッソはアプローチをかけるのはWBだとはっきりさせ、3バックとボールと反対サイドのWBは4人でDFラインを組む様な形でスライド。つまりボールサイドのWBを前に出した4-4-2の様な形で対応するようになる。
神戸は前半の前半で宮と橋本の左サイドからボールを保持して攻め込もうとしていたので、この図では右WBの水沼が橋本に対してアプローチをかけているが、逆サイドでも同様。藤谷に対して舩木が1つ前に出て、瀬古、ヨニッチ、山下、水沼で左サイドにスライドする形を取るようになる。
セレッソに陣形を崩される神戸 |
そしてセレッソのWBがSH化するこの修正は、ボールサイドのWBは前半の前半以上に高いポジション取りができるようになり、神戸のSBとSHをより押し込むことに。さらにボールサイドの山下はSBの様により高い位置でプレーできる様になっていた。
これにより、神戸の4-1-4-1の2列目のラインはインサイドの安井と三原だけが前にでていて小川と田中順也は低い位置にというアンバランスな陣形に。その結果那須の両脇にはぽっかりスペースが生まれていた。
その象徴的なシーンが55分の場面で、低い位置でボールを持つソウザに対して神戸のインサイドハーフが同時に前に。その結果2人の間を通したパスが那須の脇にいる福満へ。さらに福満からブルーノ・メンデス縦パスという場面は、最終的にブルーノ・メンデスからのパスがオフサイドになったが、神戸は4-1-4-1の4-1-4が揃っているにもかかわらずセレッソは中央を割ることに成功。つまりセレッソはボール保持で神戸の陣形を従属させることに成功していた。
となると、前半の後半にセレッソに起こっていた様な状況が、今度は神戸に訪れる。つまりウェリントンは孤立し、今度は神戸が「自陣から出て行くのが難しい展開」になっていた。
そうは言ってもウェリントンといえば、J2時代の福岡がウェリントン大作戦で昇格したように、高さと強さを兼ね備えた起点になれる選手である。
しかしこの試合ではヨニッチ、山下だけでなく瀬古もウェリントンを完封。高さでも強さでも五分以上の戦いを見せたことで前線に起点を作らせなかった。
このセレッソ3バックの強さと高さは、後半にセレッソがWBを前に出すことができた要因でもある。ウェリントンは自分のストロングポイントは高さと強さだという自覚があるので、味方がパスを繋いでいる中でもロングボールに対応できるようにファー待ちをすることが多い。DFラインがスライドした時にファー待ちをしていれば高さの無いSBと競ることができるからだ。
しかしセレッソは3バック。なのでこウェリントンのファー待ちに対して3バックの両サイドに入る山下と瀬古が対応できる。そしてこの勝負のほとんどで競り勝っていた。
神戸に裏抜けを狙う選手がいなかったこともあったが、ロングボールでも優位にたっていたのはセレッソ。だからこそWBも自信を持ってSBへとアプローチをかけることができたのである。
■西川潤くんデビュー
57分〜 |
うってつけの状況での投入である。
西川くんは投入直後は少し硬さが見られたが、時間の経過と共に徐々に本領を発揮。
68分には水沼とのワンツーで右サイドを崩すと右足でシュート。惜しくも前川のファインセーブに合うが、ビッグチャンスを作ってみせた。
このワンツーシーンでもそうだったが、西川くんを上手くサポートしていたのが水沼。
常に高い位置にポジションをとり、水沼が中へ入り西川くんをサイドに出すなどボールを受けやすい状況を上手く作っていた。
77分〜 |
セレッソも同じ77分にブルーノ・メンデスに代え都倉を投入する。
神戸はボールを持てる選手を入れたことで何度かはカウンター気味にボールを運べる様になり、三田投入の直前には藤谷のクロスから田中順也が頭で合わせるが圍がなんとかセーブした。
88分〜 |
試合は少しずつオープンになり最後まで両チームが攻め合うもそのまま0-0で終了。スコアレスドローで終わった。
■その他
0-0で終えたが試合内容としてはリーグ戦も含めこれまででもっとも良かったのではないだろうか。アタッキングサードはまだこれからという状態だろうが、可能性を感じさせるものだったと思う。戦い方の部分でもう1つ注目したいのが後半の修正。これまでのボール非保持ではスペースをどうマネージメントするかという部分が多かったので相手選手へのアプローチという部分はほとんど見られなかった。
しかしこの試合で流れを取り戻したのはアプローチのかけ方を徹底したこと。もちろん相手もあってのことだが、ボール非保持では新たな段階に入ったことを感じさせた。
そしてこの試合でデビューした西川くん。
2018年のインターハイで桐光学園高校を準優勝に導き、同年のAFCU-16選手権では、2006年の柿谷、2012年の杉本に続くMVPを獲得した高校ナンバーワンアタッカーのJリーグデビュー戦は十分可能性を感じさせるものだった。
おそらく今後もトップチームで出場する可能性は高いだろう。
またもう1人どうしても触れておきたいのが、ルヴァンカップでは2試合続けての先発フル出場となった瀬古。
ウェリントンとも互角以上の戦いを見せ、さらに素晴らしいフィードも披露。十分J1のリーグ戦で使えるレベルに達したと言える。リーグ戦で先発する日もそれほど遠くはないだろう。
※今回の「ロティーナの発言を読み解こう」はお休みとなります
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