スタジアム | ヤンマースタジアム長居 | 主審 | 小屋 幸栄 |
入場者数 | 12,044人 | 副審 | 山際 将史、鈴木 規志 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 13.6℃ / 49% | 第4の審判員 | 村井 良輔 |
メンバー
- 監督
- ロティーナ
- 監督
- 城福 浩
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 ロティーナ監督サンフレッチェ広島 城福浩監督
セレッソ大阪 柿谷選手、清武選手、奥埜選手
サンフレッチェ広島 荒木選手(Jリーグ公式)
明治安田生命J1リーグ第3節。セレッソ大阪が本拠地ヤンマースタジアム長居にサンフレッチェ広島を迎えての一戦は前半のミスからの失点が重くのしかかりそのまま0-1で敗戦。連敗を喫することになった。
■メンバー
セレッソ大阪の先発メンバーは、前節から2人、ミッドウィークのルヴァンカップからは7人を入れ替え。前節は都倉の1トップに柿谷、清武のシャドゥという組み合わせだったが、今節は柿谷の1トップに清武とソウザのシャドゥ。ソウザが前に出た分、ボランチにはデサバト。また右WBにはリーグ戦今季初先発および、今季初本来のポジションでの出場となる松田。さらに3バックの右には片山がリーグ戦今季初出場、初先発となっている。なのでミッドウィークのルヴァンカップから引き続き先発となったのは、デサバト、松田、片山、木本の4人。松田、片山の2人については、ルヴァンカップで早めに下げたのはこのリーグ戦を睨んでのことだったのだろう
一方のサンフレッチェ広島の先発メンバーは前節から1人、ミッドウィークのACLからは10人を入れ替え。前節から入れ替わりの1人であり、ACLから引き続き先発メンバー入りとなったのは1トップのドウグラス・ヴィエイラ。昨季はロティーナ率いる東京Vでプレーしていた選手である。また開幕戦の途中から左右のポジションを入れ替えたシャドゥは、今節も左野津田、右柴崎という形になっている。
■順足WBとソウザのシャドゥ
リーグ戦では左利きの舩木を右WBで、ルヴァンカップでは右利きの松田を左WBで、とここまでの公式戦3試合では必ず片方のWBは逆足サイド(利き足と反対のサイド)となる選手を起用してきたセレッソ。この試合では昨季までのレギュラーだった右利きの松田と左利きの丸橋が今季初めて同時に先発メンバーに名を連ね、2人とも順足サイド(利き足と同じサイド)で起用された。
そしてシャドゥには試合途中に前線に出ることはあったこれまでボランチで起用されてきたソウザ。これまでとは少し並びを変えてきた狙いは立ち上がりからいくつか見られた。
人へアプローチかける意識が強い広島 |
セレッソの狙い |
またこれまでの試合でも書いたように逆足のWBはそこを基点に背後を狙うという形になっていたが、この試合でのWBは順足。なので彼らは基点というよりも前に出て両WBを下げるのが狙い。なのでソウザや清武が丸橋や松田の後ろにポジションを取る場面も見られた。
ソウザと清武に |
アタッキングサードを攻略するにはCBをどう動かすかということがあり、そのやり方の1つとして定着しているのがSBとCBの間を突くいわゆるハーフスペース攻略となっているが、対5バックの時はそもそも3バックの真ん中の選手は動かない。なので3バックの両サイドの選手をどう動かすかということになる。順足WBとソウザ清武のシャドゥという形はそこを狙った形だったのだろうというのは立ち上がりからのいくつかのプレーで感じられた。
■誤算に繋がったミスからの失点
しかしここでアクシデントが発生する。19分、デサバトが後ろに下げたパスをヨニッチはキム・ジンヒョンに蹴らせようとしたのかスルー。しかしキム・ジンヒョンはヨニッチからのパスを受けようとポジションを移動。そこをサロモンソンに詰められてしまい、最後は混戦の中でサロモンソンに決められた。
連携ミスといえば連携ミス。そしてチームとしてどう考えるかはわからないが、個人的にはヨニッチのミスだと思う。
今のチームは後ろからつなぐと決めているのであれば、ヨニッチはスルーせずにコントロールスべきだろう。
ヨニッチ自身もボールコントロールにそれほど自信がないからか、例えばゆるいボールになったとしてもキム・ジンヒョンが確実にキャッチできるようにヘディングでバックパスをしたりする場面も見られる。しかしそこからボールを繋ぐのであれば、ある程度スピードのあるボールを出すことで時間を与えてあげた方が受けた選手は次のプレーを選択しやすい。もちろん状況にもよるが、GKからボールを繋ぐということは、GKもフィールドの選手の様にプレーするということなので改善して欲しいところだ。
とはいえ、この失点はある種仕方ない。今の段階だとミスはある。流川風にいうなら「税金みてーなもん」である。なのでこの失点自体は誤算や想定外というところまでではない。
誤算や想定外だったのはその後の広島のプレー。
前半のまだ19分というかなり早い時間帯だったが、ここから広島はボールを奪いに行くプレーは止め、自陣で5-4-1のブロックを作る形に変えた。
ロティーナがどう考えていたのかはわからないが、個人的にはこれほど早い時間帯からここまで徹底してくるのは予想外だった。後になって考えると、半年以上未勝利で今季初のリードだからありえる話しなのだが。
■対5-4-1
5-4-1でブロックを作る広島 |
こうなるとソウザは結構難しい。
ソウザは前を向いた時に威力を発揮する選手である。開幕戦でシャドウにポジションを移したときも書いたが前を向いてスペースがあると絶大な力を発揮する。
しかし広島はまずスペースを埋めるのでどうしてもボールを貰う時は後ろ向き。さらに間で受けた時は両シャドウに対しては野上と佐々木は迎撃気味にアプローチをかけてくるので、ほとんど良さが発揮できない状況となる。
また、これは清武も合わせてだが、3バックから縦パスが入るタイミングもワンテンポ遅く後ろからのアプローチで潰されてしまう場面も多数。
シャドウに3バックのサイドがアプローチに来るということは、縦パスのタイミングさえ合えばフリック一発で最終ラインを突破できるチャンスでもある。それを狙おうというプレーも全く無いわけではなかったが、縦パスのタイミングがワンテンポ遅く回数を重ねることができなかった。動き自体はできているので、このあたりはまだ認知の問題というところだろう。
そして、そうなるとどうしてもシャドウの2人ともがブロックの外に下がって受けるという形が増えてしまう。
逆の立場で考えるとよく分かるが、ブロックの外側でボールを動かされるだけだと全く怖くはない。
そしてさらに時間の経過と共に、今度はボールを失った時、相手ボール時にソウザはポジションに戻れなかったり、ボールを奪った後のポジションに速く移動しすぎたりしてボランチ2枚がサイドに引き出される場面も見られるようになる。
57分〜 |
■後半の修正
ソウザから都倉への交代前から見えた部分も多いが、後半のセレッソは特にボール保持時にいくつか前半からの修正が見られた。後半の修正 |
そして2つ目がWBのポジションが高めになったこと。
前半は最終ラインでのボールを動かしている時は通常の高さにいることも多かった丸橋、松田のWBは後半に入ると最前線で相手の最終ラインの高さにポジションを取る回数が明らかに増える。
この1つ目と2つ目は、木本と片山との関係が整理されたからこそWBが高い位置を取れる様になったともいえる部分で、その中でも特に右サイド、片山と松田の関係はかなり良くなっていた。
さらに3つ目は都倉はあまり下がってくる動きをせず彼も広島の最終ラインと同じ高さにポジションをとった。
この修正で前半に比べるとより相手を動かすような形を作ることができるようになり、セレッソの攻撃は活性化する。
その中で見事だったのは54分の松田が裏抜けをしたプレーで、この時間帯はまだソウザの交代前だったのだが、ヨニッチがボールを持った時に清武が下がってボールを受ける動きを見せると、それに対して佐々木がついていく。そのタイミングで松田が大外から斜め内側に向かって裏抜け。ここにヨニッチからボールが出た。
これこそが最初にも書いた順足WBを起用した狙いのプレー。清武の動きで佐々木を動かしたことと、松田の裏抜けが見事にリンクした形である。
60分〜 |
これで3バックの中央にいた吉野がボランチへ移動し、ボランチの川辺がシャドウへと移動する。
63分〜 |
おそらく高木は都倉の近くでプレーさせたいという狙いがあったんだろう。そして序盤はそういったポジションをとっていた。
がしかし、徐々に丸橋が大外レーンでボールを持った時にいつもと同じ様に大外レーンの丸橋の前へと出てきてしまう。後半の立ち上がりに関係がよくなっていた大外レーンのポジショニングが再び悪くなっていった。
これは前回までのの逆足WBのところでも書いたが、大外レーンで縦に入る動きは逆足WBなら有効である。高木本人が中から外へ移動することで相手も連れて行く。となるとカットインのスペースができる。
しかしこの試合では順足。高木が敵を連れて前に出ていく動きは単純に丸橋のスペースを潰しているだけでしかない。昨季から丸橋と高木はなかなか合わないという声も見られたが、原因ははこれだ。
74分〜 |
高木投入でも思ったように試合を動かせなかったセレッソは、74分に奥埜に代えて水沼を投入。清武がボランチに回り、水沼は右SHへ入る。
守備面ではもちろん問題はあるのだろうが、この時間になると広島はほぼ守備一辺倒。ドリブルでボールを運べてパスを出せる清武がボランチに入ると一気に押し込むことができる。
しかし、セレッソはこれでゴール近くにまでボールが運ぶことができるようになったのだが決定的な場面までは至らない。
82分〜 |
「広島から清水に期限付き移籍から完全移籍していた清水が、さらにその後清水から甲府への期限付きを経て、今季は清水から広島への期限付きで広島に戻ってきている。」
試合終盤には、何故かボランチに入った吉野が突然思いきり清武に食いつき、そのスペースを使って一気に運ばれ、ペナルティエリア近くでのFKにつながるという、もしこれでセレッソが同点に追いついていたら罰金ものでは済まないぐらいの不用意なプレーをしたが、丸橋が蹴ったこのFKは残念ながら枠外。
試合はそのまま終了となり0-1でセレッソ大阪は敗戦。
広島は半年以上ぶりにリーグ戦で勝利した。
■ロティーナの発言を読み解こう
前回に引き続きロティーナの試合後の会見で言っていた言葉に注目してみる。今回のコメントは
「前半は拮抗した試合だったと思います。我々はボールを持つ時間もありました。その中で、ボールを持っているだけで、深さが全くなかった。そのことによって、チャンスを作れなかった。
後半は、より深さをもってプレーすることを要求しました。選手を替え、システムを変え、より深さを持ってプレーすることを目指しました。相手のエリアに何度も入っていったのですが、そこでゴールを奪えずに負けてしまったという試合でした。今日の自分たちがやったサッカーを考えると、ふさわしくない結果だったと思います」
その中で取り上げたいのは「深さ」。
この深さについては、一応ここまでの内容で散りばめていたつもりなのだが、試合前のプランとしては広島の奪いに来る動きと順足WB+柿谷で広島の布陣を縦に間延びさせよう、その間延びした間でソウザと清武をプレーさせようと考えていたのではないだろうか。
しかし、ミスからの失点で広島は奪いに来なくなる。その結果相手を引き出せない。そしてボールを受けるためにシャドウが下がってきても、3バックの両サイドは十分迎撃できる距離にいるので潰されてしまう。
これが、清武のコメントの「1人が1人を見られる状況を作り出されている時点で、ポジショナルサッカーとしてはうまくいっていないと思う。」や「僕も、今日はセンターバックからパスをもらっても、(相手に)見られていたので潰されるシーンが多々あった。」
という部分だ。
2つめの清武のコメントは「確かに深さは大事だと思うけど…」という形で始まっているので一見するとロティーナと反対のことを言っているようだが、実は同じ状況のことを言っている。
そして後半に改善できたというのも本文中に書いたとおり。
縦に間延びさせようというのは、開幕戦でリージョがやったポドルスキとビジャがサイドで高い位置に出ることでセレッソのDFライン5枚を押し込んできたというものに近い。後半は場合は順足WB+柿谷・都倉の3人でDFラインの5人を押し込むことに成功。すると相手が間延びする。
相手のボランチは手前にボランチ背後にシャドウという清武のいう「1人が1人を見られる状況」ではなくなる。54分の松田が裏抜けをした場面も、佐々木にとっては前に出れば松田に背後を狙われ、出なければ清武に受けられるという「1人が1人を見られる状況」ではない形を作ることができるのだ。
結果的には負けだし、しかも無得点。そして連敗ということで選手たちも少し落ち込んでいるかもしれない。90分間広島にチャンスらしいチャンスを作らせなかったことを考えると、引き分けにはしておきたかった試合ではある。
しかし、そしてこれまでも書いてきたように、やろうとしていることができていないわけでもなく問題があるのが「状況判断」や「認知」のスピードの部分。これは確実に改善されてきている。
なので苦しい戦いが続いているようだが、そこまでネガティブに考える必要はないかなと思う。
あと、この試合でもミスから失点したことで自陣からボールを繋ぐことに対して拒否反応を示している方もいるかもしれないが、ここもブレずに継続していくべき部分だ。
もちろんこの自陣からボールを繋ぐという部分だけを別にすることはできないサッカーをしているということもあるが、これが身につくと試合運びが一気に楽になる。相手はボールを取りに行きたいが取りに行く事自体がリスクになるからだ。
徐々に改善が見えることを考えるとまだ第3節。さすがに諦めるのは早すぎる。
お疲れ様です。
返信削除数字以上に勝てる見込みが少なかったかなという印象です。
広島に関しては早々に点を取ることができたのでペースダウンが出来たのも大きいかと思います。実際セレッソも去年は遠征と過密日程があったので、同様の心理として1-0でも勝てばいいし、追いつかれた場合元のように高くからプレスをかけていくサッカーに戻せばいいということで、90分間でのチームとしてのペースダウンもしっかりできていた。
セレッソについては、守備面においてはヨニッチのミスがあったものの大崩れはなかった。ただ、ヨニッチ自体ロングフィードや空中戦、対人の強さはあるが、スピードとボールコントロールにはやはり難があり、仁川時代なども奪ったあとワンプレーでクリアすることも多く、ボールコントロールからポゼッションに繋げるサッカーはあまりしてきてないかと思われます。スピードのある選手と勝負し寄せられる中でコントロールして、となるとリスクが大きく今後も危なっかしい場面が続く気がします。
攻撃はファイナルサードの部分でどうしてもボックスへ入っていくアイデアが少ないかなと。ミドルサードまでと同じペースでポゼッションをして、相手が完全に引いてしまい、縦パスも入れどころがない状況、緩急も無い、左右に散らすか後ろに戻すばかり、どうやって最後点を取るのかが見えてこない印象です。現状去年の遺産のカウンター頼みかなと。
おっしゃるとおり、改善も見えている部分もあるのですが、そのスピード以上に去年から上積みのあるチームとの差が広がっていかないか、現在のセレッソの選手にポゼッションが向いているのかどうか、という点も気になっています。
今後の補強で監督が希望する選手を獲って間に合えば今シーズンは残留ラインをキープ、来シーズン勝負が現実的かなと。
ただコパアメリカで国内組が多く召集されることが予想されることを考えるとどこもあまり人は出したくないでしょうし補強も上手くいくかどうか。
監督交代論はさすがにまだまだ早いと思いますし忍耐の年になりそうですが、取りこぼしが多いと降格なんてことも無くはないと頭の片隅に置かないとかもですね。
コメントありがとうございます。
削除もちろん時間はかかるでしょうね。
とても分かりやすく
返信削除面白く読ませていただきました。
現地で見ていましたが
後半35分ぐらいから
そこまで我慢してつないでいたのに
ロングボールに切り替えたように
感じました。
時間のない中、仕方ないとはいえ
やはりまだ攻撃の形には
自信が持ててないということでしょうか?
それとも状況的に狙いがあったんでしょうか?
コメントありがとうございます。
削除攻撃の形がまだまだなのはロティーナも認めていると思いますよ。
そんな中でビハインドだったのでロングボールということだったのでしょう。
いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
返信削除開幕戦ではセレッソに負けた神戸ですが、前節の試合を見ると、凄く成熟しているように見えました。リージョのサッカーと、ロティーナの目指すサッカーは、基本的に似たものなのでしょうか?
選手個々人の能力が違いすぎて、とても手本にはならないと思うのですが(;^_^A
コメントありがとうございます。
削除違う部分もありそうですが似た部分もあると思います、漠然とした言い方になってしまいますが(笑)
またそのあたりも今季を追い続けることで明らかにしていきたいですね。