2019年11月25日月曜日

11/23 明治安田生命J1リーグ第32節 VS ヴィッセル神戸 @ ノエビアスタジアム神戸

スタジアムノエビアスタジアム神戸主審山本 雄大
入場者数23,744人副審平間 亮、熊谷 幸剛
天候 / 気温 / 湿度晴 / 19℃ / 59%第4の審判員上田 益也
ヴィッセル神戸神戸
 
セレッソ大阪C大阪
 
  • 監督
  • トルステン フィンク
 
  • 監督
  • ロティーナ

<監督・選手コメント>

ヴィッセル神戸 トルステン・フィンク監督
セレッソ大阪 ロティーナ監督

ヴィッセル神戸 山口選手、古橋選手
ヴィッセル神戸 古橋選手、アンドレス・イニエスタ選手、ルーカス・ポドルスキ選手(ヴィッセル神戸公式)
セレッソ大阪 藤田選手、木本選手、キム・ジンヒョン選手、清武選手、高木選手

明治安田生命J1リーグ第32節、セレッソ大阪が敵地ノエビアスタジアム神戸に乗り込んでのヴィッセル神戸との一戦は1-0でヴィッセル神戸が勝利。今季11敗目となる敗戦を喫した。

■メンバー

ヴィッセル神戸の先発メンバーは前節から2人入れ替え。外れたのは小川とジョアン・オマリの2人だがAマッチウィークにベルギー代表としてロシアとの試合にも出場していたフェルマーレンも引き続きベンチ外。ということで代わって入ったのはポドルスキとサンペールの2人。先発メンバー発表の時点では8月2日の第21節以来となる久々の4バック及び4-3-3かなと予想された。

一方のセレッソ大阪の先発メンバーは予想通り前節と同じ11人。大きな変化があったのはベンチの方で8月24日の第24節磐田戦を最後に怪我で離脱していた清武がベンチに復帰。
少し前からトレーニングに復帰している情報は出ていたが、ついにベンチに戻ってきた。

■3バックの中央にサンペールを起用した神戸

実際の両チームのフォーメーション
キックオフ前には4-3-3かな?とも思われた神戸の布陣だが、試合が始まってみるとサンペールのポジションは後ろ。3バックの中央に入っており、布陣は3-4-2-1だった。Jリーグ公式では布陣を4-3-3にしているが、この日の布陣を4-3-3だとしてしまうとこの試合で神戸がやろうとしていたことが見えてこないと思う。

プレビューでも書いたが神戸は第22節以降サンペールをアンカーに置いた3-1-4-2を基本の布陣にしていたが、第29節にFC東京戦が布陣を4-2-3-1にしトップ下に起用した高萩がアンカーのサンペールを徹底してマンツーマンで潰しにかかったことをきっかけに第30節からボランチに山口とイニエスタが並ぶ3-4-2-1に変える。イニエスタが怪我から復帰したこともありサンペールを狙われるなら外してしまおうという事だったのだろう。
しかしその3-4-2-1で前節の名古屋戦に敗戦。前節同様にフェルマーレン不在の中でセレッソに対してどう戦うかを考えた結果が3バックの中央にサンペールを入れるという形だった。
自陣のゴールに最も近い位置が立ち位置となる3バックの中央にまでマンツーマンでついてこられることはほぼ無い。

■サンペールをCBで起用するための工夫

とはいえサンペールはMF。CBとして計算できる守備力があるわけではない。MFとしてもスピードがあったり対人守備で強さを発揮できる選手でも無い。
なのでそれを踏まえた対策もあった。

おそらく神戸が対セレッソとして最も警戒していたのはビルドアップでボールを運ばれ、順にずらされていくことだったんだと思う。セレッソの攻撃の中でサンペールの弱点が表面化しやすいとすればその形だ。
そしてこの試合は3バック対4バック。3バック対4バックで起こるミスマッチは3バックを用いるときのメリットとして語られることも多いが、ミスマッチ自体は当然ながら逆にも起こる。そのミスマッチを上手く使えるのがセレッソ。なのでセレッソは対3バックに苦手意識もないし、札幌戦の前半のようにビルドアップでどんどん相手をズラすことができるチームである。
神戸のセレッソ対策
これを踏まえて神戸は、セレッソのビルドアップ時に2トップ+2SHの前線4枚も含めてマンツーマン気味に捕まえた上でプレッシングをしかけるという形をとってきた。
鈴木孝司には大崎が、奥埜にはサンペールという形で2トップを3バックのうちの2人で捕まえ(この2人は入れ替わることもあったが)、さらに水沼には酒井、柿谷にはダンクレーがマンツーマン気味に捕まえる。その上で前線からアプローチをかけてきた。
捕まえたまま付いていく神戸
なので、通常であればセレッソは前からアプローチを受けたとしても、例えばキム・ジンヒョンから内側に入った水沼や柿谷へ縦パスを入れるような感じで浮いている選手を上手く使うことができるし、自分たちの立ち位置を調整しながら相手を動かし徐々にペースを握っていくことができるのだが、この試合では水沼が内側に入ったとしても酒井がついていくし、柿谷に対してもダンクレーが躊躇なく前に出て捕まえに来る。丸橋に対しては藤谷がいて、内側に絞った水沼の外側を松田が出ていっても古橋がついてくることで、守備時のズレを完全に消してきた。

この試合では、セレッソの水沼と松田、神戸の酒井と古橋の4人の関係が一番わかりやすいと思うが、一般的にはセレッソがボールを保持している場面で、SHの水沼が内側に入り、SBの松田が外側を縦に出ていく動きを見せると、酒井と古橋がそのままの関係でついていくと2人のポジションが入れ替わってしまうことに繋がるため、マークを受け渡しをしたりすることが多い。
しかし、この試合での神戸はあまりマークを受け渡したりせずに、ポジションの入れ替わり上等とばかりに酒井は平気で水沼に付いてきた。

こういった状況で神戸の守備がポジションを崩してでもマンツーマン気味に付いていくことができるのは、神戸の守備自体が一般的な人を捕まえる守備とはまた異なる基準で行っていたからだろう。
神戸がマンツーマンで人を捕まえるのはセレッソのビルドアップ時だけだった。
その他の状況では古橋とポドルスキの両サイドは2列目に下がり5-4-1のブロックを作っていた。

神戸が行ったセレッソ対策をまとめると、
・セレッソのビルドアップの時にはっきりと人を捕まえる。
・そこで激しくアプローチをかけてボールを奪えれば最高。もし奪えなかったとしても時間をかけさせる。
・その間に他の選手は下がって5-4-1のブロックを作る。
という流れになる。

これであれば酒井がついていったとしても、ダンクレーが前に出たとしても十分カバーできる。
そしてCBとしての対人に不安があるサンペールであっても時間をかけさせるだけでよればなんとかなる。そういう判断だったのだろう。
例えばサンペールとマッチアップするのが、スピードとスペースに流れたときの強さがあるブルーノ・メンデスであればヨーイドンでやられてしまう可能性もあるが怪我で離脱中。この試合ではそんな心配も必要ない。

神戸が行ったこのセレッソ対策はかなり効果的だった。
人を捕まえられているのでセレッソはビルドアップでかなり手こずった。
特に前半はビルドアップで神戸の守備を動かすということがほとんどできなかった。

セレッソの守り方であれば神戸にボールを持たれる時間が長くなることは十分予想できたし、サイドチェンジで押し込まれることも十分予想はできた。
しかし前半にここまでビルドアップでボールを運ぶことができないのは想定外だったと思う。ボールを運んだとしてもビルドアップで相手を動かすことができていないので、5-4-1で人数をかけて守る神戸相手に正面からぶつかることしかできていなかった。

とはいえ前半は0-0で終了。
セレッソは思うようにボールを運べない展開にはなっていたが、先程も書いたように守備面に関して言えば押し込まれることは想定内、そして中央を固めていれば守ることが出来ることは想定内でしっかりとそれができていた。(前半の神戸が押し込んだサイドチェンジからの形は神戸が狙うことも、それに対するセレッソの守り方も予想通りで特に言うことはないので割愛する)
なので神戸もビッグチャンスになりそうなのはセレッソのミス絡みのみだった。
この試合のピッチは両チームの選手ともに足を滑らす選手が続出していたように、思わぬアクシデントが起こりそうで怖かったがそこはなんとか守りきった。
37分〜
神戸にとってはアクシデントとなったのは37分に藤谷が負傷交代となったことだろう。小川がそのまま右WBのポジションに入る。
ただ、藤谷は前半の序盤から遅れてのプレーで繰り返しファールをしており、34分にはイエローカードを受けていたが、ここで下がったことでファールトラブルは回避された。

■試合が少しずつ動き始める後半

後半に入ると、立ち上がりに1度だけ山口がセレッソのバックパスに反応して3列目から必要以上の暴走プレッシングをしかけたのだが、セレッソはキム・ジンヒョンを使ってプレスを外し、さらには右サイドから柿谷にボールを届けるというセレッソがいつも狙っている形をついにこの試合で初めて見せる。ただ、山口がハッキリと暴走してくれたのはその1回ぐらいだった。
SHを開いた位置に立たせる
しかし、セレッソは後半に入るとボールサイドのSHを比較的外に立たせてSBとSHでポイントを作り、中に入ってくるのはボールと逆サイドのSHだけという形にすることで、前半に比べると徐々にボールを運ぶことができるようになっていた。
特にスムース運ぶことが出来るようになったのは左サイド。ポドルスキもこの試合ではしっかりとブロックに戻る回数も多かったがどうしても古橋よりかは頻度は下がる。なのでセレッソは左サイドでボールを運ぶことで神戸のDFラインを動かす場面が少しずつみられ、後半の最初の15分で左サイドでボールを運んで中央で水沼が2本シュートを放っている。

しかしその分、SBも前に出てくるのでボールを奪われるとSBの裏を使われるという感じで少しずつオープンな展開へとなりはじめていた。
そして55分にはビジャにポスト直撃のシュートを放たれている。

■久々のFW起用

59分〜
59分にセレッソは鈴木孝司に代えて清武を投入。柿谷がFWへとポジションを移す。

前半の神戸の対応を見て感じていたのは、セレッソが手っ取り早く神戸の戦い方に対して手を打つとすればFWにスピードがある選手を起用することじゃないかなと感じていた。
実際に一発で通れば最高、もし通らなかったとしてもスピードを使って背後のヨーイドンで勝負できる選手がいると神戸のDFラインは一発でやられることを警戒するので人を捕まえて時間をかけさせるという対応がやりにくくなるからである。
実際に前半の途中からセレッソは何本かDFラインの背後にヨーイドン的なボールも使うようになっていた。

そしてセレッソで背後のヨーイドンで良い勝負ができるのスピードを持っているのは柿谷か高木のどちらか。
なので柿谷の前線起用は納得の人選だった。
ただし不安だったのが、柿谷は今季、特にここ最近はFWとしての起用がほとんどないこと。そして今季序盤もFWで起用されたとしても下がって受けようとするプレーが多かったので、例えボールが入らなかったとしてもDFラインと勝負するプレーを続けることができるかどうかだった。

実際にFWにポジションを移してからの柿谷のプレーだが、その心配は杞憂に過ぎなかった。
もちろん時間の経過と共に神戸の圧力が弱まった事もあるだろうが、柿谷がDFラインと勝負することでDFラインを下げ清武がプレーできるスペースを作っていた。
清武がそろそろ復帰できるであろう事はわかっていたので、おそらくこの形も十分準備をしていたのだとは思うが、FW柿谷、SH清武はこの試合の数少ない収穫の1つだったと思う。

■開いていく試合

75分〜
次に動いたのは神戸。67分にビジャに代えて田中順也を投入。そして75分にセレッソは奥埜に代えて高木を投入する。

清武投入後のセレッソはさらにボールを運ぶことができるようになっていたことは先程も書いたが、やはりこの時間帯になってくると試合は徐々にオープンになっていった。
なのでセレッソの本来のゲームプランとしては、こういった時間帯に試合をクローズすることが出来るようにここまでに先制しておくのが理想なのだが、この試合では厳しい前半があったのでまだ0-0。仕方ないといえば仕方ないのだが、このあたりは今後の課題である。

そしてオープンになると、スペースを埋めきれない、アプローチが遅れるということが起こってくるのでやはりイニエスタの技術、サンペールの展開力が活きてくる。そしてそれをカバーできる山口もいる。ボール保持ではサンペールが1つ前の4-3-3のアンカー的なポジションを取ることも増えていた。

キム・ジンヒョンがスーパーセーブを見せた古橋のシュート及び田中順也が詰めに来るプレー、そしてポストに救われたがイニエスタのパスに田中順也が頭で合わせようとした場面は神戸のビッグチャンスだった。

そんな中でのオープンな状況をクローズする交代ではない高木の起用。高木もスピードがある選手である。リスクはあるがどっちが先にゴールを奪えるかで勝負するという交代だったと思う。

しかしこの高木の投入直後のプレーで山口のパスから古橋の左足シュートで神戸が先制。
古橋のトラップ、ターン、シュートは素晴らしかったが、大外で1対1になっており、セレッソの2列目もポジションに戻れていなかった。
78分〜
この失点を受けてセレッソは水沼に代えて田中亜土夢を投入。清武が右SHに移動し田中亜土夢は左SHに入る。

ここからはセレッソもオープン上等で攻めあう展開に。
セレッソは試合をコントロールして90分のどこかで得点を奪い勝利するというのがチームの基本となるゲームプランで今出来るのはここまで。このプランから崩れた時。例えば短時間での爆発力となるとまだまだで、そうなってしまうとこうしてオープン上等で攻め合うぐらいしかない。

そんな中で高木、藤田にチャンスはあったもののゴールは遠い。
90分〜
神戸は90分にポドルスキに代え郷家を投入し1-0で試合終了。
ヴィッセル神戸の勝利、セレッソ大阪の敗戦に終わった。

■その他

神戸の対応に上手くやられてしまった、セレッソがやりたい形をつくらせてもらえなかった、という試合だった。
サンペールを3バックの中央に入れた戦い方は非常に効果的で興味深い形だった。
例えばディエゴと永井がいるFC東京相手だとこれは出来ないだろうが、新しいオプションとしては面白い形だったと思う。

これはこの試合に限ったことではないが、セレッソが今出来ることは実は一本道。途中でも書いたように、「試合をコントロールして相手にチャンスを与えず90分のどこかで得点を奪い勝利する」というものしか無い。
そしてそれを実践するための準備、手順については引き出しは多いのだが、そこから外された時に出来ることはあまり多くない。
そしてそうなった時に、0-0でいい、引き分けでいいと判断するという考え方もあるが、今季ここまでの試合を見るとそれで良しとはせず何とかしようとしている姿勢も感じられる。
この試合に限らずこれまでいくつか今後のチームの課題について書いてきたが、根本的な問題はここをどうするかという部分だろう。




4 件のコメント :

  1. 論理的にボールを運ぶというのは必要な場所に必要な人数をかけることなので、必然的に最後の部分、つまりフィニッシュの場面にかけられる人数がその分制限されます。そのジレンマをどう克服するか、ロティーナのサッカーがチームに浸透すればするほどそこが浮き彫りになっていくのは皮肉というかなんというか。設定した一本道から外れたときどうするか、というのもそのバリエーションのような気はしますけども。

    とはいえ、今期のセレッソ、とくに今のメソッドが浸透してからは戦術的に完全に後手を踏んだ、とか局面で手も足も出なかった、というような場面はほとんどなくなってますので、ロティーナが優秀な監督だ、というのはまぁ確かだと思います。

    要はフィニッシュの場面での精度を上げるか、清武や柿谷がテクニックとアイデアを発揮できるようにチームを高めるかという話のような気もしますし、もしくは以前「バスケのようなサッカー」という話もあったように、バスケットボールはそれこそ「同数の相手から点を取る競技」なのだからそこを参考にしてスクリーンプレイみたいなのを多用していくことになるのかもしれませんね。

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    1. コメントありがとうございます。
      そうですね。仰るところは非常によくわかります。
      ロティーナのやり方って、いわゆるシステマチックなガチガチに決めるってのではなく、柿谷や清武のところは違いを作れるだけの自由を与えていますしね。

      バスケの様な形も十分可能性がありそうですよね。

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  2. いつもお疲れ様です。
    サンペールがCBに入って、4-3-3のアンカー落ち状態で常に戦うやり方はプレスに弱いがビルドアップ力の高いサンペールがより活きる戦い方だったように思います。
    ビジャが常にCBの間で裏を狙ってたのも、イニエスタがボールを持ってからはほぼ周りを見てない中で正確にダイレクトパスを繋ぐのも見ていてさすがだなと感じました。
    セレッソに関して、どうしても上位陣の中で負けが突出しているところが気になります。シーズン序盤に負けた分、もあるんでしょうが、点が取れない部分をどうしていくのか、先に点を取られたらどうするか、ここに尽きる気もします。
    90分どこかで点をとって勝つは0-0なら最悪取れなくても勝点1積めるのでいいんですが、先に点を取られた場合どこかで点をとる、を必ず遂行しなければ勝点を積めないわけで。
    具体的な点をとる手段として現状ポゼッションでサイドからゆっくり崩している部分を
    ・FWのタイプに合わせて微調整する(メンデスや高木ならスピードを活かしてカウンターメイン、都倉や鈴木ならフィジカルを活かすパワープレーのような)
    ・相手がブロックを敷き終わっていても、人を引きつけてスペースが作れる選手を新たにとって崩す(いるかは別として)
    色々方法はあるでしょうけど現状のブロックが崩れないのが大前提となると中々難しい課題のようにも思います。
    シーズン序盤に左利きの舩木を右に置いて3-4-2-1でやっていたようなこと(ベースとしては今もそんなに変わっていない気もするが)をオプションとして使うのは怪我人やローテーション、舩木と丸橋の特徴の違いなんかを考えたら引き出しとして面白い気もしますが序盤中々機能しなかった部分もあるので突き詰め無さそうな気もします。
    高校生ルーキーで左利きのセンターバックが入ったので、即戦力クラスなら若手も積極的に起用するロティーナが3バックに再び挑戦するのもあり得るかもしれませんね。

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    1. コメントありがとうございます。
      サンペールの3バック中央起用はドイツ人っぽい解決方法だなと思いました。

      負け数については、8節までに5敗、9節からは6敗なのでそこだけ見ればそれほどでも無いんですが、引き分けの少なさを考えると確かにおっしゃられる通りだと思います。
      左利きの右サイドは西川潤も来るのでもしかしたら来季は仕組みに変化をつけるかもしれないですね。

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