2021年10月29日金曜日

10/27 第101回天皇杯全日本サッカー選手権大会 準々決勝 VS. 名古屋グランパス @ 豊田スタジアム

スタジアム豊田スタジアム主審笠原 寛貴
入場者数5,202人副審野村 修、武田 光晴
天候 / 気温 / 湿度晴れ / 17℃ / 72%第4の審判員上村 篤史

名古屋グランパス名古屋

 

セレッソ大阪C大阪

 
  • 監督
  • マッシモ フィッカデンティ
 
  • 監督
  • 小菊 昭雄

<監督コメント>


<選手コメント>


リーグ戦前節から中2日で行われる天皇杯準々決勝。ここから3日後には再び同じカードでルヴァンカップ決勝が行われるためその前哨戦とも言える名古屋グランパス対セレッソ大阪の一戦は0-3でセレッソ大阪が勝利。セレッソ大阪は4年ぶりの準決勝進出を決め、週末のルヴァンカップ決勝を良いイメージで迎えられる勝利となった。

■メンバー

名古屋グランパスのスターティングメンバーはリーグ戦前節から5人を入れ替え。外れたのは既に札幌で今大会に出場しているため登録外となるキム・ミンテと、宮原和也、前田直輝、ガブリエル・シャビエル、相馬勇紀で、成瀬俊平、森下龍矢、長澤和輝、柿谷曜一朗、マテウスが起用された。
5人を入れ替えているとはいえ、今回起用された選手のうち森下、柿谷、マテウスの3人は10月17日のACL準々決勝でも先発でプレーしていた選手。さらに長澤はルヴァンカップ準決勝のセカンドレグ、成瀬はファーストレグでプレーしているので通常通りの運用というところだろう。
リーグ戦前節から外れた5人のうちキム・ミンテを除く4人はベンチスタートとなっている。

セレッソ大阪のスターティングメンバーはリーグ戦前節からキム・ジンヒョンと喜田陽を除く9人を入れ替え。乾貴士は天皇杯の登録に間に合っていないので仕方がないにせよ、それ以外でも8人を入れ替えるという大幅なターンオーバー。DFラインは右から進藤亮佑、チアゴ、鳥海晃司、新井直人。中盤は清武弘嗣、奥埜博亮、喜田陽、為田大貴。2トップはアダム・タガートと山田寛人となった。
チアゴと鳥海は9月5日のルヴァンカップG大阪戦セカンドレグ、新井直人は5月23日の広島戦、為田大貴は7月17日の神戸戦以来となる先発となる。
またこちらも久々となる高木俊幸がベンチ入りとなった。
小菊監督就任後はルヴァンカップや天皇杯など過密日程の中でのカップ戦の場合度々DFラインを入れ替える決断をしているので選手の入れ替えはある程度予想できたところ。リーグ戦前節の横浜FM戦を含めて土曜日のルヴァンカップ決勝を見越したメンバー構成となっている。

■守備のファーストライン問題

試合の立ち上がりはセレッソも名古屋もお互いのゴール前に近づく形となっていたが、どちらかといえばセレッソの方が少し修正が必要だなと感じられる展開だった。
そうなっていたのはセレッソの守備のファーストラインが定まらないことが多かったから。

名古屋のビルドアップに対してセレッソは4-4-2で対応するが、CBがボールを持った時に名古屋は長澤が2トップの間にスッと入ってくる。しかしおそらく今回の2トップはアンカーを2トップで挟むという様な形は想定していなかったと思われるので、FWが守備のファーストラインとしてCBに制限をかけに行こうとするとこの長澤が空いてしまう。ここに入れられると最も嫌な形である中央からボールを運ばれることになるのでなかなかFWは出ていけず、守備のスタート位置が定まらない。少しずるずると下がりかける形になっていた。
ただ、名古屋にしてもライン間で受ける様な選手はいない。トップ下で起用されている柿谷もセレッソ時代からそうであった様にライン間でボールを受けるのはそんなに上手くない。なので完全にブロックを動かされて大ピンチを迎えるという場面はなかったが、少し守備がハマっていない状態にはなっていた。
その結果、中央から割られることはないもののサイドから自陣に簡単にボールを入れられることも増え、立ち上がりから名古屋がCKを連続で獲得していたり、9分のピンチだった稲垣のミドルにシュヴィルツォクが詰めようとした場面も稲垣に対して少し距離を空けてしまっている場面などが見られた。

しかし名古屋はなぜか12分ごろから稲垣がCBの間に降りてくる。
こうなればセレッソの4-4-2もアプローチの基準がはっきりするのでプレスに行きやすくなる。
稲垣が降りてくるようになったのはCBからサイドにしかボールを出せていなかったからなのかも知れないが、個人的にはセレッソにとって助かる形になったと感じていた。
ということでこの時間帯から少しずつセレッソの守備のファーストラインが定まるようになる。

■GKからのビルドアップ

ハマりきらない時間帯も長かった序盤のセレッソだが、5分の山田、為田がシュートを放った場面や、6分に進藤がクロスを送った場面など何度か名古屋ゴールの近くまでボールを運んでプレーすることができていた。
ここで効いていたのはGKからのビルドアップ。このビルドアップに対して名古屋は前から守備をしようという姿勢を見せていたもののその対応は有効ではなかった。

セレッソが見せていたGKからのビルドアップでCHの背後を狙う形。CBが開いてCHが中央にいるので名古屋のCHはセレッソのCHを見る。
そこでCHが下がってきてその空いたスペースに前線から清武が降りキム・ジンヒョンからそこに浮き球のパスを落とす。
ここに左SBの吉田がついてくれば進藤が前に出て吉田のいたスペースを使う。
さらにFWが降りてくる形、左SHが入ってくる形などいくつかのバリエーションがある。
このFWが降りてくる形も、CBがついて行くともう1枚のFWは背後を狙っているので、出ていくことはできない。フリックなどされると一気に大ピンチになるからだ。
この後出しジャンケンのようなバリエーションは普段からセレッソがやっている形でもあるのだが、これに対して名古屋はコンディションの問題か例えば時間を奪うようなハイプレスなども無くなかなか有効な手段が打てていなかったこと、またセレッソは困れば高さのある進藤目掛けてロングボールを蹴ることができること(マッチアップ相手が相手のSBやSHになるので空中戦で優位に立ちやすいという昨季までのターゲット片山パターン)で、何度もボールを運ぶことに成功している。

ただ、名古屋はこれで守備陣系を裏返されかけても正しいポジションに戻ってくるスピードがめちゃくちゃ早い。なのでここから簡単にフィニッシュまで持ち込むという形までは作れているわけではなかった。とはいえ、セレッソとしてはGKからボールを運べる形があるというのは大きかったと思う。

■セットプレーからの2得点

前半の飲水タイムでセレッソは守備のファーストライン問題を修正。2トップで間に入る長澤を受け渡す、2トップが前に出たときは奥埜が前に出ていくという形になる。
守備のファーストライン問題が解決すると、想定している状態で守備を始めることができるのでコンパクトな陣形を維持できる。
ブロックを動かされることもないのでここからは名古屋にチャンスらしいチャンスもあまり作らせないという展開に。それでもシュヴィルツォクはちょっとしたスペースを見つけ出すのが上手く何度かボールを受けられる場面はあったが、コンパクトになっている分CHのプレスバックも含めしっかりと対応できていた。
ただこういった全力で走るとかではなく、少しの移動でゴール前のちょっとしたスペースを突いてくるのは流石ストライカーだなとも感じさせた。

守備のスタートが改善されたことで高い位置でもボールを回収できるようになったセレッソは31分に喜田のミドル、そのこぼれ球を為田が落として山田がボレーで狙うもランゲラックがセーブ。
しかしこれで得たセレッソにとってこの試合最初のCKから、進藤、チアゴの後ろに入った鳥海が合わせてゴール。32分にセレッソが先制に成功する。
ニアにタガートと山田が入って、さらにその背後に進藤とチアゴも飛び込んだので名古屋の選手は密集状態になりランゲラックもパンチングできなかった。

そしてその6分後。今度はカウンターでボールを運び為田のシュートでCKを獲得するとチアゴが頭で合わせてゴール。38分に追加点を挙げる。
チアゴの高さはもはや誰もが知るところ。1点目もチアゴが前に入ったからこそ鳥海が浮いていたのだが、今回は入り方を少し変えて見事に頭で叩き込んだ。

ちなみに名古屋は今回の失点でルヴァンカップ準決勝セカンドレグから公式戦4試合連続でCKからの失点。リーグ戦でもセットプレーからの失点は7と数字的にはそれほど多くないのだが、全体の失点数が少ないので比率は26.92%と1/4以上がセットプレーからの失点となっている。
セレッソは当然ながらそれを踏まえてこの試合の準備を行ってきたのだろう。連戦中だと細かい準備はなかなかできないが、セットプレーは準備できる。
もちろんそれが全て上手くいくとは限らないが、この試合では上手くいった。

■先制された試合で0勝1分8敗の名古屋

試合中にもツイートしたが、今季のリーグ戦で名古屋は先制された試合で0勝1分8敗。逆転勝ちは1試合もない。リーグ戦で逆転勝ちが1試合もないのは徳島、大分、仙台、横浜FCの現在降格圏にいる4チームと名古屋だけである。(名古屋は先制した時は17勝2分1敗と降格圏にいる4チームとは段違いの勝率を誇っているが)
そもそもサッカーは先制したチームが圧倒的に有利ではあるのだが、そのメンツを見てもわかるように逆転勝ちが1試合もないというのは特徴的ではある。

これはおそらく名古屋が攻守においてポジションバランスをほとんど崩さない戦い方をしているからだろう。
最近ではボール保持と非保持で数多くの可変システムも見られるが名古屋の場合は立ち位置が変わったとしても最低限。大きく動くことはほとんどない。
これはポジションを動かさないとトランジションで隙を与えにくいというメリットがあるからで、移動の時間が必要ないのでボールを失ってもすぐに守備に行けるし、陣形が崩れていることが少ない。
しかし一方で相手の守備陣形を動かしにくいというデメリットもある。自分が動かないということは相手も動きにくいということでもあるからだ。
ただし相手がボール保持で陣形を動かすなら、こちらは陣形を動かさないまま攻撃するのでトランジションで有利に立てる。先制すればより相手は名古屋の陣形を動かそうと自分が動くのでより有利に立てる。
名古屋の基本的な構造・考え方としてはこういったところだろう。

しかしそんな中で先制を許すと、相手はこのまま90分が終われば勝利となるのでより陣形を動かす必要がなくなる。そして名古屋はボール保持で陣形を動かす形を持っていない。となると必然的に得点のチャンスは遠くなる。なので逆転勝ちが極端に少ないのではないかと考えられる。

そしてこの試合だが、先制後はセレッソが何度もカウンターで名古屋陣内に攻め込む場面を作っている。2点目もCKからだったが、CKはカウンターから獲得している。試合後のコメントでも森下は「僕たちが攻めた後のカウンターは怖かった」と語っている。

セレッソが何度もカウンターを繰り出すことができたのは、名古屋のCHの背後を起点にすることができたからだった。
名古屋にとっては有利に立てるポイントはトランジションであり、ボール保持で相手を動かすことをあまりやらない。となると得点を奪うポイントはできるだけ前でボールを奪うことができるかどうか。となると最も狙いやすい場所はCHでCHを潰すことになる。
しかしセレッソは序盤からGKからのビルドアップでCHを引き出した背後を狙っていた様にここを使うことができていた。これが先制後のセレッソがカウンターを繰り出すことが出来ていた理由だろう。

■失敗に終わった名古屋の布陣変更


後半開始から両チーム共に1人ずつ交代。セレッソは山田に代えて豊川雄太を投入。名古屋は成瀬に代えて相馬勇紀を投入する。
名古屋の交代は単純に相馬が左SHに入り、前半は左SHだった森下が右SBに移動するだけかと思われたがどうやらそうではない様子。
相馬が左の大外、森下が右の大外には違いないが、マテウスが左のインサイドレーン、長澤が右のインサイドレーンに立ち吉田が後ろに残る3-1-4-2の布陣になっていた。
この交代の意図についてはフィッカデンティ監督が「高い位置でボールを持ちクロスを入れる」「ボールを奪われた時はスペースを埋める」「押し込んだ時は広く選手を配置する」と試合後のコメントで語っている。
また先ほど名古屋はポジションバランスをあまり崩さないと書いたが、4-4-2に対して3-1-4-2にすれば、配置的にミスマッチが起こりズレが生じるのでポジションを動かさずとも配置的有利を得やすいという狙いもあったのだろう。

しかしこの布陣は後半開始直後こそ押し込む場面を作ったものの、すぐにセレッソに押し返される場面を作られている。
それを象徴するのが50分の清武からのスルーパスで豊川が抜け出しかけた場面で、3CHの中央にいる稲垣が奥埜に食いついたところで奥埜から豊川への縦パスが入り、そこからタガートに渡ると、そしてDFラインの前で前向きにプレーする清武にボールが渡るといういう場面をセレッソが作っている。
豊川はコントロールがずれたのでコースがなくなり雑なシュートを打つしか無くなってしまったが、そこに至る過程は名古屋からするとやられたくない形である。

そして名古屋は52分にさらに3枚替え。長澤、柿谷、マテウスに代えて、藤井陽也、金崎夢生、ガブリエル・シャビエルを投入する。
この交代はよりこの布陣の適正に近い選手を投入しようというところだろう。
この交代で木本がアンカーに入り、前線はシュヴィルツォクと金崎の2トップになる。

しかしこの布陣になっても名古屋はなかなか配置的優位を作れなかった。59分にはペナルティエリア付近のFKから最後は吉田がボレーで合わせチャンスを作っているので、名古屋にとってこういう場所でFKを獲得できたという部分では悪くはないのだろうが、決定的にセレッソが困るというところまでは至っていない。

そして62分にセレッソがさらに追加点。喜田から豊川へパスが入り、豊川からのパスを受けたタガートが右足を振り抜きゴールネットを揺らした。
この場面はタガートのシュートの振りの速さ、コースの正確さも素晴らしいが、そもそもタガートに対して藤井の守っている場所がおかしく全くゴールとボールの間に立てていない。なのでタガートにとってはシュートコースがガラ空きだった。

3点目を受けて65分にセレッソは奥埜に代えて藤田直之を投入。そして名古屋も67分に木本に代えて宮原和也を投入。
名古屋はこれで森下と稲垣が2CHとなりシャビエルが右SHに入る4-4-2に変更。3-1-4-2を諦めることになる。

名古屋にとっては2点ビハインドなのでリスク承知の3-1-4-2。そもそもが一か八かの手だったと思うが、セレッソが3点目奪ったことで失敗に終わった。

これで名古屋は配置的有利を得られない状態で試合を運ぶしか無くなり、3点ビハインドということもあり沈黙。

セレッソは74分に為田とタガートに代えて坂元達裕と西川潤、79分には清武に代えて高木俊幸を投入。
タガートは膝の外側を痛めた様なので心配ではあるが、そのままセレッソが危なげなく試合を進め試合終了。
天皇杯準々決勝は0-3と思わぬ大差がつく形で決着し、セレッソが準決勝進出を決めた。

■その他

3日後に行われるルヴァンカップ決勝の前哨戦とも言えるこの試合は思わぬ大差で勝利することができた。
勝負のポイントとしてはやはり先制点。名古屋の成績も紹介したが先制点を奪ったことで一気に試合が楽になった。
名古屋にとっては後半の布陣変更は一か八かだっただろうが、先制点を奪い、さらに2点目を奪ったことで名古屋をそこに追い込むことができたとも言える。
ただ、順位は名古屋の方がずっと上なので当然だが、両チームにこれだけの差があったわけではもちろんなく、セットプレーからの得点を奪えず0−0のまま試合が推移していれば、得点を奪おうとするセレッソに対してポジションバランスを崩さない名古屋の戦い方はもっと脅威になっていただろうし、後半に隙を突かれて失点するというリーグ戦での前回対戦時の様な展開になっていた可能性は十分ある。

とはいえCKを獲得できたのはGKからのビルドアップでボールを運ぶ形を何度も作れていたから。
このCKからの先制点も偶然ではもちろんないので、ルヴァンカップ決勝に向けて大きな自信になったことは間違い無いだろう。
そして今回は普段出場機会が少ない選手達で得た結果。ルヴァンカップ決勝では今回休んだ選手が出てくるはずなので、彼らにとっても大きな刺激になっただろうし、「負けられない」という気持ちが芽生えたのではないかと思う。

今回のレビューではすぐに同じ名古屋とのルヴァンカップ決勝があるということで、普段よりも名古屋の戦い方や考え方にも踏み込んで書いてみました。なので簡易的なものになりますが、決勝のプレビューは当日の朝にアップしようと思います。


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