スタジアム | 昭和電工ドーム大分 | 主審 | 高山 啓義 |
入場者数 | 6,989人 | 副審 | 和角 敏之、山際 将史 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 26.7℃ / 60% | 第4の審判員 | 村田 裕介 |
VAR | 飯田 淳平 | ||
AVAR | 村上 孝治 |
メンバー
大分
C大阪
- 監督
- 片野坂 知宏
- 監督
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「収容率「50%以下」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
真夏の13連戦を終えようやく1週間のインターバルを経て迎えた明治安田生命J1リーグ第31節、敵地昭和電工ドーム大分で行われた大分トリニータ対セレッソ大阪の一戦は1-0で敗戦。リーグ戦で大分に敗戦するのは2006年7月13日のJ1第13節以来およそ15年ぶり。そしてアウェイでの敗戦はまだネーミングライツが採用されておらず大分総合スポーツ公園競技場<ビッグアイ>と呼ばれていた2004年5月2日のJ1ファーストステージ第7節以来17年ぶり。ちなみにこの2試合、そして今回の試合の3試合全てに出場しているのは両チーム合わせて大久保嘉人ただ1人である。
■メンバー
大分トリニータのスターティングメンバーは前節から3人入れ替え。外れたのは呉屋大翔、長沢駿、刀根亮輔で、伊佐耕平、町田也真人、増山朝日が入った。
刀根に代わって増山なので3バックの右には小出悠太が下がる。右WBに入った増山は8月28日の第27節以来4試合ぶりの先発となる。そして町田は8月25日の第26節以降はベンチスタートやベンチ外が続いていたので5試合ぶりの先発復帰となる。
そして1トップで起用された伊佐は前節途中出場で内容が良かったこと、そして対セレッソという部分もあるのだろう。長沢や呉屋はベンチスタートとなる。
一方、セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から4人入れ替え。外れたのは松田陸、丸橋祐介、奥埜博亮、大久保嘉人で、進藤亮佑、小池裕太、藤田直之、アダム・タガートを起用。松田陸と丸橋はベンチからも外れた。
乾は前節負傷交代しているので心配されたが、大きなものではなかったようで無事に先発メンバーに名を連ねている。
■DFラインの背後
試合の立ち上がりは両チームともにバタバタした形になっていたが、徐々に大分がチャンスを作り始める。
最初のビッグチャンスは8分、増山のクロスにニアに町田、ファーに伊佐と飛び込み伊佐がヘディングで合わせるもキム・ジンヒョンがセーブした場面。完全な決定機だった。
この場面は、クロス自体はちょっと変な軌道だったが、アーリークロス気味にDFラインの背後にボールを入れるというのはおそらく準備してきたプレー。この他の場面でも同じ場所を狙っている。小菊監督になってからはセレッソのDFラインは高めに設定されているので、ほとんどの対戦相手はここを狙ってくる。
そして3バックの左に入る三竿だけでなく、右にも小出と両方ともWBもできる選手を起用してきた1つの理由はこの手前のエリアで時間とスペースを作るためだろう。
サイドチェンジで増山にボールが入った時に後ろから小出も出てきており、増山がボールを止めた瞬間に小出がオーバーラップしようとしたことで増山はこのクロスを入れるだけの時間とスペースを得る事ができた。
さらにここから大分は10分、12分、14分と連続して伊佐をDFラインの背後に走らせるプレーを見せる。
10分の場面が一番危なかったのだが、ここは西尾がおそらくヘディングでキム・ジンヒョンにバックパスをしようとして空振りしたことから。
これで西尾は伊佐に入れ替わられかけ、ペナルティエリア内でGKと1対1の場面を作られかけるが、なんとか西尾が身体を入れ戻ってきて瀬古と2人で対処できた。
ただこうして簡単に背後を取られるプレーが連続したのはこれも大分が狙っていた形だから。
セレッソはブロックを高めに設定するが、CBにまではあまりアプローチをかけない。ただCHに対してはCHがケア。ここに簡単に入れられてターンされると苦しくなるので、迎撃型で入ってくるボールと人に対してはCHがアタックに行こうとする。
これを踏まえて大分は例えば12分の場面では三竿にボールが入ったときに左シャドゥの渡邉が藤田の脇にスッと下がってきて顔を出す。ここでビルドアップの出口になろうとする動きである。
これに対して藤田は対面の下田をケアするというタスクを担っているのでなかなか対応しきれない。なので藤田の後ろにいる西尾がもし渡邉にボールが入って潰しに行くことができる様なら迎撃型で対応しようと少し重心が前になる。しかしそのタイミングで伊佐は西尾の裏に抜け出す。そしてボールを持っている三竿はフリーなのでタイミングを十分合わせることができる。なので簡単に背後を取られてしまうのだ。
飲水タイムを経てこの状況になった時には藤田はもう前のCH捨てて渡邉を見るようにしてDFラインを下げられるようにしたことで一発で背後を狙われることは無くなったが、何度も同じ形でDFラインの背後を使われていたのはここに原因があった。
■SBの裏
しかしここで藤田がというかセレッソのCHが前にいる大分のCHを捨てるということは大分にとってはボールを運びやすくなるということ。
DFラインからCHにボールを付けやすくなるので当然である。
するとここからセレッソにまた新たな問題が出てくる。
狙われたのはSBの裏。WBとシャドゥでセレッソのSBとSHを引き出してその背後を使う。
28分の場面では最後に渡辺のシュートをキム・ジンヒョンがセーブしたが、香川と渡邉で坂元と進藤が引っ張り出され三竿に進藤の裏を取られている。
そして34分。大分のペナルティエリアすぐ外からのFKで高木がロングボールを蹴り、それを進藤が跳ね返すもセカンドボールを下田が広い香川へパス。この香川に対して坂元が2度追いする形でアプローチに行くとすぐに前に入った渡邉へパス。ここに進藤がアプローチをかけるとワンツーで香川が進藤の背後に抜け出す。
このクロスを町田がワンタッチで合わせてゴール。大分が先制に成功した。
シュートの場面に注目すれば香川のクロスが西尾の足にも当たったことでキム・ジンヒョンと瀬古のちょうど間に飛ぶ形になり、瀬古も足を出しきれなかったという形。
ただ、3つの異なる形で3回目のビッグチャンス(渡邉のミドルも入れれば4回目)。いつやられてもおかしくなかった。
そしてこの場面で問題視されるのはおそらく進藤が食いついた部分になるんじゃないかと思う。
進藤は前に食い付かずに後ろを埋めるべきだったという意見もよくわかる。特にこの試合ではSBがレギュラー格の松田陸と丸橋のセットから進藤と小池のセットに代わっている。進藤と小池は小菊体制となり過密日程の中で少しづつ出場機会を増やしてきているが、チームのやり方的にもまだまだ経験不足は明らかで、現時点では松田陸と丸橋のセットに対してのセカンドセットという立ち位置なのが現状。なのでもし松田陸ならもっとうまく対応できたのではないかという部分もわからなくはない。
ただ、進藤がここで前に食いついたのは単に進藤のミスということではない。なぜならこの形は最初に書いた大分の狙いのバリエーションだから。最初に書いたのはアーリークロス気味にDFラインの背後に斜めのクロスを入れた最初の被決定機の形。そうここで進藤がいかずに渡邉の前を空ければ、そこからDFラインの背後に斜めのクロスを入れられるのである。
なので28分の三竿にクロスを上げられた直前の場面では、左サイドで小池が増山に食いつき、ヨーイドンで背後を取られかけている場面もあった。進藤や小池にとってはアーリークロスを防ぐ為には行くしかない場面でもあったのだ。
■大分の苦悩
こうして大分が先制に成功したが、ある時間以降はセレッソにもチャンスがありどちらが先制してもおかしくない状態にはなっていた。
大分の先制ゴール直前の31分にはタガートからのクロスを乾が左足で合わせるもクロスバー。2017年5月21日のカンプ・ノウで決めた1点目にそっくりな形だったが今回は決まらなかった。
セレッソがチャンスを作り始めたある時間以降の「ある時間」とは、セレッソが大分の伊佐をDFラインの背後を狙う形に対応できるようになってから。
大分がロングボールでチャンスを作っていたときは大分は待ち構えて迎撃型で守備ができていたので加藤もタガートも完全に相手を背負った状態、相手が思い切ってアプローチに行くことができる状態でしかパスを入れてもらっていなかったので潰される場面が続出していた。しかしセレッソがロングボールに対応し始めたことで(対応の仕方は先に書いた通り)大分はボールを運んで人数をかけて攻撃するようになった。しかしその結果ボールを失った時は前から守備をしなければいけなくなる。セレッソはその隙をついてボールをカウンター気味に運べるようになったのである。
20分の坂元がミドルシュートを狙った場面は、前から守備をしたい大分のCHの脇に西尾が縦パスをつけたところから。
そして先ほどの31分の場面も小池から加藤へのクサビが入ったところからだった。スペースがありセレッソに選択肢がある状態でボールをつけられているので、15分までの様に迎撃型で思い切ってアプローチにいけないのだ。
大分の得点はこの試合の前まで20点、1試合平均0.67点でリーグワースト。当然逆転勝ちも0。なので大分にとっては勝ち点3を得るためには絶対に先制しないといけない。しかし先制点を奪うためにはこれだけリスクが伴う。
この試合ではうまくいったが、流石にこれだけのギャンブルを毎試合成功するとはとても思えない。
もちろんここから得点を量産する試合が増える可能性もあるが、これで勝負し続けるのは厳しいんじゃないかとは感じた。
その後も35分に瀬古からのミドルパスで加藤につけ、最終的には進藤のクロスにタガートが頭で合わせるも枠外。シュートは決まらない。
ちなみにこの場面でも加藤は胸でトラップしているが、大分のDFはここに激しくアプローチをかけることができていない。
それは加藤のところにスペースがあることと、加藤に複数の選択肢があるから。以前にも書いたが、ボールが収まるかどうかは選手個々の能力もあるが、それ以上に大きいのがスペースと選択肢。これをどれだけ仕組みで作ることができるかどうかである。
なので守備側からすればその反対。ここまで大分にやられていたアーリークロス、西尾の裏、SBの裏もそう考えると理解しやすいのではないかと思う。
■ゴールが遠い
後半開始からセレッソはタガートに代えて山田寛人を投入。
そして51分には山田のパスから加藤が決定機を迎えるが、高木がセーブ。ゴールネットを揺らすことができなかった。
後半はセレッソのボール支配率が68%を記録した様にセレッソが圧倒的にボールを保持する展開に。
大分も時折カウンターからボールを運ぶ場面があったが、チャンスらしいチャンスは作れなかった。
ただそうなるとセレッソは5-4-1をいかに崩すかということになるが、なかなかその狙いは見えず。
66分にショートパスを繋いでハーフスペースに原川が飛び出し折り返そうかという場面を作っており、なんとなくいいコンビネーションからの攻撃に見えるが、実際には大分の守備ブロックを動かすことができていたわけではなかった。
となればセットプレーで何とかしたいところだがこれも不発。69分の原川のFKから最後は山田がヘディングで押し込もうとした場面の様に、セレッソはFKではファーサイドからの折り返し、CKではニアフリックを狙っていた様で、何度もこの形にチャレンジしていたが不発だった。
67分に大分は増山と伊佐に代えて井上健太と呉屋大翔を投入。さらに75分には町田に代えて長沢駿を投入。同時にセレッソは小池、藤田、乾に代えて、チアゴ、奥埜博亮、大久保嘉人を投入。さらに80分には坂元に代えて西川潤を投入。
個人技爆発待ちになっているセレッソは88分に大久保がシュートを放つも高木がセーブ。
さらに90+1分にはこぼれ球を加藤が押し込もうとするもまたもや三竿がブロックする。
直後の90+2分に大分は渡邉に代えて刀根亮輔を投入し守りを固める交代をしてそのまま試合終了。
セレッソは最後まで大分ゴールを割れず1-0での敗戦となった。
■その他
チャンスがあっただけに勝ち点を取れる試合だったと言えるかもしれない。
ただ、大分にとってはこれが数少ない勝ちパターン。先制点を奪って守る・守る・守る。先制すれば勝てるというチームではないが、先制しなければ始まらない。今季の勝利は基本この形である。
一方のセレッソ。もちろん結果は大切なのだが、相手がいることなのでうまく行くこともあれば行かないこともある。そして失敗することもある。もうそれはしょうがない。
なので重要視しているのは、「何をしようとしているか」。これまでも基本的にはこの考え方で書いてきた。
そして今のチームだが、この「何をしようとしているか」の部分でチグハグさがあるのは否めない。
例えば小菊監督としてはラインを上げて高い位置で守備をすることを目指しているのだろうが、このライン設定は穴になってしまっているのが現状である。(ラインをあげることはあくまで一例)
サッカーは全て繋がっている。ボール保持も非保持も、ビルドアップもロングボールも、プレッシングもゾーンディフェンスも、ライン設定もそれぞれ別々のものではない。全部繋がっている。
例えばロティーナ監督のときはラインを下げても構わないというチームだったので、小菊監督としてはそこは変えたいという考えなのだろう。しかし、今のところこれらが別々のものになっていて繋がっていない。なので穴になったり、ぎこちない展開になったりする試合も出てくるのだろう。
小菊監督にとっては初めてのトップチームでの監督である。当然試行錯誤だろうし、最初からいきなりガチッと全てをつなげることができないのはしょうがない。
なので今シーズンの残り期間でやりたい事をどう繋げていくか。今の結果ももちろん大切だが、未来の結果のためにもそこを見ていきたいと思っている。
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