- 60' 田中 裕介
スタジアム | キンチョウスタジアム | 主審 | 佐藤 隆治 |
入場者数 | 8,581人 | 副審 | 相葉 忠臣、穴井 千雅 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 21.9℃ / 49% | 第4の審判員 | 西橋 勲 |
メンバー
スターティングメンバー |
- 監督
- パウロ アウトゥオリ
- 監督
- 柱谷 幸一
試合経過
-
80'
- 77'
- 69'
- 65'
-
60'
-
50'
-
46*'
-
19'
データ
今回対戦 | 今季平均 | |||
データ項目 | ||||
FK | 15 | 14 | 15 | 13 |
CK | 5 | 4 | 5 | 5 |
PK | 0 | 0 | 0 | 0 |
シュート | 9 | 9 | 11 | 9 |
警告/退場 | 2/0 | 0/0 | 1/0 | 1/0 |
<監督・選手コメント>
セレッソ大阪 パウロ・アウトゥオリ監督ギラヴァンツ北九州 柱谷幸一監督
セレッソ大阪 田中選手、丹野選手、エジミウソン選手、パブロ選手、扇原選手
ギラヴァンツ北九州 小松選手、井上選手
ギラヴァンツ北九州 前田選手、原選手、内藤選手、井上選手
前節福岡に敗れたことで順位を4位に落としたセレッソ大阪がキンチョウスタジアムにギラヴァンツ北九州を迎えての一戦は、前半思うように攻撃ができませんでしたが、後半に交代出場の玉田のFKから2試合続けての先発となった田中裕介が決めた移籍後初ゴールで勝利。
試合の翌朝にアウトゥオリの辞任報道が出たり、その後監督交代を否定したりと色々とありますが、ひとまずそれは横に置き、いつもの様に試合の内容を。今回は機能しなかった前半と機能し始めた後半を中心に書いていきます。
■メンバー
ここ3試合を2分1敗と勝利の無いセレッソ。前節なにかしらの問題で外れた関口が今週の練習では再びスタメン組に復帰。問題はひとまずの解決をみたという事でしょう。
そして今節は代表Aマッチウィークという事で日本代表の山口蛍が欠場。なので中盤の構成がきになる所でしたが、前節からは関口が山口と入れ替わっただけのメンバー。なので扇原のワンボランチという形です。スカパーなどではパブロがトップ下でマグノクルスが左、関口が右という形になっていましたが、キックオフ時点での並びはパブロが左、マグノクルスがトップ下に入っていました。
またベンチには玉田が復帰しています。
一方の前節3試合ぶりの勝利をあげた北九州。小松と原の2トップを中心に左サイドには元セレッソの井上翔太も入っていますが普段は右SHに入る小手川がどこか痛めたのかこの試合ではベンチ外。右SHには内藤が入っています。またボランチに八角が、右SBには前節に引き続き弓崎が入っています。
■ダイヤモンド型
マッチアップ |
北九州は4-4-2のボックスなのでそのままの形だとマッチアップとして扇原が浮いてしまう事になります。
試合の立ち上がりは浮いている扇原をポイントとしてセレッソのパブロ、関口、マグノクルスが流動的に動く所を北九州の2列目が前に出て喰い付いて捕まえようとする所から歪が生まれ中盤にスペースが出来てセレッソが縦にボールを何度も運ぶ場面が増えます。
4-4-2でセットする北九州 |
マッチアップが浮いてしまう扇原のポジションについては2トップ、主に原が扇原を捕まえてCBに対しては小松が制限をかける。そしてSBに対しては4-4-2でセットしてるところSHが寄せるという形。
北九州が守備の形を変えた事で北九州の2列目の位置にスペースができにくくなったのでセレッソはなかなかボールが運べなくなっていきます。
降りてくる中盤 |
SBはSHに見られているので簡単に使えないからという事で降りてくるんですが、北九州の2列目はここにむやみに喰いつく事無くブロックを保持。で、CBは捨ててもいいから扇原とこの降りてきた選手は小松と原の2トップが担当。
となるとこの北九州の4-4-のブロック外側はCB、扇原、降りてきた選手の4人または5人いるのに相手は2人なので簡単にボールは持つ事ができます。
がしかし、前には田代とエジミウソンの2人ともう1人か2人いる3人または4人に対して北九州は4-4のブロック8人という状態。となると縦パスもなかなか入れられないし、入ってもつながらないのも当然です。
SBを前に |
が、残念ながらこれは続けるにはあまりにもリスキーな方法でした。
よく考えたらそれも当然でブロックの中にボールを入れられない状態なので、相手のブロックを動かす事も出来ておらず外にもあまりスペースがありません。そんな中でもそこにピンポイントで入れば一気にブロックを動かす事ができるのでそこからボールを運ぶ事が出来ますが、かなりの精度を要してしまいます。
カウンター |
なぜならこの試合は扇原のワンボランチ。SBの裏をボランチがカバーする事は物理的に限界があります。という事はボールを奪われた瞬間に既にセレッソのCBと扇原の3人に対して2トップがいる3対2の状態、そこにSHがパブロ、マグノクルス、関口を外して出てくると一気に3対3。
これはあまりにもリスキーすぎます。
という事でセレッソにとってあまりいいところが無い前半でした。
最終ラインでの3対2 |
北九州はCBと扇原を2トップで担当する形にしていました。
そしてマッチアップ的にも扇原を担当する選手はいない。
なのでセレッソはこのCBと扇原の3人で2トップの両脇にあるスペースにボールを運ぶ事がこの3人が攻撃でやらなければいけない事でした。
SBが開く事で北九州のSHの動きを制限し、後ろの3人で2トップ脇までボールを運ぶ。となると北九州のボランチがうごいてくるので、ここからそのズレを使って前線に時間とスペースを送っていく事が必要でした。
これが出来ないならここに扇原がいるメリットが全く無いですからね。
■ボックス型の中盤に
後半の布陣 |
マグノクルスに代えて秋山、田代に代えて玉田を投入。4-4-2のボックス型にします。
またさらにアンラッキーな事にキックオフ直後のプレーで染谷が負傷。50分に中澤が入ります。
2枚は戦術的な変更でしたが、染谷が痛めた事でほぼハーフタイムの時点でセレッソは交代枠を使いきってしまいました。
4-4-2でのボール保持 |
セレッソのシステム変更に対して北九州は特別守備の方法の変更はありませんでした。
2トップはボランチとCBの間で特別CBを追いかけ回す事もしなでコースを切るのがメイン。4-4のブロックの役割も同じ。
なので2トップの脇のスペースをボランチが使える様になります。
2CBとダブルボランチなので4人、前半の3人に比べると人数が増えてしまいますが、ボランチが2人とも2トップの裏に出れるので後ろで余ってしまっている事まではない。
前半の様にブロックの中が圧倒的に数的不利になることもなくなりました。
そして玉田。
北九州は4-4のブロックを作って守っていました。
このブロックを崩す為に効果的なのは相手の間でボールを受ける事です。
相手の間でボールを受けることでブロックを動かしスペースを作る事につながります。
それができる玉田を投入する事で後半はセレッソペースになる時間帯が一気に増えていきます。
玉田は田代に代わって投入されました。この交代について不満がある様な声もありますし、以前から玉田と田代を同時起用する事が減った事にコメントをいただく事もあり、それを根拠にアウトゥオリの采配がダメだという意見もあるようですが、ここに関してはそれほど不可解な采配ではありません。
この2人の起用には以前から言っている「奥行き問題」が生じるからです。
詳しくは後で説明しますが、中盤にボランチだけを起用するよりも高い位置でプレーできる選手やサイドでプレーする選手を同時に起用したほうが機能しやすい様に玉田のプレーを活かすには田代よりもエジミウソンがいたほうが機能しやすいからです。
エジミウソンが奥行きをつくって、そこで出来た相手ポジションの間を玉田が使う形でボールが繋がるセレッソ。ダブルボランチにした事でパブロが下がりすぎる場面も減ります。
そして先制点はその玉田のFKからでした。
その前にもいくつかあったFK。このシーンでは井上の手が関口の顔にあたってしまいファール。
60分にそのFKを玉田が大外で田中裕介に合わせてゴール。
田中裕介は移籍後初ゴールです。
このFKの前に後半に入ってからFKが2度、CKが1度あっったのですがハーフタイムでの2枚替えと染谷の交代で、セレッソも誰が中に入るのかや中に入る枚数が一定になっておらず少し混乱が見られます。
しかし、試合後の田中のコメントでもあるようにそれが結果的にはよかったのでしょう。マンツーで守備をする北九州も誰が誰を捕まえるのかが混乱していた様で特にファーサイドでマークがずれていました。
65分〜 |
交代枠を使いきっているセレッソは逃げ切りの為に常用している3バックは使えないので、後半のペースを落とさないように前線からの守備とそこからの攻撃を徹底し続けます。
最終メンバー |
玉田のFKから田中裕介移籍後初ゴールによる1点を守りきり、久々の勝利となりました。
■奥行き問題
以前からコメントでも頂いている奥行き問題について。以前から書いている奥行き問題をようやく説明できる時が来ました(笑)。
あたり前の事ですが、攻撃で重要な事は時間とスペースを作る事です。逆にいうと守備ではボールを持っている人から時間とスペースを奪おうとしてきます。
相手がブロックを落として守ってくるのは、ゴールの近くで相手に時間とスペースを与えない為です。
なので攻撃側はこの相手のブロックを広げる作業が必要です。
今期のセレッソがサイドチェンジを多用するのはそのブロックの横幅を広げる為。何度も横に動かす事でボランチとSHの間やCBとSBの間などの横幅を広げようとしています。
そして、広げる方向としてもう1つあるのは縦。つまり奥行きや深さと呼ばれている部分です。
奥行きを広げるためには「DFラインを固定した状態でMFラインを自陣側に引き出す」か、「DFラインを奥に引き下げるか」のどちらかです。今シーズンのセレッソがブロックを高く設定するチームに対して楠神をFWで起用しているのはこれが理由で、楠神に裏のスペースを狙わせる事で一発で裏を取れると一番いいですが、もしダメでも楠神が裏に抜ける事でDFラインを引き下げる事につながり、DFラインとMFラインの間を広げる事ができるからです。楠神である理由は、現在のチーム内で最もスピードのある選手だからだと思われます。
ただこの楠神の裏抜けは相手の守備ブロックが高く最終ラインの裏にスペースがあるときは効果的ですが、相手のブロックが低いとそもそも楠神が狙えるスペースが少ないのであまり効果がありません。
特に今シーズンのJ2では昨シーズンまでのJ1と異なりセレッソに対して慎重な戦い方をしてくるチームも多いので裏にスペースを作ってくるチームは少ない。という事は縦に相手のブロックを広げるには「DFラインを固定した状態でMFラインを自陣側に引き出す」事が必要になってきます。
この作業で重要なのは相手のDFラインを固定しておく事。この固定ができていないとMFラインを引き出した分DFラインも上がってしまうから結局スペースは広がりません。
今のセレッソでこのDFラインを固定しておく役割ができるのがエジミウソンだけなんですね。これは優れているや劣っているではなくプレーエリアの問題で、ボールが来なくても我慢して相手のCBの所にいておけるのがエジミウソンだけなんです。
田代の得意なプレー |
この時にエジミウソンがCBの所にいる事でこのスペースは確保されています。ここに誰もいないと田代が引いた時に最終ラインも圧縮してくるから自由にプレーできなくなります。
玉田の得意なプレー |
これも玉田が活きるスペースはエジミウソンがいるから確保出来ています。
エジミウソン役がいないと… |
実際に思い出して貰えばわかりやすいかと思いますが例えば玉田と田代の2トップだった時の勝ちきれなかった横浜戦、京都戦では低い位置でブロックを作る相手にスペースを消され、相手にボールを引っ掛けられるシーンも多くありました。
なのでアウトゥオリは夏にFWを欲しがったのだと思われます。
エジミウソンもそうですが、練習参加していたカボレもこの様な前ではるプレーを求められていました。
このエジミウソンがやっている役割は俗に第1FW、その一つ低い位置でプレーする選手を第2FWと呼ばれていますが、玉田と田代はどちらも第2FW。ノーマルな状態でどちらの能力も出しやすいのは間違いなく第1FWと第2FWの組み合わせなのであまり同時起用しようとしないのでしょう。
クルピがブラジル人べったりの人だったのでその印象は強いかもしれませんが、起用方法などを見ているとアウトゥオリに関してはブラジル人にしては比較的フラットなタイプの様ですから、エジミウソンがブラジル人だからとかという事ではなさそうです。
田代に比べると玉田の方が色々な役割ができるので、仕組みや戦い方で何とかしろよっていうご意見はあるでしょうが、そういう事ができるタイプではないのでそれはしょうがないですね(苦笑)。
■その他
奥行き問題について一通り説明してみましたが、これで伝わったでしょうか(笑)。
なにかあればコメント下さい。
で、試合については前半はなかなかうまく行きませんでしたが、後半にきっちり修正できて勝ちきる事ができて良かったです。これでやられていたら大変な事になる所でした。
で、報道についてもはやあまり書くことも無さそうですが、スポニチは信頼できるソースからの情報を掴んでいたんでしょうね(笑)。
以前にも書きましたが、ここで監督を代えてもジリ貧になるだけなので、ひとまずこれで手打ちにして少なくとも今シーズンいっぱいはこのまま、まずは目の前の昇格に向けて進んでいって欲しい所です。
いろいろあるのはその後でいいです。
解説ありがとうございます。
返信削除奥行きのことをなかなか理解していただけない方々もいたので、このような解説をしていだけるとありがたいです。
でも仕方なくエジミウソンを使ってる感じは否めないですね(笑)
一部報道にあった、補強に対するフロントへの不満というのはそこなんですかね?
まあフォルカカ、アーリアとの入れ代わりが、エジマグ、(秋山)で納得してくれる人なんていないでしょうけどね(笑)
しかし前半の出来を見ると、もう最後までオーソドックスな442で通してくるかもしれませんね。
アウトゥオリに新たに仕組みを落とし込むことは期待できなそうですし、選手自身も臨機応変にできそうな気配もありませんしね。
もうここまできたら今までやってきた形を愚直に徹底するのが一番な気がします。
コメントありがとうございます。
削除アウトゥオリはやりたいことが先でその結果のフォーメーションって感じなので、
形にはそんなにこだわりはないと思いますよ。
奥行きの話はとても勉強になります。
返信削除ただ、ブラジル人優先の話は、マグノクルスの起用が疑問なので納得しかねます。
彼も、パブロのようになれるのかもしれませんが、あと7ゲームという時点でスタメンというのは、贔屓ではないかと思わざるを得ないからです。
特に、来年は違う監督でということなら、マグノクルスの契約延長はないと思われますので。初めから秋山を入れて欲しかったです。
コメントありがとうございます。
削除関口が外れた試合で初めてスタメンに入り、フォーメーションを代えた試合で吉野が離脱したところでスタメンで、しかもHTで下げられているので、個人的には贔屓感は感じないですけどね(笑)。
秋山はチームとしては使っていきたいという考えはあると思いますが、千葉戦でスタメン起用されて以降出番が減ってしまったのは、やはりボランチとしては動きすぎるからだと思います。
喰い付きすぎるという所ですね。
愛媛では5-4-1の喰い付きOKというやり方だったのでそれでも良かったのですが、セレッソでは、またより上を目指すならそこは修正して欲しい所です。
おそらくその事は本人にも伝えられていて、本人もそれを修正しようという様子は伺えますが。
監督批判については、奥行きの問題の理解不理解が争点ではないと思いますよ。
返信削除その問題を抱えたまま(できるだけ奥行きが出るように二人が心がけて)玉田・田代でやることと、技術スピード高さ決定力のいずれもがイマイチなままのエジミウソン・玉田(もしくは田代)の組み合わせでやることの、どちらが「試合での勝利」に近そうかというところが争点だと思います。
個人的にはエジミウソンはもはや終わった選手だと思っていてカポレでダメなのと同じ理由でエジミウソンもダメです。ジャンプで競り勝つことがまず無いので、どうせなら抜け出すスピードのある前川マグノクルス楠神をトップに置いといたほうがマシだと思ってます。
そしてまた個人的にはFWのとこの問題よりも、まず扇原と橋本の2ボラで試合開始して欲しかったです。
コメントありがとうございます。
削除まず最初に、僕はブログ内でアウトゥオリを擁護するつもりは一切ありません。
基本的にこのブログではアウトゥオリにかぎらずどの監督でも擁護か批判かという軸では書いていないつもりです。
「分析するブログ」なので、基本的なスタンスは、この試合はどういう目的で何をしようとしているのか、何が出来て何が出来なかったのか、それが結果にどういう影響を与えたのかという所が軸になっています。
批判か擁護かは最終的に好きか嫌いかに行き着くので、そこはできるだけフラットにしているつもりです。(時々出てしまう事もありますが…(苦笑))
それを踏まえて今回奥行き問題をかいたのはなぜエジミウソンが起用されているのかという事についてです。
玉田と田代の2トップではだと奥行き問題を抱えていたので、それを解決することが「試合の勝利」に近づける為に必要な事で、その解決方法の1つとしてエジミウソンの起用というものがありますよという事ですね。
もちろんコメントで、批判や擁護、好きか嫌いかのご意見を書いていただく事はやぶさかではありません。
エジミウソンが終わった選手かどうかや、前川マグノクルス楠神かも同じですね。
ただ今のところ第1FW的な動きができるのがエジミウソンだけなので、前川マグノクルス楠神でも奥行き問題をどうやって解決させるかという所がポイントになりますね。
初めまして、らりたと申します。北九州サポをやっています。
返信削除このHPは以前から参考にさせていただいていました。今回も自分が試合を見て漠然と感じていたことを理路整然と言語化されており、大変勉強になりました。サッカーは奥が深いですね。
今後しばらくは対戦が無いでしょうが、いつかまたこちらで北九州が取り上げられるように頑張りたいです。
コメントありがとうございます。
削除対戦チームのサポーターの方からコメントをいただくと特に嬉しいです。
北九州は井上翔太が移籍して依頼見る機会が少しだけ増えました(笑)。
今回は勝てて無い中での対戦で、チーム内も状態があまり良くないタイミングでの対戦でしたのでどうしても「セレッソがどうしたか」に割く部分が多くなってしまいました。
今年どうしても昇格したいのでちょっとの間は対戦が無い予定ですが、また試合は見せていただきます(笑)。