2018年3月4日日曜日

3/2 明治安田生命J1リーグ第2節 VS 北海道コンサドーレ札幌 @ キンチョウスタジアム

スタジアムキンチョウスタジアム主審松尾 一
入場者数10,415人副審間島 宗一、小椋 剛
天候 / 気温 / 湿度晴 / 7.5℃ / 47%第4の審判員浜本 祐介

スターティングメンバー
セレッソ大阪C大阪
 
北海道コンサドーレ札幌札幌
 
  • 監督
  • 尹 晶煥
 
  • 監督
  • ペトロヴィッチ
セレッソ大阪C大阪
札幌北海道コンサドーレ札幌
今回対戦今季平均
データ項目セレッソ大阪北海道コンサドーレ札幌セレッソ大阪北海道コンサドーレ札幌
FK18201717
CK4867
PK0000
シュート11121113
警告/退場1/02/02/02/0

<監督・選手コメント>

セレッソ大阪 尹晶煥監督
北海道コンサドーレ札幌 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督

セレッソ大阪 杉本選手、高木選手、木本選手、水沼選手
北海道コンサドーレ札幌 兵藤選手

キンチョウスタジアムでの今季初ゲームとなる明治安田生命J1リーグ第2節。翌週にタイでのアウェイゲームがあることから金曜日開催、FRIDAY NIGHT J.LEAGUEとして行われた一戦は、セレッソ大阪が前半2点を先制するものの後半の3失点で3-3の引き分け。リーグ戦今季初勝利はまたもや次節以降に持ち越しとなった。

■メンバー

セレッソの先発メンバーは前節開幕戦から2人入れ替え。左SHには高木、ボランチにはソウザが入る。またベンチには新加入組のヤン・ドンヒョン、田中亜土夢に加え、片山瑛一も今季公式戦初のベンチ入りとなっている。
開幕戦で先発した福満は左ハムストリングを痛めベンチ外。試合終了後に4週間の離脱が発表されている。

一方の北海道コンサドーレ札幌。メンバーは先発・ベンチも含め開幕戦と全く同じ18人。3バックは進藤、キム・ミンテ、福森。ボランチには深井と宮澤。両サイドは駒井と菅が入り1トップ2シャドゥには三好とチャナティップが入る。
ペトロヴィッチはメンバーを固定する傾向の強い監督なのでこの11人が中心でベンチの7人が最初のバックアッパーということなのだろう。

■ミシャシステム

このブログを始めた2011年には既に存在していたミシャシステム。
もう何度も書いているので今さら感はあるが、とりあえず簡単に振り返っておく。
4-1-5
ミシャシステムといえば4-1-5。フォーメーションは3-4-2-1になっているが、ボール保持時には両WBが前線に張り出し、3バックの両サイドが開いてSB化しボランチの1枚が下がる。
5トップ化することで4バックに対して数的有利を作る。そしてマリノス戦でも書いたが5人は4バックに対して全て間のポジションを取ることになる。
そのため、4バックで守るにはDFラインがボールサイドにスライドし、大外を捨てる必要がある。なので逆に攻撃側からするとサイドに大きく展開することで相手DFラインに何度もスライドを強要。その中で空いてくる選手を作る。
マッチアップ
この前線の5を活かすために作っているのが最終ラインの4バック化と中盤の1。
4バック化することで4-4-2で守る相手に対して2トップとSHはマッチアップが合うことになる。
つまり2トップとSHはマッチアップしている相手に対してアプローチに行くことができる。
しかしボランチの2枚は別。自分の後ろには1トップ2シャドゥの3人がいてCB2人に対して局面で見ると数的有利に立たれている。なので中盤の1に対して簡単にアプローチに出てしまうと中盤の1よりもゴールに近い位置にいるシャドゥを空けてしまう事になる。
またさらに1トップ2シャドゥはボールを引き出すために入れ替わり下がってくる動きも見せるので、ボランチは簡単に前に出ることができない。
その結果守備組織の中で4バック+ダブルボランチの6人と2トップ両SHの4人が分断されてしまい、4-1-5の1が空きやすくなる。広島では青山、浦和では柏木がつとめていたこの1がフリーでボールを受けることができると、4バックに対して5トップと数的有利になっている前線へ自在にパスを出されることになり、守備はかなり難しくなる。
簡単に言えばこれがミシャシステムの原理である。

■セレッソの4-4-2

ミシャシステム対策として最も代表的なものは5バックにしてしまうこと。そもそもミシャシステムは4バックに対して5トップを敷き、4-4-2を崩すための手法として組み立てられたものなので、その5トップに対して5バックをとることでその前提を崩してしまおうという形だ。
しかし尹晶煥はこれをやらない。試合中に5バックにすることはよくあるが、試合の最初から5バックにしたことは、少なくともセレッソの監督になってからはこれまで一度も無い。
ということでいつもの4-4-2で対抗する。
4-4-2で戦うということは、ミシャシステムが狙ってくる前後分断を避けることと、5トップに対する4バックのスライドを徹底しないといけないということになる。

一方で4-4-2で対抗する事に対するメリットももちろんある。
セレッソは攻撃も守備も4-4-2。一方でミシャシステムは攻撃4-1-5、守備5-4-1と形を変える。ということは攻撃時から守備陣形を整えるまでに選手の移動が必要となり、同じ4-4-2のままのセレッソに比べて攻守の切り替えに時間がかかる。
特に中盤は攻撃の時に1人だけになることで相手に守備組織の前後分断を迫る一方、ボールを奪われると広大な中盤にたった1人しかいない。その結果、相手に一気にDFラインにまで迫られる事になる。
それを避けるために4-1-5から3-4-3になりながら高い位置からプレッシャーをかけるという形も取り入れているが、ファーストディフェンスがハマらないと一気に中盤のスペースを使われる。
同じ5人のアタッカーを配置する、マリノスが取り入れたグアルディオラのやり方がSBをボランチ化することでこの問題を解決しようとしているのに対して、ミシャシステムはそこよりもCBをSB化させることで相手の前後分断を優先しているからだ。

前半に関してはこれらの要素がセレッソにとって上手くいったと言えるだろう。
お互い切り替えのスピードを求めて立ち上がりから両チームのゴール前をボールが行き来する展開となったが、両SHのスプリントや2トップの動き出しでセレッソは一気に相手DFラインに迫っていた。守備の切り替えの時間を作るため3-4-3の状態を維持し高い位置からプレッシャーをかけようとするWBの裏にSHやトップが入り込むことができていた。
27分に杉本が決めた先制点はク・ソンユンのミスキックから生まれたものだったが、高い位置からアプローチに出ていて、WB裏を突く形なので偶然生まれたラッキーゴールでは無く、セレッソが狙っていたものだ。

さらに43分には高木がゴールを決め2-0とリードを広げることとなるが、起点となったのはボスロイドへのクサビをヨニッチと水沼で挟み込んでボールを奪い返したところから。ここから一気に前線に侵入し、柿谷のヒールでの落としを高木がニアに蹴り込んだ。
こうしてやりたい事ができて前半45分で2-0としたセレッソだったが、前半全ての時間帯でそれが出来ていた訳ではない。
なので実際は札幌に攻め込まれる場面もあった。

2点目につながるボール奪取シーン1
例えば2点目の場面。この場面は成功した形。
まずは図のような形でセレッソは敵陣からプレッシャーをかける。
ここから駒井は高木のプレッシャーをうけながらもスローインを獲得する。
2点目につながるボール奪取シーン2
そのスローインを進藤が受けるが、そこに対して杉本がアプローチ。
近くの味方はほとんどセレッソに捕まっている中で顔を上げた時にボスロイドが下がってクサビを受ける動きを見せたのでそこに出した。
だがしかし、アプローチによって進藤はボスロイドしかパスを出す事ができる選手がいないのでヨニッチと水沼にとってもそれはお見通し。その結果セレッソがボスロイドからボールを奪う事に成功している。
例えば進藤の時点で逆サイドには福森もいたのにと思うかもしれないが、プレッシャーを受けている進藤にはそれは見えない。
つまりしっかりとプレッシャーをかけているからこその形で、こうなると5トップも何も関係ない。

なので上手くいかない場面というのは、こうしてアプローチを掛けきれなかった時。
特にこの試合ではプレッシャーをかけきる前に、駒井や三好、チャナティップにボールを出され、彼らにボールを運ばれる場面もあった。
DFラインの4人に対して5人と数的有利を作っているミシャシステムなので、中盤でフリーでボールを持つ選手が出てくると完全に機能し始める。
そもそも4-1-5の1はフリーでボールを受ける選手を作るための形だから当然だ。

■間延びが顕著に

後半開始〜
札幌はハーフタイムに宮澤に代えて兵藤を投入。兵藤のコメントによると「アクシデント」によるものだそうだが、これにより前半からあったミシャシステムが機能していた場面が後半にはさらに増えるようになる。
ミシャシステムといえば4-1-5だが、浦和時代、広島時代からみても、開幕戦とこの試合での札幌はボランチが1人下がることなく3-2-5でビルドアップを図る場面も多い。
もしかするとマンチェスター・シティ型のSBがインサイドに入ることで攻撃時だけでなく、守備への切り替え時にもカウンターケアで効果を挙げている様に、守備への切り替えを考えてのものかもしれない。また左CBの福森が一つ前に出てビルドアップにも加われることもあるだろう。
ただ、前節の広島戦でも少し気になっていたし、この試合の前半でも気になっていたのが、札幌のボランチが少し動きすぎているんじゃないかということ。
青山や柏木なんかがそうであったようにミシャシステムの中盤は、そこにいることに意味がある。ポジショニングに意味があるポジションなので、たとえチャンスであっても前に出ていってしまうと折角分断した中盤に人がいなくなってしまうし、ただでさえ人数を増やしている前線5人のスペースを潰してしまうことになる。
そんな札幌のボランチだったが、後半の兵藤は動きすぎずきっちりと中盤にポジションを取ることができていた。

それによって前半からあったセレッソの守備が前からハメきれない時に、札幌はきっちりとボランチのポジションでフリーでボールを受けることが出来るようになる。
ということは4バックに対する5トップのメリットが十分活かせる状況が作れるということになる。
遅れる形で水沼が菅を倒した53分のFKはボスロイドがオフサイドポジションにいたためノーゴールとなったが、セレッソの守備陣形は徐々に前後分断になっていく。
その結果62分に三好のクロスにチャナティップが頭で合わせ札幌が1点返す事になる。
クロスに飛び込む形
この場面は福森からボスロイドへのハイボールのこぼれ球を駒井が競る形になって、さらにそれを三好が拾ったところから入れたクロスなので、駒井と三好のポジションが入れ替わっているが、4バックに対して5人が入っていくところがよく分かる。
広島時代にキャンプでペトロヴィッチ監督のトレーニングを見たことはあるが、クロスに対して5トップがどう動くかというトレーニングはバリエーションを加えながら何度も行っていた。

ちなみに、チャナティップはこれがJリーグ初ゴール。Jリーグ初出場も初アシストも初ゴールも全てキンチョウスタジアムである。

このミシャシステムが機能する要因になっているのはセレッソの前後分断というか間延び。ボランチのところにアプローチに行けないからである。
しかしこの試合で立ち上がりから行っていたのは相手陣内からアプローチをかけること。
つまり前線の選手は守備で前に前に行く。
なので後ろの選手がついていくことが出来なければ、勝手にどんどん間延びする。
前半は何とか頑張っていたが、後半に入りここまで4人対5人の戦いを続けていたDFラインとボランチはもう背後が気になってラインを上げられる状態になく、さらにミシャシステムの狙いがハマっていくことになる。

■オープンな試合に

68分〜
ということで、セレッソは高木に代えて山村を投入。山村は最終ラインに入って5バック。
5トップに対して5バックと人数をあわせてきた。
おそらく最初は柿谷を左に回した5-4-1になるかと思ったが結果的には5-3-2に。
というのも、この交代のタイミングとなった松田がチャナティップを倒して与えたセットプレーから、ボールは一旦流れるがそのこぼれ球のクロスを深井が頭で合わせ、69分に札幌が同点に追いつかれた事による影響もあったかもしれない。

しかしそのわずか3分後、72分には札幌が攻撃で攻め込んだこぼれ球を、三好が足を滑らせてソウザがボールを奪うとダイレクトで前線の杉本へパス。さらに杉本もダイレクトで中央の柿谷へ流し込み、柿谷が落ち着いてゴール。
自陣ボックスのすぐ外側からおよそ80mを3人がわずか3タッチでゴールネットを揺らすカウンターが炸裂しセレッソが再びリードを奪った。

これでいよいよ試合が有利になるかと思われたが、その6分後の79分。直前の福森のFKはキム・ジンヒョンがセーブしたが、2本続いたCKから今度は進藤が頭で合わせてゴール。札幌が再び3-3の同点に追いつく。

札幌のセットプレーは昨年からもストロングポイントの1つだったが、ペトロヴィッチが監督になったことで弱体化するんじゃないか?という様な声もあった。
がしかし、ペトロヴィッチ監督がこれまで率いてきたチームがセットプレーからの得点が少ないという事実はない。
広島でも、浦和でも優秀なキッカーが常にいたので直接を除いてもセットプレーからのゴールは平均以上に挙げている。そして札幌でも福森という優秀なキッカーがいるので、ストロングポイントであることは変わらないだろう。
ちなみに弱体化するのは守備。進藤も試合後のインタビューで「セットプレーのトレーニングは全然やってない」と言っていたが、その結果セットプレーからの失点はどのチームも平均以上となっている。
ただ、83分のCKでは、福森がストレート系のボールを蹴ってそれをボスロイドが頭でゾーンの間にいるチャナティップに落とすという、セレッソの対ゾーン用のプレーも見せていたので、攻撃に関しては何かあるのかもしれない。

ここまでの流れを見てもわかるように試合は完全にオープンになっており、70分頃からはもうどちらもコントロール出来ていない状態だった。
86分〜
82分、札幌が深井に代えて石川を投入し、福森がボランチ石川が左CBに入ると、84分には駒井に代えて早坂を投入。セレッソも同じ84分に柿谷に代えヤン・ドンヒョンを投入し、さらに86分に木本に代えて片山を投入。
この片山が投入されたタイミングで、丸橋が1つ前にでて片山が左SBとなる4-4-2に戻している。

完全にオープンになった試合はセレッソがSHのスプリントを中心に攻撃をしかけ、札幌はボランチに入った福森からチャンスを作るが、どちらもゴールネットを揺らすことが出来ず3-3の引き分けで試合終了。
セレッソは2試合続けて引き分けとなった。

■その他

2点先制しながらも3-3の引き分け。セレッソとしてはもったいない試合だったといえるだろう。
ただ、尹晶煥対ペトロヴィッチのこれまでの戦いを見ると、ある程度予想できたことでもある。

【尹晶煥対ペトロヴィッチ通算成績】
鳥栖対浦和
2012年:2-1(H)、3-4(A)、3-1(H)
2013年:2-6(A)、4-1(H)
2014年:1-0(A)
セレッソ対浦和
2017年:1-3(A)、4-2(H)

このカードはとにかく点が入る。
これまでの通算成績では8試合で5勝3敗と勝ち越しているが、19得点19失点。
得点も失点も1試合平均2点以上というとんでもない数字で、無得点に終わった試合も無ければ、無失点も1度しかない。

そうなる理由はこの試合を見るとわかるかと思うが、どちらも根本的な対策を打たないから。ペトロヴィッチは4-4-2をハメるために作り上げたシステムでハメにかかるし、尹晶煥はそれを承知で4-4-2でハメられる前に潰そうとする。
実際に潰せるチームは作るので点は入る。ただ90分間潰し続けることは難しいので失点もする。
試合をコントロールしようとしないから、常にどちらかが攻めている。

杉本が前半の途中から足を気にしていたり怪我での離脱者も多いように、過密日程や、オフが短かった事の影響もあるだろうが、それ以上に両チームが選択する戦い方による部分が大きいだろう。過密日程とはいえ今週はミッドウィークに試合があった訳ではないわけだし。

ミシャシステムも十分知れ渡り、さらに2012年から常にこんな試合を続けているわけだから、おそらく対ペトロヴィッチは今後もこんな感じで、点を多く取ったほうが勝つという試合になるのだろう。
ペトロヴィッチも頑固だと言われているが、尹晶煥も相当頑固である。



2 件のコメント :

  1. 本記事で仰るプレッシングによる潰しの理想は去年のホーム浦和戦でしょうか。
    今後大外にクロッサーを置いて5レーンを使って攻めるチームが増えてくると
    残留争いに巻き込まれる危険性がでてきそうです。

    質問なんですがAkiさんがこのブログを始めてから、Jリーグで4-4-2ブロックの熟練度が一番高かったと感じたのは何年のどのチームでしょうか?4-4-2ブロックの究極と限界ってどんなもんなんでしょうかね。

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  2. 試合終了間際でスローインを得たシーン。あの時、片山が入れるのかなと思ったら、ソウザがすぐ拾って投げちゃいましたが、あれはミスなんでしょうか?

    返信削除

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