スタジアム | ヨドコウ桜スタジアム | 主審 | 荒木 友輔 |
入場者数 | 4,067人 | 副審 | 唐紙 学志、淺田 武士 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 29.7℃ / 60% | 第4の審判員 | 松本 大 |
VAR | 松尾 一 | ||
AVAR | 八木 あかね |
メンバー
C大阪
FC東京
- 監督
- レヴィー クルピ
- 監督
- 長谷川 健太
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
前節から中3日で行われた明治安田生命J1リーグ第21節、ヨドコウ桜スタジアムでのセレッソ大阪対FC東京の一戦は、低調な前半から後半一気に盛り返し一時は逆転に成功するも最終的には3-3の引き分け。これでリーグ戦未勝利期間が8試合に伸びた。
■メンバー
セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から1人入れ替え。外れたのは為田大貴で加藤陸次樹が5月26日の第16節鹿島戦以来の先発出場となる。ということでセレッソは4-4-2。前節の前半を考えると変化はあるだろうと思っていたが布陣を4-4-2にしてきた。
そして外れた為田はベンチ外。前節はベンチ外だった中島元彦がベンチに入った。
一方FC東京のスターティングメンバーは前節と全く同じ11人。とはいえ、セレッソの中3日に対してFC東京は前節が7月11日なので休養十分での試合となる。
そして前節と同じということで、右SBには左利きの小川諒也を起用。先週登録が終わり今節から出場が可能となる秋田から加入した鈴木準弥はベンチスタートとなった。
■下がると狭くなる
両チーム合わせてのファーストシュートが清武だったように試合の立ち上がりはセレッソが東京陣内に攻め込む時間が長かったが、10分に近づこうかという時間帯から徐々にFC東京が得意のカウンターでセレッソゴールに迫る場面を作り始める。
セレッソにも10分に丸橋の折り返しを波多野が弾きそのボールを清武が狙うというチャンスがあったが惜しくもポスト。しかしその直前の9分には東京がカウンターでアダイウトンが一気にボールを運び、レアンドロの折り返しにディエゴ・オリヴェイラが入ってくるという大きなピンチをつくられる。
そして13分、松田陸のパスを安部に引っ掛けられたところからのカウンターで最後はレアンドロに決められゴール。FC東京が先制する。
この先制点を奪われた場面は前半の象徴的なシーンだっただろう。
左サイドからもう1度最終ラインにボールを戻してやり直しという状況で、最終ラインに残る西尾、チアゴ、松田陸とボールがつながってくるのだが、松田陸にボールが渡った時に大久保がCHの位置にまで下がってくる。
スタジアムで見ていた時に、この瞬間「大久保さがりすぎ」って思わず口に出てしまったのだが、大久保が下がったことで安部柊斗を連れてきてしまいスペースがなくなり、松田陸はおそらく加藤への縦パスを狙ったのだが、その途中でひっかけられてカウンターを浴びることになる。
長谷川監督が試合後のコメントで「前半は足元重視のサッカーでセレッソは戦ってきたと思いますが」と語っているが、セレッソとしては縦に速く攻めることで行ったり来たりの展開になってしまうとFC東京のブラジル人トリオが厄介になるので、走り合いにはならないように選手としてはある程度ボールを繋ぎながら急がずペースを落として攻めようという狙いがあったのだろう。どちらかといえば昨季までに近い考え方である。
そのために重要なのはポジショニング。ポジショニングで幅と奥行きを作ることで相手をどれだけ広げるか。相手を広げることでプレッシャーがかかりにくい状況を作って、その中でボールを動かし相手のズレを探していくということになる。
一方FC東京が狙っているのは狭く守って広く攻めるということ。カウンターが大きな武器なので広く攻めるというのはブラジル人トリオが中心になって一気にスペースに出ていくカウンター。狭く守るというのはコンパクトな守備陣系である。
で、このボールを引っ掛けられたシーン。松田陸がボールを持って前を向いた時に大久保が安部を連れて下がってきたことでFC東京の守備陣系は一気にギュッと狭くなった。
その後もどうしてもボールをもらいに下がってきてしまう大久保。
引っ掛けられなかったとしても、FC東京にとってはすでにリードしている状況なのでそこは捨ててしまって後ろでブロックを作れば問題ない。
ということで大久保はボールを触れるがセレッソは攻めあぐねるという状態が続く。
こういう時にいつもスゴいなと思うのは、大久保が下がって停滞しだすと奥埜がスッと前に出ていき奥行きを作ろうとするところだが、そうなれば大久保と奥埜がポジションチェンジしているような状態になので、どうしてもボールを奪われた瞬間、攻撃から守備へのトランジションで脆さが出てしまってもいた。
26分に迎えた飲水タイムで大久保に対して「あまり下がらないように」という話しがあったのだろう。以降は大久保が前線に残る時間帯が続く。セレッソはこの時間帯もチャンスを作れていた訳ではなかったが、詰まったりノッキングを起こしたりすることはなく、また警戒すべきトランジションでも奥埜がCHに残っているのでなんとか対応できていた。
しかしそれも10分ほど。36分ぐらいから再び大久保が下がり始め、中盤でボールを引っ掛けられたところからのカウンター。東のスルーパスに抜け出したディエゴ・オリヴェイラに決められ39分にFC東京が追加点を決める。
そして直後の40分にもカウンターからレアンドロがゴールネットを揺らすもVARチェックの結果アダイウトンがオフサイドということでノーゴール。オフサイドは主審の判断に委ねられる部分はなくファクトチェック(オフサイドラインから出ていたかどうかを確認するだけ)なのでOFRはない。このゴールが決めっていれば完全に試合が終わっていただろうからセレッソにとっては命拾いとなった。
ここまで大久保の下がってくる動きい触れてきたが、実際にこの取り消しとなったものも含め全ての失点シーンで大久保が下がってきたところで中盤でボールを奪われている。
大久保にすればここまでJ1最多得点を決めているように最後の局面では必ずゴール前にいるから問題ないだろうという思いもあるのだろう。実際にゴール前での得点感覚はずば抜けている。
ただチームとしてそこまでボールを運ぶためには下がってきて欲しくない。昨年までのチームのFWがなぜ柿谷ではなく奥埜だったのかというのと同じことである。
ただし誤解してほしくないのは、これは単に「大久保が悪い」という話しではないこと。大久保はこうして下がってきてボールを受けながらフィニッシュの場面では前線に出て行く、自由に動きながら得点を量産するというのが彼のプレースタイルである。問題なのはそんな大久保をどうチームに組み込むのかという部分である。
■一か八かの勝負と逆足
後半開始から大久保に代えて高木俊幸を投入。大久保か前節の様に清武か。ピッチ上を整理するためにはどちらかを代えるしか無かったので妥当なところだろう。
投入するならば高木か松田力かというところだが、高木を選んだのは序列の問題か。しかしそれが大きな副産物を得ることになる。
後半開始から1分もたたないうちの46分、セレッソが丸橋のクロスに加藤が飛び込み1点を返すことに成功する。
さらにその10分後の56分。今度は高木のクロスを加藤がスルーしたところでファーサイドに坂元が飛び込みゴール。圧倒的に試合を支配された前半から一転し後半のわずか11分間でセレッソが2-2の同点に追いついた。
こうなった理由としてはセレッソの1点目が後半開始早々の早い時間だったことも大きいだろう。これで一気に勢い付いた。
しかしセレッソが後半になって変えたことというのは試合のテンポを上げてトランジションゲーム=走り合いの展開に持ち込むこと。つまりリスクがあるので前半は避けたやり方である。
なので1点を返した直後の48分になんとか奥埜がカバーしているが東が抜け出される場面も作られているし、その後もアダイウトン、レアンドロにカウンターに持ち込まれる場面を作られている。
おそらく前半の頭からこのやり方をとっていれば、トランジションゲームに向いている選手が揃っているというか、チームとしてこういった形でサッカーしようとしているFC東京の方に分があったはずだ。
しかし前半に圧倒されたセレッソにとってはもう後がない。リスク云々を言ってる場合じゃない。なので一か八かのカミカゼアタックになるがこうするしか無かった。しかしそれがFC東京にとっては1点ではなく2点リードしていること。そしてさらにかなり早いタイミングでセレッソが1点を返したことで勢いがついた。そしてその後のカウンターでもしFC東京が1点を返し1-3となっていればまた試合は落ち着きを取り戻しFC東京のペースになっていった可能性が高いがセレッソが一気に2-2に持ち込んだ。一か八かの勝負が結果的にハマったのである。
ただ、こうなったのは一か八かの賭け以外の要素もあった。というのもこのセレッソの2得点はどちらも左サイドからのクロスだったからである。
この試合のFC東京の右SBは左利きの小川諒也だった。大分戦でハマり、湘南戦でも結果を残した。なのでこの試合でも小川とバングーナガンデ佳史扶という左利き2人が両SBで起用された。
左利きを右サイドで起用することは逆足とも言われ、セレッソでも坂元が左利きの右サイドアタッカーとして活躍しているが、最大のメリットは身体の向き。ボールを受ける時に相手から遠い足でコントロールすると自然と身体はピッチの内側を向くことになる。
しかしこのメリットは逆に守備時にはデメリットになる。相手に縦に仕掛けられた時に利き足とは逆の足で対応しなければならなくなるからである。
それを踏まえてセレッソの1点目の場面。
セレッソは右サイドから原川を経由して左サイドの丸橋へとボールを動かすのだがこの時丸橋に寄せて行ったのはかなり内側に絞っていた東。しかし東からはかなり距離があったので丸橋には時間とスペースがあり余裕を持ってタイミングを見計らってクロスを入れることができた。
そして2点目の場面。
原川からのパスを受けた高木がドリブルで運んでいくのだが、この時も高木に寄せたのは後ろから戻ってきた東。しかし高木には時間とスペースがあったので余裕を持ってクロスを入れることができている。
1点目の場面では内側に高木がいて、2点目の場面では外に丸橋がいるという部分はあるものの、右SBの小川は距離をとって後ろに下がって守っている。
これはおそらく縦に勝負されたくないから。逆足なので縦に勝負されると厳しいのでどうしても距離をとって守りたいのだろう。
逆足WGとか逆足SHはよくあるが、逆足SBを使うチームがほとんどないのはこうしてどうしても守備の時に厳しくなってしまうからである。
「副産物」と書いたようにこれを狙っての高木の投入というわけではないだろう。小川が右SBに入ることは試合前から予想がついていたので、もしこれを最初から狙ってたのであれば高木をスタートから使っていたはずである。ただ、トランジションゲームで一か八かの勝負に持ち込み、その賭が上手くいきそうになっていたのはこういった影響も大きかったのではないだろうか。
■トランジション強化
同点に追いつかれたFC東京は63分に3枚替え。東、青木、アダイウトンに代えて田川亨介、品田愛斗、永井謙佑を投入する。
個人的には先にSBを代えるかなっと思っていたが、セレッソが持ち込んだトランジションゲームは自分たちの土俵であるということを誇示するかのようにトランジションゲームで活きる両サイドを投入してきたのは強気な長谷川監督らしいなとも感じた。
実際にここからも何度かFC東京はチャンスを作っている。
しかし次のゴールを挙げたのもセレッソ。
原川のCKをニアで奥埜がすらしてファーで詰めたのは森重のマークを振り切ったチアゴ。74分に3-2とセレッソが逆転に成功した。
逆転されてしまったことでFC東京はディエゴ・オリヴェイラに代えて三田啓貴を投入。田川がワントップに移動する。
直後の79分には奥埜の枠を外れたミドルシュートを加藤が触ってコースを変えるが波多野がスーパーセーブ。まだ若いのでハイボールには不安定なところも見せる波多野だが反応速度は素晴らしい。
しかし次のゴールを決めたのはFC東京。82分にレアンドロがFKを直接決めて3-3の同点となる。
色々と問題行動も多いレアンドロだが駆け引きも含めて今のJ1で最もFKがうまい選手の1人だろう。
ただまあこの場面に限らずFC東京には常にチャンスはあった。というのも何度も書いているようにセレッソがそういう戦い方をしているからである。
83分にセレッソは清武と加藤に代えて藤田直之と松田力を投入。同時にFC東京はバングーナガンデ佳史扶に代えてこの試合がJ1デビューとなる鈴木準弥を投入し小川が左SBにまわる。
この後もトランジションゲームが続くとチャンスはあるかもしれないがピンチもある。スピードがないチアゴはどうしても一発で止めたいので入れ替わられてしまう場面もあるし、ファールにもなるがもうそれはしょうがない。
一方で右SBに入った鈴木は身体能力も高い選手であるという部分もあるが、明らかに本職の右SBとしてそれまでの左利きの小川とは対応が違っていた。今後は両SBが左利きという選択は余程のことがない限りしないんじゃないかと思う。
終盤にFC東京に逆転ゴールを決められかねないピンチもあったが試合はそのまま終了。前・後半で両チームが得点を奪い合った試合は3-3の引き分けに終わった。
■その他
前半の2失点、後半の3得点と1失点、両チームにとって何と言っていいのかわからない大味な試合だった。
クルピ監督らしいといえばそうなのかもしれない。後半の戦い方に手応えを感じている様だし、理想とするサッカーに近いらしいし。
とはいえ現実的にはこれでリーグ戦での未勝利が8試合に伸びた。
勝ち抜けに成功したACLを挟んでいるとはいえ普通の強化部と監督との関係であればそろそろ進退問題が出てきてもおかしくない成績。過去4年間では最も勝てなかった時期でも 2018年の第16節から始まった7試合未勝利が最長。その期間をすでに超えてしまっている。
ただ、ここまでもそうだった様に今後も監督には時間は与えられるだろうから、その中で「理想とするサッカー」がどれだけ出せるか。そしてその試合でどれだけ勝ち点を拾っていけるかということになるのだろう。
お疲れ様です。
返信削除正直、去年までの4年間をチーム作りとして健全な期間だと考えるのであれば今年はスタートでの方針転換、GMと監督の関係、成績についても明らかに去年以下、チームとして積み上げもほとんどないような中何も変わらない現状を異常なシーズンと言っても良いと思います。
戦術柿谷の2013シーズンも、決して引き出しが多かったわけではないし、相手の良さを消しつつこちらの良さも出すようなサッカーじゃなく相手がどうこようが自分たちはこう戦う。負けたら仕方ない。みたいな考え方は、サッカーは相手ありきという原理にも反しているように思います。
ガンバでも修正力を見せないまま選手に任せ、あのときはマテウスだったかな?ボランチの外人を重用し、守備の穴の修正も出来ないまま解任になったと思っていますし、なぜそんな監督を今更読んだかも疑問しかないです。