2021年7月26日月曜日

7/24 明治安田生命J1リーグ第22節 VS. サガン鳥栖 @ 駅前不動産スタジアム


スタジアム駅前不動産スタジアム主審笠原 寛貴
入場者数8,330人副審聳城 巧、大川 直也
天候 / 気温 / 湿度晴 / 30.5℃ / 43%第4の審判員塩津 祐介
VAR家本 政明
AVAR田尻 智計

サガン鳥栖鳥栖

 

セレッソ大阪C大阪

 
  • ヘッドコーチ
  • 片渕 浩一郎
 
  • 監督
  • レヴィー クルピ

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き

(入場者数上限「収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>


<選手コメント>


ACL帰国後の連戦最後の試合となる明治安田生命J1リーグ第22節、敵地駅前不動産スタジアムでのサガン鳥栖対セレッソ大阪の一戦は後半に一気に巻き返したセレッソが同点に追いつき3-3の引き分け。
3試合続けて前半の劣勢から追いつく形にはなったが、これでリーグ戦の未勝利が9試合に伸びた。

■メンバー

サガン鳥栖のスターティングメンバーは前節と全く同じ11人。セレッソ大阪は中2日での試合となるが、東京オリンピックによるリーグ中断中に行われているこの試合自体がACLの延期分なので、鳥栖にとっては7月17日以来1週間ぶりの試合となる。
ベンチメンバーには若干変更があり、U-18所属の中野伸哉選手は翌日から行われるU-18の大会、クラブユース選手権に出場するためベンチ外。そのため内田裕斗がベンチ入りとなった。ただし同じくU-18所属の福井太智選手は前節に引き続きベンチ入り。一方で相良竜之介はベンチ外となり、オフォエドゥ、ドゥンガの外国籍FW2人がベンチに入った。

一方、セレッソ大阪のスターティングメンバーも前節と全く同じ11人。セレッソは中2日ということもあるが、前節の同じ11人で挑んだ前半はチームが全く機能せずハーフタイムに交代をしたにもかかわらず同じ11人が並ぶ形となった。
ベンチメンバーでは中島元彦に代わって山田寛人がベンチ入り。これはFWの枚数的な問題か。

■中途半端とは

前節は13分、39分と前半立て続けに失点を喫したセレッソ。同じメンバーで挑んだ今節は1分、8分で2失点。さらに悲惨な立ち上がりとなった。
1分の失点は、エドゥアルドからのロングボールを受けた小屋松、小屋松からのパスを受けた酒井と2人のコントロールが素晴らしかったとも言える。また状況だけ見れば小屋松のところは西尾がファールをしてでも止める場面だったとも言えるので、例えば「西尾のミス」だとして個人の責任に落とし込むこともできる。実際にこれが20分とか30分なら西尾はファールをしてでも止めていたんじゃないかと思う。
しかしこれは開始1分。そもそも開始1分の段階でカウンターを食らっているというのが、チームすでにおかしな状況に陥っている。

ここから、坂元のドリブルでボールを運んで得たFKからサインプレーで清武がミドルを狙う場面を作るものの、再び鳥栖が自在にボールを運び始めそのままの展開で8分の追加点ということになるのだが、鳥栖にとっては狙い通り以上の内容、展開だったと思う。
というのも、開始1分にカウンターが発動したことも含めて、こういった展開になったのはセレッソのやり方による部分も大きかったからである。

プレビューでも書いたが、鳥栖は根本的なコンセプトとしては昨季までのセレッソと比較的近い部分がある。コンセプトの実現方法には違いはあるが、トランジションに頼らず試合をコントロールし必然で勝つことを目標としている。
そんな鳥栖に対して最もやってはいけないのが中途半端にプレスに行くこと。中途半端にボールを奪いに行くことで自陣にスペースが生まれるので鳥栖はそこを使ってチャンスを作ることができるからである。
ここでいう「中途半端」とは選手個々の意識の話しではない。チームとしてのプレスの完成度の話しである。

前半立ち上がりに起こっていたのはまさにそんな現象だった。

鳥栖は3バックの左に入る大畑がサイドの大外レーンに出て、3バックのうちの残った2人の間に松岡が落ちる形でビルドアップを行う。
これに対してセレッソは高い位置から捕まえに行こうとしていた。

しかしこのセレッソのアプローチを松岡と仙頭のポジションチェンジなどでいなし左サイドの大外レーンに出た大畑にボールド届けることができると一気にミスマッチによる問題が発生。ここには松田陸対応するしかなく、となると松田陸の背後を左の大外から内側に入っていた中野嘉大が飛び出していく。
鳥栖が序盤からセレッソのSBの裏のスペースを使うことができていたのはこの流れからである。
またセレッソが最初に前から捕まえに行こうとしている分、奥埜と原川のCHも相手の中盤センターにいる選手を必然的に捕まえにいく。
となると大畑にボールが入った時にはCBの前には誰もいない状態。なのでSBの裏はもちろんトップへのクサビも打てる状態になっている。

実際に2点目の場面はまさにこの形。松岡と仙頭のパス交換で足を止められ、サイドの大畑を経由して松田陸の背後に走る中野嘉大へ。中野嘉大の折り返しは丸橋がクリアしたが、それを拾った大畑が再び中央に入れるとそれを小屋松が合わせてゴール。
西尾と入れ替わる形になっているので小屋松はオフサイドではない。

そして鳥栖に対して「中途半端」なプレスが厳禁なのはビルドアップのバリエーション豊富だからでもある。
先ほども書いた左サイドの可変による形でも、最終ラインに落ちる選手が松岡と仙頭とで2つのバリエーションがあり、相手の出方を伺って落ちる選手を変える。もちろん落ちないというパターンもある。またさらには右サイドの飯野が低い位置に下がってその前に樋口が入ってくるパターンもある。こうしたいくつかのバリエーションを相手の出方によって使い分けることで、相手を動かし守備の基準点をぼかし、プレスを回避しファーストラインを超えてくるのである。

なのでセレッソがもしプレスに行くならば、鳥栖の可変も、ビルドアップのバリエーションも踏まえてデザインし、その上でボールホルダーから時間を奪うようなプレッシングをしなければならない。
しかし個々の選手が頑張っている姿は見えるものの全体像が見えない。なので結果的には「中途半端なプレス」になってしまっていた。

ただセレッソがラッキーだったのは18分に1点を返すことができたことだろう。
形としては大久保が少し強引に狙ったミドルシュートのこぼれ球を大畑が蹴るも坂元に当ててしまう。これが加藤の下に転がり、左足のシュートがエドゥアルドの足に当たってコースとタイミングが変わり朴一圭も対応できないシュートになってネットに吸い込まれたというものである。
もちろんこうなったのは選手個々が、プランが破綻する中で早い時間で2点ビハインドになったにもかかわらず諦めずにプレーしていたからこそではあるが、色々な要素がうまく重なったラッキーなゴールであったことは間違いない。

■セットを選択

1点を返した後は少し鳥栖が構えたこともあり、セレッソが整理はされていないけどプレスの強度を強める姿勢を見せる。ここでは実際に何度かは高い位置でボールを奪い返すことには成功していたが当然裏返される場面もあり、中2日での連戦というコンディション面を考えるとこのまま続けるのかどうかは微妙だなという感じだった。

なので26分の飲水タイムの後からセレッソはプレスの頻度を下げ、4-4-2でセットする時間を増やす。なのでおそらくこの後の時間帯がこの試合では最も落ち着いていた時間帯だったと言えるだろう。
ただ、セットするセレッソの守備も磐石だったかというわけではなかった。

セレッソは4-4-2でセットしているものの両SHのタスクが若干違った。
右SHの坂元は左ワイドに出てくる大畑を意識し、左SHの清武は3バック化する前の選手を意識している感じ。
この形は去年もよくやっていた形なので4-4-2でセットし3バック化した相手と対峙する時にはこうなるのだろう。
ただ、その分坂元と奥埜の間、清武の後ろの原川の脇にボールが入ったときにSBが2対1に近い状況になることもあり、そこから鳥栖はいくつかのチャンスは作っている。

そして鳥栖の3点目はそんな清武の後ろ原川の脇から。
チアゴのパスを奪い返された(パスミスと言ってもいい)ところからなのでセレッソにとってはかなり守りにくい状況だったのだが、ボールを受けた樋口が原川の脇のインサイドレーンを一気にドリブルでボールを運ぶとミドルシュート。これがゴールに突き刺さり45+1分に鳥栖が3点目を決める。
ミドルシュート自体も素晴らしいものだったが、丸橋も大外に飯野がいたことで絞りきれなかった。

■ハイテンポ、オープンへの誘い


後半開始からセレッソは大久保に代えて高木俊幸を投入。3日前と同じ交代である。

交代を行ったセレッソは再び高い位置からのプレッシングを始める。
クルピ監督の戦い方だと「行く」以外の選択肢はないのでまあそうなるだろうといったところか。ただ、飲水タイムでおそらく選手たちの相談によりブロックを作る選択をしたセレッソだが、前半アディショナルタイムに3点目を取られてしまったので待っていても仕方がないという部分はある。そしてセットした守備でも守れているわけではなかったし、そこからのボール保持で何かができているわけでもなかったので、「行く」しかないのは理解できる。

ただ、予想外だったのは鳥栖がこのセレッソが持ち込もうとするハイテンポに乗ってきたことだった。
片渕ヘッドコーチのハーフタイムコメントで「後半立ち上がりもう1点取ろう!そして5点目もとるぞ」とあるが、オープンになってもいいから試合を決めようという意図だったのだろうか。
試合後のコメントでは「後半のゲーム運びに関しては勝っているチームの振る舞い、時間帯、スコアによるゲーム運びというところで、うまくコントロールできなかった。私の力量不足を痛感するのみです。」と語っているので、ハーフタイムではそう言ったが振り返れば間違いだったと感じているということなのだろうか。

ということで試合はハイテンポになっていく。
そんな中での最初のビッグチャンスは鳥栖。56分にCKからエドゥアルドのシュートがゴールネットを揺らすが、VARでエドゥアルドにハンドの判定が下りノーゴールとなる。

この場面について説明しておくと、ハンドの反則は、例えばオフサイドとか引っ掛けたとかの現象だけでジャッジされるのではなく、意図的なのかどうかという部分が関与してくるので現在のルールの中では非常に複雑なものになってしまっている。例えば腕の位置が自然だったのかとか、ボールとの距離とかが判断材料の1つになっているのはそういうことだ。
ただ、その中でも「手に当たったかどうか」だけで判断する場合がある。それが得点につながった時の攻撃側のハンド。今のルールでは手に当たって入ったゴールは例え偶発的であっても認めないという考え方になっている。
この場面は、CKの競り合いの中でクロスボールがエドゥアルドの手に当たって足元に落ち、そのボールをエドゥアルド本人がシュートしたという形。確かにエドゥアルドの手の位置は自然だが、手に当たったボールをそのままシュートしたことになるので、こういった場合は例え偶発的であってもハンド。なのでゴールは取り消しとなる。
OFRを行ったのはエドゥアルドの手に当たったのかどうかをチェックしたのだろう。

その後も64分にはCHの間を通され中野嘉大のスルーパスから小屋松に抜け出されキム・ジンヒョンと1対1に。キム・ジンヒョンのスーパーセーブで切り抜けたが決定的場面を作られている。

そんな中、66分にセレッソが攻め込んだ後にボールを奪い返されカウンターを浴びかけるが西尾がファールを受けセレッソがFKを獲得する。
この場面は何とかファールになったが、もしここで西尾が入れ替わられていたら背後にはチアゴ1人だけという恐ろしい状況だったので本当にファールで助かった。

このFKを原川が狙うが惜しくもクロスバー直撃、しかし跳ね返ったボールを高木が拾ったところから混戦となり、一旦はハイボールを朴一圭が抑えたかに思えたところ中野嘉大と交錯してファンブル。それを坂元が拾って最後は加藤が突き刺しゴール。
68分にセレッソが1点差に迫るゴールを決める。
全てのゴールにはVARチェックが入るので朴一圭がこぼしたのか、それとも抑えたところを坂元がつついたのかのチェックが入るが無事ゴールが認定された。

■オープンに乗った鳥栖


原川がFKを蹴る直前のタイミングとなる67分、鳥栖は小屋松に代えてU-18所属の福井太智選手を投入。福井選手はこれでリーグ戦3試合連続出場となる。

そして鳥栖は1点を返されたにもかかわらずここからもテンポの速いオープンな試合を続けてしまう。例えば朴一圭にボールを戻してやり直すプレーは前半に比べると後半は減っていた。73分から76分ごろまでのお互い攻め合う展開などが象徴的だろう。
オープンな展開を続けてしまった要因としてはいくつかあるだろう。例えばセレッソの布陣によるところもそうかもしれない。
ただ、そういう決断を下していたのは鳥栖自身。そしてセレッソも2019年の特に中盤ごろまでは試合の中でそうなってしまう試合や時間帯もあったので、少しわかる部分がある。

先ほどの2点目につながったFK直前の西尾のプレーのように後半のセレッソは後ろの人数を減らしていた。簡単にいえば前がかりというやつである。もちろんリスクはある。なのでいくつもピンチを迎えている。けどセレッソにすればすでにビハインドなので失点しても特に状況は変わらない。どうせこのままいけば負けなのだ。
そしてそれは逆に鳥栖にとってボールを奪った瞬間に攻めるスペースがあるということでもある。
鳥栖は敵陣にスペースを作るために可変だったり色々やるのだが、そんなことをしなくても攻めるスペースが最初からあるのだ。
なので攻め込んでしまうのだろう。ハーフタイムコメントの「後半立ち上がりもう1点取ろう!そして5点目もとるぞ」がよりそうさせたのかもしれない。試合展開を考えると鳥栖はオープンな展開に付き合う必要なんて全くないのに。


80分にセレッソは加藤と丸橋に代えて山田寛人と喜田陽を投入。さらに85分には清武に代えて松田力を投入。同時に鳥栖も酒井に代えてドゥンガを投入する。

すると86分仙頭が坂元を倒してセレッソがPKを獲得。
これを坂元自身が中央に决めセレッソが3-3の同点に追いつく。

その後もオープンな展開が続き両チームともにチャンスがあったがどちらも決められず。

鳥栖は90分に先頭に代えてオフォエドゥを投入し新外国選手による2トップにするもあまり機能せず。
そのまま試合終了。3-3の引き分けに終わった。

■その他

2試合連続ビハインドを追いついての3-3の引き分け。前節と同じようにクルピ監督は手応えを感じているようだ。序盤に失点を重ね、未勝利が9試合に延びたが。
前任者の試合のテンポを落として凪状態を作りその中で必然の勝利を掴みにいくスタイルに対して、クルピ監督の試合をハイテンポにしてカオス状態を作るというスタイル。
個人的にはこれ自体にどうこういうつもりはない。凪状態が良いとも、1-0の勝利こそが美しいとも思わない。カオス状態を作り出すのも考え方としてはアリだ。
問題なのはそれを結果に結びつける手段が見えないことである。
例えばロティーナ監督は凪状態を作るが、そこから自分たちが試合を動かす手段を持っていた。ポジショナルプレーだったり、多彩なビルドアップだったりがそう。これがあるから試合のテンポを落として凪状態を作る意味があった。そうすれば相手はチャンスを作れないが、こちらはポジショナルプレーやビルドアップを使ってチャンスを作れるという計算である。

しかし今のカオス状態を作るやり方にはそれが見えない。カオス状態を作ってはいるものの、そこから先は選手に投げっぱなし、カオス状態にすることでどう有利に試合を運ぼうとしているのかがわからないのである。
強いていえば選手たちがカオス状態に慣れていることと、選手たちがめちゃくちゃ頑張っているぐらいか。
なので試合はどんどんアンコントローラブルなものになっている。もちろんそれでもここ数試合のように追いつくこともあるだろう。そしてより上手くいって勝つこともあるだろうし、その反面負けることもあるだろう。
もはやチームの目標は中位だとするとそれでも良いのかもしれないが、たとえ両チームが沢山得点を奪い合う試合であっても、そこを準備できていないサッカーはつまらないなと感じてしまう。
選手たちをもう少し助けてあげた方が、守ってあげた方がいいのではないか。


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