2021年8月6日金曜日

8/4 第101回天皇杯全日本サッカー選手権大会 3回戦 VS. アルビレックス新潟 @ ヨドコウ桜スタジアム

スタジアムヨドコウ桜スタジアム主審山本 雄大
入場者数3,427人副審中野 卓、中澤 涼
天候 / 気温 / 湿度晴れ / 30.9℃ / 67%第4の審判員岡 宏道

セレッソ大阪C大阪

 

アルビレックス新潟新潟

 
  • 監督
  • レヴィー クルピ
 
  • 監督
  • アルベルト

<監督コメント>

セレッソ大阪:レヴィー・クルピ監督

アルビレックス新潟:アルベルト監督


<選手コメント>

セレッソ大阪:新井晴樹、中島元彦

アルビレックス新潟:星雄次、本間至恩


その他のカードが7月に行われた中ACLの関係でほぼ1ヶ月遅れでの開催となった第101回天皇杯3回戦。セレッソ大阪対アルビレックス新潟の試合は3-2でセレッソ大阪が勝利。およそ2週間後に行われる4回戦への進出が決定した。


■メンバー

セレッソ大阪のスターティングメンバーは、直近の公式戦となる11日前に行われたリーグ鳥栖戦から3人を入れ替え。今やチームのエースとなった坂元達裕は先週のトレーニングで軽い熱中症の症状が出た影響からかベンチ外。またチーム最年長の大久保嘉人もベンチ外。そして2試合連続先発となった直近のリーグ戦で3得点を決めている加藤陸次樹はベンチスタートとなった。

代わって起用されたのが、ACLで負傷したアダム・タガートと、ACL後のリーグ戦3試合全てで途中出場し印象的な活躍を見せている高木俊幸、さらにはJFLのティアモ枚方から7月に加入したばかりの新井晴樹を起用。新井晴樹にとってはこれがセレッソ大阪のユニフォームを着て初めての、そしてプロサッカー選手として初めての試合となる。

ベンチにはタイに渡ってすぐに負傷した影響でACLでも出場がなかった西川潤や、昨季は新潟でプレーした中島元彦が入った。


一方のアルビレックス新潟のスターティングメンバーは、直近の公式戦となる7月17日の京都サンガ戦から5人を入れ替え。

外れたのは最終ラインで抜群の存在感を発揮しているベテランの千葉和彦、スケートボードの金メダリストと同姓同名(漢字は異なるが)で話題をさらった堀米悠斗、ロメロ・フランク、兄弟対決が期待された高木善朗、星雄次。古巣対戦となる鈴木孝司、早川史哉、田上大地、ゴンサロ・ゴンザレス、2019年のU-17W杯では西川潤とともにプレーしていた三戸舜介が起用された。

そしてベンチには、堀米、星に加え、京都戦に引き続き本間至恩もベンチ入り。京都戦では試合終了間際に負傷していたが、2週間以上空いたので戻ってきたようだ。

そして今季のリーグ戦ではまだ出番のない大本祐槻もベンチ入り。野洲高校〜阪南大学出身で、セルティックに移籍した古橋亨梧らとともに2017年に大木武監督の下で岐阜でブレイクし昨季から新潟でプレーしているが、元SBながらスピードを活かした突破で昨季序盤は右SHでプレーする機会を伸ばしていたが、シーズン途中に加入した中島元彦が右SHでプレーするようになり出場機会を減らした選手である。


■新潟のボール保持

試合の立ち上がりは両者アグレッシブにボールを奪いにいく展開となり、その中からセレッソがアダム・タガートにチャンスが巡ってきたが決まらず。そして気温30℃を超える18時キックオフの試合という影響か早々に試合は落ち着き始める。


落ち着いた展開の中で印象に残ったのは新潟のボール保持。


新潟は4-3-3なのでビルドアップではセレッソの2トップに対して2CBと1アンカーで対峙する形となるのだが、安易にアンカーを下げて3バック化しないのは好印象だった。

セレッソの2トップはセットした状況だと基本的にはそれほどCBにアプローチをかけたりしない。この暑さもあるし無闇に行く事がリスクにつながるからでもあるのだろう。となれば新潟のCBはボールを持てる状態になっているので、アンカーを下げる必要はない。


そこでビルドアップの出口になっていたのはIH。IHが降りてくると、SBが上がりWGは内側に絞る。となるとセレッソのSHは上がってきたSBに引っ張られることになる。じゃあ降りたIHにはセレッソはCHで対応しようとなるが、CHの前には下がっていないアンカーがいる。

ということでセレッソの2CHに対して新潟はIH2枚とアンカー2人でボールを持てる。

この形で新潟は中盤でフリーの選手を作ることができており、そこを起点としてボールをもつ形を作ることができていた。


ただ、こうしてボールをもつ形は作れていたものの、そこから先のチャンスはそれほど作ることはできていなかった。

新潟はスペイン人のアルベルト監督が率いるスペイン系のチームなので行ったり来たりというオープンな展開は好まない。

なのできっちり最終ラインからボールを繋いで運んでくるのだが、その分セレッソにもブロックを作る時間ができる。このセレッソのブロックを新潟は崩すことができていなかったからだ。


攻め手として見えていたのは中央の鈴木孝司にクサビを打ってそこに入っていく形。前半終了間際に右サイドから谷口かが入っていく形が一度あったがこれはキム・ジンヒョンがセーブ。セレッソのDFラインも構えているのでチャンスと言えるのはこの一度ぐらいだった。


となるとサイドから。おそらく新潟は普段からサイドで勝負する形が多いチームだとは思うが、ここで両サイドともにセレッソのSBの裏に侵入できなかったことがチャンスを作れなかった最大の要因だろう。

両サイドの三戸や谷口にボールが渡るものの、松田陸と丸橋に縦は完全に封じ込まれた。

その結果、主に左サイドの三戸はカットインからシュートという形に何度もトライしていたが、サイドを崩せていないのでこれはブロックができていた人数が揃っていてスペースのない場所(中央)に入っていくだけ。結局DFラインやCHに何度も何度もブロックされ続けていた。

この状態で決め切るスーパーなアタッカーがいればまた違うのだろうし、時々J2のリーグ戦では本間至恩がカットインから決めているが、他に選択肢がない状態のカットインはよっぽど突き抜けていないと難しい。重要なのは「他の選択肢があること」はスラムダンクでも教えてくれていた。


あと勿体無いのがせっかくIHの下げる動きからフリーの選手を作っているのに、そこからのパスミスでボールを失ってしまう場面も多いこと。この辺は普段のリーグ戦とはメンバーも形も少し異なる影響なのかもしれないが。


■新潟のボール非保持


新潟のボール非保持は、立ち上がりこそIHが1つ前に出て4-4-2のプレッシングを行う時間もあったが試合が落ち着いてからは4-1-4-1でセットする形になっていた。

セットした状態ではアンカーのゴンサロ・ゴンザレスの役割はライン間で浮いている選手を捕まえること。基本的にはトップ下の清武が浮いていることが多いので清武とマッチアップしていることが多かったが清武番というわけではなく、例えば丸橋が前に出て高木がライン間に入ってきたときは高木を捕まえにいっていた。


しかし15分を過ぎた頃から清武がこの新潟のアンカーの動きを逆手に取り始める。


ビルドアップのところで清武がいったんブロックの外にまで下がって丸橋を上げて高木を内側に入らせる。これでゴンサロ・ゴンザレスが動くとそこからスッとゴンサロ・ゴンザレスが元いた場所に侵入。これで清武がライン間でボールを受けはじめそこからサイドへ展開するような形を見せ始めたのである。


21分の清武の先制ゴールもこうしてボールを運んだところから。

カットインからのミドルシュートなので新潟がブロックされ続けた形でもあるので個の力の差のようにも見えるが(実際シュートはすごかったので決め切ったという部分ではそうかもしれないが)、大きいのはそれまでにサイドの深い位置を取れていてそこからクロスも入っていたからだろう。なのでDFラインは上げられなかった。


30分の2点目に関してはまさにライン間で受けたところからサイドに展開してのクロスのこぼれ球。

これも清武が低いシュートでゴールに突き刺している。


そしてもう1つ。この2点目の少し前ぐらいからセレッソはライン間でボールを受ける形を作れるようになったのでボール保持の形を変えていた。


奥埜がCBの右に落ち、松田陸は右のシャドゥ的なポジションに。そして右の大外レーンには新井晴樹。中央にはタガート、左のインサイドレーンには高木、大外には丸橋。前線に5人を送り込んで最終ラインの3人の前に原川。そして原川のすぐ左前に清武という立ち位置になっていた。

ハイライトの2点目のシーンの始まりを見ると原川からのパスで清武が新潟のIHの裏でボールを受けているのが、こういった立ち位置から始まっていた。

これは準備してきたものというよりも松田陸や奥埜、原川、清武らのアイデアだと思われるが、おそらく松田陸にはこの試合がデビュー戦となる新井晴樹にプレッシャーのきつい内側よりも大外でプレーさせてあげよう的な思いもあったのだろう。


ということで前半は2-0で折り返し。終了間際にはビルドアップのミスからキム・ジンヒョンがいないゴールにシュートを打たれる場面もあったが、西尾がカバーした。


■後半の攻防


ハーフタイムで両チーム交代。セレッソは松田陸に代えて喜田陽を投入。新潟は藤原、谷口、高の3人に代えて堀米悠斗、本間至恩、星雄次を投入。

松田陸は前半の終盤に足を痛めていた様子があったので交代となったのだろう。

一方の新潟はこの3枚替えにより布陣を4-2-3-1に変更。本間がトップ下に入り星は左SHに入る。

そして後半開始直後の49分に清武が足を痛めて交代。西川潤が入る。


西川は5月23日の広島戦以来久々の出場。多くの選手にチャンスが与えられたACLグループステージを負傷で棒に振ってしまったので期するものがあったのではないかと思われる。


2点ビハインドということで新潟が布陣を変えたこの後半立ち上がりだったが、清武の負傷交代はあったものの新潟としてはあまり上手くいっている感じはなかった。


というのもビルドアップの時には前半同様に2CBと2CH+トップ下の本間が落ちる形で中盤ではセレッソの2CHに対して新潟は3人にして浮いている選手を作るのだが、本間はここでボールに絡んだ後に一気に逆サイドの大外レーンなどに動いていってしまっていたから。

おそらく新潟が4-3-3から4-2-3-1にしたのはライン間で勝負する、入っていける選手を増やしたかったからだと思うのだが、トップ下に入った本間はそこから離れていってしまうのでライン間からセレッソの守備ブロックを攻略するような形には繋がっていなかった。

もちろん本間が逆サイドに流れたとしてもそこまでボールを届けることができればまた別の形も考えられるのだがそれもできていない。なので単純に中盤から1人減っただけといった感じになってしまっていた。


そして59分にセレッソは2枚替え。高木とタガートに代えて中島元彦と加藤陸次樹を投入。

一方新潟も63分に三戸に代えて大本祐槻を投入する。

そしておそらくこの大本投入のタイミングだと思うが本間と星のポジションを入れ替える。


この入れ替えによって新潟のボール保持は安定し始める。中盤で受けた後にサイドに流れることが多かった本間に対して、星は中央に留まりプレーし続けることができていた。

その流れで生まれたのが66分の新潟の1点目。これは新潟にとって狙い通りのゴールだったと思う。

堀米からのパスで本間がSBの背後に抜け出し、その折り返しを後ろから入ってきた星が合わせてゴール。前半ほとんど取れなかったSBの背後をようやく取ることに成功した。

セレッソにすれば右SBが松田陸から喜田に代わっており、堀米がボールを受けに下がったプレーで喜田が引っ張られ背後を狙う本間を全くケアできていない。喜田は本職がSBではないとはいえ、最近はユーティリティー性の高さで出場機会を増やしているのでこのあたりは大きな課題となる。


試合結果に大きく影響を与えたのは、失点のわずか1分後の67分に3点目を奪ったことだろう。

中島が早川に激しくアプローチをかけたところで早川のキックが中島にあたりゴール前の西川のところへ。西川がヘディングで直接狙ったシュートは新潟のGK小島が何とか掻き出したが、それを加藤が押し込んでゴール。新潟のミスによるものだがセレッソが3-1とリードを広げた。


 その後81分にセレッソは西尾に代えて鳥海晃司を投入。新潟もゴンサロ・ゴンザレスに代えて矢村健を投入し、星がCHに本間が再びトップ下に移動。


この時間帯になるとスペースがあるので本間もサイドに逃げることなく中央でプレーでき、アディショナルタイムの90+1分にはごちゃごちゃっとしたこぼれ球から本間がドリブルシュートを決め3-2とするが、反撃もそこまで。

そこからも新潟にチャンスがないわけではなかったが、セレッソにもその前にチャンスがあったことを考えると3-2のまま終了というのは妥当なところか。

天皇杯3回戦はセレッソが無事勝ち抜き4回戦へと駒を進めることとなった。


■その他

昨季中島がプレーしたことで新潟はセレッソサポーターにとっても親近感を感じるチームの1つだとは思うが、僕個人も含め実際に対戦してもチームとしてのクオリティの高さを感じる面白いチームだと感じた人も多かったのではないだろうか。

現在はJ2で3位と京都、磐田に続く順位となっているが、こういったサッカーをするにあたって課題となるだろうストライカーという部分で大分から高澤優也も獲得しており2位以内に入ってくる可能性は十分あるんじゃないかと思う。


セレッソについては、今回は常に先手を取る形で試合を進めることができたので選手に過度な負担を押し付けることもなく試合を終えることができたというのが収穫か。

また負傷交代となった清武、松田陸はこのチームの屋台骨なので、2人が無事に次のリーグ戦に復帰、もしくは次に間に合わなかったとしても早期に復帰することを願うばかりである。


そして久々の出場となった西川潤。久保建英と同学年で瀬古歩夢が出場していた2019年のU-20W杯にも飛び級として選出されていたのでプロ入りする段階では今回の東京オリンピックのメンバー入りも目標として持っていたと思う。しかし昨季、今季とポジションを掴めず、多くの選手にチャンスを与えられたACLグループステージでも怪我の影響で出場なし。それだけに久々の出場となったこの試合にかける思いも強かったと思う。しかしインパクトを残すことはできず。

今のチームは何が正解かはやってみないとわからない、判断材料は結果のみという作り方なので、中心選手とそうではない選手という明確な線引きがある(だからこそこの試合でも見られたように中心選手の清武、松田陸、奥埜を中心にしてポジショニングを変えることができる)という形なので、西川の立場だと頑張るにしても何をどう頑張ればいいのかがわかりにくい難しい状況だとは思うが、焦れずにチャレンジを続けて欲しいと思う。


最後に加入後、というかプロサッカー選手として初の公式戦出場となった新井晴樹。

直接的にチャンスを作ったり絡んだりしたわけではないが、自慢のスピードでは時折光る部分も見ることができた。彼の場合は武器がはっきりしている選手だと思うので、シンプルにその武器を活かすためのチャレンジを続ければ大丈夫。ぜひチャンスを掴んで欲しい。



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