スタジアム | パナソニック スタジアム 吹田 | 主審 | 家本 政明 |
入場者数 | 4,976人 | 副審 | 田尻 智計、浜本 祐介 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 30.5℃ / 80% | 第4の審判員 | 中野 卓 |
VAR | 谷本 涼 | ||
AVAR | 唐紙 学志 |
メンバー
G大阪
C大阪
- 監督
- 松波 正信
- 監督
- 小菊 昭雄
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
小菊新監督の就任から2日後に行われた明治安田生命J1リーグ第27節、ガンバ大阪対セレッソ大阪の大阪ダービーは0−1でセレッソ大阪が勝利。小菊監督初戦を勝利で飾り、アウェイでの大阪ダービー2連勝、そしてダービーの連続無敗試合を5試合に伸ばした。
■メンバー
ガンバ大阪のスターティングメンバーは前節から9人を入れ替え。長期間に渡る連戦中ということもあり前節にも7人の選手を入れ替えているのでその選手が戻ってきたという形である。
そして前々節、前節と連続して出場していた、東口順昭、三浦弦太、小野瀬康介、宇佐美貴史の4人のうちGKの東口を除く3人全員がベンチからのスタート、東口とチアゴ・アウベスだけが連戦となる。
また前々節、前節共にスターティングメンバーではなかった選手が奥野耕平と栁澤亘。ここ最近ではどちらも右WBでプレーすることの多い選手なのでどういう起用になるかと思っていたら、柳澤が右SB、奥野が本来のCH。ということで布陣をこれまでの3-4-2-1ではなく4-4-2にしてきた。
またベンチには離脱していたパトリックも復帰となっている。
一方セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から3人を入れ替え。外れたのは豊川雄太、奥埜博亮、チアゴで奥埜とチアゴはベンチ外。小菊監督によるとこの2人は疲労を考慮してとのことで、2人ともACLグループステージで1試合休んだだけ。帰国後の公式戦では全試合先発していたので休ませたといったところか。
またチアゴには高さと強さというストロングポイントがある一方で、アジリティと動きすぎるというウィークポイントもあるので、まずは外してきたという部分もあるだろう。
そしてベンチには大久保嘉人、山田寛人、西川潤が復帰。大久保と山田は7月24日の第22節以来、西川に至っては5月30日の第17節仙台戦以来のベンチ入りとなる。
■ビルドアップに優位に立つセレッソ
立ち上がりからペースを握っていたのはセレッソ。決定機にまでは至らないが敵陣にまでボールを運び、またガンバにはほとんどボールを運ばせなかった。
しかし12分にアクシデント発生。清武がチアゴ・アウベスとの接触でプレー続行不可能となり17分に山田寛人と交代となる。
セレッソにとっては早い時間帯にキャプテンが負傷交代するというかなり嫌な展開になったかと思われたが、以降も試合展開は変わらなかった。
立ち上がりに見せていたのはFWをSBの裏に走らせる形。
セレッソのビルドアップのベースとなっている形は松田陸が最終ラインに残る片上げ3バック。それに対してガンバはできるだけ前からハメたいという意識があるようで、マッチアップする倉田が前に出て人数を合わせようとし、それに連動する形で左SBの藤春が坂元に食いついてくる。
そこでセレッソが狙ったのは藤春の裏。ここにFWを走らせる形を多用していた。
序盤のセレッソはFWを裏に走らせるパスが多かったので、クルピ監督がやろうとしていた(と言われる)「縦に速い攻撃」か?と見る向きもあった様だが、同じように見えてちょっと違う。この先を見ていただくとわかるかと思うが、ガンバの出方を見て判断していた。
ではこうすればどう来る?ということで今度は藤田がCBの間に降りる。
この形だとついてくるのは山本。やはりマッチアップしている人が基準になっているということを把握する。
となれば狙うのは山本が元いた場所。ここにFWが降りると、昌子は最終ラインにギャップができてしまうので出ていけないし、柳澤も山田がいるので出ていけない。ということで一気にCHの背後にセレッソがボールを入れる場面を作る。
ガンバはこれを嫌がって右SHの矢島が中央に絞るようになる。
となればセレッソはキム・ジンヒョンから丸橋へ。ここに栁澤が食いついてくれば山田を背後に走らせる。食いついてこなければさらにボールを持ち出すか斜めにクサビのパスを入れる。
こうしてセレッソは前からハメてこようとするガンバに対して、多くの場面で複数の選択肢をもつことができていたのでスムーズにボールを運ぶことができていた。これが序盤からペースを握ることができていた最大の要因だろう。
■セレッソのボール非保持
この試合で4-4-2を選択したことに対して松波監督が「1トップ2シャドゥをやってきた中で、前に2人置いて1人が孤立しないようなことを…」と語っているので、4-4-2にした狙いはボール保持で前線が孤立しないようにということだったのだろう。
プレビューでも書いたが、3-4-2-1のガンバは縦に速く前線につけることができれば前3人で中央突破みたいなことができていたが、ボール保持してという展開になるとどうしても1トップのレアンドロ・ペレイラが孤立しがち。そして孤立してしまうとボールを欲しがって下がってきてしまうので前に誰もいなくなるという場面も多かった。
そして4-4-2にしたこの試合だが、例えば20分のチアゴ・アウベスのシュートの場面の様に数は少ないものの2人が絡んでのカウンターの形も無いわけではなかったので狙いが全く外れたというわけではなかったのかもしれない。
ただ、そもそもカウンターの機会がほとんど作れていなかった。
セレッソのボール非保持は2段構え。まずはトランジションのところでボールホルダーにアプローチをかけてカウンターを出させないのが最初の段階。ガンバにカウンターの機会を与えなかったのは、まずこのトランジションのところが機能していたからだった。
そしてこの間に守備陣形を整え4-4-2のブロックを作る。この4-4-2はガンバとの違いがはっきりわかる部分だったのではないだろうか。
セレッソのブロックで特徴的なのは、アプローチには行くがボールホルダーにアタックに行くというわけではないこと。
もちろん相手が後ろ向きやトラップにもたついたなどのチャンスであれば取りに行くが、制限をかけるというのが主な目的。
そこでガンバもCHを最終ラインに下げるような可変を行う。そうするとセレッソもSHを前に出すような形をとるが、ここでも取りには行かずアプローチをかけて運ばせない。そしてコースを消す。その結果ガンバはボールは持っていても出しどころがほとんどないという状態になっていた。
前半セレッソの方がかなりボールを持っている時間が長かった印象があるかもしれないが、実際にはガンバのボール支配率は47%でセレッソとはそれほど差がなかったのは、セレッソが後ろではガンバにボールを持たせることを許容していたからである。
ただ、ボールを取りには行かないのでガンバはブロックの外でボールを動かして外でボールを運ぶことはできる。
そうなればセレッソはブロックを下げる。また前に出ればブロックを下げる。こうして徐々に相手を追い込んでいく。
ただブロックの中にボールを入れてくれば、そこには囲い込んで激しくボールを奪いにいく。
なのでセレッソの守備はスタート時点での2トップの位置は敵陣なので、敵陣から守備はスタートしているのだが、ガンバの様に前からハメこんでアタックに行ってボールを奪おうというよりも、自陣の奥行き全てを使って吸収するように絡め取るというイメージ。
セレッソとガンバは同じ布陣にも関わらず選手の動き方や動く距離が全く違うので、もし試合を見直す機会があればそこに注目しても面白いと思う。
ということでこの守り方はロティーナの時のやり方に近い、というかコンセプトとしては同じ。
小菊監督がロティーナをやり直そうとしているのかどうかはまだ判断できないが、ほとんどの選手にとっては去年までやってたことであり、結果を残していたことでもあるので馴染み深いやり方でもある。なので選手にとってやりやすい方法でもあるのだろう。
この試合に向けての準備に当てる時間が実質1日しかなく、監督交代の経緯から考えると新しいことにチャレンジすることは不可能。やりやすい、馴染み深いやり方に戻すという判断は理解できる。
ただ、このロティーナのコンセプトだとセットした場合にどうしてもボールを奪い返す位置が低くなりがち。なので最大のネックとなるのが奪った後にボールを運べるか否かになるのだが、この試合では最初の項で書いたように比較的それがうまくいっていたことでペースを握るまでに至ったのだろう。
24分には前線で加藤が引っ掛けたボールをタガートがシュートを放つも惜しくもゴールはならず。
昌子、キム・ヨングォンの日韓を代表するCBとJリーグを代表するシュートストッパー東口の前に得点は奪えなかったが、前節までとは全く違って選手が気持ちよくプレーできている前半。ほとんどの試合で前半終了時点でカオスに持ち込むしかなかった前節までとは全く違う展開だった。
■セレッソの先制点
後半開始からガンバは選手交代があるかな?と思ったが何もなし。松波監督が試合後のコメントで「そんなに大崩れせずに前半は0-0で抑えた」と語っているので想定内ということだったのか。
そして後半のガンバはかなり速いタイミングでどんどんDFラインの背後に長いボールを蹴る様になったが、2人でフィニッシュまで持ち込むという回数は少なく、またそこで時間がかかるとセレッソのブロックが間に合い、そしてセレッソが奪い返した時にはカウンターを繰り出す場面もあった。
そして試合が動いたのは51分、左サイドでスローインから丸橋がペナルティエリア内に侵入すると、最後はペナルティエリア内の外で待っていた松田陸が右足を振り抜いてゴール。セレッソが先制する。
この場面について松波監督は「サイドにより過ぎていた」と振り返っているが、その前のFKからの流れもあってか左SHの倉田が右サイドの守備にあたっている。
そしてその分矢島が前残りのようなポジションにいたので中盤は3人、左SHがただただ不在といった格好だった。
なのでセレッソがボールを横断する頃に成功すると逆サイドにいる松田陸は当然フリー。それを見て慌ててトップの位置からレアンドロ・ペレイラが戻ってくるも間に合わず、松田陸がシュートを打つための時間とスペースが十分あった。
先に書いたように直前にFKがあったのでその時点では通常とは異なるポジショニングになることはあるだろうが、そこからすぐというわけでもなく、さらにはスローインもあって、そしてこのスローインもセレッソは急いでやるわけではなく時間をかけて行っている。
にも関わらずよくわからない立ち位置になっていたのは、連戦の疲労というよりもガンバの現在の苦しさを表しているか。
■試合をコントロールし続けたセレッソ
セレッソが先制に成功したことで少し前がかりになるガンバ。
カウンターを繰り出す場面や、山本が最終ラインに降りてボールを保持する形を作るも、セレッソのスペースを管理してボールを奪いにいくというよりも自陣の奥行きを使って相手の勢いを吸収する守備の前に、ゴール前でシュートを打つための時間やスペースを作ることができないままだった。
しかし逆にセレッソはガンバが前に出る分スペースができているので、そこを使って前線に攻め込みながら試合をコントロール。
63分にはオフサイドになったが山田のパスから加藤が抜け出し、66分には坂元がペナルティエリア内に侵入し折り返しの場面を作っている。
なんとか試合を動かさなければならないガンバは60分にチアゴ・アウベスに代えて山見大登選手を投入、そしてセレッソは65分にタガートに代えて西川潤を投入する。
西川はACLでも怪我をして出場がなかったので5月23日の広島戦以来3ヶ月ぶりのリーグ戦。
おそらく西川は試合に絡んでいなかった間はずっと「小菊コーチ」とトレーニングしていたのだろう。この試合では最後までパフォーマンスが安定していた。
試合を動かせないガンバは72分に3枚替え。奥野、矢島、レアンドロ・ペレイラに代えて井手口陽介、宇佐美貴史、パトリックを投入。
前に出るしかないガンバはこれでようやくはっきりして、山見選手も少しずつボールに絡むようにはなるがチャンスは作りきれず。宇佐美の個人技からのシュートもキム・ジンヒョンがセーブした。
ただこのあたりの時間帯からセレッソは左SHの山田が正しいポジションに入ることができなくなってきており、丸橋が動かされ左サイドにスペースが生まれることが出るようになっていた。
そこでガンバは81分に山本に代えて小野瀬康介を投入。中盤をダイヤモンド型に近い形にする。
するとセレッソも84分に3枚替え。藤田、加藤、山田に代えて喜田陽、大久保嘉人、高木俊幸を投入する。
ここからガンバが押し込もうとしてくるが、セレッソも必要以上に下がりすぎることなく、また時には相手ゴールを伺いながら試合をコントロール。セレッソがそのまま逃げ切りに成功し、0-1で試合終了。小菊監督初陣となる大阪ダービーで見事に勝利し、大阪ダービー5試合負けなし、アウェイでの大阪ダービー2連勝を飾った。
■その他
会心の勝利だった。松田陸が試合後のフラッシュインタビューで「意味ある監督交代」と語っていたが、特に前節は監督の求心力の低下から足かせみたいな状態になっていたので、本当に意味ある監督交代になったと思う。
そしてプレビューでも書いたが、これができたのは新監督が小菊昭雄氏だったことも大きい。これまでの歴史を知っていて、選手のことを知っていて、選手も監督のことをよく知っている。
「小菊監督」だからこそ選手がやりやすいように持っていくことができたし、「小菊さん」だからこそ選手も短期間ながら前向きに進むことができたと思う。
ただ、おそらく小菊監督にとってはここからが本番。
監督という立場になれば今までのように選手の側に立ち続けることも難しいし、難しい決断を下さないといけないこともある。
そしてこの試合ではおそらく選手にとって馴染み深いということでロティーナの時のやり方をとったが、ガンバのできに助けられた部分も大きく、今後もこれでいくならビルドアップの整備はもちろん守備面でも更なる改善が必要となるだろう。
そして気になるのは清武の状態。負傷時の痛がり方からするとちょっと時間がかかってしまうかもしれない。
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