2021年8月23日月曜日

8/21 明治安田生命J1リーグ第25節 VS. 横浜FC @ ヨドコウ桜スタジアム


スタジアムヨドコウ桜スタジアム主審谷本 涼
入場者数4,651人副審渡辺 康太、熊谷 幸剛
天候 / 気温 / 湿度曇 / 27.7℃ / 80%第4の審判員武田 光晴
VAR飯田 淳平
AVAR田尻 智計

セレッソ大阪C大阪

 

横浜FC横浜FC

 
  • 監督
  • レヴィー クルピ
 
  • 監督
  • 早川 知伸

新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き

(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催


<監督コメント>

セレッソ大阪:レヴィー・クルピ監督

横浜FC:早川知伸監督


<選手コメント>

セレッソ大阪:チアゴ、坂元達裕

横浜FC:渡邉千真、マギーニョ


ミッドウィークの天皇杯から中2日で迎える明治安田生命J1リーグ第25節。本拠地ヨドコウ桜スタジアムでのセレッソ大阪対横浜FCの一戦は、先制を許すも3-1でセレッソ大阪が逆転勝利。リーグ戦では12試合ぶりとなる勝利、そしてヨドコウ桜スタジアムでのリーグ戦初勝利を掴んだ。


■メンバー

セレッソ大阪のスターティングメンバーは、リーグ戦前節から1人、ミッドウィークの天皇杯からは3人を入れ替え。天皇杯で休んでいた坂元達裕、松田陸、丸橋祐介の3人が復帰するという形である。

そのためDFラインは天皇杯に引き続き3バック。ただ2トップの一角だった加藤陸次樹がベンチにまわり坂元が入っているので前線の形は変化。天皇杯で使った2トップの下に清武が入る3–4-1-2ではなく、1トップの下に清武と坂元が並ぶ3-4-2-1となる。


一方の横浜FCのスターティングメンバーはリーグ戦前節から1人を入れ替え。前節1トップで先発したフェリペ・ヴィゼウはベンチにまわり、1トップには前々節の名古屋戦で先発した渡邉千真を起用。プレビューで予想したスターティングメンバーがそのまま並ぶ形となった。


■低調な立ち上がり

試合立ち上がりの5分に坂元の折り返しが相手DFに当たったセカンドボールに奥埜が後ろから飛び込んでシュートを放つという場面を作っていたセレッソだったが、全体的に見れば両チーム共にリズムの変化に乏しく、強度もあまり高くない低調な立ち上がりだった。


そうなっていた理由は両チーム共にボール保持、ボール前進があまり整備されていなかったからだろう。

どちらも3-4-2-1の布陣で、ボール非保持では5-2-3から守備のファーストラインをボールが超えれば5-4-1のブロックを組む形で守備をしていたのだが、これに対してボール保持側もシャドゥの選手がブロックの外に降りてきてボールを持つことしかできていなかった。

この図ではセレッソの清武が降りているが、横浜FCは松尾が頻繁に降りていた。


こうすれば確かにボールは持てる。ただ、シャドゥの1枚が下がってしまうと相手の5-4のブロックの中にいるのは1トップと下がっていないもう1人のシャドゥの2人だけ。それではブロックの中にパスも入れられない。なのでブロックの外でボールを動かしているだけになっていた。

例えばある程度の時間帯までは0-0で推移してどこかで一気にスピードアップしようという狙いがあったかもしれないので、もしかしたら横浜FCにとっては意味のある行為だったのかもしれないが、少なくともそんな仕組みも狙いもない今のセレッソにとってはこの時間帯に試合のテンポを落とすことで得られるメリットは何もない。


■ギクシャクするピッチ内

しかし10分〜15分ぐらいから少しづつ試合が変わってくる。

両チームの強度が低いことは変わらないのだが、セレッソが少しづつボールホルダーへのアプローチが行けなくなり、5-2-3から5-4-1ではなく最初から5-4-1になってラインを下げてしまう場面が増えていった。


そうなった要因はおそらく横浜FCがいわゆるミシャ式の可変。CHの高橋が最終ラインに降りる形を見せるようになったからではないかと思う。

横浜FCがミシャ式の可変をした当初、清武は5-2-3の前線3人が並ぶ形ではなく、中盤に残る瀬古を捕まえるような5-2-1-2の1のような立ち位置を取ろうとしていた。これは鳥栖戦でやった形そのものである。

しかし鳥栖のやり方と横浜FCのやり方は全く違う。なので清武が瀬古樹を、タガートと坂元が韓浩康と高橋とマッチアップするような形をとると、3バックの両サイドにいた伊野波とガブリエウが完全に浮いてしまい、誰もアプローチに行けない。

なので清武と坂元は両サイドに。これで5-4-1になり、韓浩康と高橋に対してタガート1人なので出来る事も減る。


そんな展開の中から生まれたのが19分の横浜FCの先制点。

うまく制限をかけきれない中でフリーの伊野波から入ったアーリークロスはチアゴがクリアするも、そのこぼれ球を瀬古樹がワンタッチでパス。これを渡邉千真が上手く収め放ったシュートがゴールネットを揺らした。

この場面は西尾がラインを上げきれなかったとも言えるが、チアゴのクリアのタイミングでラインを上げていたとしてもギリギリオフサイドに間に合うかどうかだっただろう。ではなぜ西尾があの場所にいたかというとボールホルダーに全くプレッシャーがかかっていない状態でクロスを入れられているから。前でチアゴはカットしたものの、西尾としては渡邉千真についていくしかない。

それだけにチアゴのクリアボールをワンタッチで渡邉千真につけた瀬古樹の判断は素晴らしかった。セレッソも5-4-1で守っているし、この時もシャドゥの松浦が降りてボールを受けているので横浜FCとしては有効な攻撃の形を作れていたわけではない。あのタイミングであのスピードのパスでなければ得点にはつながらなかっただろう。


そして、特にこの失点後からピッチ内では選手間の意思疎通が上手く取れていないギクシャクした状態に陥っていた。実際にはアプローチに行けなくなった15分ごろから始まっていたが、失点後はそれがより顕著になった。

ビルドアップ時のポジショニングについて藤田やジンヒョンからチアゴが何度も言われていたのがこの時間帯。そしてチアゴも坂元や松田陸、西尾、清武らにずっと何かを言っていたし、それをベンチにも盛んに伝えていた。

チアゴが言われていたことはシンプルで、ボール保持で西尾や瀬古歩夢らの両サイドにいる選手にパスを出した後に斜め後ろのポジションをとること。サポートポジションを取れということだった。

一方チアゴの言っていたことは、言葉がわからないのでアクションや言っていた状態・タイミングで想像するしかないのだが、おそらく攻守においてサイドの高い位置を使えていなかったことに関するものじゃないかと思われる。

例えばボール非保持の時。セレッソは全くボールホルダーにアプローチできていない状態になっていて、低い位置で両サイドに開いた伊野波やガブリエウのところからボールを運ばれていたのだが、そこに対して坂元や清武にアプローチに行けということを盛んにアピールしていた。

彼らにすれば前には行きたくても行けない状態。だから前は捨てて後ろを守るという判断なのだろうが、チアゴにすればここにプレッシャーをかけられないので全体がズルズル下がるしか無くなってしまう。

そしてボールを持っても両サイドが高い位置を取れないので後ろでボールをもつしかない状態になっているのだが、サイドの選手にしてみれば前に出ても相手に捕まるだけなので最初から高い位置は取れない。


そんな状態の中で飲水タイムに入ったのだが、せっかくのブレイクタイムにも関わらず改善はなし。

さらに飲水タイム直後の30分にはマギーニョがそもそもオフサイドなので実際にはピンチでも何でもないのだが、オフサイドディレイによってゴールネットを揺らす場面を作る。チームの雰囲気があまり良くなさそうだったので心理的影響を考えてもこういうのはあまり好ましくない。

東京オリンピックのニュージーランド戦でオフサイドディレイがあった際に、タレントの櫻井翔さんが「ピンチだった」と振り返っていたことに対して、八木あかねさんが、「オフサイドの反則が採用されたんだけど櫻井さんたちに「ピンチだった」と思われている。やっぱりオフサイドディレイって罪だな。」とツイートされておられたが、本当にオフサイドディレイは罪だと思う。


正直なところ、チームとして「これはちょっとマズいかも・・・」と感じてしまう状態で、飲水タイムに横浜FCのベンチから聞こえる「相手に合わせるな、絶対に合わせるな」という声が印象的だった。


■全てを払拭したセットプレー2発

この嫌な展開を変えたのはチアゴのセットプレーからの2発。

自身が倒されて得た丸橋のFKからチアゴが頭で合わせて34分に同点ゴールを決めると、そのわずか3分後の37分に今度は藤田のCKから再びチアゴが頭で合わせてゴール。

1点目は高橋秀人に、2点目は韓浩康にマークされているのだが、マーカーをものともしないパワフルなヘディング。何の脈略もないところからセレッソが2点を奪い一気に逆転に成功した。


この逆転ゴール直後のタイミングとなる38分にセレッソは西尾に代えて豊川雄太を投入。布陣を4-4-2に変える。


そして後半開始から横浜FCは松浦に代えてサウル・ミネイロを投入する。


■4-4-2にして変わったこと

セレッソは4-4-2に布陣を変えたことで守備のスタート位置が高くなり、ずるずるとブロックを下げることがなくなった。

2トップで中央に制限をかけ、サイドに出てもSHが出ていくことができる。そしてそもそも横浜FCは立ち上がりからシャドゥが降りる形でしか上手くボールを運べていなかったのだが、そこにもCHが対峙できる。

ミスマッチが生じるので逆サイドは空きがちなのだが、横浜FCはそこまでボールを届けられないのでミスマッチを効果的に使うことはなかった。


そしてセレッソのボール保持、横浜FCのボール非保持では、セレッソが布陣を変えたことで横浜FCは当初の5-2-3でセットする形だとセレッソのSBに対してアプローチに行けなくなった。なので後半開始から前線の1トップ2シャドゥがボールサイドにずれる形に変更。

これであればシャドゥがSBにアプローチにいきながら、SHはWBで、CHはCHで捕まえることができるという算段である。


しかし横浜FCのこの形、というか特に最後のCHがCHに行く形はセレッソにとって狙い目だった。

それが最初に現れたのが52分の場面


奥埜がバックパスでキム・ジンヒョンに戻したところから、キム・ジンヒョン、奥埜、藤田、奥埜と渡って内側に入ってきた清武へ。

ここからのパスは通らなかったが、清武が横浜FCのCHの裏で前向きでフリーでボールをもつことに成功した。


プレビューでも少しだけ触れたが、横浜FCの守備を崩すならこの形。5-4-1は完全に撤退してしまうとなかなかボールを運ぶことは難しいのでできるだけ前で止めたい。そのためCHが相手のCHを捕まえに行こうとする。リードされている状況なら尚更だろう。

そうなるとどうしてもCHとCBの間にスペースが生まれやすい。


前半はここを全く使うことができていなかったのはセレッソが横浜FCと同じ3-4-2-1だったからだ。例えば同じ状況で奥埜と藤田に高橋と瀬古樹が食いつき、清武がその背後に入ってきても伊野波がついてくることができた。(もちろんそれを踏まえた使い方もあるが、この試合のセレッソにはそんなものはなかった)

しかしこの場面では伊野波の前にタガートがいるので伊野波は清武にアプローチには行けない。そもそも清武とマッチアップしていたのはマギーニョだった。しかし右WBのマギーニョがCHの裏に行く清武までついていくのは難しい。

得点シーンではないのでハイライトには入っていないが、この場面を見返すと藤田が奥埜からボールを受ける前に一度チラッと清武の方を確認していることがわかる。


そしてその直後の55分。今度はキム・ジンヒョンから豊川へのパスからだが、やはりここでも相手CHの背後で清武がフリーでボールを受けることに成功。さらに豊川が下がって受けたことで相手CBも1人前に出てきており、ゴール前には前回よりもスペースがあった。

そこで坂元が右サイドから斜めに走り込み、清武からスルーパス。坂元が上手く相手のタイミングを外して放ったシュートがゴールネットを揺らしセレッソが3点目を奪った。

この場面は清武からのスルーパスと坂元のランニングからシュートというオンの場面に目が行きがちだが、そもそも清武が相手のCHの背後でフリーでボールを受けたというオフの部分が得点に繋がった最大の要因だった。


■高橋の退場で試合は決する


セレッソの得点直後の56分に横浜FCは2枚替え。渡邉と伊野波に代えてフェリペ・ヴィゼウと安永玲央を投入。高橋が3バックの右に移動する。そしてセレッソは64分に藤田とタガートに代えて原川力と加藤陸次樹を投入。藤田はこの直前に瀬古樹に対するプレーでイエローカードを受けていたためだろう。


そして71分、キム・ジンヒョンからのゴールキック一発で背後に抜け出そうとした豊川を高橋が後ろから引っ張ってしまいレッドカード。完全にDOGSOの要件を満たしたファールだった。

この場面では55分のセレッソの3点目のシーンの起点となったキム・ジンヒョンから豊川への縦パスの時のような加藤の動き出し、加藤が横浜FCのCHの裏に下がる動きに対して3バックの中央の韓浩康がついていった。そのタイミングでの豊川のCBの間を抜け出そうという動きとキム・ジンヒョンからのゴールキック。これに対して高橋は正しいポジションを取れていなかったので豊川が入れ替わることに成功し、高橋は後ろから引っ張るしかなかった。


これで試合は決まり。


1人少なくなった横浜FCは78分にガブリエウと松尾に代えて袴田裕太郎と武田英二郎を投入し4-4-1に。

セレッソは80分にチアゴと清武に代えて鳥海晃司と高木俊幸を投入。


サウロ・ミネイロのスピードやフェリペ・ヴィゼウのパワフルな推進力、ブローダーセンのビッグセーブなど横浜FCの新外国籍選手のポテンシャルを感じさせる場面はあったがそのまま試合終了。

セレッソ大阪が3-1で横浜FCを下し、リーグ戦12試合ぶり、ヨドコウ桜スタジアムではリーグ戦初となる勝利を挙げた。


■その他

結果的には快勝となったが、ギリギリの試合だった。

ギリギリというのは結果のことだけでなくチーム状態のことでもある。

セットプレーからのチアゴの2ゴールがなければ、結果だけでなくチーム自体が大変な状態になっていたかもしれない。前半はそれぐらいの状態・チームの雰囲気だった。

チーム内部のことはチーム内部の人間しかわかり得ないが、かなり危ない状態だったように見えた。


そしてスタートから使った3バックだが、単に選手がそういう並びになっているだけでチームとして何をしたいのか、何をしようとしているのかが全くわからなかった。結果的によく言われる「後ろに重い」という状態になっていたのだが、どこでどういう形で守備を始めて、どこでどうしてボールを運ぼうとしているのかがチームとして統一されていなかったからだろう。


クルピ監督は3バックを継続した理由について「(鳥栖戦で機能した)3バックの完成度を高めたかったから」として、機能しなかった理由を「連戦で準備時間が短かったから」としたが、「準備期間の短さ」が機能しない理由にならないことは僕たちはすでに知っている。


2 件のコメント :

  1. お疲れ様です。

    書かれている通り、チアゴの2発がなければどうなっていたかわからない(勿論悪い意味で)試合でした。
    ただ、その2発からは運気がセレッソに味方したかのような展開でしたw

    軽いプレーが多かった西尾を下げて4バックに変えたこと。
    横浜FCの意識が統一されていない間(のように感じた)に3点目が入ったこと。
    横浜FCが、セレッソにリードされている状態なのに後ろに重い布陣で、セレッソの守備が下げられ続ける状態にならなかったこと。

    連敗を止める大きな1勝ではありましたが、手放しで喜べる程の試合でもなかったです。

    ただ、試合の終盤は珍しく試合のコントロールもできて、選手やサポは一息つけたんじゃないかと。体力的にも精神的にもw

    返信削除
  2. おつかれさまです。
    最後に触れられていた3バックで何がしたいかわからなかった、という点についてなのですが、4-4-2にしても仰るように前から守りに行けるという利点は確かにあるようにも思うんですが、誰かが行ったらそこを埋める、誰が埋めるのか、動いた選手のところは誰が埋めていくのか等は整備されておらず基本広範囲を埋められる4-4-2で立っていればリスクは低い、…いや立っているだけのイメージしか無いですね。
    ロティーナのようにボールサイドを圧迫する、バイタルに鉄壁を作って外から入れても跳ね返すみたいな意図や意思疎通は残念ながらあの爺様には無いです。
    試合後のコメントを聞いていても緻密に張り巡らされた戦術でなく武器だけ持って闇雲に突入しては地雷踏んだり罠にかかったり運良く敵がいれば倒せるぐらいの安っぽいシュミレーションゲームを見ているよう。
    ここまで降格年と同じだけの勝てない試合が続いたにも関わらずこの老爺を切らなかったのは功労者にカップ戦のタイトルを取らせて"歴史"に残したいといったような無益な拘りなのか、それとも単にお金が無いのか、フロントの能力の無さにもう怒りを通り越して哀れみに近いものを感じます。
    早くこの地獄のシーズンを残留で終えて監督経営陣を刷新していただきたい。次もいい人が来るなんて目処も、コネクションも無さそうですが。

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