2021年8月28日土曜日

明治安田生命J1リーグ第27節 VS. ガンバ大阪 プレビュー

 2021年8月28日 19時00分:パナソニック スタジアム 吹田

予想スタメン

小菊監督の下で迎える最初の公式戦は今季2度目の大阪ダービー。明治安田生命J1リーグ第27節、セレッソ大阪は敵地パナソニックスタジアム吹田でガンバ大阪と対戦する。

 

■前回の対戦

前回の対戦は5月2日にヤンマースタジアム長居行われた第12節。緊急事態宣言が発令され無観客での開催となった試合は1-1の引き分けに終わっている。

前回対戦時のスターティングメンバー

両チームのスターティングメンバーは上記。

セレッソはこの試合でダンクレーとチアゴが加入後初先発。そして坂元が負傷から復帰し5試合ぶりの先発となる。

一方のガンバは開幕戦以来となる4-3-3。CFにはレアンドロ・ペレイラ、両サイドには小野瀬と宇佐美が入る。

そしてこの時点ではセレッソの監督はレヴィー・クルピ。ガンバの監督は宮本恒靖だった。


 序盤はガンバがボールを保持する展開となる。

 ポイントだったのがアンカーの山本。ガンバはこの試合で突如として4-3-3を復活させたのだが、おそらくキックオフからしばらくの間、セレッソはガンバの布陣を把握出来ていなかったのではないかと思われる。ビルドアップの仕組みがあるわけではないガンバはCHがボールを持てるかどうかが生命線。そのため中盤のセンターで2CHのセレッソに対して数的有利をつくれる形として4-3-3を選択するに至ったのだろう。


しかしガンバはアンカーの位置ではボールを持てるものの、IHの動きが少なくWGも大外に開いているので1トップが孤立。フィニッシュまで持ち込む回数も少なかった。

そして時間の経過とともにセレッソの選手たちがガンバの布陣を把握するとサイドから背後を狙うパスを多用し形勢逆転。セレッソがシュートを増やしていった。


ガンバにとって難しかったのが4-3-3での守備が整備できていないこと。

特に左IHに入った矢島がどんどん動いてしまうので真ん中にスペースができてしまうこともあった。前半終了間際にセレッソがPKを獲得するも豊川が失敗。前半は0-0で折り返すこととなる。


そんな試合を動かしたのが途中出場の中島。清武のクロスから豊川が落として藤田が流したところから中島が右足で決めてゴール。74分にセレッソが先制する。


しかし試合終盤にFKから昌子が放ったシュートが加藤の手にあたりPKの判定。確かに手にはあたっていたがハンドを取るにはちょっと厳しいかなと思わせる判定だったが、これをパトリックが決めて82分に1-1の同点となる。


試合終了後に矢島の「一人一人のポジショニング。誰がどう動いたら、ここに誰がどう動いて、みたいなところをもっと突き詰めていけば、チャンスが生まれると思うんですけど。攻撃と守備、どっちがいい、ダメじゃなくて繋がっていると思う」というコメントが象徴的だったように、内容的にはガンバがかなり苦しい試合だったが、結果は1-1の引き分けに終わっている。


■現在のガンバ大阪

前回対戦ではなんとか引き分けに持ち込んだものの、その後川崎F、広島に連敗し1勝4分5敗となったところで宮本監督の事実上の解任を発表。そして後任が決まるまで暫定として松波正信氏が指揮を取ると発表されたが、後任人事が難航したことでACLまでに間に合わず、そのまま松波氏が監督に就任することとなった。

迎えたACLではタイのチームから勝ち点を奪取り切れず、Jリーグ組では唯一となるグループステージ敗退となったが、短期間で6試合をこなしたことで戦い方自体は定まったようにみえた。


基本の布陣は3-4-2-1。三浦弦太、昌子源、キム・ヨングォンという実績も経験もあるCBを3人抱えており、CFにはレアンドロ・ペレイラもいるのでいるのでこれしかないというところか。


戦い方のコンセプトとしては宮本監督時代から大きな変化はなく、できるだけ敵陣でプレーする時間を増やそうというもの。そのためボール非保持では前線3人で中央を閉めながらプレッシングをしかけ、サイドにボールを誘導したところでWBが前に捕まえに行く形がメイン。

なのでかなり人への意識が強い守備となっている。

ただ、今の順位からみてもわかるように、このプレッシングもそこまで機能しているとは言い難い。プレッシングに行くもボールを取れないことも多く、ボールを取りに行ってしまう分スペースを作ってしまいそこから相手にボールを運ばれることも多い。ただ3バックの能力は高いし、GKには東口順昭がいるので、それでなんとか帳尻をあわせているといったところか。


ボール保持に関しては、ビルドアップが整備されているわけでもないのでCHからどれだけ前にボールを付けられるか。井手口が以前のようなパフォーマンスをなかなか見せることができておらず、CHのレギュラー格といえるのが倉田秋と山本悠樹で、ここから宇佐美貴史と矢島慎也の両シャドゥとレアンドロ・ペレイラにボールを付けて、3人の個人技やコンビネーションで中央を突破しようとするのがファーストチョイス。そこで相手が集まればサイドに展開してクロスという形が多い。

ただ、早いタイミングで前線にボールが渡れば中央・サイドと攻撃ルートを使い分けることができるが、相手にスペースを消され攻撃に時間がかかってしまうと、レアンドロ・ペレイラが下がってしまうことも多く、こうなってしまうとサイドに展開してもクロスのターゲットがおらず、ボールは保持するものの攻めあぐねるという展開になることも多い。


攻めあぐねるという展開になったときに頼りになるのはパトリックだが、8月6日の横浜FM戦を最後にベンチ外が続いているので怪我をしている可能性もある。

そのパトリック以外でも離脱している選手も多く、主力クラスでは福田湧矢、高尾瑠、ウェリントン・シウバが離脱していると思われる。


■予想スタメン

ガンバ大阪の予想スタメンだが、横浜FCに敗れた前節は多くの選手を入れ替えている。最下位に敗れたということで選手の入れ替えをおこなった是非も話題になっていたようだが、ガンバの場合は開幕直後に試合ができなかったためACLから戻ってきた後、東京オリンピックの中断期間もずっと試合を行っていたので休ませるタイミングとしては間違えていないと思う。

なので前節休んだ選手が戻り、前々節FC東京戦に出場した選手のほとんどがスターティングメンバーに並ぶ可能性が高そうだ。

ここ最近のガンバはダービーで何かしかけてくることが多いので、もし何か仕掛けてくるとすれば、前節リーグ戦では久々の先発復帰となった井手口の起用か離脱組の復帰になるか。


セレッソ大阪の予想スタメンだが、小菊監督の初戦でもあり、前節から中2日での試合ということもあり、どうなるかは全くわからない。

しかし大きくメンバーを変えることはないのではないだろう。また布陣も3バックではなくそのまま4-4-2を継続する可能性が高いと思う。


■小菊昭雄新監督

今回監督に就任した小菊昭雄氏。プロの経験はおろかトップリーグでのプレー経験も無く、大学卒業を前に1998年に下部組織のコーチにアルバイトとしてクラブに加わると、そこからセレッソ大阪一筋。2002年〜2005年にはスカウト、2014年、2015年には強化部門に籍を置く期間もあったが、2006年以降はほとんどの期間をトップチームのコーチングスタッフとしてトップチームを支えてきた人物である。

対外的に最も有名な功績はスカウト時代に香川真司を連れてきたこと。しかし個人的にはそれ以上に2006年以降にコーチとしてチームを支えてきた部分での功績の方が大きいと思っている。


小菊監督は2006年以降のほとんどの期間でトップチームのコーチだったので、小林伸二、都並敏史、レヴィー・クルピ、セルジオ・ソアレス、大熊裕司、パウロ・アウトゥオリ、大熊清、尹晶煥、ロティーナという2006年以降のほとんどの歴代監督と共に仕事をしてきた。

ただ、特に外国籍監督の場合は必ずと言っていいほど、クルピにとってのマテルやロティーナにとってのイバンのような自身の腹心であるコーチを連れてくる。そのためコーチではあるが本当にチームの中枢として監督と共に歩むといったような立場ではなかった。

なので行っていたのはコーチとして選手をサポートすること。選手にとっては例え監督が変わっても常にチームにいて自分たちをサポートしてくれる兄貴分的な存在だったのではないかと思う。


例えば最も期間が長かったクルピ監督時代だと、クルピは監督と選手の間に明確に一線を引き、監督自らが選手に積極的にコミュニケーションをとったりすることは殆どない。

これは良いとか悪いとかではなくクルピのスタイル。例えばこうすることでたまにコミュニケーションを取ることがより効果的になるし、選手と監督という立場を明確にすることでチームの規律を保つことができるという効果もある。

しかし、その反面固定されたスタメン組から外れている選手、そこから外された選手、なかなかそこに加われない選手にとってはかなり厳しい。特にクルピの場合は練習ではあまり負荷をかけない(固定されている主力組にとっては試合が続くため、あくまで練習はコンディション維持がメイン)ので、試合に絡んでいない選手はトレーニングで自身の状態もなかなか上がらないという側面もある。


これをサポートしていたのが当時の小菊コーチ。

選手の居残り練習に付き添い、共に汗をかきながら全力でサポートする。クルピ監督時代でいえば2010年の3位や2013年の4位。そして尹晶煥監督時代のいわゆるルヴァン組が活躍しカップ戦2冠を達成した2017年は本当に小菊コーチの存在抜きでは語れないだろう。


小菊監督就任後に2010年から2012年まで所属するも1度も公式戦に出場することのなかった荻野賢次郎選手がツイッターに投稿していたが、選手にとっては本当に親身になってサポートしてくれるありがたい存在だったのだろう。

なので香川真司がボルシア・ドルトムントに移籍を決めるときも、シーズンオフに小菊コーチと共に渡独し、相談しながら移籍先を決めたという。

こういう存在は小菊コーチ以外にちょっと考えられない。


そして今回初めてトップチームの監督に就任するわけだが、今のチーム状況を考えると小菊監督は適任だと思っている。

今のチームに必要なのは新しい戦術やトライよりも、まずは選手が気持ちよくプレーできる環境を作ること。選手がよく知り、選手のことをよく知る小菊監督の下ならばそれが可能だと思う。


初戦がダービーということでかなりの重圧はあるだろうが、全力で戦い勝利を掴んでほしい。


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