スタジアム | ベスト電器スタジアム | 主審 | 高山 啓義 |
入場者数 | 4,063人 | 副審 | 武部 陽介、堀越 雅弘 |
天候 / 気温 / 湿度 | 曇 / 26.9℃ / 79% | 第4の審判員 | 松本 大 |
VAR | 荒木 友輔 | ||
AVAR | 上村 篤史 |
メンバー
福岡
C大阪
- 監督
- 長谷部 茂利
- 監督
- レヴィー クルピ
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
(入場者数上限「5000人以下」又は収容率「50%以下」)での試合開催
<監督コメント>
<選手コメント>
長期連戦のスタートとなる明治安田生命J1リーグ第24節。敵地ベスト電器スタジアムでのアビスパ福岡対セレッソ大阪の一戦はアディショナルタイムの失点で2-1の敗戦。J1記録に並ぶリーグ戦5試合連続引き分けの次の試合は黒星となり、4月18日の第10節浦和レッズ戦での勝利を最後に、リーグ戦での未勝利期間は3ヶ月を超える11試合連続となった。
■メンバー
アビスパ福岡のスターティングメンバーは前節から2人入れ替え。前節の退場で出場停止の志知孝明に代わって入るのは湯澤聖人。そして左SHには杉本太郎ではなく本職はCHの田邉草民が起用された。田邉の左SHは3月10日の第3節横浜FM戦以来となる。
右SHは前節同様に金森健志となりジョルディ・クルークスはベンチスタート。また7月10日の横浜FM戦以来ベンチからも外れているブルーノ・メンデスはおそらく怪我なのでベンチにはジョン・マリが入った。
一方、セレッソ大阪のスターティングメンバーは、こちらも前節から2人入れ替え。累積警告で出場停止だった松田陸が復帰。また高木俊幸に代わって藤田直之が起用され、藤田がCH、清武弘嗣が左SH、奥埜博亮がFWとなる4-4-2の布陣を採用してきた。
ここ最近の試合では、中盤でのボールを保持することと、前線の選手を孤立させないことのバランスに苦しんでいるので、クルピ監督の主な解決手段である人数と人選をいじることでなんとかしようとしているのだろう。
そして藤田にとっては今季の分岐点の1つでもある5月26日の第16節鹿島戦以来、地元福岡で久々のスターティングメンバー入りとなった。
■セレッソのボール保持
4-4-2でスタートしたセレッソは立ち上がりから松田陸を最終ラインに残した片上げ3バックでボールを保持し、前進を狙う。
おそらくセレッソの選手がピッチ内でイメージしていたのは相手のSHを動かすこと。
この選手を動かすことでサイドや中へのパスを入れて崩しにかかろうというイメージだったのだろう。
そのため松田陸のところでSHを動かせないとやり直し。逆サイドへ展開して瀬古のところから同じような形を狙う。
これが最も上手くいったのが立ち上がり14分のチャンス。奥埜がサロモンソンの裏をとった場面。ここからのクロスにタガートが飛び込むという形を作っている。決まらなかったがボックス内でストライカーらしい動きを見せるタガートの上手さも感じさせる形だった。
ただ、福岡にしてみれば松田陸と瀬古のところがビルドアップの起点になっていることは十分わかっている。なのでそこは十分警戒しているし、セレッソにしてみてもここを起点にしようとは思っているもののじゃあ福岡はどう守るからどうやってどこにボールを届けていこうというところまでしっかりと準備しているわけでもない。なのであくまで上手くいくのは選手それぞれのイメージがピタッとハマった場合のみ。さらに言えばスタートが松田陸と瀬古のところにボールが入ればどうしようというのがあるわけでもないので、結局はボールを運ぶために松田陸や瀬古が背後や逆サイドに長いボールを蹴るという場面がかなり多くなっていた。
しかしこの段階では福岡もポジションを動かされているわけでもないので、よほど正確なボールと受けての動きだしが合致しない限りは大きなピンチにはならない。
前半セレッソがボールを保持する時間は長かったがチャンスが作れていたわけでは無かったのはそのためである。
■福岡のボール保持
一方の福岡のボール保持だが、このチームはやり方がはっきりしている。
それがわかりやすいのが中継のハーフタイムで紹介された2つのスタッツだろう。
ボール支配率では福岡の39%に対してセレッソは61%。セレッソが圧倒的にボールを保持していることがわかる。
しかしその下にあるプレーエリアでは福岡のディフェンシブサード/セレッソのアタッキングサードの比率は僅かに19%。福岡のアタッキングサード/セレッソのディフェンシブサードが38%なので半分しかない。
しかしだからと言ってセレッソが圧倒的に攻め込まれていたわけではない。そもそもボール保持率ではセレッソが大幅に上回っているのだから当然である。ではなぜこういうことになるのか。その理由は自陣でのプレー選択にある。
それがわかりやすいのが同時に紹介されていた平均ポジションだろう。福岡の平均ポジションを見ると2番の湯澤と3番のサロモンソン、この両SBの平均ポジションが異様に高い。
この平均ポジションは選手のポジショニングを示すヒートマップとは異なり、あくまでボールを触った場所が基準。なのでこの両SBがこれだけ高い位置になる理由は、高い位置でしかボールを触っていないから。つまりビルドアップには全く参加していないのである。
ではどうやってボールを運んでいるかというと至ってシンプル。平均ポジションが自陣になっている39番の奈良と33番のドウグラス・グローリ、そしてGKの村上からのロングボール。これを9番のデルガドと11番の山岸に当てる。ここから37番の金森と19番の田邉がセカンドボールを拾うことができればそこにSBが出ていってそこでボールを受ける。なので両SBの平均ポジションが異様に高くなるのである。
だがロングボールからの空中戦なので当然ながらパスの成功率は低い。実際にこの試合でも空中戦の勝利数は福岡の17回に対してセレッソは22回とセレッソが上回っている。(敵陣・自陣の合計数)
しかし福岡はそんなことは別に気にしていない。もちろん全く勝てないとなると別だが何度かでも勝てるならOK。ボールを保持すること、運ぶことに対する考え方が全く違うのである。
またさらにこの試合では対セレッソということで福岡にいくつかの狙いが見られた。
その1つがロングボールのターゲットとなるファンマはほぼかならず瀬古とマッチアップさせること。
元々のポジションがファンマが右なので瀬古サイドにはなるのだが、ほとんど入れ替わることなくそれにしても徹底していた。
これに関してはチアゴの方が高さがあるので第1ターゲットとなるファンマが空中戦で勝負するなら瀬古という狙いはあっただろうという点が1つ、そしてさらに言えば動きの多い山岸をチアゴに当てるという狙いもあったのだと思われる。
単純なハイボールの競り合いに強さを見せるファンマと異なり、山岸はロングボールに対して空中戦だけでなくスペースに動いたり、下がってきて受けたりする。そしてチアゴはこうなると高確率で食いつく。つまり動く。
チアゴが動いてしまうと右SBの松田陸はそれをカバーするために内側に絞らざるを得ない。となるとサイドのスペースが空く。前半何本もセレッソにとっての右サイド、福岡にとっての左サイドである田邉と湯澤からクロスボールが上がっていたのはそのためである。
もう1つが失点シーン。この失点について試合後のコメントで山岸が「(相手の)ディフェンスラインが下がるのが早いから、そこにスペースが空くと言われていて」と話しているが、クロスはDFラインの前を何度も狙っている。
見事に決められたのが失点シーンなのでそこの印象が強く残るが、実は8分のサロモンソンからのクロスも狙っていたのはDFラインの前。18分の金森のチャンスはスライドの大外だったが、その後の時間帯での左サイドからのクロスもDFラインの前を狙っている場面が多い。
解説者の方がやたらサイドを前に行かせたがっていたが、アーリークロス気味にDFラインの前に入れるというのが福岡の狙いの1つだったのだろう。
ということで39分に福岡が山岸のゴールで先制。
試合中にもツイートしたが、これがセレッソにとって今季クロスからの6失点目。1試合少ないとはいえそこまでめちゃくちゃ多いわけではないリーグ9位タイという平均的な失点数だが、ちなみに昨シーズンのクロスからの失点数は5(リーグ2位)。一昨年の2019シーズンは3(リーグ最少)だった。
ちょっと嫌な展開になったなと思っていたが、前半アディショナルタイムの45+1分に藤田のロングスローからのセカンドチャンスでアダム・タガートがJ1初ゴールを決めて同点に。最初のチャンスのところでも書いたが、動き直しやDFの前に入ってくる動きなど実にストライカーらしいゴールだった。
■後半の狙い
前半はなんとか1-1で折り返し。
福岡に決定機を何度も作られていたわけではないし、ボールは持てていた。なので5試合ぶりにハーフタイムでの交代はなかったが、前半にどちらがやりたいことができていたか、準備してきたことができていたかと言えば福岡だっただろう。そもそも福岡はボール支配率に興味はないし、チャンスを何度も作ることも考えていない。
後半のセレッソはおそらく坂元を高い位置でプレーさせることを狙っていたのだろう。
後半開始直後には藤田がチアゴの右に落ちて松田陸を前に出す形をとってきた。ただしこの形でも松田陸は内側に入るので坂元の立ち位置はあくまで大外。このあたりは松田陸のプレーの幅の広さを表している。
そして実際に後半開始直後には坂元がドリブルからシュートまで持ち込んでいる。
ちなみに先日松田陸のクロスの数が減っているといった趣旨のコメントをいただき、おそらくビルドアップの形などでそうなっているのではないかという意味だと思われるが、2,3月5.0本、4月6.0本、5月5.0本、7月4.33本、なのでそこまで大差はない。そして勝っていた2.3月にめちゃくちゃ多かったわけでもない。
実際にこの試合でも坂元のシュートの場面は最初に内側にいるもののそこから外に出てきていたし、直後の51分には坂元にボールが入った時に後ろから出てきてクロスを上げていた。
ただ、松田陸が出て行くことで福岡にカウンター気味にボールを運ばれる場面は増えた。カウンターケアできる人数が減るので当然といえば当然なのだが、前半の出来から考えるとリスクを取らざるを得ないという判断か。
セレッソはこうして後半に少しプレーを変えたが、福岡は大きな変化はなし。前半からやりたいことができていたのでこれでOKということなのだろう。
福岡のカウンターが増えたので一見ボールが行ったり来たりするオープンな展開に近づいているかと思いがちだが、福岡としては人数の掛け方、バランスの取り方は変えていないのでオープンな展開にはならない。そして62分にもチアゴが前に食いついたところから福岡はチャンスを作っていたし、66分のサロモンソンのグラウンダーのクロスはDFラインの前を狙っている。
セレッソとしては前に少し人数をかけているので何とか個人技で突破する場面や選手間のイメージが合う場面を一致させたいところか。
■アディショナルタイムに試合は決する
ここから両チーム共に選手交代。最初に動いたのは福岡で67分に田邉に代えて杉本太郎。そしてセレッソが72分に原川に代えて加藤陸次樹を投入し奥埜をCHに下げると、78分に福岡は金森とファンマに代えてジョルディ・クルークスとジョン・マリを投入。そしてセレッソが80分にタガートに代えて豊川雄太を投入。最後に福岡は84分湯澤に代えて輪湖直樹を投入した。
福岡からすればやりたいことはできている状態。なので強度が下がった選手から入れ替えていく。そしてクルークスは切り札である。
クルークス以外の選手は同じ役割同士での選手交代だが、クルークスだけは内側でプレーしていた金森とは違いサイドでのプレー。サロモンソンとクルークスの2人からのクロスで勝負を決めようということなのだろう。
一方のセレッソは何がかけてて、何が悪いかというのが曖昧なので難しい。FW2枚の投入はここを変えるしかないのだろう。そしてこの試合では残すなら藤田というのは妥当なところである。そして形を変えたり、人のバランスを変えないのは1-1だから。これが0-2ならもっと大胆な交代ができるが1-1ならバランスは変えられない。
この交代が次々と行われている中で、74分に松田陸が個人技からシュートを放つが村上がスーパーセーブ。ここは止めた村上を褒めるしかない。
そして79分に加藤が奈良に倒された場面でイエローカードが出る。
しかしこの場面で奈良が退場にならなかった理由がちょっとわからない。
どうみてもDOGSOの4要件
・守備側競技者の位置と数 (守備側チームに、他に守備ができる選手がいない)
・反則とゴールの距離 (反則した場所とゴールが近い)
・プレーの方向 (攻撃側の選手がゴールに向いている)
・ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
を満たしていると思うのだがなぜかイエローカード。
もし反則がペナルティエリア内でPKならば三重罰回避でイエローカードになるのは理解できるが、反則がペナルティエリアの外でFKならレッドカードではないかと思う。
そして試合が決したのはアディショナルタイム。
89分に豊川と村上が激しく接触したことでアディショナルタイムは大幅に延長。
その結果90+6分にクルークスが切り返して左足で狙ったシュートがそのままゴールに吸い込まれ失点。
左足が利き足なので丸橋はもう少し距離を詰めたいところではあったが、クルークスも坂元同様に左利きながら縦にもいける選手なので寄せきれなかったか。また瀬古の動きをみているともう少し前でDFラインを設定しようとしていた様子が伺える。しかしチアゴはラインを下げたのでジョン・マリの存在があってキム・ジンヒョンも反応できなかった。福岡としては試合展開も含めてしてやったりのゴールだっただろう。
そしてこのまま試合終了。2-1でアビスパ福岡が勝利し、セレッソは5試合連続引き分けの後の黒星。リーグ戦の勝ちなしが11試合に伸びた。
■その他
不完全燃焼の厳しい敗戦である。
セレッソとしては個人技爆発以外得点の可能性もなく、ゲームプラン通りに試合を進める福岡が勝ちきった。小田さんもツイートしておられたように福岡が勝つべくして勝った試合だったと言えるだろう。
セレッソにとって引き分けに持ち込めればラッキーだった程度の試合でしかなかった。
東京戦、鳥栖戦と2点ビハインドから3-3の同点に追いつき、アンストラクチャーなカオス状態を作って得点を重ねたわけだが、その鳥栖戦や仙台戦のレビューでも書いたように、セレッソはチームとしてそんな試合がやりたいわけではない。
アンストラクチャーなカオス状態は追い込まれてそうするしかなかったからそうなっただけだし、そもそもそのカオス状態が勝つための道筋として成り立っているわけでもない。3-3の2試合はアンコントローラブルな状態の中で選手がめちゃくちゃ頑張ったから同点に追いついたというだけである。
とはいえ次の試合はまってくれない。ここから順位の近い相手との対戦を含む連戦が始まる。
チームとしてのゲームプランが明確になっていないので大変だとは思うが、何とか個人の爆発でゴールを奪い勝利を掴みたいというのが現状である。
お疲れ様です。
返信削除これで史上最攻に並ぶ11戦連続未勝利となりましたが解任のかの字も聞こえてこないし補強のほの字も無いのはフロントに金も手も無いと言うことかなと。
奈良の件ですがDOGSOくさいなーとは思ってみてましたが、少し膨らんで入ってきていたこともあってボールコントロールのところがもしかしたら満たしていないのかも?とは思いました。