スタジアム | ヨドコウ桜スタジアム | 主審 | 西村 雄一 |
入場者数 | 9,800人 | 副審 | 山際 将史、森川 浩次 |
天候 / 気温 / 湿度 | 晴 / 22.2℃ / 40% | 第4の審判員 | 渡辺 康太 |
VAR | 小屋 幸栄 | ||
AVAR | 岡野 宇広 |
メンバー
C大阪
川崎F
- 監督
- 小菊 昭雄
- 監督
- 鬼木 達
新型コロナウイルス感染予防対策のため、制限付き
<監督コメント>
<選手コメント>
2週間ぶりの試合となった明治安田生命J1リーグ第36節。本拠地ヨドコウ桜スタジアムにチャンピオンチーム川崎フロンターレを迎えての一戦は1-4で完敗。これでリーグ戦連敗となり、小菊監督就任後3度目の2連敗となった。
■メンバー
セレッソ大阪のスターティングメンバーは前節から6人入れ替え。DFラインには松田陸、西尾隆矢、瀬古歩夢、丸橋祐介。CHは奥埜博亮と原川力が入り、両サイドには坂元達裕と清武弘嗣、2トップには加藤陸次樹と山田寛人が入った。
乾貴士は手術のため離脱しているが、DFラインを総入れ替えした前節が大きくメンバーを入れ替えた形だったので、この試合のメンバーが今のファーストチョイスである。
ということで試合前日に今季限りでの引退を発表した大久保嘉人は従来通りベンチからのスタートとなった。
川崎フロンターレのスターティングメンバーは前節から4人入れ替え。前々節に優勝を決めたこともあり川崎Fも前節はメンバーを入れ替えていたのでこれがファーストチョイスとなるメンバー。日本代表に選出されていた山根視来、谷口彰悟、旗手怜央も、得点王争いで前田大然を追いかけるレアンドロ・ダミアンもスターティングメンバーとして起用されている。
また負傷で長期離脱し、前節は4ヶ月ぶりの先発となった大島僚太は今季初となる3試合連続のベンチ入り。古巣対戦となる丹野研太、山村和也もベンチ入りとなった。
■目的地と自由
試合の立ち上がりにはセレッソが敵陣でボールを奪い返し川崎Fのゴール近くでプレーする時間もあったが、早い時間に先制点を奪ったのは川崎F。山根からのパスに脇坂、旗手と繋いで最後はレアンドロ・ダミアンがゴールに流し込み開始わずか5分で先制に成功する。
このゴールでちょっと長めのVARチェックがあったのは、セレッソの選手もアピールしていたようにレアンドロ・ダミアンのいた場所がオフサイドポジションだったからだろう。しかしレアンドロ・ダミアンに届いたボールのラストタッチは西尾。山根はレアンドロ・ダミアンに出した訳ではなく、背後に回った家長にヒールで出そうとしたところ西尾が足を出してプレーをしたのでオフサイドはなし。得点が認められた。
しかし失点はしたものの、ここからもセレッソは高い位置からのプレスを織り交ぜながらの守備と、ボール保持では自陣からキム・ジンヒョンを使いながら川崎Fのプレスをいなすビルドアップとまずまずのプレーは見せており、17分の加藤のシュートや、31分の清武のシュート、それ以外にも何度か川崎Fのゴール近くでプレーする機会も作っていた。
とはいえチャンスの質には差があった。ここからの時間帯もよりゴールに近いボール保持を見せていたのは川崎Fだった。
そうなっていたのは、川崎Fの方がボールをどこに持っていくのかという「目的地」が明確だったからだろう。
試合後のコメントで奥埜が「チームとしてどう最後を崩していくかという部分でも、意識が共有されているなと試合をしていて感じました」と語っている部分である。
川崎Fのボール保持の「目的地」はハーフスペースの一番奥、ポケットと呼ばれる場所。
WGなどで幅を取りながらここにIHが飛び込んでくるのがメインだが、ここにボールを届けるという目的地がはっきりしているので様々なバリエーションがあり、SBが上がって幅をとりWGが大外から内側に入ってくるパターン、IHが外に出てWGが内側に入ってくるパターン。さらにはこの試合では日本代表アウェイ2連戦フル出場の後なので流石にかなりお疲れモードのようでおとなしかったが、前回対戦時にも書いたSBの山根や登里が入ってくるパターンもある。
間で受けるのが得意な選手も多い川崎Fのボール保持は基本的にはここにどうやって入ってくるかから組み立てられてると言ってもいい。
そしてこの試合でここに入るために川崎Fが多用していたのがCBから大外の選手へ少しレンジの長いパス。
これを多用されることでセレッソのブロックは立ち位置の修正を何度もせざるを得なくなるのでどうしてもギャップができやすくなり、そこから一発でポケットを狙えなくても中盤と最終ラインの間でボールを受けてそこからポケットを狙うという形が多かった。
それに対してセレッソのボール保持だが、先に書いたようにある程度ボールを運ぶことはできていたものの、アタッキングサードで手詰まりになることが多かった。これはそこから先、目的地がはっきりしないから。清武や原川の判断、2トップの動きだしや奥埜のフリーランニング、さらには坂元の突破などに任されているので、言い方を変えれば「自由」なのだろうが、見てから選んで決めるのでどうしても判断が遅れるし、イメージが合わない場面も増える。
なのでペナルティエリア近くにまでボールを運んでも結局押し出されてしまう場面も多くチャンスらしいチャンスにまでつなげることはほとんどできなかった。
17分の加藤のシュートの場面は、個々のイメージがあってポケットにボールを運びシュートまで持ち込むことができたが、それ以降に同じような場所を狙うことがなかったことを考えると、偶然狙った場所がそこだったということなのだろう。
またセレッソのプレスに関しては実際に何度か高い位置でボールを奪い返していたようにある程度は機能していた。
個人的にはもっと行くのではないかと思っていたが、FWに「GO」の合図を出す乾がいないのでこれぐらいか。
ただ、プレスに行った時にちょっと面倒だなと思っていたのが左WGにいるマルシーニョ。特にプレッシャーを受けた時に何本か橘田からマルシーニョへのヨーイドンのパスが出ていたが、おそらくこれは見て出したというよりも決めうちのパスなんだと思う。そしてマルシーニョはオフサイドに引っかかる場面もあったが、何度か松田陸を振り切る場面も作っていた。
このマルシーニョは抜群のスピードとドリブルが得意で、技術はあるものの他の川崎Fの選手とは毛色が少し違ってピーキーな選手だとは思うが、チームにうまくフィットすることができているのはボールが来ても来なくても自分のポジションを守れること。
ボールが来ないからといって内側に入ってきたり、受けに下がってきたりしない。なのでこうやって決めうちのパスを出せるのだ。
先ほどの「自由」の話しでいうと、ボールが来ても来なくてもポジションを守っているから「不自由」なのだが、彼がそこにいることで他の選手は自由を得れるし、さらに彼自身も得意な形でプレーできるという自由を得れるのだ。
こうした展開の中で追加点を奪ったのは川崎F。中盤でボールを奪った橘田が身体をぶつけられながらもボールをキープし前に運ぶと最後にレアンドロ・ダミアンがシュートを決め40分に追加点。それにしてもレアンドロ・ダミアンはシュートがうまい。
■勢いを持って入るも
大久保が入ったセレッソは後半開始早々に大久保のパスから最後は原川のミドル、そしてそれで得たCKから最近よく狙っているニアでフリックするパターンでゴールを狙うも決まらず。そしてそこから一気にカウンターを浴びてしまいマルシーニョにキム・ジンヒョンと1対1の場面を作られるもキム・ジンヒョンがスーパーセーブとちょっと慌ただしい展開になる。
しかしここでも追加点を奪ったのは川崎F。
形としてはやっぱりポケットへの侵入で、登里からポケットに入った脇坂へのパスをスルー。レアンドロ・ダミアンはコントロールをミスするも外から入ってきたマルシーニョが49分に右足で決めてゴール。マルシーニョはこれがJ1初ゴールとなる。
実質これで勝負あり。ここまでもセレッソに勝機があった訳ではないが、大久保を入れて勢いを出そうとしたところで前半からずっと川崎Fが狙っていた場所を使って同じように失点したことで実質勝負は決まった。
とは言えもちろん試合を諦めた訳ではないセレッソは63分に山田に代えて松田力を投入。川崎Fも73分に登里とマルシーニョに代えて大島僚太と宮城天を投入。旗手が左SBに移動し登里の時にはあまりなかったSBがポケットに侵入しようかという動きを増やす。
セレッソも川崎Fの交代直前には丸橋のライン間への斜めのパスからチャンスを作りかけ、73分には松田陸の強烈なミドル、79分には松田力がバックヘッドでゴールを狙っていたが、この松田力のシュートで得たCKからちょうどポケット付近にいた丸橋のクロスに奥埜がニアで合わせてゴール。何とかセレッソが1点を返す。
川崎Fの交代にかなりキツそうな山根を代えてあげられないのか思いながら、さらに小菊監督がビハインドの時に2列目の選手をCHに入れる交代をよくやるが一体何の効果があるのかよくわからないなと思いながらも、85分にポケットに侵入した遠野の折り返しを宮城が決めて4点目。
この遠野や旗手、橘田と川崎Fは中盤の選手が背負ったり身体をぶつけたりしながらもボールを受けることができるのは、川崎Fの戦い方の中では大きい要素だと言えるのではないだろうか。
試合はそのまま終了。1-4でセレッソ大阪は川崎フロンターレに完敗に終わった。
■その他
試合は完敗。3-2で敗れた前回対戦時よりもスコアは開いたが、前回は最初のパンチが当たり2つ目も上手く当たったという展開的に恵まれたところがあったのでその分の差とも言えるか。
小菊監督としてはおそらくプレッシングからのショートカウンターが狙いで、あとはビルドアップの部分も準備したのだろう。この準備した部分はある程度機能したが、早い時間に失点したことでそれを活かすまでにも至らず。これまでの負けパターンの試合同様に手探りの攻撃を90分間続ける格好となった。
今回マッチレビューというにはざっくりとしたざっくりとした内容になってしまったが、小菊監督になってから感じていたことが両チームの「ボール保持の目的地」という部分でわかりやすく差が表れていたのでこういう書き方をした。
小菊監督のチームは試合ごとに具体的な「狙い」があることが多く、それがハマればいいがハマらないと色々と選手を変えたり修正したりしようするものの手探りのまま時間が進んでいくことが多いのだが、そうなるのも「修正力」というよりもこういった「目的地」という部分によるものなのだろう。もちろん最終的な目的はゴールを奪うことなんだけど、そのためにどこにボールを運ぶかという部分がはっきりしていないので、選手や布陣を変えたところで手探りのボヤッとしたままの状態が続くのではないかと感じている。
これは前回の最後に書いた、「結局このチームはどこで勝負をしようとしているのかが今ひとつよくわからない。」ということでもある。
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